差押え、賃借人に対する破産の申し立てを無催告で解除する特約 賃貸人

差押え、賃借人に対する破産の申し立てを無催告で解除する特約
賃貸人は次の事由が発生した場合には本契約を無催告で解除することが
できる。
① 賃借人に対する破産の申し立て
(解
説)
本特約は賃借人に不利な内容であるので無効と解されています。「申し
立て」を受けただけでは賃貸借契約の解除はできないとされていましたが
(最判昭 43.11.12)、民法621条は撤廃され、賃借人の破産のみを理由と
して解除できなくなりました。
一方、賃貸人からみれば、賃料に関する不安がありますが、破産手続開
始後の賃料債権は財団債権となり随時弁済が受けられるし、破産手続開始
後に財団債権である賃料債権の不払があれば信頼関係の破壊を基礎付ける
一要素となり、民法541条に基づく賃貸借契約の債務不履行解除が可能
ですから、賃貸人の保護は図られることになります。こうして、改正破産
法では、賃貸人は、賃借人の破産のみを理由として解約申入れすることが
できなくなりましたが、この改正により、債務不履行を理由とする法定の
解除権や、個々の賃貸借契約に基づく約定の解除権までも当然に否定され
たわけではありません。契約書に「賃借人が破産したときは解除できる」
と定めてある場合、その効力が契約書の記載どおり認められるかについて
は、意見が分かれています。
解除の時期によって賃料、賃料相当損害金の性質が異なることは注意を
要します。
(ア)破産手続開始決定前の解除~すべて破産債権になる可能性がある。
管財人の行為により占有していると認められる場合のみ財団債権に
なる。
(イ)破産手続開始決定後の解除~破産手続開始決定前における延滞賃料
は破産債権にすぎないが(破産法2条5項、100条、但し動産先
取特権の場合につき破産法65条)、開始決定後契約終了までの間
の賃料は財団債権となる(破産法148条1項7号)。