レファレンスあれこれ 東海目録MLから

レファレンスあれこれ
東海目録MLから
東海目録ワーキンググループ 安田多香子 2015.7.3
東海目録MLから
1
ドクターからの質問「オープンアクセスで出版しませんか」とのメールが来た。
執筆者 が料金を払うというが、信頼のおける出版社なのかどうか?2011.2.4
2.
PubMedにデータがあるのに、CiniiBooksにも所蔵館がみつからない 。
外部文献サービスに出しても「所蔵館なし」どこかでみつけられないか? 2015.5.22
3. KAKEN(科学研究費助成事業データベース)の情報から、文献複写依頼があったが、
データベースにあった報告書がすべてなのか、他にも文献は存在するのか?2015.3.24
4. 全国の病院が閲覧できる図書はないか?2014.1.7
「病院要覧」医学書院は2003-2004年版が最後で発行中止。それに代わるものは?
5. 過去の学会の日程表はどのように探したらいいか?
2009.5.20
関連して・・・・・最近の学会抄録集のオンライン化。
6. 書誌事項が読み取れない。「Sequence Accession No.ABB78006,direct submission」
って何?
2007.11.29
7. オンラインジャーナルからダウンロードしたPDFで、レファレンスが全部載っていない。
どこにあるか?
2013.11.29
8 PubMedのLinkOutから、1年分の利用統計は取れるが、それ以前の統計は
取れないのか?2009.5.12
9. Pubmedでこの「日本臨牀」は何?
10. 寄贈いただいたとき、礼状はどのようにしているか? 2013.4.10
11. 患者図書サービスにおける感染対策について参考となる文献を知りたい 2008.6.26
12. 日本語論文につける「英文抄録」はなぜ必要か? 2012.9.20
14. 博士論文(雑誌に掲載)をリポジトリに載せる際、出版社に許諾をとる必要はあるか?
2015.3.11
15. 研究業績を作成する際、「著書」とは何か?2014.8.22
基準はないか?
1. ドクターからの質問「オープンアクセスで出版しません
か」とのメールが来た。 執筆者 が料金を払うというが、信
頼のおける出版社なのかどうか? 2011.2.4
オープンアクセス(Open Access)とは、インターネットを通じて人類共通の知的資産である(学術論
文)をすべての人に無料でアクセスできるようにすること。
背景には学術雑誌の高騰と出版社の独占に対する対抗がある。
2002年 ブタペスト・オープンアクセス運動(BOAI)・・・学問の自由な共有をめざす
2007年 アメリカではNIHから助成を受けた研究は発表後、
1年以内に無料でアクセスできる
よう法律で義務化した
「オープンアクセス」は広義には「無料で閲覧できる論文」だが、
査読つきに限定するか、再利用を含むかなど定義は定まっていない。
オープンアクセスでな
いマーク
オープンアクセスの
マーク
オープンアクセスの種類
1.ゴールドオープンアクセス
オープンアクセスジャーナル
オープンアクセス以前の従来の学術雑誌では、料金を支払うのは読者の側であったが、オープンア
クセスジャーナルでは APC (という費用を著者(研究者)が支払う。
『Nature Communications[39]』『Cell Reports[』『Science Advances』大手出版社も発行
研究機関や学会が出版経費を負担することもある。
全額負担とはいかずとも一部負担すべく大学や研究機関で助成を行うケースもある[
日本の科学技術振興機構 (JST) が運営を行う J-STAGE のように購読型ジャーナルに掲載されている
が、WEB上では無料で公開されるケースもある[
また BioMed Central(英語版) などは低所得国の研究者でも投稿できるように、費用の一部または
全額を免除している
2.グリーンロード
研究者自身の手によって
WEBサイトや、機関リポジトリ
で公開するセルフアーカイブの方法
3.エンバーゴ
一定期間期間後、(6~12カ月)
オープンになる
New England Journal of Medicine
6ヶ月後オープン
Nature アカデミックシリーズ
1~5年後Freeに
Highwire 出版は多い
4.ハイブリッド
従来の購読型学術雑誌であるが
著者が費用を払うことによって、
その論文をオープンアクセスに
することができる雑誌も存在し、
これはハイブリッドジャーナル、
ハイブリッドオープンアクセス
と呼ばれる[
PubMedCentral
NIHなどの助成を受けて行われた研究は、論文掲載の1年後にオー
プンアクセスにすることが義務付けられています
㉞ 国立情報学研究所
㉙世界のオープンアクセスジャーナルのサイト
㉚生物医学分野のフリーアクセス
ジャーナルのリスト
NII(国立情報学研究所)とJST(化学技術振興機構)がオープンアクセスの構築・連携を支援していて、
2015年5月20日現在で421機関を数えています。又、J-STAGEは日本国内の科学技術情報関係の電
子ジャーナル発行を支援するシステムで、多くの学会が学会誌などをオープンに出しています。(日
本癌学会「癌」も1巻からオープン)素晴らしいことです
癌1(1907)(明治40)-49(1958)
GANN:Jpn J Canccer Res 50(1959)-75(1984)
Jpn J Canccer Res: GANN 76(1985)-78(1987) ここまでJ-stage
79(1988)-93(2002)Wily オープンアクセス
Cancer Science 94(2003)- Wily オープンアクセス
APC 2,250$ 1,125$
オープンアクセス影の部分
投稿者の負担増(1投稿あたり30万円)や、リジェクトされたあとにオープン誌に誘導された、ま
た詐欺的なジャーナルが増加していることは大変問題です。
オープンアクセスに詳しい図書館学の時実象一先生によれば、「オープンアクセスの出版社は、
インドに多いです。開発途上国の著者から論文を集めるビジネスをしています。一般に雑誌レ
ベルが低く、論文数も少ないことが多いです。
Open Accsess Pulisher は、学会がやる場合を除いてすべて営利です。掲載料は$1,000-3,000
です。」とのことでした。
2012年からこの手のオープンアクセスジャーナルは爆発的に増えており、年間1000を超えると
言われています。次々に生まれては消えを繰り返しているようです。
怪しいオープンアクセス出版社のリスト
こういう怪しげなオープンアクセスジャーナルのリスト通称「Beall’s list」
http://scholarlyoa.com/publishers/があります。コロラド大学のJeffrey Beall氏が作成しています。
このリストは例えば掲載料が明示されていない、編集の方針が明確でない、意味不明な英文
で書かれているなどの論文誌として一定の基準を満たしていないと判断されるオープンアクセ
スジャーナルのリストです。
参考までに: オープンアクセスについての論文 ”The dark side of publishing” Declan Butler
Nature 495, 433-435 (2013).
結論
オープンアクセスジャーナルの掲載を営利目的にしている出版社もある。
資料編㊱ の Beall’s list を検索してみるとよい。
2. PubMedにデータがあるのに、CiniiBooksにも所蔵館がみ
つからない。 外部文献サービスに出しても「所蔵館なし」
どこかでみつけられないか?
ジャーナルの情報を調べてみよう
ここからJournalの情報がわかる
ナイジェリア医科大学
オンラインへのリンク 現在不調
NLMのLocater Plusへ
プリント版の所蔵状況 欲しいところ
は未着
結論
ナイジェリアの雑誌なので、日本での所蔵はない。
オンラインが現在、不調なので、オンラインからの入手ができない。
(PubmedはオンラインからCiteされたのか・・・?)
プリント版はNLMには未着。
従って、文献サービスに依頼しても、「所蔵なし」となってしまった。
時期が来れば、NLMにプリント版が到着するか、オンラインが復帰するのではないか。
3. KAKEN(科学研究費助成事業データベース)の情報から、文献複写
依頼があったが、データベースにあった報告書がすべてなのか、他に
も文献は存在するのか?
1.
2.
3
4
5
研究が終了しているものは「研究成果概要」
又は「研究成果報告書」あり
継続中
研究期間中は年度末ごとに「研
究実績報告書」を提出する
継続中
終了しているが「研究成果概
要」はまだ出ていない
研究は終了しているが、「研究成
果概要」はまだ出ていない
結論
科研の報告書として公開している内容は、「研究実績報告書」と「研究成果概要」とある。
「研究実績報告書」・・・・各研究期間中の年度末に報告する(800字程度)。基本情報に加え、
その年度における研究実績の概要と当該研究による発表文献のリスト
「研究成果概要」・・・・・研究期間終了後、研究成果の概要(800字程度)と当該研究による
発表 文献のリスト
「研究成果報告書」・・・・(特定領域研究、新学術領域研究(研究領域提案型))については、
報告書の提出が義務付けされている。・・・・・PDFでアップされている
※研究期間が終了していて「研究成果概要」が出ていないものは、研究者本人に問い合わせ
てみるとよい。
4.全国の病院が閲覧できる図書はないか
「病院要覧」医学書院は2003-2004年版を最後に発行中止
それに代わるものは?
「○○病院情報」医事日報 毎年発行
全国6地方に分けて、発行されている。
1冊が2万円以上と高価。
Webではないか?
「こころとからだの情報センター」から調べてみよう
一般市民・患者・家族を対象に医療・健康情報を提供し、日本医学図書館協会が提唱する「国
立ライフサイエンス情報センター(仮称)」の理念を提示する。
http://plaza.umin.ac.jp/~jmla/life/http://plaza.umin.ac.jp/~jmla/life/
明治期の病院名簿から現代の名簿ま
で紹介されている
Web
情
報
も
あ
り
結論
・静岡県病院名簿・・・・ http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko410/byouin_shinryoujo_josanjo_meibo.html 県のホームページからダウンロード可能
・愛知県病院名簿・・・・ http://www.pref.aichi.jp/0000079467.html
県医務国保課のホームページからダウンロード可能
その他、愛知県中央県民生活プラザ で有償で販売
・日本病院会 http://www.hospital.or.jp/shibu_kaiin/ 会員名簿の冊子(PDF)は会員のみ
ホームページへのリンクはあり
★ 各県ごとならダウンロード可能の名簿もあり。Webでは、様々出ているので、必要なものを
探してみよう。「全国」の病院の「冊子」は?というと、 「○○病院情報」医事日報 になるかと思
われる。
6. 過去の学会の日程表はどのように探したらいいか?
関連して・・・・・最近の学会抄録集のオンライン化。
過去の学会の日程が知りたいが、その号は欠号している。
学会ホームページはすでにないし、依頼したくても、掲載されているページもわからず、
文献ではないので、依頼していいかどうか?
日本外科学会雑誌 102巻臨時増刊
第101回日本外科学会定期学術集会 抄録集
探しているページ: 雑誌表紙・開催された日時・場所・会場・会期が掲載されているページ
各日の日程表・各日のポスターセッションの日程表
回答
文献と同様、日本外科学会雑誌を所蔵しているところに、
「日本外科学会雑誌 102巻臨時増刊 2002
第101回日本外科学会定期学術集会 抄録集
ページ: 雑誌表紙・開催された日時・場所・会場・会期が掲載されているページ
各日の日程表・各日のポスターセッションの日程表
ページ不明で申し訳けありません。該当のページをお願いいたします。
と記入し、依頼するとよい。
関連して・・・・・抄録集は、重要な資料だが、
発行形態は様々である。
1. 学会誌の臨時増刊として発行されるもの(巻号がちゃんとついている)
例:日本外科学会
2.中には、欧文和雑誌のSuppleとして「抄録誌」のみ和文で発行されるものもある
例:日本胃癌学会総会記事 「Gastric Cancer」
3.抄録集として発行されるもの (最近はCiniBooksに書誌の登録が増えている)
例:日本乳癌学会総会プログラム・抄録集
日本胃癌学会総会記事 「Gastric Cancer」
抄録集として独立の「書誌」があるもの
2014年くらいから、続々と抄録がオンラ
インのみの発行になってきている
抄録の登録が「オンライン登録」化が当たり前になってきているのに伴い、重い冊子体の発行
が見合わせられるようになってきた。
日本癌治療学会
・日本癌治療学会・・・・・ 33巻(1998)から学会
プログラムと抄録集のみ。抄録集は47巻
(2012)50回からUSBメモリになる。今年、50巻
(2015)53回からは、USBの配布もなくなり、会
員に配布されるプログラム号に掲載される
「パスワード」でオンライン掲載のみとなる。
タブレット、スマホなどから必要な部分を見る
こととなる。著作権は学会にある。
今後、学会が責任を持って、総会のサイトが
なくなっても、学会に保存してもらいたい
日本癌学会・・・・・・・・・72回(2013)、73回(2014)から冊子
体はなくなり、それぞれの回の総会ホームページからアプリ
をダウンロードして、検索する。
日本乳癌学会総会プログラム・抄録集
まとめ
・長い間、歴史を重ねてきた学会抄録集もオンライン化は免れない。
今後、総会サイトがなくなるにつれ、消滅していまわないよう、注意する必要がある。
・学会で、責任を持って、サーバーに維持してもらいたい。
7.書誌事項が読み取れない。「Sequence Accession
No.ABB78006,direct submission」って何?
MARKNELL DEWITT,A. , K.ANDERSSON , AND J.LIDHOLM.
Cloning and sequence of the major peach allergen Pru p 1.
Sequence Accession No.ABB78006,direct submission.
核酸(DNA、RNA)の塩基配列は1つの
アクセッションNo.を持っている
塩基配列のデータは、「DDBJ/EMBL/GenBank 国際塩基配列データベース(International
Nucleotide Sequence Databases:INSD)」に登録されています。INSDは、DDBJ(日本)、EMBL/EBI
(欧州)、GenBank/NCBI(米国)の3機関が共同で構築している事業です。塩基配列データは、3
機関のいずれかを通じてINSDに登録されます。3機関は登録されたデータを共有し、それぞれ
のプラットホームで公開しています。
塩基配列データを登録すると、1エントリ(データの登録単位)につき1つのアクセッション番号
(Accession Number)が発行されます。アクセッション番号は、論文で塩基配列に関する情報を
引用する際、ライフサイエンス分野の多くの学術雑誌では記載が義務付けられています。アル
ファベット1文字+5桁の数字、または、アルファベット2文字+6桁の数字からなります。
日本・欧州・アメリカで統一のデータ
ベースを構築
(1)DDBJ(DNA Data Bank of Japan;日本DNAデータバンク)( http://www.ddbj.nig.ac.jp/ )
国立遺伝学研究所の下部組織である生命情報・DDBJ研究センター(CIB-DDBJ)が運営しています。
(2)EMBL Nucleotide Sequence Database( http://www.ebi.ac.uk/embl/ )
EBI(European Bioinformatics Institute;欧州分子生物学研究所)が運営しています。
(3)GenBank( http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/ )
NLM(National Library of Medicine;米国国立医学図書館)の下部組織であるNCBI(National Center
for Biotechnology Information;米国国立バイオテクノロジー情報センター)が運営しています。
「DDBJ/EMBL/GenBank 国際塩基配列データベース(International Nucleotide Sequence Databases:
INSD)」に登録されています。3機関が共同で構築している事業です。塩基配列データは、3機関のい
ずれかを通じてINSDに登録されます。3機関は登録されたデータを共有し、それぞれのプラットホー
ムで公開しています。
http://www.ebi.ac.uk/embl/
結論
ライフサイエンス分野の論文では、核酸(DNA, RNA)の塩基
配列に関する情報を引用する際に、原著論文ではなく、
データベース上のデータを直接引用する場合があります。
この際に当該データを同定するために用いられる番号が
Accession Numberです。形式は「AE016959」や「NT080067」
のように「アルファベット+数字」となっていますが、テクニ
カルリポートの類ではありません
8.オンラインジャーナルからダウンロードしたPDFで、レファ
レンスが全部載っていない。
どこにあるか?
Haematologica. 2008 Mar;93(3):447-50. doi: 10.3324/haematol.11934. Epub
2008 Feb 20.
論題:Autoimmune thrombocytopenia in non-Hodgkin''s lymphomas.
PMID:18287133
ICMJE統一投稿規定(2010年改訂版)
電子版のみの付録[appendix]に載せてもよい。
結論
★appendix data
雑誌記事付録データのこと。図表やMethodsの詳細、高画質の画像や映像、音声など冊子体
では限界があるものが掲載されており、オンラインジャーナルの利点となっている。
”supplemental data” supplementary information”とも表記される。
本文のPDFファイルについて1ファイルになっている場合もある。
9. PubMedのLinkOutから、1年分の利用統計は取れ
るが、それ以前の統計は取れないのか?
PubMedのLinkOutは、PubMedの検索結果に自室の所蔵の文献にはアイコンを付けれるように
できるPubMedのサービス。Onlineの所蔵もプリント版も所蔵も付けられる。OPACへの誘導も可
能。
リンクリゾルバのアイコンを設定することにより、より便利になる。
その利用統計のこと。
結論
本年分と昨年分しか取れない。
なくなってしまう前に取っておこう!
9. Pubmedでこの「日本臨牀」は何?
医中誌Webでは・・・ 1975年は範囲外
「日本臨床」のホームページをあたってみる
http://www.nippon-rinsho.co.jp/index.html
「日本臨牀」のホームページで別冊や臨時増刊の内容がわかる。
しかし、残念。1975年は古いので、掲載なし。
現物をあたってみると・・・
MLのやり取りのうち、現物のある室の方が現物にあたってくださいました。
「当院には1975年所蔵してあるので総目次を調べてみました
該当する文献は
日本臨床(第33巻 春季増刊号)
「内科から病理へ-何を疑うべきか」
この中の目次で該当ページをみると
症例138 黄疸、嘔気、腹痛(ネフローゼ症候群) 高野俊男(ほか省略します):978
〃
腸重積症(リポイドネフローゼ)
〃
:1502」
でした。
結論
所蔵している館に分かる範囲での説明を加えて「現物を当っていただけますか」とお願いしま
しょう。
欠号のない所蔵館(今回は臨時増刊号や別冊も含めて完全所蔵している館)を
選ぶと同時に、意欲がある図書館((*^_^*)を選ぶことがポイントかも!
臨時増刊号や別冊の完全所蔵かどうか。
東海目録でも本誌は完全所蔵表示でも増刊はない場合もあり、その区別に苦慮する場
合が多々ある。そんな時は「お持ちですか?」ときいてみよう。
最後に
困ったことがあったら・・・
東海目録MLに聞いてみよう。
誰かがきっと答えてくれます。
答える人も、恥ずかしくて、こっそり、その人だけに教えたいかもしれませんが、
できるだけ、オープンに。
MLに返してください。
みんなで、共有するレファレンスツールに育てていきましょう!