スライド 1

日本獣医師会
牛肺疫
Contagious Bovine Pleuropneumonia
病原体: Mycoplasma mycoides subsp. mycoidesのsmallcolony (SC)株感染を原因とする。
感受性動物: ウシおよびスイギュウの感染症。ラクダ、野生のウシ
科動物及びその他の反芻動物は抵抗性がある。病原体は羊と山羊
からも分離されているが発病しない。呼吸器系の異常を示し、若齢
牛が感染した場合は発病率100%で、重度な肺炎を生じて死亡率も
高くなる。1941年以降、わが国での発生はない。
発生原因: 感染は病原体を含む鼻汁との接触や咳による飛沫を介
した経気道感染が主体。約 200 m 範囲内の空気感染が可能。感染
力は口蹄疫や牛疫に比べて弱く、急激に広がることはない。潜伏期
間は牛の感受性に左右されるが、通常は10~14日で、長いもので
は3~6ヵ月に及ぶものもある。清浄地域の若齢牛が感染した場合
は、発病率が100%で致死率も高いが、常在地の成牛が感染すると
不顕性感染を起こし、保菌牛となって汚染源となる。
1925(大正14)年から1930(昭和5)年まで大発生
中国、同東北地方、シベリア等は、古くから常在地であり、
大正11年(1922)に朝鮮半島に侵入し、大正13年(1924)に
発症頭数の推移 は横浜家畜検疫所において,大連港積出し牛に散見してい
た。初発牧場への感染経路は、大阪市の牧場が同年2月に
1925
234 購入した岡山県産の乳牛3頭からとされているが、それ以前
1927
28 は不明であった。5月28日の初発以来6月末までに大阪、京
1928
20 都、岡山、滋賀、兵庫で計93頭に達し、近畿、中国地方にさら
1930
231 にまん延の兆しを示したので、7月3日に緊急勅令の発令によ
1931
34 り、擬似牛の殺処分を敢行することとなった。
(1)家畜防疫事情
一方,同年8月30日、朝鮮から門司入港の112頭の内、山口県に導入された1頭
が10月23日に発病したのを契機として、広島、福岡、兵庫、山形、神奈川、新潟の
各県下から続々と病牛が摘発され、同年12月までに病牛72頭、擬似牛516頭を処
分するに至った。
山極勝三郎
山極三郎先生の原著
(2)家畜防疫事情
1941(昭和16)年の発生
系譜
昭和16年(1941)4月に、朝鮮から移入した牛によって再侵入し、千葉、茨城、栃
木、埼玉、長野、岡山、徳島、香川、に発生したが7月1日を最後に,18頭の病牛と
約100頭の淘汰によって終息した。これを最後に国内発生は見られなくなった。
群に見られる症状: 首と頭を伸ばし、四肢を大きく広げている。しばしば肘は外に
広がっている。肺膜の腫れが胸部の痛みを引き起こし、その結果、腹式呼吸をする
ようになる。
牛肺疫(CBPP)緊急対応準備計画策定の手引書
呼吸困難と咳により、首と頭を伸
ばしている状態の罹患牛 (→)
Preparation of Contagious Bovine
Pleuropneumonia Contingency Plans
典型的な鼻漏
主要症状: 急性期には41℃以上
の高熱、倦怠感、食欲不振、反芻
停止、水様性もしくは粘稠性の鼻
汁、激しい咳が認められる。慢性
に移行すると、さらに呼吸が困難と
なって、腹式呼吸を生じ、削痩す
る。末期になると重篤な呼吸困難
を呈して死亡する。
死後解剖の特徴的所見
肺に付着した大量の (オムレ
ツ状の) 繊維素凝塊と胸腔
内に貯留した黄色っぽい胸
水を示すため、横隔膜の一
部が除去されている。 (↓)
胸壁 (↑)
壁側胸膜と肺胸膜に大量
のフィブリンが沈着し、胸腔
内に混濁した液が貯留して
いる。
慢性牛肺疫保持家畜は一見健康であり、肺の中の繊維状莢膜にシー
ケストラム (sequestrum) を形成する肺病変を持っている。そのような
家畜はよく「肺保菌牛 (lungers)」と呼ばれている。病原体はそのような
状態で何ヵ月も潜伏し、繊維状莢膜が壊れた時に病原体は気管支を
通り肺から飛び出し感受性の家畜を感染発病させる。 シーケストラム
は時間が経つ
につれて石灰
化することもあ
り「腐骨」と訳さ
れることもある。
シーケストラム
は食肉検査に
おいて注意すべ
き牛肺疫の典
型的病変であ
る。慢性型牛肺
疫では、このよ
うな病変がしば
しば認められ
る。
肺の組織変化
牛肺疫急性型。
肺の断面、赤色
の肝変 (つまり、
肝臓のような見
かけと感触) が
認められる。
Gray book
肺小葉間中隔の著
しい肥厚は、特徴
的な"大理石紋様"
として知られている
マイコプラズマ感染
による腱の滑膜炎お
よび関節炎により腫
脹した関節
Geographical Distribution of List A Diseases
2004年
2000年
2001年
2002年
2003年
Disease information
Disease distribution maps
2006年
:情報なし
:過去に報告なし
:この期間に報告なし
:疑わしい
:臨床例が確認された
:特定地域に限って臨床例が確認された
2007年
:情報なし
:過去に報告なし
:この期間に報告なし
:感染が確認された
:臨床例が確認された
:特定地域に限って臨床例が確認された
:現在流行中
世界における牛肺疫の発生状況の推移
2007
Namibia
前 後 前 後 前 後
Niger
2005
国名
2006
Angola
Nigeria
Benin
Rwanda
Burkina Faso
Saudi Arabia
Burundi
Sudan
Cameroon
Tanzania
Chad
Togo
Dem. Rep. of Congo
Cote D'Ivoire
Ethiopia
Disease timelines
Uganda
Zambia
利用可能な情報がない
Ghana
過去に報告がない
Guinea
この期間に報告がない
Kenya
Liechtenstein
Mali
Mauritania
疑われるが確認されていない
感染が確認されたが発病していない
臨床例が確認された
感染が確認されたが特定地域に限局
Kenya
Location
Detailed country disease incidence
1 2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
Administrative units of the country
RIFT VALLEY
1
Totals
1
...
Tanzania
Location
1 2
3
4
5
6
7
8
9
10
11 12
Administrative units of the country
ARUSHA
DODOMA
1
2
IRINGA
0
0
1
3
0
1
2
0
1
3
2
1
2
1
MARA
2
MBEYA
3
1
MTWARA
1
PWANI
1
RUVUMA
1
TABORA
1
TANGA
2
Totals
6
1
1
1
4
2
5
3
3
1
2
4
1
2
4
10
8
4
6
行政単位別に発
生件数が表示さ
れている。
予防法: 流行地であるアフリカにおいては、生ワクチンの接種で予
防効果をあげている。わが国では、本症が発生した場合、「海外
悪性伝染病予防要領」に従い、患畜の早期発見、早期淘汰に
よって撲滅を図るが、本症を侵入させない検疫体制を保つことが
最大の予防法である。
COUNTRIES PRACTISING VACCINATION
The process is summarized in the following chart.
The specific criteria proposed for each stage of this process are as follows:
(a) Provisional freedom from disease
(b) Freedom from clinical CBPP
(c) Freedom from CBPP
APPENDIX 3
豚コレラ (classical swine fever, hog cholera)
動衛研
豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針
日本獣医師会
病原体: フラビウイルス科の豚コレラウイルスで、ゲノムは線状一
本鎖(+)RNAである。抗原的には単一で血清型はないが、遺伝子型
では少なくとも3型に分類されている(高病原性株、低病原性株、生
ワクチン株)。
感受性動物: 豚といのししのみがかかり、経過が速く、死亡率がき
わめて高い急性ウイルス病。
発生原因: 罹患動物との直接接触の他、鼻汁や排泄物の飛沫・付
着物との間接接触により起こる。侵入すると瞬く間に畜舎内に拡が
る。わが国では清浄化に成功し、本病は海外伝染病に準ずる扱いと
なっている。
豚コレラに関するQ&A
ワクチン接種中止に対する生産者の理解が重要!
無許可ワクチン(4月16日)
抗体陽性豚(4月21日)
豚コレラ
急性経過で死亡した子豚
自然宿主: 豚とイノシシ(ヒトが感染することはない)
致命率: 急性型は90%以上、治療法なし。他に、慢性型。
ウイルス排泄: 唾液、涙、尿、糞便(血液中には多量のウイルス)
感染経路: 経口及び経鼻感染
ウイルスの伝播: 感染豚との接触感染、
感染豚の導入、
人や器具、
車両等の汚染
(北海道大学 迫田義博先生 提供)
国際獣疫事務局(OIE)の危険
度分類で、危険度の最も高いリ
ストA疾病とされている。
豚コレラウイルスの存続様式
① 健康なキャリア-の存在。
世界における発生状況
日本の周辺国や豚肉を輸入し
ていた国々では、現在も豚コレ
② 移行抗体によるワクチンブレイクによって小規模な発生が
ラの流行がある。
繰り返されている(胎盤における母子感染)。
③ 慢性豚コレラ豚におけるウイルスの長期保持。
④ 持続感染豚(遅発型)の存在
⑤ 豚以外の動物(イノシシ)によるウイルスの保持等
80 頭 豚肉の国別輸入量の推移
飼養1千万頭当り発生頭数
輸 80,000
70,000
入 60
罹
量 60,000
50,000
患
40
(
万
率 40,000
ト 30,000
20
ン 20,000
) 10,000
0 0
55
56
57
58
59
60
61
62
韓 国
台 湾
E U
メキシコ
カナダ
デンマーク
アメリカ
63
64
65
66
67
かつて1000頭当り数頭が罹っていた豚コレラは、1992年を最後に終息した。
頭
罹
患
率
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
日本における豚コレラ罹患率の推移
93
94
豚コレラ「清浄化」対策
豚コレラ清浄国の
メリット
生産コストの低減: ① 単味ワクチン換算で約38億円/年
② ワクチン接種に伴う飼養管理作業の合理化
豚コレラ汚染国・地域からの豚肉等の輸入禁止
ワクチン接種国・地域を含む
豚コレラ清浄国の基準はOIE(国際獣疫事務局)の国際動物衛生規約で定めら
れており、撲滅計画の結果清浄化したとみなされるための条件の一つとして、国内
でのワクチン接種が完全に禁止されていることが規定されている。
第1段階: ワクチン接種の徹底
病原検査及び抗体検査の推進
第2段階: 清浄度が確認された地域からワクチン接種を中止
病原検査検査及び抗体検査の推進
第3段階: ワクチン接種の全面中止
清浄度の確認調査(異常豚の摘発、抗体サーベイランス)
2000年10月 専門家会議の結論 → 第3段階への移行
(1) 1993年以降、国内で豚コレラの発生が認められていないこと、
(2) 約32万頭の豚及びイノシシを検査し異常がなかったこと、
(3) 未接種及び一部接種農家の2300戸(全飼養戸数の2割)の立
入検査でも異常が認められなかったこと
許可を得た農場以
外では、ワクチンを
接種できなくなった。
豚コレラ疑似患畜確認事例検証報告書
(鹿児島県豚コレラ疑似患畜確認事例検証チーム)
2004年鹿児島県内で発生した豚コレラ擬似患畜数
事例番号
発生頭数
殺処分頭数
1
2
3
4
おわりに
5
計
1,144今回の豚コレラ擬似患畜連続発生事例は、初発農場
521
657
879
468
3,669
1,131
512
653
844
448
3,588
で使用された内容不明の薬品の中に含まれていた可
能性の高い豚コレラウイルスによるであろうと結論され
動衛研資料2
た。・・・・・・このような薬品にはどのような病原体が含
まれているか不明であり、いかなる場合も絶対に使用
してはならない。・・・・・・・
全国的豚コレラワクチンの使用中止が早く達成され、
清浄国宣言が行われ、わが国の養豚産業の発展がよ
り確実に、より速く達成されることを希望する。
動物薬の適正使用をより一層徹底する必要がある!
豚コレラウイルスであるが、GPE- ワクチンウイルスではない
未承認医薬品の使用
1930年代の世界不況
自国の産業保護
関税引き上げ
貿易数量制限
為替制限
1944年 ブレトン・ウッズ会議(米国)
世界戦争の回避策
1947年 第1回関税交渉妥結 → ガット採択
第二次世界大戦
国際復興開発銀行( IBRD ;1945)
国際通貨基金( IMF ;1947)
ガット体制(GATT; 1948 )
「関税及び貿易に関する一般協定」
経済紛争の元となる貿易障壁をなくし、自由貿易を確保する基本原則
(i)貿易制限措置の削減
(ii)貿易の無差別待遇(最恵国待遇、内国民待遇)
GATT 第20条 一般的例外: 動植物防疫に係る検疫等の措置
「衛生植物検疫措置の適用に関する(SPS)協定」
ケネディ・ラウンド(1967) 、東京ラウンド(1979 )妥結
ウルグアイ・ラウンド(1986 ~1994)妥結: 農産物貿易の原則自由化
1995年 世界貿易機関( WTO ) ← ガット体制
「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(通称:WTO設立協定)」
「農業に関する協定」
食料の輸出入における安全性確保と関わる国際的枠組み
危
害
因
子
に
つ
い
て
の
国
の
衛
生
基
準
B国
A国
非関税障壁
(WTO訴訟)
E国
C国
D国
国
際
基
準
基準作成
食品: コーデックス委員会
家畜伝染病: OIE
自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図
衛生および食物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)
貿易の技術的障壁に関する協定(TBT協定)
コーデックス委員会
( FAO/WHO 合同食品規格委員会)
( ):部会数、 〔 〕:休会中
事務局
執行委員会
一般問題部会(9)
個別食品部会(11)
一般原則
食品衛生
食品表示
分析・サンプリング
食品輸出入検査証明制度
食品添加物・汚染物質
栄養・特殊用途食品
残留農薬部会
残留動物用医薬品
専門家会議
食品添加物(JECFA)
残留農薬(JMPR)
乳及び乳製品
食肉・食鳥肉衛生
魚類・水産製品
生鮮果実・野菜
加工果実・野菜
油脂
〔ココア製品・チョコレート〕
〔糖類〕
〔穀物・豆類〕
〔植物タンパク質〕
〔ナチュラル・ミネラル・ウォーター〕
特別部会(2)
果実・野菜ジュース
動物用飼料
地域調整部会(6)
アジア
アフリカ
ヨーロッパ
ラテンアメリカ・カリブ海
近東
北アメリカ・南西太平洋
コーデックス委員会の組織図
国際獣疫事務局
(OIE)の組織図
国際委員会
International Committee
運営委員会
Administrative commission
事務局長
Director general
専門家委員会
地域委員会
Specialist
commissions
Regional
Commissions
規則、研究所、水棲動物、科学
Code, Laboratories, Aquatic
animals, Scientific
中央事務局
連携センター
標準試験室
Collaborating Centres
Reference Laboratories
Central Bureau
地域代表
Regional Representations
Africa,
Americas,
Europe,
Asia-Far East and Oceania,
Middle East
専門家班
作業班
Ad hoc Groups
Working Groups
動物衛生状態
(Animal health situation)
届出疾病(Notifiable disease): 獣医当局によってリスト化された
疾病を意味し、発見または疑われた場合速やかに、国内規則に従っ
て獣医当局に通知しなければならない。
Tanzania では?
Japan
Diseases present in the Country (国内発生がある疾病)
Confirmed Clinical Disease (臨床例が確認された)
Confirmed infection (no clinical disease) (感染が確認されたが臨床例はない)
Suspected (not confirmed) (疑いがあるが確認できていない)
届出体制もなく獣医療組織が不十分であり、国際支援が必要!
Diseases never reported (これまでに発生報告がない疾病)
General Surveillance (一般的広域調査)
General and targeted surveillance (一般的および特別の広域調査)
Targeted Surveillance (特別の広域調査)
Diseases not reported in 2007 (2007年に発生報告がなかった疾病)
Last occurrence (最終発生年): 牛疫は1941年と記載されている
Diseases for which no Information has been provided (情報が提供されな
かった疾病)