昭和62年度厚生省心身障害研究 r川崎病に関する研究」 川崎病の線溶 一特に遠隔期について一 (分担研究:川崎病の治療法に関する研究) 山田 兼雄 協同研究者 森内 久夫,村野 太郎,滝 正 志,目黒 嵩, 黒川 叔彦 要約 川崎病の線溶について検討した・ 特に本症1年以上経過している遠隔期における線溶能としてt issue pl asminogen ac t ivatorを測 定した。さ・らにvenoロs occulusion testを行い,駆血刺激によるt−PAの放出を測定した。 川崎病の遠隔期のt−PAが低値である傾向がみとめられた。これは本症における血管病変が長期間に存 在することを示唆するものと思われた。 見出し語:Kawasaki disease,Fibrinolysis,Tissue plasminogen activator,Venous occulusion test. はじめに 川崎病における線溶能の知見は少ない。 結果 1)川崎病の各病期におけるt−PAの変 我々はすでに本症の急性期において線溶充進状態 が存在することを報告した.瑠まとく昌こ遠隔期 化 t−PAは川崎病発症後1ヵ月までは高値を示 での線溶能の検討を行った。また駆血刺激による しており,1ヵ月を過ぎると正常化する傾向がみ 血管内皮の状態も検討した。 とめられた。しかしながら1年以上経過した症例 ではさらに低下傾向が認められ正常値の下限を示 対象及ぴ方法 川崎病罹患後1年以上経過した男 した(図1)。 児18例女児6例の計24例で,年齢は3歳から 2)川崎病における年齢別のt−PA値 10歳で平均6,5歳であった。そのうち冠動脈病 正常小児のt−PA値は各年齢層とも正常成人 変が認められたのは13例であった。コントロー に比較して低値を示した。川崎病に罹患した小児 ルとして相対年齢の14例,正常成人12例を対 のt−PA値は1−3歳で2.1±1,2ng/磁(コン 象とした。 トロ}ル2.7±1.5ng加ε),3−5歳で2.2± h ssue pl asmi鶏ogen acti vator(以下 0.・8ngノ擁(コントローノレ3.8±2.1ng/磁), t−PA)はモノクローナル抗体を用いたE l A 5−10歳で2.9±1.5ng/%(コントローノレ 法で測定した・4鉾venous?ccu豊・us’ontest 3.0±1.2ng・勉のであり相対年齢児に比較して (以下V O T)を行い,駆血前と中間血圧で5分 さらに低い傾向がみとめられた(図2)。 間駆血後のt−PAの値を測定した。 3)Venous occulusion test によるt一 3) 聖マリアンナ医科大学小児科 一186一 o:KD 14 ●:Contro1 ’7.0 12 6. 10 ハ 巽5ρ ハ 繋 ぺ 一 切8 ピ 妄 ぺ 嘗 マ40 や 穿6 鰯 − 一3. 嚢 .嚢 覆 藝轍 4 ・揮 窪 準 モモ ィ ぱ 麟憶 織 融 2, 碍鯉灘襯 2 鰭藻 燦’ ・藤鍛 ’灘協 1. ∼1w ∼w 3w ∼】m ∼3m ∼6m ly 0 病日 図1 川崎病の各病期におけるt−P Aの変化 図2 <1y 1−3y3−5y5−10y 10y一正常成人 川崎病における年齢別のt−PA値 10.0 9.0 8.0 7.O o 6.O E 、 ロ ロ ー 5.O く 低 じ 一 4.0 3.0 2.0 1.0 0 Before after Before after Before after K D Control〔相対年令》 Control(成人) 図5 Vonous occ“1usion testによるt−P▲の変化 一187一 PAの変化 放出が認められたが,症例の一部に刺激による放 川崎病のVOT前におけるt−PA値は,.1,9± 出がほとんど観察されない症例が誌められた。 ngん絶VOT後では4。1士2・2ng/擢であった。 以上の成績より,川崎病患児は急性期の線溶能の 一方,相対年齢の小児および正常成人においては 充進,1年以上経過した遠隔期における線溶能の V O T前値はそれぞれ,3.1±1.2ng〆粥,4・1 低下が存在することが示唆された。今回検討した ±2.4ng/諺であり,VOT後の値はそれぞれ tissueplasminogenactivatorは,血 50±2.2ng/磁, 8.1±5.4ng/溜であった。V 管内皮細胞で産生,放出されることより,本症の O T前後におけるtτPAの増加量は川崎病と当 遠隔期においてt−PAが低いことは,血管内皮 ントβ一ルの間に全体としては有意な差異の傾向 細胞の障害を示唆している成績とも考えられた。 はみとめられなかった。しかしながら川崎病の症 例の一部にV O T前後でほとんど変化しない症例 も存在した(図3)。 r文蘇 1)森内久夫ほか:川崎病における線溶系因子の 検討o−t一』PA,α2Pl,α2PI7Pm−C 警、.鍛鞭灘鼎雛騰躊 を中心として一。第90回日本小児科学会学術集 会・1987年4月,東京6・ 性期にα2・phsmin、i脆hibitor一か1as血i,n 2)森内久夫ほか:川崎病における線溶系の検討。 complexが高値であることより線溶の充進状態 一長期的観察を含めて一,第29回日本臨床血液 1),2) が存在することを報告した。この機序は明らかで 学会。1987年10月。千葉。 3)小山正人ほか=モノクローナル抗体を用いた はなV・が,血管炎に伴うac就e phase rea− E I A法による血漿t−PAに関する検討。 t i onあるマ・は本症の初期に認められる血栓形成 傾向に対する生体防御反応の機序によってひきお 第34回臨床病理学会・総会号。p333,1986年。 こされると推測した。今回,川崎病の遠隔期にお 4)Nilssonl.MandB。Robertson, ける線溶を検討するために,線溶活性を左右する Effect of venous occulusion on coagu− act ivatorであるt−PAを測定した。・また,マ, lation a益d fibrinolytic compQne就s OTを行い駆血刺激に対するt−PAの変化を観 in noτmal subjects.Thromb Diatb 察した。 Haemorrh。 20:397−408,1968 川崎病罹患児の遠隔期のt−PAは低値であリレ 5)藤原久義1まか:川崎病の病理。小児医学, 』17:944−959,1984.. 駆血刺激では大部分の症例偉ほぽ正常なt∈PAの Ab s t r a c t In this、communication,wも 董nvestigated the fibr量nolysis in patients with Kawasaki disease by measuriΩg tissue−Plasminogen activator(t−PA) wh玉ch was synthesi召ed a轟d feleased from、vascu亜ar endotMiu1n。Especially , we f ocus ed on t he pa t i eΩt s who had pas s ed mo r e t han one y ea r a f t er t he 一188一 onset of the disease. We also examined the release of t-PA from vascular endotheli'al cells in the patients by venous occulusion. Resting level of the t PA in patients with Kawasaki disease was lower than that of healthy a,ge-matched control (2.5 13ng/me vs 3.4+-2.Ing/ine), thus suggesting that the vascular d Tnag s =Lin the patierits with Kawasaki disease may persist more than one year from the onset of the disease. V -1 8 9-
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