重不況の経済学 第2章第2節 - ホーム

重不況の経済学
第2章第2節
山下 真弘
不均等成長

不均等成長=市場の特定の製品または特定の国・地
域で付加価値の縮小が生じること

要因は2つ
製品別の「生産性向上速度の差」
 付加価値総額の天井(=需要制約)

ボーモル効果

ボーモル効果=生産性上昇率の高い「発展部門」が、
停滞部門にたいして「雇用」の割合を減らすという現象

前提条件
両部門の生産量の比が一定=生産量の伸びが同じ
(本来なら、生産性の高い発展部門は生産量も高いと考えたい
ところ)

発展部門側で生産量の伸びを制約するメカニズムがあるということにな
る。
需要の制約
前提条件の再定義
ボーモル効果を規定するのは各部門の雇用量(N)
 雇用量と人件費総額(W)はほぼ比例関係



人件費総額は付加価値総額(Y)の中で最も大きな割
合を占める


W=w・N(wは賃金率)
Y=α・W=α・w・N(0<α<1)
よって、N=Y/α・wとなり、α、wを一定とすれば、NはYが
ふえると増える。
各部門の雇用者数の動きを左右するのは、ほぼ各
部門の付加価値総額である。言い換えれば、付加価
値総額が増えれば雇用は増え、逆は逆。
付加価値総額による「生産量の比が一定」条件の
一般化

付加価値総額=製品当たり付加価値(コスト)×数量
(生産量)
⇔Δ付加価値総額
=Δ製品当たり付加価値(コスト)×Δ数量(生産
量)



発展部門は生産性上昇率が停滞部門に比べ高い
=発展部門の製品当たりコストの低下率は、停滞部門のそ
れより低い(前章の「直接効果」)
ただし、生産量の伸び率は一定
付加価値総額による「生産量の比が一定」条件の
一般化
発展部門の付加価値総額の伸びは停滞部門のそれを
下回る
 したがって、発展部門の雇用者数は減る

一般化した条件式
付加価値総額の伸び=「①製品当たり付加価値額縮小
率」×「②価格低下による需要数量の増加率」
ボーモル効果からみた日本経済の理解

一般化した条件式の、②が十分に大きいために付加価
値総額の成長が停滞部門のそれより大きければ、発展
部門は雇用を拡大させる。=高度成長時代の日本
日本の経済の規模が小さかった
 労働コストが低かった
 国内では、国民の物質的な豊かさは不十分(需要が強い)

生産性が向上すれば、付加価値総
額も伸びた
ぺティ=クラークの法則の包含

工業化当初:工業製品の普及率が低く、需要が強い
販売・生産数量の拡大
第二次産業での労働力や付加価値総額の増大
 物質的に豊かになる

工業製品の需要が弱まる(需要の制約問題)
 新製品の登場が間欠的

その結果、第二次産業のウェイト低下
疑似ボーモル効果

高生産性企業が、業務の一部を、外部の低コストの企
業にアウトソーシングすると・・・
委託企業側:人員の削減→生産性向上
 受託企業側:雇用の増大


ただしこれは、「高生産性企業の生産性向上は、アウト
ソーシング先の低賃金雇用の拡大なしには実現できな
い」ことを意味し、結局一国全体の生産性向上にはなら
ない