市民社会と開発主義 ー近代日本の経験ー 1.開発主義 2.その合理性 3.効率的 官僚制? 4.知的ねじれ 5.戦後の開 発主義 6.二重構造社会の動員 7.全 体主義的動員 8.動員型企業 9.集約 的動員 10.開発主義の終焉 1.村上泰亮の開発主義論 「開発主義とは、私有財産制と市場経済、すなわ ち資本主義を基本的枠組みとするが、産業化の 達成、すなわち一人当り生産の持続的成長を目 標とし、それに役立つかぎり、市場に対して長期 的視点から政府が介入することも容認するような 経済システムである。開発主義は、明らかに国家、 あるいは類似の政治的統合体を単位として設定 される政治経済システムである。その場合、議会 制民主主義に対して何らかの制約を与える、王 制・一党独裁制・軍部独裁制などが加えられてい ることが多い。」『反古典の経済学』下、5-6p. 2.開発主義の合理性 費用逓減(収穫逓増)の一般的傾向をもった動 態的過程としての産業化 競争的私企業にとっての危険 (初期のセットアップ費用、過剰生産の危険) 産業政策による補完 初期における補助、中期以降の競争抑制 対象となる産業の取り替え →効率的官僚制の必要 3.効率的官僚制か市民社会か 官僚制の政治的脆弱性 攻撃的ナショナリズム、復古的原理主義 公共の言説と議会政治 学問/教育 社会運動 新市民社会の形成 財産ではなく勤労にもとづく個人の自立 社会による保険と補完 4.開発主義国家のもとでの知的ねじれ 「国益と私益の一致」 岩崎弥太郎 自己否定(利他)的反抗 河上肇 動員主義的政治スタイル 興奮の醸成→大衆行動 「偽善」と「面従腹背」 指導者と大衆 5.1945年以後の開発主義 占領期の改革(膨張主義と原理主義の 除去) 経済統制の連続性 方向転換1:市場経済に対応した集約的 動員 方向転換2:世界市場における競争に目 標を設定 方向転換3:経営者の企業者機能発揮 6.二重構造社会のモビリゼーション 開発主義の円錐 未来志向プロジェクトとしての国家 個人の自利心(富・出世・名声) 個人の解放=流動化としての動員 人的資源と資金の動員 7.全体主義的モビリゼーション 戦時動員(徴兵・徴用・徴発) 軍需生産への勤労動員 動員=生産計画 (物動) 統制団体 資金配分計画 メインバンク制 経済新体制・企業新体制(資本/経営/労務の 有機的一体) 共同体的性格を残した動員 国民精神総動員→大政翼賛会 産業報国会 *レント・シーカー的競争/利潤主導 8.動員型企業の特質 動員型企業の特質 1.生産量の外部決定 インプリケーション 1.状況および目標の優位 2.資源の外部調達 2.価格統制 3.適正利潤の分与 3.協力報酬としての利潤 4.協力的投資・企業設 立 4.企業の混合的性格 5.戦略的行動/業界秩序 5.権力効果/レント効果 9.外延的な動員から集約的な 動員へ 生産量の外部決定:目標管理型の生産/販売 規制金利のもとでの間接金融への依存/ 労使関係/企業間関係/ 過当競争・価格競争の回避 共同の新企業設立 戦略的行動と協調的秩序 区分された競争 <私的動員機構>の構築 10.動員型経済の終焉 状況/課題認識の共有の困難化 過労死/バーンアウト → 労働時間短縮 系列維持のコスト 生産市場主義に代わる理念 開発主義国家、企業共同体(企業単位の開発主 義)からの個人の析出 (時間/空間軸は保持) デモビリゼーションは市民社会を生むか?
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