製品、アイデアの販売企画

心理面接の技法
治療同盟から契約への経緯
面倒なこと=治療に乗ってくれるわけで
はないという理解
 どこに問題があるかの理解=主訴
 誰に問題があるかの理解=解決
 誰と何を解決するのかという同盟関係
の確立

Beutlerの体系的治療選択
短期=戦略性
短期力動心理療法
洞察志向
精神分析
認知行動療法
症状解決志向
デイケア(心理教育)
長期=関係性
精神分析的状況論
頻度、設定、そして面接の様式など、設定
における変数をどのように考えるか
 内的な基準として、それは患者の主観をど
れだけ取り扱えるかによって変わる
 外的な基準として、それは患者がどの程
度、それに投資できるかによって変わる
⇒さらに治療者がどの程度、投資するかによ
って変わる。

医療面接の特徴
医療面接
まず言葉使いについては、一般に医師は問診の時、
(1) 開放型の質問(open question):「お体の具合いかがですか」とい
うように、相手の開かれた説明を求める
(2) 多選択型の質問(multiple question):いくつかの選択が可能な形
で答えを求める、例えば「それは朝のこと、昼のこと、夜のことかな」
という具合
(3) 重複型の質問(double question):「頭が痛んだり、吐き気がした
りするかな」という形で、一つの質問に二つ以上の問いが含まれる
(4) 閉鎖型の質問(closed question):「頭は痛いですか」といった形
で、相手が「はい」「いいえ」で答えることを求める
(5) 誘導尋問の質問(leading question) :「頭が痛いんでしょう」と
か「お腹が痛むはずです」とか、相手に暗示を与えるように答えを求 める
ある医療面接
医師
患者
医師
患者
医師
患者
「どうぞ入ってください」・・・
「よくわかりませんが、この二週間だるくて」
「どうしてでしょうか」
「熱があります」
「何度ぐらいですか」
「38度ぐらいです。くしゃみもとまら
ない」
医師 「痛いところはありますか」
ある医療面接2
患者
医師
患者
医師
患者
医師
患者
医師
患者
「体中が痛みます」
「咳は」
「はい、咳も」
「ひどいかな」
「ええ気管支喘息のようです」
「血は混ざっていなかったの」
「混ざっていません」
「じゃあ、薬を出しましょうね」
「頭が重いっていうか」
ある医療面接3
医師 「それはそうでしょうね」
患者 「頭にくることが多いんです」
医師 「そうですか」
患者 「仕事でも家でも」
医師 「ひどいですね」
患者 「うまくいかないんですね」
医師 「なるほどじゃあちょっとのどを見せてもら
えますか」
患者 「どうでしょうか」
医師 「そうですね。かなりはれているみたい」
医療面接の心理学的な特徴




知覚と認知の生得的特徴
与えられた文脈による理解
判断が求められる状況
専門的な技能への期待
人間関係としての医療面接
医学的な面接における問題
 時間的な制約 –経験者の問題
 医療情報を判断しながら、人間関係を築く
--INTER-VIEW
 時代の要請
Evidence-Based Medicine の利用
⇒面接技法の要請が強くなる。
医療面接の技術
Aldrich(1993)
1.facilitating responses
2.empathic responses
3.summary responses
4.focusing responses
5.direct questions
Medical interview
Open-ended questions
facilitation and silence
 Clarification and directive question
chronological order
relate the symptoms to actual events
create a hypothetical situation.
 Precision
 Surveying and organizing

熟 傾 沈
考 聴 黙
患者
の知恵
患者
中心
↑
説
解
釈 と 明
分
精
査 と 析
収 情
集 報
医師
の技能
↓
医師
中心
マイクロカウンセリング
面接の基本としてのマイクロカウンセリン
グ
(商標登録されたので、この言葉を使うかど
うかは、オプションにすぎないが、面接の流
れ全体は、非構造化インタビューの基本にな
っている)
⇒かかわり技法から面接技法へ

Rogersのスタンス
Rogers(1942)は、心理療法において治療者の条件、つまり心理療法
的態度として次の三つを挙げている。
(a) 純粋さ geniuses:治療者が自分の内的状態や感情に忠実である
(b) 無条件の肯定的まなざし unconditioned positive regard:患
者が
どのような感情や態度を示しても、それに対抗するような評価的態度
を取ったり、拒否的になったりしないこと。治療者はその状態を「そ
の人となり」として受け入れる
(c) 共感的理解 empathic understanding :患者の「いま、ここで」
の
感情や経験の意味を敏感に理解し、それを患者に伝えること
Rogersの言語特徴
Rogers(1961)によれば、つぎのようなものである。
(1) 簡単な受容 simple acceptance:「うん、うん」「はい」
「え」
(2) 言い直し restatement:「--されたということですね」
(3) 感情の明確化 clarification of the feeling :「つまり
こういう 感じですね」
(4) 非指示的導き non-directive lead :「もう少し詳しく」
「どうい うことかな」
さまざまな心理面接
米国では1930年代後半から精神分析は精神
科医のみのフィールドになり、それが米国精神
分析協会のルールになった。子供の治療以外
は医学的な意味での心理療法は、医師の仕事
であった(英国≠米国)shrink=psychiatrist
 米国の心理学者はカウンセリングと心理療法
を自前で開発する。
⇒副産物として新しい発想と技法が開発される。

医療面接の技法から
Sullivan『精神医学的面接』以後、精神医
学者たちは、医学的な面接の基本的な技
法⇒
 面接技術に特化して研究してきた
interviewingの研究がある。基本的な質問
項目やopen-endedからclosedへの全体
的な流れ(マイクロカウンセリングがそれに
もっとも近い)。

精神科的な問題:
Sullivan,Gillによる初回面接
専門家と苦しんでいるあるいは周囲を苦し
めている人とのラポール
 患者の心的状態を評価するappraisal
 患者の治療を続けたいという願望を強化
することである
→評価と動機付け
精神病者など、病気への配慮

サリヴァンの面接
formal inception:voluntary integration
2. Reconnaissance: improving
communication
3. detailed inquiry: frame of reference
1.
自由連想より質問による対話的合意
はじめに 「どうして私のところへ来たのか」
「他者との関係において患者が意識した困難
がどういうものであったか」
面接の底流をなすpreconception
1.
2.
3.
4.
5.
「患者は初対面の人間(stranger)であるから当然
初対面の人間として取扱うべきである」
「質問はどういういとぐちから始めてもよいが、できる
限り、患者のついて来やすいような-つの方向に向
って質問を進めてゆくべきである
「直接的な問いによっては「この人はどういう類の人
間か」ということはまずわからない」
「対人関係を全体的力動的観点から見るべきである
」
「人間というものは、一人一人が独自な存在であると
いうよりもはるかそれ以上にみな同じ人間である」
「はっきりした話のワクがない場合には、その時そ
の時の主な話の流れに合わせてゆくのがよい」
7. 「人格というものは、/文化への同化過程/によ
る種々の不利を埋め合せながら、自分の精神的
健康すなわち対人的適応成巧の状態をめざして
進む強い傾向をもつ。生物は基本的に前向きに
進む方向性をもつのである」
CONSENSUALVALIDATIONとしての面接
面接では「いつでも相互に情報を交換をしているの
であり、それについて何らかの形で/共人間的有効
妥当性確認/を行なっているのである。」
6.
合意=治療的な対話
5つの会話パターン
1.
2.
3.
4.
5.
直接当面の対人関係に光を当てる
最近の対人的な場のどれかをとりあげて、その中での行
動の意味を解明する
現在進行中の対人的な場から患者のかなり遠い過去にお
ける重要な対人的な場に話を移してゆく
/建設的夢想/という手段を周いて、現在進行中のさまざ
まな面が未来においてどのような形をとるかを追ってゆく
治療の場の内外に発生し、しばしば急性の不適応行動を
起さしめるようなさまざまな危機的状況に患者がある時、
三流四流の重要性しかない現在の問題だけを専らとりあ
げる
患者に期待してよいこと
「自分の身体に起った変化を意識する」‥声の
変化、そしゃく、緊張の増減他
2. 「辺縁に位置する思考に意識を向けること」
3. 「心に浮かぶあらゆることを速かに述べること」
⇒患者が、「面接の場によって誘発されるさまざま
な考えをことばで表現しても大丈夫だ」と感じるとこ
ろまで、この場を信頼してなければならない。
治療は安全操作が優先される。不安や不穏をまず
安心の方向に向けるように面接を組み立てる。
1.
精神分析の特徴
寝椅子を用いた自由連想法
=面接ではないということ
 毎日分析
 声を介したやりとりの重視
=内省と思考
 象徴読解の技術
=スモールトイ技法の展開

自由連想法の前提

寝ていることを基本にして、言葉を
使って連想を広げ、本人が意識して
いない部分に光を当てる(enlighte
ning:Lewin)。
治療者の効果的な発話>
クライエントの内省や連想
寝椅子法と対面法の違い

寝椅子場面と対面場面を用いて行う、治
療者と患者のロールプレイを記録し、それ
を言語的に分析する。メンバーをランダム
に選んで、それぞれの場面の特徴を比較
検討する。
音声学的な結果
 寝椅子法場面では圧倒的にポーズの
量が増加する(対面法場面では、い
わゆるturn-takingが起きるため、ポ
ーズは話題に依存する)
 寝椅子法場面では治療者と患者とも
音声が低くなる傾向がある(同調性の
促進)
談話特徴の結果

寝椅子法場面では身体的、自己について
の談話が多く、今ここでの不安が示される
が、対面法では皆無である。
40
35
30
25
身体的
場面言及的
場面不安
20
15
10
5
0
対面法
寝椅子法
自由連想法と対面法
セッションあたりのポーズの割合(%)
50
40
30
沈黙
20
10
0
自由連想
対面法
N=29 *a<0.05
Interview Settings and
Communications(1)
対面法
Face to face
寝椅子法
Couch
声 *但し、治療者側
媒体 複数のチャンネル
は視覚情報も含む
対話
特徴
うなずきなど
呼応的
沈黙が多く、互いに内
省的
音声
特徴
内容によって
さまざま
トーンが低く、同調性
が高くなる
Interview Settings and Communications(2)
自由連想法
対面法
談話特徴
内容
線状的
呼応
沈黙
暫時的
断片的
日常意識 対象関係 身体衝動
的な側面 的側面
的側面
自由連想という構造

治療の操作性についての問題
操作可能な要素
治療室-治療構造-治療設定
治療構造論(小此木:1957)
言語は寝椅子によってもたらされた治療
言語 =身体や不安の言語化から対人関
係の話題へ(器官言語から物語:
R.Shafer)
精神分析の特殊性(Waelder,R.
1956)
1.
2.
3.
4.
5.
患者は苦しんでいて、助けを期待して治療に
来る。大人に対する子どもの立場に近い。
人生の親密な部分を包み隠さずに暴露する。
大人の前で丸裸な子ども
自由連想法の分析規則が目的的な行動や衝
動への防衛を放棄させる。自我とエスのバラン
スを変え、退行をもたらす。
無意識的不安に対する分析家による安心がも
たらされる。守られた子どもの立場になる。
分析家の受動性によって、患者の空想が守ら
れる。外界の行動で空想が疎外されない。
寝椅子法の臨床的な効果
風景をともに眺めるような、共視論的な様
式
 他者像の視覚的不在(見えないこと)によ
る、クライエントの自己反射-内省を促進す
る治療設定
 (内言を含む)声を基盤とした臨床的なやり
とり

スクリーン・モデル(共視論)
Th
Cl(y)
(x)
風景を見るという発想
精神分析療法に寝椅子が与える影響に
ついて
 安全な場所を創り出す努力
 対面(人を見るの)ではなく、一緒の風
景を見る姿勢
 人生(これまでとこれから)を振り返る
方向付け
寝椅子法(対面法との比較)
治療者の特徴
 沈黙が圧倒的に活用される(沈黙時間↑)
 音調が活用される=分散↑
①ゆっくり話す場合が増える (f=発話中
の文章の数/時間>f‘)
➁うなずきが減る(パラ言語的要素↓)
→見るなの禁止と声の活用
寝椅子法2 (対面法との比較)
患者の特徴
 沈黙時間が増える
 自分の身体や不安に焦点がある
自己言及、身体感覚、不安
一次操作反応の研究(小此木、1957)を支持
 背面椅子法=沈黙時間は増えない
→ 見えないことと寝ていること
寝椅子の治療因子
 声を使う
psychoanalytic instruments
 寝ている状態で起きている
regression in the service of eg
o
 見えないから思う
internal world
→長期化
Interview Settings and
Communications(1)
対面法
Face to face
寝椅子法
Couch
声 *但し、治療者側
媒体 複数のチャンネル
は視覚情報も含む
対話
特徴
うなずきなど
呼応的
沈黙が多く、互いに内
省的
音声
特徴
内容によって
さまざま
トーンが低く、同調性
が高くなる
Interview Settings and Communications(2)
対面法
談話特徴
内容
線状的
寝椅子法
呼応
沈黙
暫時的
断片的
日常意識 対象関係 身体衝動
的な側面 的側面
的側面
治療選択と治療同盟
治療経緯の明確化
 治療動機の文脈化
 治療同盟
 治療選択の合意:力動的な治療のなかで
も、精神分析か、精神分析的心理療法か、
それとも短期力動療法かといった選択が
力動的にあり得る。

分析的状況論

精神分析状況を分析的な関係や分析的な
空間のなかでの転移逆転移関係の中で見
る視点と治療の物理的な道具論を含めた
精神分析的な構造の視点を合わせて、分
析状況論と呼ぶが、これを治療選択のプロ
セスで、どのような構造を選択するかを決
める中で現れてくる。
⇒分析空間(M
逆転移の歴史的文脈から
a. S.Freud(1910)
→治療者の無意識の感情のクライエントへの悪影響
b. M.Balint,A.Reichら
→転移反応に対する逆転移を指摘
D.W.Winnicott(1958)
「逆転移のなかでの憎しみ」=客観的な逆転移
c. P.Heimann(1950)
→分析の道具としての逆転移の感情を指摘。
d. B.Joseph,W.Bion以降
→投影同一化の受け皿としての逆転移
盲点と長期的な視点
訓練分析によって得られる自己分析
↓
自分の盲点の理解
=一生のもの(終わりなき分析)
 訓練分析によって得られる情緒
↓
人に依存し、相談することで生じる転移
(退行)の姿

逆転移と投影性同一視から相互投影と
スーパーヴァイザーとしての患者
1.投影性同一視の問題点
治療者の間違いを患者の病理に還元してしまう=
医原病症候群
2.相互作用の場=bipersonal field
Little,M(1951)「逆転移」とそれへの反応
Searles,H(1975)「分析家のための治療者として
の患者」
→無意識的なコメンテーター=修正する人=スー
パーヴァイザーとしての患者
解毒と相互作用
訓練分析によって得られる経験
↓
クライアントの境遇と立場=枠組みの体験
 訓練分析によって得られる内省
↓
投影の解毒=相互作用の内在化
精神分析によって得られる理解が自分にとって
の精神分析の意義と重なる

訓練分析および個人分析の意義
心理療法が治療者のパーソナリティ
を道具として、クライエントとの深い相
互作用を認識することで成り立ってい
るので、より良い理解を治療者自身
がすること
 治療そのものの体験によって、自分
の心的過程、転移、抵抗、洞察など
の現象を理解し、体験的に学ぶ
 治療を受けたことのない人が治療を
するべきではない

精神分析があっているか
分析家が設定ができるという前提なら、
Lemma(2003)が指摘しているように

患者が関心があって、初歩的な、自己内省の能力があるかどうか
• 患者が自己探求を行うための治療関係のなかにある固有のフラ
ストレーションに耐えられるだけの自我の力を十分に持っている
かどうか。
• 行動化なしで心的な痛みに耐えられるかどうか(自他に害を及ぼ
さない)。
• 行動化の危険性があるなら、治療が行われる設定の中でマネー
ジできるかどうか
• 患者は個人的そしてあるいは職業的に治療の困難な時期の間に
自分を維持するように支えられるかどうか
•
主訴や問題を記述する
①問題を記述する:主訴であることが多いが、主訴
は誰が作ったかわからないことも多い。
 患者から見た問題:何に、あるいは誰に患
者が反応しているのか
 患者の「核となる痛み」は何か:彼が最も恐
れている、そしてあるいは避けようとしてい
るものは何か?
の二点から、主訴を見直してみる。そうすると経過
のなかに、誰が誰にということが見えてくることが多
い。
治療同盟、あるいは作業同盟
観察自我【1934から】 Zetel(1956)
 Greenson(1967)
精神分析の関係:転移、作業同盟
現実的関係の三つがある。
:自分の悩みを克服するために分析家と
協同したいという合理的な患者の願望と分
析家の指示と洞察とに従う彼の能力によ
って促進される。→同一化

分析可能性-治療同盟-作業同盟
主訴の特定から文脈の特定
経過として誰が誰
に何を問題として
主治医から言われている。 いるか?
「ここに来たの、何が問
題なの?」
治療者
自分で来たの?NO
主治医から何と言われているか
ラポールと治療同盟⇒作業同盟
経過
うつという診断で
カウンセリングが
必要だと主治医
が考えているので
治療者
照合
reflection
「ここに来て相談する
必要がある経緯かど
うか」を確認する
ラポールと治療同盟⇒作業同盟
カウンセリングに
来る必要性、理由
は何か?
治療者
精神分析が必要なのだろうか?
うつと呼ばれる恐怖症
問題に名前を付けていく作業
②問題の心理的なコストを記述する
患者の機能の中でのどのような限界、あるいは
他者や自己の知覚の中の歪みがその問題から生
じているのだろうか?つまり主訴は誰をどのように
困らせているのか、だからその問題はどんな名前
がふさわしいのかと、言い換えてみる。診断名はあ
くまで精神医学的名前でDSMのおかげで共通語
になった部分もあるが、それでも患者の主観から
は遠いことが多い。
作業同盟から分析可能性への道
今ここに来る私との間でする
作業の背景や理由を考えて、
自分としてはどうしてだと思う
か?誰のために誰が、何をし
に来ているのか?
治療者
うつと呼ばれる
不安ヒステリー
力動的フォーミュレーション1
③問題を文脈化する:関連している前提にな
っている要素は、心理療法に乗るかどうかと
いう問題をはらんでいるので、それらの要素
を文脈化してみる。
環境要因:トラウマの歴史、トラウマに影響を及ぼし
ている発達要因、家族の布置、他の関連したライフ・
イベント
生物学的な所与:身体、気質、身体的な問題:それら
のなかで現在の問題に関連したものを考えるなかで
、文脈を考える
問題を文脈化する
対象関係
経緯
現病歴
生育歴
症状
治療選択
心理療法の選択
④患者のもっとも主たる、繰り返されている対象関係を記述
する
患者は他者との関係で自分自身をどう体験しているだろう
か。その問いが治療のなかで、転移を考える上でもっとも重
要な問いなので、対象関係がだいたいわかると、なぜ今こ
こに彼が訪れたのかがだいたいおおまかにわかる。そのた
めに次のようなことを考える
1.
2.
3.
4.
5.
患者の内的な世界を支配している対象関係は何か
誰が誰にどんなふうに、そして関連した情動を発見する
これらの内在化した対象関係は現在の患者の人生でどんな不
運現れているだろうか?
自己や他者の表象は、どんなふうに影響を及ぼしているのか、
現在の関係によって影響を受けているのだろうか
これらの対象関係がどんなふうにあなたとの間で現れているだ
ろうか?
分析可能性:距離として
風景としての精神分析
異化された主観的問題
治療者
パースペクティブ
分析可能性から精神分析への道
治療者
不安ヒステリー
Unknown elements of
Unconsciousness
今ここに来る私との間です
る作業の背景や理由を考
えて、自分としてはどうして
だと思うか?誰のために誰
が、何をしに来ているの
か?
⑤防衛を発見する
患者がもっているさまざまな症状を生み出し
た防衛は、変化の可能な結果は何かとの関
連で、心理療法の対象になるだろう。その場
合、
1.
2.
患者が心的な痛みを対処している習慣的な
方法
神経症的なあるいは原初的な防衛を用いて
いるなら、それを記述する
⑥治療の目標を発見する
(治療者のニードに対して)患者は何を求
めている、何をニードしているのか
治療者:構成の仕事としての精神分析
精神分析が構成の仕事であるという
Freudの理解
 パースペクティブというGillの理解
 歴史的真実と物語的真実というSpence
の理解
 社会構成主義的な空間として、過去、現在
、未来、を構成する精神分析という
Hoffmanの理解

患者の語り:風景-寝椅子に寝てもらう



自由連想法の寝椅子は、クライエントの心の風
景をゆっくりと眺める。
自由連想の基本原則は、確固とした構造でク
ライエントを抱える。
毎日分析の設定は、クライエントの心のなかを
ゆっくりと悠長に眺める。
精神分析の分析的スクリーンはクライエントの
心のなかを映し出し、そのため治療空間のな
かに転移と抵抗とを浮き彫りにする。
対面かIn the neibourhoodか
セラピーによって何を提供するかを考える
。
 対面は自己愛や自己承認に役に立つが、
内省的な状況ではない
 内省的な状況が準備されていないのに、
分析状況を準備しても意味がない
⇒精神分析的な治療同盟の構造化

共視論、スクリーン・モデル、共同
的経験主義
Th
Cl(y)
(x)
短期力動療法
中心的な力動シークエンス
1. 治療の最初に患者の訴えを探索して、報告さ
れている問題の特定の例を調べる。
2. 現在の訴えのなかにある感情を体験すること
にプレッシャーをかける。患者の特徴的な防
衛を導く。
3. 防衛についての仕事
a.
b.
c.
防衛の同定(あなたの話は漠然としていることに
気が付いていますか)
防衛の機能を明確化する(漠然とさせることで、自
分の感情を避けているのがわかりますか)
結果を吟味する(漠然としたままで感情を避けて
いると、あなたの問題の原因を発見できません)
防衛についての仕事が(防衛が軽い患者た
ちでは)基盤となっている感情に到達する、
あるいは(中程度の防衛、あるいは防衛が
強い場合)複雑な転移感情が起きて、転移
抵抗が結晶化する。
5. 転移の中での抵抗と正面衝突。
6. 患者の過去の重要な人物たちへの感情と
記憶とが脱抑圧を受けて、複雑な転移感情
のブレイクスルーが起きる。
7. 歴史が得られるに従って、過去、現在、そし
て転移現象をプロセスのなかで結びつける
洞察が得られるように、解釈と結合とが起き
る。
4.
転移⇒抵抗のための技法
Davanlooの発想⇒正面衝突=自我に防衛を辞め
るように伝えること
直面化、同定、明確化、自我と超自我の直面化、バ
イオフィードバック(身体的技法)、不安調整(身体的技
法、今ここと現在と)、挑戦、圧力、正面衝突、ロールプ
レイ、本当の感情を描写すること、ワークスルー
こうした手順で、感情を明確化するように抵抗を解除
していくと考える。
⇒陽性転移によって依存の問題が表面に現れ、陰性
転移によって分離と対象喪失の問題が表面に現れや
すいが、これを転移抵抗として取り扱っていく場合にい
くつかの修正が行われてきた。

防衛、そして不安を越えて情動
Davanlooの技法を伝授された多くの治療者たち
:Lubursky,Fosha,McCulloughといったセミナ
ー参加者、あるいはMalanとの共同研究をしてい
た人々が、その技法を洗練させていった。
→大きく分けて、情動の力に触れるためのFoshaの
立場とMcCulloghの立場が、そしてStruppの影
響を受けて、LevensonらのTLDPが、そして
Mannらによって、TLPが開発されてきた。
ISTDP⇒
技法修正⇒AFT
+Struppらの影響で⇒TLDP
そして独自に⇒TLP

乗り越え不能の問題
ISTDPで生じた問題:正面衝突に至る技法では不安
がかえって高くなるので、これを対処するためには、
別の技法の導入が必要な場合が多い。
⇒特に治療者とクライエントの相互作用に注目する
必要があると考える。
=Struppらが提案したのは、転移と逆転移のなか
で、それぞれが関係を取り扱うことである。
不安を乗り越えられないのは、
1.治療者の問題
2.クライエントの不安の性質
3.関係性、相互作用の問題
まとめ






抵抗解除による情動が転移を促進する。
転移の形成:陽性転移、陰性転移
陽性転移によって依存の問題が表面に現れ、陰
性転移によって分離と対象喪失の問題が表面に
現れやすいが、これを転移抵抗として取り扱って
いく場合にいくつかの修正が行われてきた。
AFTのように、相互作用の認識や共感を用いて、
それをその場で不安を共有する方法がある。
TLDPのように、相互作用における転移逆転移を、
関係性を取り扱う方法がある。
TLPのように、終結に向かうことで、主題の解消を
持ち込む方法がある。
精神分析家になる訓練



もともとフロイトは、自分自身が神経症になった
ときに、夢分析による自己分析をして、その症状
を軽減させた。⇒『夢分析』
フロイトの周辺に集まってきた人たちはどちらか
というと分析を希望して、後に分析家になった人
が多かった。
ユングがフロイトに訓練分析の提案をした。最初
、フロイトは重視していなかったが、自分がガン
で倒れてから、システム化した。
1920年代に起きたこと



アイティンゴンが私財を投じて、ベルリンにク
リニックと研究所を創設した。フリークリニック
をはじめとして、研究と訓練の機関になる。
フロイトが23年に倒れ、25年にアンナ・フロイ
トの二度目の分析を行った(分析をすること
が分析家の資格や力と判断されている)
1925年に研究所で精神分析家になるトレー
ニングシステムが出来上がった。「アイティン
ゴン・モデル」と呼ばれる。ベルリン⇒ウィーン
精神分析のインスティテュート



研究機関として理論としての精神分析が生き
残るための研究をする
訓練のシステムが生き残る
1.
セミナー
2.
統制分析⇒SV分析
3.
教育分析⇒訓練分析
米国では38年に医学化、日本では2000年
に標準化した。
療法としての特徴
精神分析を受けた人が分析をする
「自分が分析した範囲までしか他者を分析でき
ない」という原則で訓練とSVを優先する
 毎日分析と寝椅子から週1回と対面法まで、会
い方の様式(頻度と対面)を選択する。
 短期療法、そうでないなら長期的な治療選択を
する。
 長期的な治療原理は、確率論的な大数の法則
。

精神分析的設定の各国議論
英国では精神分析は毎日分析を前提とするクライン
学派が中心だった。
 米国では50年代に設定についての議論があり、訓
練分析のなかで精神療法をどのように位置づける
かの議論があり、その後Stoneが状況を特定しよう
としたり、Langsがframeとして厳密化したりした。
 フランスでは、Lacanの影響で設定に対する議論が
盛んで、週3回のフランスモデルができるような弁証
法的な議論のなかでスペクトラムという議論が生み
出された。

日本の状況
日本は、日本精神分析学会が1955年に創
設して、その後、週一回の実践を行ってきて、
それは海外の状況とかなり乖離していた。⇒
アムステルダム・ショック(1984)によって海
外の基準に合わせる必要が出てきた。2000
年にシステムが正常化したと考えられる。ま
だ精神分析の実践は、国の中に流布してい
ない。
⇒状況分析、関係分析のための治療構造論と
いう発想がとても強力な技法になった。

治療構造論の展望
1.治療者の意図を超えて与えられたもの
治療構造=準拠枠
2.治療者が意図的に設定するもの(治療設
定)=セッティング
3.治療経過中に自然に形成されるもの
構造転移ほか
→基本原則、自我の分裂や変容的解釈論、
そして等距離性などの概念が治療的に意
義を持つ
構造的な認識
 自分は、どうしてこういう文脈で、仕事を
するようになったのか
 自分がどのような臨床場面にいるのか、
そしてそれはどんな構造をしているのか
 自分でその構造は、どの程度、設定とし
て変化させられるのか、それとも変化さ
せられないのか
設定の在り方
フロイトは生理学者で①毎日分析は、観察者と
しての当然の行動だった。それは臨床では患者
の苦しみを理解する方法になり、②寝椅子は催
眠療法を行っていた時代からの設定で、この設
定は後に「対面的な状況の外的刺激を避ける」
と意味づけられた。そして「転移を浮き彫りいす
る」技法になった。③催眠への抵抗から自由連
想が創始され治療の中で転移の発見につなが
った。そして最初障害だった転移は、治療の中
で治療的な要因になった。
精神分析の特徴
1.精神病理学のモデルを作ること
自己愛概念の導入と統合失調症の理解
Kernbergらの境界例パーソナリティ理論
Kohutの自己愛パーソナリティ理論など
2.臨床的な道具の開発
臨床の障害としての抵抗⇒防衛の理解
⇒転移の理解
=フロイト以後続いている精神分析
現代の精神分析1
クライン学派の理解
精神病理学的な理解の深化=対象関係論
投影同一化の臨床的な発展
患者の病理は、患者が繰り返してきた転
移よりも、今ここでの関係性の中に治療者患
者関係のなかに展開しやすい。
障害として発見された逆転移が治療的な
道具になっていく。

現代の精神分析2
治療関係の中で、これまでの転移理解よ
りも治療者にも気づかない形で関係性が
持ち込まれる=エナクトメント
 逆転移とエナクトメント(実演)
治療者にも患者にも気が付かれていない
水準の関係性に気づく
 関係性=治療者の無意識が間主観的、あ
るいは関係的に影響を与えているという理
解

主題
治療同盟
治療の構造化
機能分析
情動
問い
筆記
治療関係
類似点
自我の同盟(作業
同盟)グリーンソン
=
協同的経験主義
構造化の発想
相違点
問題
転移関係の延長と考えるか 陰性の転移関係
否か
頻度を増やして治療関係を
構造化する、あるいは宿題
を出してセッション間の日常
を構造化する
力動的悪循環(ワク 性格を広い意味で反復主題
テル)
と見なすかどうか(スキーマ
の問題=ヤング)
頻度=時間とお
金
宿題=勉強の関
係性
治療関係を取り
扱うかどうか
情動は、共感的に
取り扱う
共に開かれた応え
を求める
情動は防衛のなかで理解す
るかどうか
ソクラテス的な質問法と自
由連想=治療設定
抵抗の組織化を
克服する
対面や寝椅子の
スペクトラム
分析はなし
思考整理と活動記録を取る
か、それらは関係を歪める
と見なすか
治療同盟=協同的 心理教育的立場と転移と陰 最初から関係の
経 験 主 義 と 傾 聴 と 性関係を取り扱う転移抵抗 悪い場合
共感
分析