第4章.M&A ○M&Aの種類 • 合併: – 被合併会社 の法人格が消滅 • 買収: – 株式買取りにより被買収会社を – 現金買収(TOB等)と株式交換 • 株式交換:現金で買収するのではなく、買収会社の株式を対 価として買収 – 友好的買収と敵対的買収 • 敵対的買収:被買収会社の • 買収防衛策:敵対的買収を防ぐための手段 1 • 株式移転: – 現存する会社の株主が株式を移転することによ り、完全親会社を設立し、既存の会社は完全子 会社となる • 営業譲渡: – 会社のある事業部門だけを譲渡 • MBO:Management Buyout – 従来は子会社や事業部門の独立という目的が ほとんどであったが、最近は株式非公開化にも 使われる • ワールド05.11. ポッカ05.12. すかいらーく06.9. 2 『金融先端用語 辞典』日経BP社 p.241 3 cf. 第2章.株式市場と株価 (6)株式市場の役割 ④企業支配権の移転を促進 • 株式交換制度を利用することによって企 業の買収・合併が容易になる – 株式交換:買収対象企業の株主に現金を払 うのではなく、自社株で払う – 自社株式が取引所に上場されていることが 前提 4 ○株式交換を使ったシティによる 日興の完全子会社化 – 06年12月:日興コーディアル・グループの不正会計問題発覚 – 07年4月:シティと日興との提携関係をベースに、シティが日 興にTOB (TOB 価格1700円)をかけ、56%の株取得 – 10月2日:シティ、株式交換方式による日興完全子会社化を 発表 • • • • 完全子会社化によるシティグループ全体の総合的戦略の追求 この時点でシティは日興株の68%を保有 日興株1株1700円と見なし、それと同等のシティ株と交換 10月2日の日興株価は1462円だから、プレミアムは16% – 11月5日:シティ、東京証券取引所に上場 – 12月:日興の臨時株主総会:シティの完全子会社化を決定 – 08年1月:シティ、日興を完全子会社化する • 日興の上場廃止 5 日経07.10.3. 日経金融07.10.3. 6 • 現金買収の方法 • ①市場取引 – 株式市場で流通している買収対象企業の株式を 買い集める • 株式保有割合が5%を超えると、大量保有報告書の提 出義務が発生 • ② • (20営業日以上60営業日以内、被買収会社側 が反対の場合30営業日以上)、 7 – 公開買付けの義務付け • 多数の者(10名超)から買付けを行う場合で、買付 け後の株券保有割合が5%を超える場合 • 少数(10名以下)の株主から買付けを行う場合で、 買付け後の株券保有割合が3分の1を超える場合 – 公開買付けが利用されるケース • 企業グループの再編 – フジテレビによるニッポン放送に対するTOB,05年1~3月 • • • • • 資本提携、提携関係の強化 子会社化 MBO 敵対的買収 自己株式取得、等 8 ・日本のTOBの推移(自己株式を除く) レコフ調べ 9 ○シティによる日興コーデーィア ルに対するTOB – 2006年12月:日興コーデーィアル・グループ不 正会計発覚 – 12月18日:東京証券取引所:日興株を監理ポ ストに割当て(上場廃止の可能性) – 2007年3月6日:シティ、日興に対するTOB実施 方針を表明 • TOBの目的:子会社化による共同事業の推進 • 日興もTOBに合意 • TOB価格:1350円 10 – 3月12日:東京証券取引所:日興株の上場維 持を決定 – 3月13日:シティ、日興株のTOB価格引上げ • 上場維持により日興の企業価値増大 • TOB価格:1350円→1700円 – プレミアム:TOB発表当日株価比14%、過去半年平均 株価比26% • 買付け期間:3月15日~4月26日(30営業日) • 買付け予定株数:455,486,648株(全株式の 47.26%) • 外国人の持株比率:65% 11 – 日興の大株主の海外4ファンド(26%超の株式保 有)、TOB価格1700円は安過ぎると表明 • 4ファンドの中の1つオービス・インベストメント・マネジ メント、全保有株を1900円で売り注文(シティにTOB価 格引上圧力をかける狙い) – 4月26日:TOB成立 • 応募株数:541,196,777株(全株式の56.3%) • 応募株すべてを買取る(シティによる保有割合は 61.08%となる。 • 買取代金:9200億円、日本で最大のTOB、外資によ る日本企業買収で最大 • 4ファンドの中の1つマッケンジイー・グループ、全保有 株をTOBに応募 12 ・日興株の株価推移 13 ・株式移転を通じる経営統合 『金融先端用語 辞典』日経BP社 p.242 14 ○株式移転方式を使った三共・第一 製薬の経営統合 • 2005年2月:三共・第一製薬、経営統合を発表(二段 階方式の統合計画) – 第一段階:05年10月、株式移転により共同持株会社(第一 三共)を設立 – 第二段階:07年4月、完全統合:共同持株会社が子会社で ある三共と第一製薬を吸収合併 • なぜ株式移転を使った二段階方式か? – 実質的には三共による第一買収という性格が強いが、買収 では第一側の合意が得にくい – 時間をかけて統合することで、従業員の抵抗感を小さくする 15 日経産業05.02.28. 16 • 企業の買収・合併で、買収価格・合併比率を決め る際、市場の株価水準が最も基本的データ – 三共・第一製薬の経営統合 • 共同持株会社株と既存の三共、第一製薬株を交換 – 株式移転比率(共同持株会社株との交換比率) • 三共1株:1株、第一1株:1.159株 ① – 統合発表前(2/25)の株価 • 三共:2450円、第一:2485円、 1対1.0143 ② – ①と②とは厳密には一致していないが、基本的には② に基づいて①を決定 – 三共の株主にとって若干不利、第一製薬の株主にとっ て若干有利 • 三共が14.3%のプレミアムを支払う形 • 三共が第一を買収するという性格が強いため 17 ○証券会社のM&A業務 • 企業の買収・合併を専門的アドバイザーと して支援する業務 – 対象企業の徹底した事前精査due diligence: 事業面・財務面・人事面・税務面・法務面 – 様々な分野の問題点の摘出と解決策の提示 – 適切な買収価格・合併比率の算定 – 対象企業との交渉 – 法的手続きの遂行 18 ・M&Aのアドバイザー業務: 対象分野を特定して企業を買収するケース 西村信勝『外資系投資銀行の現場』日経BP社 p.260 19 20 トムソンファイナンシャル調べ 21 福光寛・高橋元編『ベーシック証券市場論:改訂版』p.236 22 第4章参考文献 • 福光寛・高橋元編『改訂版ベーシック証券市場論』 同文舘出版第9章、2007 • 渡辺章博・井上光太郎・佐山展生『M&Aとガバナン ス』中央経済社、2005 • 西村信勝『外資系投資銀行の現場』日経BP社第7 章、1999 • 佐賀卓雄「戦後アメリカにおけるM&Aファイナンスの 変遷」『月刊資本市場』2005年6月 • 藤田勉「世界のM&Aと三角合併解禁の影響」 『月 刊資本市場』2007年6月 23
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