若年層に関する地域別 住民基本台帳人口の精度について 山田

世論調査の回収結果の評価基準
としての国勢調査
2012年11月16日
日本世論調査協会
山田 茂
1
問題意識
• 抽出標本に対する回収率:20代・大都市が低い
• 回収状況の評価:国調の年齢別構成と一致?
• 国調による把握:未届け転入者も把握
近年大都市を中心に大幅に低下
特に若年層の把握度に問題
・国調は地域別回収結果の基準として?
2
14%
12%
10%
全国20代の構成比率
10%
12.8%
13.3%
13.2%
11%
8%
6%
4%
2%
0%
2010年9-10月実施
推計:05年国調以降の死亡
・出入国を加減
3
実際の居住者と調査の対象者
選挙人
3ヶ月ごと・選挙
名簿
抽出
居住者:
届出ない場合も
郵送/訪問
4
報告の構成
1 年齢層別回収状況
2 国勢調査自体の年齢別把握度の評価
3 年齢別住基台帳人口データの公表状況
4 住基台帳と国調データの年齢構成の比較
5 選挙人名簿と国調データの年齢構成の比較
5
1 年齢層別回収状況
• 若年層の低回収率:
主因:不在・関心が低い・非協力⇒調査不能
不能の一部は、対象者の住所が旧居住地
↓
• 転居者の登録
新居住地表示の住民票が必要になるまで
住基台帳の登録は旧居住地
⇒旧居住地の選挙人名簿に登録⇒転送されず
6
50
60
% 郵送 栃木県真岡市 2009年8月
40
50
男
40
30
20
45
女
摂津市 2008年8月 督促1回
%
35
30
25
20
15
10
10
5
0
0
1年以上の居住者限定
外国人を含む
7
90
80
%
2009年1月 全国 郵送 2回督促
70
60
50
40
30
20
10
0
15~19歳 20~24 25~29
15~19歳 20~24
男性 明るい選挙推進協会
女性
25~29
8
低回収率の原因:転居済の場合も
• 地域別調査の年齢別回収率:
公表例は少ない 特に10代後半を対象に含む調査
• 20代の回収率が10代後半より低い
郵送:2003年以降11例のうち10例(転出が多い地域)
⇒20代は10代後半より転居が多いためでは
⇒男性が女性より低いのも同じ理由
• 移動率:20代前半が高い⇒抽出リストの住所に不在
9
60%
5年前の常住地が現住所以外
20代の半分
50%
40%
30%
20%
10%
2010年 国調 男女計:男性ではさらに高い
35歳
34歳
33歳
32歳
31歳
30歳
29歳
28歳
27歳
26歳
25歳
24歳
23歳
22歳
21歳
20歳
19歳
18歳
17歳
0%
10
14
12
全国 面接 対抽出総数
5
%
住所不明
%
転居
住所不明
転居
4
10
3
8
6
2
4
1
2
0
0
有坂路子(2010)『新情報』98
「面接調査の訪問状況記録の検証」
11
2 国調自体の年齢別把握度の評価
1)2010年調査:実施方法の変更
• 単身・集合住宅・自己情報提供警戒⇒進行
• 回収方法:原則封入・郵送導入⇒記入漏れ増加
大都市で
・住基・外登データから補記:届出転入者
項目「氏名」「男女の別」「世帯主との続柄」
「出生の年月」「配偶関係」「国籍」
*登録者のうち住所・氏名判明分
自治体が膨大な作業・運用上の差
12
60
50
内閣府「統計調査の協力に関する
特別世論調査」2009年
「回答したい」(対抽出総数)
60
%
男性
女性
50
%
40
40
30
30
20
20
10
10
0
0
20~29歳 30~39歳 40~49歳
住基台帳から抽出
13
回収:大都市は調査員・持参が少
40
30
%
ネット
残りは郵送・補記:無記入増加
持参
調査員
20
10
0
14
0
中区
中京区
広島市中
横浜市中
市川市
福岡 水巻町
東大阪市
千葉 花見川
四條畷市
千葉 美浜区
浪速区
名古屋 東
千葉 中央
下京区
和歌山 岩出市
京都市北
博多区
神戸 中央
渋谷区
左京区
千葉 若葉区
名古屋
杉並区
上荻1丁目1629人
全国
(20大都市)
東京 区部
25
%
国勢調査年齢不詳率
20
15
10
5
3.5%以上不詳 22市区(2010年) 2005年は8市区15
3 住基台帳年齢別データの公表状況
国調時の年齢別データの利用可能性
1)全国:総務省自治行政局←都道府県←市区町村
静態:1994年~:
3月末の5歳階級別 「年齢不詳」含む
動態:年度間の移動・死亡・出生
2)全国:総務省統計局
年間移動数 各歳:2010年~県・20大都市
16
住基台帳データ更新の仕組み
受付は開庁日:公表される集計時点は種々
住基台帳(静態 全国分の公表は3月末だけ)
動態
年度間
転入・
出生
その他(
実態調査
・帰化等)
その他(
実態調査・
国籍離脱等)
転出・
死亡
17
3)都道府県:年齢別域内市区町村分
静態・動態
1)と別時点 年初:東京・埼玉 年齢計
10月1日:奈良 各歳
*全年齢計 9月末/10月初:宮城・千葉・福岡など18都道県
⇒国調と個別市町村の性別総数比較可能
4)市区町村:静態・動態
自治行政局の公表データと一部不一致
2010年国調時点分の公表 主にサイト収録:
約420市区町村の年齢別データ⇒国調と比較可能
18
住基台帳データ側の問題点
• 住基台帳制度:1967年制定 出生時点では ほぼ全員登録?
• 出生届出遅れ:前年以前の国内出生 1997年:909人 2011年:580人
• 「嫡出でない子」(2.3万人 人口動態統計2011年)を避け不提出
「所在不明高齢者」2010年7月末発生 同年秋:居住確認・消除作業
• 住基台帳3月末公表数の不一致 自治行政局 vs 自治体
広島市(12年市公表分が2622人少ない)・大阪市・北九州市・新潟市等
• 住基ネットと台帳の相違を指摘:北海道・泉大津市
• 自治行政局公表「年齢不詳」数 98年59人⇒12年3人:青梅・柏崎・西尾
• 自治体公表「年齢不詳」11年4月名古屋17人 寝屋川3人 北九州5人
・行方不明届出8.2万人(警察庁11年)・ホームレス9576人(厚労省12年1月)
・住所地不明死者 2298人(人口動態統計2011年)
・1年以上居所不明児童生徒976人 学校基本調査(2012年5月)
• 法務省:在留外国人統計「年齢不詳」数 2005年~:0人
• 海外在留邦人 2011年全年齢118万人(2005年101万人)
• 住基台帳「その他の記載」/「その他の消除」: 90年~急減 11年8万/7万
19
4 住基台帳と国調の年齢構成の比較
1)個人が住基台帳の住所に居住?
12%
10%
裁判員候補通知 2010年11月12日 31.2万人発送
8%
住所変更
6%
4%
2%
宛先不明
0%
住基台帳→同年9月2日の選挙人名簿の住所へ郵送
20
2)全国比較:推計人口と住基
10月国調
10月~翌3月
死亡・出生など
「日本人」
翌4月1日
推計人口
間接的に
国調の
精度
反映
翌3月末
住基人口
21
4
3
%
国調半年後の推計人口 vs 住基3月末
2
1
-1
-2
-3
0-4歳
5-9
10-14
15-19
20-24
25-29
30-34
35-39
40-44
45-49
50-54
55-59
60-64
65-69
70-74
75-79
80-
0
2011男
2011女
2006男
2006女
-4
-5
マイナス:推計人口「日本人」が 住基より少ない
例 2011年 25-29歳男 推計361万 住基374万
22
3)全国比較:前回国調(外国人を含む)と
前回
5年間の
前回国調
「総人口」
国調に
死亡・出生
基づく
など
推計
人口
把握度
の
変動
今回国調
「総人口」
23
2%
2005年国調―2000年国調に基づく10月推計人口
1%
0%
-1%
-2%
男性
女性
-3%
推計人口は概算値:マイナスは把握度の低下
-4%
24
2%
男性
女性
1%
0%
-1%
0
5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 歳
4歳 9 14 19 24 29 34 39 44 49 54 59 64 69 74 以上
-2%
-3%
-4%
-5%
中年層でプラス側へ:
2010年国調-05年国調に基づく10月推計人口
25
4)地域別住基人口 vs 国調
人口流出地域
流入地域
大都市・ 大学所在地
(転出届
遅れ)
主に
⇒
若年層
転入届
遅れ
把握漏れ
把握
したが
一部補記不能
⇒年齢不詳
把握漏れ
国調が
住基
登録
国調が
住基
登録
把握
把握
(一部
→補記
可能→ 無記入)
登録人口
実際に居住
←
(転出届
遅れ)
登録人口
実際に居住
26
転出届/転入届の遅れを反映
愛媛県郡部男
青森県郡部男
和歌山県郡部男
山梨県 郡部男
和歌山県市部男
千葉県 郡部男
18都道県のうち4%以上下回り
の市部・郡部と上回りの政令市表示
新潟市女
福岡市男
東京市部男
東京市部女
札幌市女
仙台市女
仙台市男
福岡市女
(%)
-6
-4
-2
0
2010年国調「日本人」と住基全年齢人口の相違
2
27
8
6
4
%
国調「日本人」の上回り率:対住基 2010年
差が ±2%以上
男性
女性
2
0
-2
-4
-6
-8
マイナスは国調が少ない
28
地域別の住基と年齢別実数比較
1800
人
奈良県郡部 男性 2010年
住基・外登
国調総数
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
10歳
11歳
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33歳
34
0
22歳 住基外登1574人 と 国調1333人
29
2400
奈良市 女性 2010年
人
住基 外登
国調総数
2000
1600
1200
800
400
0
15歳 16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
20歳 住基外登1835人 国調2194人
26
27
28
29
30
住基を国調が18~23歳で上回り 2010年
男女いずれかの各歳別最大差率が10%以上
• 政令市10市(差50%以上の区 仙台青葉 さいたま桜 川崎多摩
新潟中央 名古屋昭和 京都東山 岡山北 福岡城南)
東京 千代田・新宿・文京・杉並・世田谷・板橋など18区中11区
小金井・武蔵野・八王子・三鷹・多摩など12市中8市
・大学所在 江別 恵庭 北広島 室蘭 弘前 多賀城 龍ヶ崎
東松山 戸田 所沢 入間 越谷 志木 朝霞 ふじみ野 富士見
習志野 浦安 船橋 厚木 藤沢 伊勢原 松本 金沢 野々市
関 瑞穂 瀬戸 日進 豊明 武豊 彦根 草津 亀岡 八幡
城陽 京田辺 池田 柏原 吹田 富田林 大東 東大阪
摂津 枚方 羽曳野 藤井寺 大阪狭山 箕面 西宮 奈良
倉敷 東広島 宇部 徳島 善通寺 宗像 別府 ほか
31
5 選挙人名簿と国調年齢構成の比較
地域別年齢別データの公表:住基より少ない
• 定時登録のデータ:
四半期ごと9月2日現在など:港区・羽村市
• 投票日時点の登録のデータ:
漸増:2010年7月参院 7区・11市・1町
国調年の10月前後の選挙・住民投票
同時点ではない
32
有権者数に対する国調20歳以上「日本人」
0
-1
-2
-3
男
-4
%
-5
女
2010年9月2日現在有権者と国調
33
-25
0
90代前半
80代後半
80代前半
70代後半
70代前半
60代後半
60代前半
50代後半
50代前半
40代後半
40代前半
新居浜市 2010年国調人口
7月有権者=100
-20
2
30代後半
-15
30代前半
-10
20代前半
-5
20代後半
%
0
90代後半…
5
%
-2
-4
-6
-8
-10
-12
男
女
上越市 2010年
-14
-16
同パターン 広島市・足利市・佐久市・福島市・北谷町
34
15
%
10
男
目黒区 2010年国調[日本人]
7月有権者=100
女
5
0
-5
-10
5
-5
-15
-25
-35
同パターン 横浜・台東・板橋・練馬・町田・さいたま…
%
20代
30代
40代
50代
60代
70代~
杉並区
国調には「年齢不詳」が男22万人のうち3.1万人、
女23万人のうち2.2万人
35
むすびにかえて
• 国調の把握
未届転入者(特に若年層)も把握
把握漏れ・「年齢不詳」
特に大都市・男性:今後も増大
• 国調より抽出台帳(住基台帳・選挙人名簿)が
地域別回収率の評価基準としては適切
• 世論調査の年齢別回収率の公表が必要
(了)
36