母集団リストとしての 選挙人名簿の特性について 年齢別登録者数に関する検討 山田 茂(国士舘大学) 日本行動計量学会(東邦大学) 2013年9月6日 1 1 母集団リストとしての選挙人名簿 •選挙人名簿:市区町村が管理←届出 •個人の抽出に母集団リストとして利用 『現況』住基台帳の約1割:11年度73件 選管公表:抽出用の閲覧件数は多い 住基台帳人口(≒選挙人名簿)を 同時点の国調と年齢別に比較 鈴木達三(2002)「データ獲得法」 『社会調査ハンドブック』75年・80年 2 母集団リストとしての利用 補 記 3か月ごと・選挙時登録 抽出 名簿 20歳以上 回 収 住基台帳 選挙人 14日 以内 届出 集計 回 答 居住者: 届出ない場合も 抽出対象者 3 若年層の低回収率←転居 • 若年層の回収率: 他の年齢層より低い傾向が継続 • 調査不能の理由の年齢別集計例:少ない • 若年層の不能理由の相当部分:「転居」 鈴木(2002)1980年度10本 20代前半の1/5 有坂(2011)20代男性の1/4 同女性の1/5 ・「転出」と非表示の場合も。岩井・稲葉(2011) 4 5 4 3 内閣府の世論調査 住基台帳から抽出 対 計画 標本 % 転居・生活 転居・外交 転居・社会 不明・生活 2 不明・外交 1 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 0 2000年 不明・社会 「不明」は「住所不明」 2006年から「内閣府」が調査主体であると明示 ⇒「調査不能の理由」聴取に変化 5 2009年 全国 面接 対抽出総数 14 12 % 住所不明 転居 10 8 6 4 2 0 男女全年齢 男20代 女20代 男30代 女30代 住基台帳から抽出 有坂路子(2010)『新情報』98 6 5 住所不明 % 転居 4 3 2 1 0 大都市 20万以上 10万以上 10万未満 郡部 有坂「面接調査の訪問状況記録の検証」 7 10代より20代が低回収率 郵送調査の回収率 2009年 全国 80 75 男 % 女 70 65 60 55 50 10代後半 20代前半 20代後半 住基台帳から抽出 2回督促 明るい選挙推進協会サイト 8 50 % 40 米子市 2010年1月 郵送調査の回収率 30 20 10 0 住基台帳から抽出 テーマ:総合計画 9 8 7 % 県外への転出者数 対推計「日本人」 2010年 6 5 男 女 4 3 2 1 0 転出届提出者 10 選挙人名簿の登録手続き • 3ヶ月毎の定時登録日に新規登録・抹消 • 市区町村での登録の要件: 20歳以上の日本国籍保有者 (転入届提出後) 3か月以上継続して住基台帳に登録 • 抹消:死亡届・転出届提出など ⇒死亡は届出日に 転出は表示、4ヶ月後に抹消 例 ~5月1日 の転出者を9月2日の定時登録で抹消 11 考察方法 •居住実態と選挙人名簿の登録の相違 ①次回・次々回の定時登録で抹消予定 ②居住要件を満たしていないのに未抹消 ③年齢・居住要件を満たしている未登録 •居住実態≒国調との比較を主に利用 •国調:5年周期・把握漏れ・「年齢不詳」 12 選挙人名簿の登録・抹消と調査不能 純流出地域 選 ③転出しても未届け 挙 ①次回定時登録で抹消予定 ⇒ ⇒ (転出を届出済) 人 純流入地域 ③転入しても未届け 次回定時登録で登録予定 調査不能 ・ ・ ・ ・ ・・・ 旧居住地で「転居」 旧居住地で「転居」 (転入を届出済) ← 次回定時登録で抹消予定 ・・・・ 現居住地で 「転居」「死亡」 居住実態と一致 居住実態と一致 名 簿 ②居住実態なし ? ・・・・ 「住所不明」 13 選挙人名簿登録者数の公表 *年齢で区分しない全数集計 定時登録9月2日分:全国都道府県別 投票日現在登録数:市区町村別まで *年齢別データ 投票日現在の全国県別・一部の市区町 有意抽出集計 *一部の自治体では年齢別全数集計も公表 2010年7月参院選投票日 8区・14市・1町 14 居住実態との相違:郵便物の配達 1)地方裁判所による裁判員名簿登録通知 選挙人名簿から抽出 2010年以降毎年11月 管轄地域別 (年齢・性別区分なし)25.9万人宛 宛先不明(1%弱)1年間は転送のはず 「住所変更など」(7%前後) •大都市・農村県がやや高い 15 1.2% 1.0% 裁判員登録通知 2012年11月発送 宛先不明率 0.8% 0.6% 0.4% 0.2% 0.0% 地裁が管轄地域の選挙人名簿から抽出 16 2)都道府県・市区町の郵送調査 配達不能数の公表例:少数 •外国人に限定した調査以外: 住基台帳・選挙人名簿登録者から抽出 •2012年度:配達不能公表37例のうち 18例が0.5%~1% •2005年度~12年度: 同366例のうち 168例が0.5%~1% 17 70 60 郵送調査の配達不能状況 2.0%以上 件数 50 1.5%~ 2.0%未満 40 30 1.0%~ 1.5%未満 20 10 0.5%~ 1.0%未満 0 0.5%未満 抽出:選挙人名簿1.3%、住基台帳(+外登)0.8% 18 2 定時登録による全国有権者数 •総務省自治行政局 •定時登録: 3か月毎のうち9月2日現在分だけ公表 •都道府県別:年齢区分なし 性別集計 •人口流出県(大多数): 国調より多い 特に男性 •人口流入県・政令市:国調より少ない 19 定時登録時の抹消 •少数の道県:市町村別抹消数公表 高率:男性 大都市と周辺 •9月2日登録分の抹消(転出+死亡) 3月・6月・12月より抹消数が多い ←転出届出後4ヶ月後に抹消 •住基台帳上の20歳以上の県外移動: 3・4月が年間移動の35%(2010年) 20 0.0 宮崎市 宮崎市以外の市 町村計 2013年6月 2013年3月 2012年12月 2012年9月 2012年6月 2012年3月 2011年12月 2011年9月 2011年6月 2011年3月 2010年12月 2010年9月 2010年6月 2010年3月 2.0 有権者抹消率 宮崎県 対前回登録総数 % 1.5 1.0 0.5 21 2.0% 抹消率 滋賀県 12年9月定時登録 1.5% 1.0% 0.5% 0.0% 男性 女性 22 2.5 % 2.0 北海道 抹消率 2013年6月 3 % 武蔵野市 抹消率 2.5 1.5 2 1.0 1.5 0.5 1 0.0 0.5 0 23 1.2 % 愛西市 2010年9月 定時登録 抹消率 1.4 1.2 1 1 0.8 0.8 0.6 転出 転出 0.4 0.2 0.2 0 % 転出 転出 0.6 0.4 死亡 福岡県宇美町 2013年6月定時登録 抹消率 死亡 死亡 死亡 0 男性 女性 男性 女性 24 3 全国の選挙時年齢別有権者数 •2010年参院選:全国50311投票区から 47県×4(政令市・他の市・町・村)=188投票区 • 投票率が標準的:都道府県⇒市区町村⇒投票区 •町村部:若年層では有権者数が国調より多い ←転出届の遅れ •市部:20代前半・高年層:国調より多い 20代後半~中年:少ない←転入届遅れ •区部:20代前半:国調より少ない←転入届遅れ 30代~中年層:国調より多い 25 9 8 7 % 町村部の年齢構成 2010年男性 参院選 7/11 国調10/1 6 5 4 3 2 1 0 不詳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 26 8 7 6 町村部 女性の年齢構成 2010年 % 参院選 7/11 国調 10/1 5 4 3 2 1 0 不詳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 27 4住基台帳登録と国調「日本人」 *大都市圏外の市町村:約220 人口流出:若年層(18歳~数年) 特に男性が国調より多い *大都市と大都市圏内の中小都市:約230 人口流入:若年層(同上) 特に男性が国調より少ない 大学所在地 28 5 県単位の年齢別有権者数と 国調「日本人」 •2010年参院選(7月11日)当日の有権者数 •投票率が標準的な1投票区 県下の各市区町村から抽出 *ウエイトを付けているわけではない •岐阜県42投票区:40代まで国調が少ない 男性の方が女性より差が大きい 特に20代前半の差が大きい 29 10 有権者と国調 岐阜県 2010年 参院 7/11 8 男性 国調 10/1 % 6 4 2 0 30 6 個別市区町の有権者全数集計 年齢・性別有権者数が比較可能:一部 •2010年参院選:80日違い 05年衆院:20日 •知事選・県議選・市長選・住民投票など 一部地域では年齢別・性別住基台帳人口 *国調と差⇒未届け転出者の一部を反映 31 1)大都市圏外の中小都市・町村 •入手:8市1町 八戸・会津若松・足利・上越・小諸 佐久・掛川・新居浜 北谷町 •若年層で国調より多い←転出届の遅れ 1200 1000 沖縄県北谷町 2010年 女性 800 600 400 200 0 20~24歳 25~29 町議選9/12 30~34 国調 35~39 知事選11/28 32 愛媛県新居浜市 2010年 男性 5,000 住基6/30 参院7/11 住基9/30 国調10/1 知事11/28 住基12/31 4,000 3,000 2,000 1,000 0 20代前半 20代後半 30代前半 30代後半 33 2)大都市と大都市圏内の中小都市 •入手:3政令市・8特別区・3一般市 •若年層、特に男性が国調より少ない ←転入届遅れ •大学所在地周辺:差が大きい市(行政区) さいたま(桜)・横浜(港北・神奈川) 広島(阿佐南)・目黒・文京・町田・日野 杉並区:国調の若年層が少ない ←「年齢不詳」男性総数の15%、女性同13% 34 9000 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 人 文京区 男性 2010年 参院7/11 住基10/1 国調 10/ 1 35 7 むすび 選挙人名簿と調査不能 ①定時登録で抹消予定:転出・死亡を届出済 ②抹消予定なし:以前に転出していて未届け ③未届け転入者⇒対象者として把握されず ①②を抽出したら⇒「転居」「死亡」「住所不明」 ⇒総数の1%前後発生 人口流出地域 若年層、特に男性 6月時点の定時登録名簿は①の未抹消が多い 住基台帳は、市町村自身が管理 選挙人名簿は、抽出に出向く必要 (了) 36
© Copyright 2024 ExpyDoc