抽出速報集計等からみた 2010年国勢調査結果の精度について Shigeru Yamada(Kokushikan Univ.) Data Accuracy of 2010 Population Census:Results from the 1% sample and complete Tabulation 日本人口学会 2012年6月3日 1 要旨 2010年国調結果の精度の検討 1 実施環境と調査方法の変更 2 全国実数:住基台帳・推計人口・外登と比較 前提:住基台帳、登録地はともかく国内の日本人人口をほぼカバー 3 地域別実数比較 4 調査項目ごと 1)不詳率 地域・性・年齢別など属性別に 2) 「配偶関係」の内訳を労調と比較 • この報告は、自由論題として応募 2 1 実施環境と調査方法の変更 • 単身・集合住宅・自己情報提供警戒⇒進行 • 9月の市区町村境を越える移動 10年前比13%減 • 回収方法:原則封入・郵送導入⇒記入漏れ増加 ⇒大都市 住基・外登データから補記:高槻市・小田原市など 項目「氏名」「男女の別」「世帯主との続柄」 「出生の年月」「配偶関係」「国籍」 *登録者のうち住所・氏名判明分 自治体に膨大な作業・運用上の差 愛知県東浦町 3 60 50 内閣府「統計調査の協力に関する 特別世論調査」2009年 「回答したい」(対抽出総数) 60 % 男性 女性 50 % 40 40 30 30 20 20 10 10 0 0 20~29歳 30~39歳 40~49歳 住基台帳から抽出 4 大都市では調査員・持参は少ない % 40 30 ネット 残りは郵送 持参 調査員 20 10 0 5 2 住基台帳の年齢別データ:比較対象 1)全国:総務省自治行政局←都道府県←市区町村 静態:1994年~:3月末の5歳階級別 「年齢不詳」含む 動態:年度間の移動・死亡・出生 住基台帳(静態 3月末) 動態 年度間 その他( 転入・ 出生 実態調査 ・帰化等) その他( 実態調査・ 国籍離脱等) 転出・ 死亡 6 2)統計局: 全国移動数 5歳階級:2010年~県・20大都市 3)都道府県:年齢別域内市区町村分 静態・動態 1)と別時点 年初:東京・埼玉 年齢計 毎月末:高知 年齢3区分 10月1日:奈良 各歳 *全年齢計 9月末/10月初:宮城・千葉・福岡など18都道県 ⇒国調と個別市町村の性別総数比較可能 4)市区町村:静態・動態 自治行政局の公表データと一部不一致 2010年国調時点分の公表 主にサイト収録: 約420市区町村の年齢別データ⇒国調と比較可能 7 5)台帳の精度:個人が台帳の住所に居住? 12% 10% 裁判員候補通知 2010年11月17日 31.2万人発送 8% 住所変更 6% 4% 2% 宛先不明 0% 住基台帳→同年9月2日の選挙人名簿の住所へ 8 住基台帳データ側の問題点 • 住基台帳制度:1967年制定 出生時点では ほぼ全員登録? • 出生届出遅れ:前年以前の国内出生 1997年:909人 2010年:533人 • 「嫡出でない子」(2.3万人 人口動態統計2010年)を避け不提出 「所在不明高齢者」2010年7月末発生 同年秋:居住確認・消除作業 • 住基台帳公表数の不一致 自治行政局 vs 自治体 広島市(10年市公表分が2259人少ない)・新潟市・大阪市・北九州市等 • 住基ネットと台帳の相違を指摘:北海道・泉大津市 • 自治行政局公表 全国「年齢不詳」数 1998年59人⇒2011年2人 • 自治体公表「年齢不詳」11年3月名古屋23人 寝屋川1人 北九州市5人 ・行方不明届出8.1万人(警察庁10年)・ホームレス1.1万人(厚労省11年1月) ・住所地不明死者 1638人(人口動態統計2010年) ・1年以上居所不明児童生徒1191人 学校基本調査(2011年5月) • 法務省:在留外国人統計「年齢不詳」数 2005年~:0人 • 海外在留邦人 2010年全年齢114万人(2005年101万人) • 住基台帳「その他の記載」/「その他の消除」: 90年~急減 10年9万/7万9 6)比較:全国推計人口と住基 10月国調 「日本人」 10月~翌3月 死亡・出生など 翌4月1日 推計人口 間接的に 国調の 精度 反映 翌3月末 住基人口 10 4 国調半年後の推計人口 vs 住基3月末 3 2 % 1 -1 0-4歳 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80- 0 -2 -3 -4 -5 2011男 2011女 2006男 2006女 マイナス:推計人口「日本人」が 住基より少ない 例 2011年 25-29歳男 推計361万 住基374万 11 7)比較:前回国調(外国人を含む)と 5年間の 前回国調 「総人口」 死亡・出生 など 前回 国調に 基づく 推計 人口 把握度 の 変動 今回国調 「総人口」 12 380 万人 推計人口 20~24歳男性 370 概算値 確定値 360 350 340 330 国調時点の推計人口の確定値は公表されていないが、 概算値と確定値の差は他の時点では小さい 13 6 5 % 国調結果の集計:抽出と全数 2010年 4 マイナス:抽出集計が少ない 3 男 2 0 -1 -2 -3 0歳 4歳 8歳 12歳 16歳 20歳 24歳 28歳 32歳 36歳 40歳 44歳 48歳 52歳 56歳 60歳 64歳 68歳 72歳 76歳 80歳 84歳 1 女 24歳男性:全数68.6万人 抽出72.6万人 信頼水準68%での標準誤差率:1.3% 14 2% 2005年国調―2000年国調に基づく推計人口 1% 0% -1% -2% 男性 女性 -3% 推計人口は概算値:マイナスは把握度の低下 -4% 15 2% 男性 女性 1% 0% -1% 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 歳 4歳 9 14 19 24 29 34 39 44 49 54 59 64 69 74 以上 -2% -3% -4% 中年層でプラス側へ: 2010年国調-05年国調に基づく推計人口 -5% 16 16 14 万人 8)比較: 在留外国人vs推計「非日本人」 2010年末 12 男在留 男推計 10 8 6 4 2 0 推計←国調±3ヶ月間の出生・死亡・出入国など 17 3 地域別の住基と年齢別実数比較 450 データ入手市区町村数 400 44 町村 350 300 250 181 3大都市圏外の都市 45 200 3大都市圏の都市 100 150 161 100 政令市 96 50 東京の区 0 2005年 2010年 2010年 全809市区 のうち 377市区 入手 18 地域別住基人口 vs 国調 人口流出地域 流入地域 大都市・ 大学所在地 (転出届 遅れ) ⇒ 主に19歳 前後 ⇒ 転入届 遅れ ⇒ 把握漏れ 把握漏れ 国調が 住基 登録 住基 登録 把握 国調が 把握 (一部 →補記 可能→ 無記入) 登録人口 実際に居住 ← (転出届 遅れ) 登録人口 実際に居住 19 2010年国調「日本人」と住基人口の相違(%) 愛媛県郡部男 青森県郡部男 和歌山県郡部男 山梨県 郡部男 和歌山県市部男 千葉県 郡部男 18都道県のうち4%以上下回り の市部・郡部と上回りの政令市表示 新潟市女 福岡市男 東京市部男 東京市部女 札幌市女 仙台市女 仙台市男 福岡市女 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 転入届/転出届の遅れを反映 20 8 % 6 4 国調「日本人」の上回り率:対住基 2010年 差が ±2%以上 男性 女性 2 0 -2 -4 -6 -8 マイナスは国調が少ない 21 奈良県郡部 男性 2010年 人 住基・外登 国調総数 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 10歳 11歳 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33歳 34 0 22歳 1574人 と 1333人 22 2400 奈良市 女性 2010年 人 住基 外登 国調総数 2000 1600 1200 800 400 0 15歳 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 20歳 住基外登1835人 国調2194人 23 1400 人 京田辺市 2010年男性 1200 1000 800 住基・外登 国調総数 600 400 200 0 19歳 住基・外登451人 国調1325人 24 25000 人 20000 杉並区 2010年女性 15000 住基 国調「日本人」 10000 5000 48 45 42 39 36 33 30 27 24 21 18 15 12 9 6 3 0歳 0 年齢不詳 22459人 ↑ 25 0 85歳… 80~… 75~… 26 年齢… 住基外登 … 85歳… 80~… 75~… 70~… 65~… 60~… 55~… 住基外登 70~… 65~… 60~… 3,000 55~… 50~… 45~… 40~… 35~… 30~… 25~… 20~… 15~… 10~… 5~… 4,000人 50~… 45~… 4,000 40~… 35~… 30~… 25~… 20~… 15~… 10~… 5~… 0~… 0 0~… 5,000 2010年 名古屋中区 男性 国調総数 3,000 2,000 1,000 5,000 名古屋中区 女性 国調総数 2,000 1,000 住基を国調が18~23歳で上回り 2010年 男女いずれかの各歳別最大差率が10%以上 • 政令市10市(差50%以上の区 仙台青葉 さいたま桜 川崎多摩 新潟中央 名古屋昭和 京都東山 岡山北 福岡城南) 東京 千代田・新宿・文京・杉並・世田谷・板橋など18区中11区 小金井・武蔵野・八王子・三鷹・多摩など12市中8市 ・大学所在 江別 恵庭 北広島 室蘭 弘前 多賀城 龍ヶ崎 東松山 戸田 所沢 入間 越谷 志木 朝霞 ふじみ野 富士見 習志野 浦安 船橋 厚木 藤沢 伊勢原 松本 金沢 野々市 関 瑞穂 瀬戸 日進 豊明 武豊 彦根 草津 亀岡 八幡 城陽 京田辺 池田 柏原 吹田 富田林 大東 東大阪 摂津 枚方 羽曳野 藤井寺 大阪狭山 箕面 西宮 奈良 倉敷 東広島 宇部 徳島 善通寺 宗像 別府 ほか 27 若年層で大差:国調vs.住基 05年と同じ 大都市中心部:把握漏れ・年齢不詳 国調<住基 大都市圏の大学所在地 国調>住基 大都市圏外の大学所在地: 国調>住基 大都市圏外のその他の地域: 国調<住基 転出届の遅れ 特に男性 18~23歳の登録地:自宅外通学者は親元 25歳前後~:実際の居住地へ転入届 提出←勤務先・行政サービス・車庫証明・ローン等 28 0 中区 中京区 広島市中 横浜市中 市川市 福岡 水巻町 東大阪市 千葉 花見川 四條畷市 千葉 美浜区 浪速区 名古屋 東 千葉 中央 下京区 和歌山 岩出市 京都市北 博多区 神戸 中央 渋谷区 左京区 千葉 若葉区 名古屋 杉並区 上荻1丁目1629人 20 全国 (20大都市) 東京 区部 25 % 4 項目別 1)年齢不詳率 15 10 5 3.5%以上不詳 22市区(2010年) 2005年は8市区29 1400 1200 万人 不詳数の推移 1000 800 600 400 200 0 年齢 1980年 配偶 従業地# 労働力状態 #:2010年は抽出速報集計 85年 90年 95年 2000年 05年 卒業学校 10年 30 50 5年前の常住地 40 居住期間 労働力状態 産業 卒業学校 不詳・分類不能率(%) 30 20 10 0 全国 男25~29歳 東京都 東京区部 最高率の区 「産業」だけが分類不能、他は不詳 最高率の区は「産業」・「卒業学校」だけ豊島区、他は新宿区 31 世田谷 男30歳 単独世帯 3872人中1380人 32 上北沢2丁目男 六本木2丁目男 世田谷区 男30歳・単独 20大都市 東京都 区部 男20~24 男25~29 男30~34歳 % 単独世帯 うち男 全国 60 配偶関係 不詳率 50 40 30 20 10 0 2005年調査34/35歳「断層」: 2010年調査消滅 40,000 35,000 30,000 全国 「配偶関係不詳」男性 人 2005年 25,000 2010年 20,000 15,000 10,000 5,000 0 30歳 31歳 32歳 33歳 34歳 35歳 36歳 37歳 38歳 39歳 33 一方が「不詳」だと… 有配偶 6379万人 未婚 2973万人 就業者 完全失業者 非労働力 不詳 死別・離別 1469万人 不詳 207万人 0% 20% 40% 60% 80% 100% 34 2) 「配偶関係」:9月末週労調と 30~34歳男性:労調「事実婚」を多くカウント? 労調は2005年国調に基づく推計人口から算出 労調 227 184 未婚 国調 有配偶 死別離別 不詳 207 194 万人 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 35 5 考察の要約 • 実数把握:全国20代前半・幼児を除き前回よりやや緩和 調査漏れ・無記入→大都市では複合して発生 ・項目別不詳率:全般に大幅上昇 高率:「卒業学校」「従業地」「労働力状態」 ←強い警戒感・補記可能項目ではない 若年層・単身・大都市で高率 ・補記:未提出・無記入←登録者(転入届は遅れがち)限定 ⇒「配偶」項目では「届出婚」だけ ・結果利用:特定項目・大都市・若年 より注意が必要 (了) 36
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