大都市高齢人口データの精度 その1 山田 茂 2011年6月4日 経済統計学会関東支部 1 要旨 • 地域別年齢別人口データ 公表情報の特徴 若年層:住基人口との相違(前回の報告) • 高齢層(65歳~): 若年層に次いで国調と相違が多い 国調との相違・年次間の比較など →住基人口の精度 2 1 はじめに ・住基台帳による年齢別・性別人口データ →地方自治体によるネット公表の増加 背景:年齢別住民数把握の必要性 情報処理体制の整備 石川ほか(2010)「行政記録に基づく人口統計の検 証」『人口問題研究』が関連する状況を包括的に展 望 3 市区町村による住基台帳の管理 転入出・ 出生死亡 届出 職権処理 (実態調査など) 受付 住基 台帳 国調人口 4 2 全国地域別年齢別人口データ *全数調査 • 住基台帳人口:静態・動態(移動・出生・死亡) • 国勢調査:2000年調査では5年前の居住地 大都市以外の「日本人」は95年以降公表 • 人口動態統計 *大規模標本調査 ・住宅統計 ・就調 ・国民生活基礎調査 5 *特定属性の人口 • 病院調査 社会福祉施設調査 矯正施設 • 外国人登録 • ホームレス:03年、07年 全国約2000人のうち65歳以上324人、426人 *全数調査結果の組み合わせ: 人口推計(都道府県・市町村別) 6 住民登録制度と全国データの変遷 • 1952年~:住民登録法 転出届を提出して転入届を提出しない場合も • 1968年~:住民基本台帳法による集計 3月末 1979年~:動態(性別なし)も集計 4月~翌3月 (1985年4月 60.5%の市町村で電算利用) 1994年~:年齢別の登録者数も集計 3月末 2006年~:転出者のカウント方法の統一 転出予定日で(以前は届出日でも) 7 1990年代までの住基人口データ • 消除・記載の「その他」の内訳は不明。 • 特定の市・町に1年度だけの急な増減 報道など:電算化により表面化したミス • 可能性:県別「外国人登録」 変動は大きくない • 小規模な都市は電算利用・台帳電子化が遅い • ミスが1990年代後半まで残っていた可能性 8 住基人口の修正の報道など • 京都市 • 神戸市 1987年12月末 修正後 1,430,869人 △44,672人 1988年3月末 修正後 1,421,941人 △14,315人 • 室蘭市89年 △2,600人 網走市89年 +205人 • 小樽市89年△234人 岩見沢市 90年 △3,945人 • 江差町94年△63人 徳之島町94年△500人 登別市95年+79人 • 京都『朝日』 ほか1988年8月5日 神戸『日経』同年8月27日 • 北海道『道新』89年~95年 徳之島町『西日本』 94年8月31日 • 『統計書』瀬戸市 1968年実態調査の結果 3~4千人消除 • 下関市 1985年 571人 • 堺市 「住民基本台帳の集計処理が昭和58年12月末より手処理 から電算処理に切替えられたのに伴ない世帯数で約3,000世帯 (減)、人口で約2,800人(増)の差異を生じた。」 9 住基人口「消除・その他」の発生 *台帳事務の電算化により表面化:大きな修正が生じた例 • • • 40 30 京都市(消除) 1986年度303人→1987年度53134人→1988年度1535人 神戸市(消除) 1987年度1855人→1988年度23055人→1989年度1423人 堺市(記載) 1982年度589人→1983年度6202人→1984年度759人 万人 住民票消除のうち「その他」 20 10 0 「その他」には国籍離脱・実態調査等が含まれる。 10 40 35 万人 住民票「記載」のうち「その他」 30 25 20 15 10 5 0 住民票記載「その他」には、帰化・実態調査等が含まれる 11 報道分等以外の「その他」急増減 例 ・50%以上の変動 大都市・郊外:記載20件・消除40件 上記以外:消除10件・記載17件 ・消除:名古屋市南区 1980年27人→81年12742人→82年48人 ・消除:横浜市保土ヶ谷区 1983年18人→84年3364人→85年34人 ・記載:札幌市豊平区 1980年117人→81年723人→82年146人 12 100 90 80 70 60 50 40 30 住民記録での 電算処理 利用 市町村 率(%) 20 10 0 自治省ほか『地方自治コンピューター総覧』 13 70 電算処理 利用市町村率 (%) 60 50 40 30 20 10 0 10万人~ 5~10 4~5 3~4 2~3 人口規模 1982年 1~2 ~1 14 100 住民基本台帳の電子化率(%) 2007年 90 80 70 60 15 3 総務省・都道府県による公表 1)自治行政局:各市区町村から報告→ 毎年3月末時点の5歳階級別静態人口 年度単位の「年齢計」移動・死亡・出生 2)統計局:年齢別移動 2010年分から県・20大都市 ・推計人口=国調±移動-死亡:県まで 3)都道府県:域内市区町村分をそれぞれ独自の方式 住基人口のサイト収録:市町村支援部局 ・上記1)自治行政局サイトへのリンク・再録:大半 1)と別時点 月末:高知06年~ 年初:東京・埼玉 10月1日:奈良 16 4 市区町村による公表 • 自身が住基台帳を管理: 届出⇒登録⇒選挙人名簿・行政サービス • 複数時点分のサイト収録: 2011年3月現在449市区町 ・ほかに冊子体報告書で公表 • 最新分限定121→過去分削除 • それぞれ独自の方式 17 収録データの始期 450市区町 2010年 ~ 周期 その他 ~1999 年 年 月 年2回 2005~ 09年 2000~ 04年 3か月 18 65歳以上 年齢区分 その他 外国人 3種類 不明 10歳階級 2種類 5歳階級 合算 各歳 除外 19 4,000,000 市区町村境を越えると届け出た移動者 3,500,000 県内 県間 3,000,000 2,500,000 2,000,000 1,500,000 1,000,000 500,000 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 0 20 1.0 0.9 転出率 2010年 男性 % 0.8 0.7 0.6 65~69 70~74 75~79 80歳以上 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 全国 東京圏 名古屋圏 大阪圏 住民基本台帳移動統計 20大都市計 21 1.2 転出率 2010年 女性 % 1.0 0.8 0.6 65~69 70~74 75~79 80歳以上 0.4 0.2 0.0 全国 東京圏 名古屋圏 大阪圏 20大都市計 22 0.8 転入率 2010年 男性 % 0.7 0.6 0.5 65~69 70~74 75~79 80歳以上 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 全国 東京圏 名古屋圏 大阪圏 20大都市計 23 1.0 0.9 転入率 2010年 女性 % 0.8 0.7 65~69 70~74 75~79 80歳以上 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 全国 東京圏 名古屋圏 大阪圏 20大都市計 24 5 精度の検証1:個人の居住 1.2% 1.0% 裁判員候補通知郵送宛先不明 2010年11月12日発送分 12月7日期限 9月現在の 選挙人名簿の 住所宛 0.8% 0.6% 0.4% 0.2% 0.0% 地名は裁判所管轄地域 全国で約31.6万人へ発送 25 名簿情報の作成とチェック 戸籍簿 選挙人 住基 名簿 台帳 市区 町村 受付 14日 /7日 以内 届出 転入・出生 /死亡 抽出 郵送/訪問 〒転居届→1年間転送 26 全国 面接 抽出総数 対 4 % 5 住所不明 転居 % 住所不明 転居 3 4 2 3 2 1 1 0 0 有坂(2010)「面接調査の 訪問状況記録の検証」 住基台帳から抽出 27 6% 1年以内の転入率 全国 就調 男 4% 女 2% 0% 住基台帳 年齢計 9% 8% 7% 6% 5% 4% 3% 2% 1% 0% 15歳以上計 65~69 70~74 75~79 80~84 85歳以上 15歳未満の親の年齢層は全体の水準に近い 1年以内の転入率 東京都 07年 男 住基台帳 年齢計 15歳以上計 65~69 70~74 女 75歳以上 28 「所在不明高齢者問題」 発端 2010年7月29日、東京都足立区に住む 1899年生の「111歳男性」が白骨化して発見 • 8月31日 総務省 知事宛 住基台帳の正確性 • 9月14日 厚生労働省: 住基台帳の100歳以上の9月1日登録:44449人 • 調査結果とその対応 例 11月 神戸市 150人削除 京都市 19人削除 29 法務省の戸籍調査結果 • 対象:2010年3月現在 約5257万戸籍 電算化された戸籍+未電算化分の一部 上記の約90%を調査 ・100歳以上で「戸籍の附表」に住所不記載 23万4354人 ・うち120歳以上 77118人 150歳以上 884人 ・原因:死亡届が未提出 (戦災・海外で死亡) 30 6 精度の検証2: 集計量として 1)比較対象の国調結果のチェック 35 30 25 % 05年国調 未提出率:大都市で高い 未提出⇒性別だけ聞き取り⇒個別項目の未記入 20 15 10 5 0 読売新聞・(統計局) 31 16 % 14 12 10 「年齢不詳」率 2005年国調 ≒近隣からの聞き取り 全国は0.38% 8 6 4 2 0 32 % 2000年国調と事後調査の照合 複数箇所で確認 一般調査区 記入不備のため照合不能 寮・寄宿舎地区 確認されなかった 社会施設・病院地区 川崎ほか(2003) 33 2 % 1.8 2000年国調 と事後調査の照合 確認されなかった 複数箇所で確認された 照合不能 1.6 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 34 -0.5% 75歳以上 70 ~ 74 65 ~ 69 60 ~ 64 55 ~ 59 50 ~ 54 45 ~ 49 40 ~ 44 35 ~ 39 30 ~ 34 25 ~ 29 20 ~ 24 15 ~ 19 10 ~ 14 5~9 0 ~ 4歳 1.0% 2000年国調―1995年国調に基づく推計人口 男 女 0.5% 0.0% -1.0% 35 2% 2005年国調―2000年国調に基づく推計人口 1% 0% -1% -2% 男性 女性 -3% マイナスは前回より把握度が低下 -4% 36
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