N人関係のデータ構造と家族関係の分析 藤澤 等(県立長崎シーボルト大学) 問題の所在 ○ ソシオン理論では集団をどう取り扱うのか 集団は実在するのか・集団は個人の認知カテゴリーなのか それとも、実存なのか ○ 集団と個人をどのように組み込むのか N人関係のデータ構造は個人空間が積層されたものであり 三次元非対称複素空間をどう処理するのか ○ なぜ「家族」を実証研究の対象とするのか ピアグループと家族集団の違いはなにか 家族集団の重層性と明晰性 ○ 問題とするところは何なのか 集団のダイナミックスは何から生じるのか ミクロ-マクロ問題への回答とは 個人空間(Personal mode)の組成 自己 A 他 者 他者 A n 対人的態度 被 対 人 的 態 度 もの・こと 態度 関係の推測 他 者 の 他者の態度の推測 自 己 関係の推測 n 集 団 ・ 神 k 圧 力 ・ お 告 げ 規範・規則 世論・制度 m データ構造は3次元以上になる 個人空間 認識した成員 認 識 さ れ た 成 員 非対称 個人の眼 個人からみた集団 のフェーズ 集団空間 成員 成 員 対称 神(研究者)の眼 集団のフェーズ(ACTIVE) 認識した成員 認 識 さ れ た 成 員 非対称 個人の眼の集合 P CA なぜ家族集団なのか ○ 家族は確定集団(成員の入退会がない) ○ 家族成員はそれぞれの役割を付与されている ○ 制度的家族と実践的家族とは異なることがある 家族全体集団や成員内に不整合が生じやすい 家族関係の構造 ○家族の成員のそれぞれが異なる個人空間を 持っている。 父空間 父親 母親 母空間 家族空間 息子 娘 息子空間 娘空間 家族関係の調査方法 息子 父 母 娘 母 ○○は××が△△を・・・と思っている S O C 父 父 学生の家族 (3人家族29 4人家族127 5人家族45) 互いの守秘義務を教示→別々に回答を郵送 例 4人家族 4(父母娘息子)×4 (父母娘息子)×10項目×127家族 母 娘 息子 因子分析結果 項目 v1 家事をしてやっている - 家事をさせている v2 親らしく振舞っている - 子供らしく振舞っている v3 思いやっている - 気にかけていない v4 女らしく振舞っている - 男らしく振舞っている v5 養っている - 養われている v6 いたわっている - ないがしろにしている v7 細かい気遣いをしている - おう揚にかまえている v8 包み込んでいる - 包み込まれている v9 嫌がっている - 可愛がっている v10 居心地を良くしている - 居心地を悪くしている 平均値 標準偏差 Ⅰ 3.860 1.291 0.044 3.686 1.356 0.124 3.029 1.154 0.818 4.095 1.344 0.124 3.905 1.555 0.070 3.127 1.125 0.846 3.362 1.261 0.730 3.666 1.191 0.353 4.690 1.127 -0.746 3.330 1.153 0.753 娘 息子 因子 Ⅱ 0.253 0.830 0.181 -0.205 0.866 0.169 0.107 0.697 -0.206 0.026 Ⅲ 0.795 0.061 0.083 0.794 -0.062 0.085 0.271 0.063 0.133 0.064 共通性 0.698 0.707 0.709 0.687 0.758 0.751 0.618 0.614 0.616 0.572 Ⅰ 思いやり因子 Ⅱ 親子因子 Ⅲ 性因子 家族全体空間と家族成員空間は違う <個人に聞いても全体は分からない> CA内の不整合とP 内の不整合 家族成員ごとの安定性 家族全体と成員個人の整合性 0.6 2 0.5 1.5 CA PP 0.3 0.2 安定性 非整合性 0.4 父親 1 母親 0.5 息子 娘 0 3 0.1 4 5 -0.5 0 3 4 成員数 5 各成員内の不整合より全体の不整合のほうが大きい -1 成員数 全体から見た各成員の不整合度 三次元データ分析法 ○指標を計 算する方法 目的とする指標を 計算する方法 ○拡大マトリック ス(C tech.)による 推定法 上三角行列を下三角 行列にコピーして分析 ○類似Qテクニックに ○共分散分析のモデル よる展開法 構築による方法 三次元データを二次元 に展開して分析 三次元データを一次元 に展開して分析 D= (Xij-Xji)2 など 複素軸 ○二層三元複素空間として 直接的に分析する方法 実数軸 計数化による分析 ○個人内不整合:各個人が認知しているActive-Passive間の距離 所属集団の各成員への自律的評価(思っている)と 他律的評価(思われている)との食い違い ○P-CA間不整合:個人の認知空間と集団Active空間との距離 各成員の認識空間と集団の自律的認識空間(行動)との食い違い ○P-CP間不整合:個人の認知空間と集団Passive空間との距離 各成員の認識空間と集団の他律的認識空間(予想)との食い違い P-CP 間 距 離 父親 娘 P 内 A-P 間距離 息子 母親 P-CA 間距離 *母親の認識が家族全体に最も近い *父親が思うようには家族はしていない *娘は自分が思っているように他成員も 思っていると思っている *息子が思っているようには家族はして いないし、思っているように思われていない と思っている 集団のフェーズ・個人のフェーズ 個人からみた集団 のフェーズ P1~n 集団的自己のフェーズ CSelf 集団からみた個人 のフェーズ(ACTIVE) PA1~n 集団のフェーズ(ACTIVE) CA 集団からみた個人 のフェーズ(PASSIVE) PP1~n 集団のフェーズ(PASSIVE) CP ○ CAの上三角行列はLewin流行動主義であり、P1~nの上三角行列はSoc.Categ.流の認識空間。 ○ PA/PP/CP/Cself は、これまで研究されてこなかった。 ○ 非対称行列は複素空間になる可能性があるため、これまで研究されてこなかった。 ○ 個人のフェーズと集団のフェーズとの間の関係が、これまで研究されてこなかった。 集団のダイナミックスはどこから生まれるか ○ もし、認知的経済原理が働くなら、それは個人空間なのか集団空間なのか それとも、両方なのか? ○ 個人空間と集団空間のギャップは誰が認識できるのか? ○ 説得・自己呈示(態度変容)などが個人空間の整合化なら 均衡化・平等化・同調などは集団空間の整合化なのか? ○ そもそもグループ・ダイナミックスは個人空間内でおこることなのか 集団空間内でおこることなのか? ○ ミクロ-マクロ問題とはどのようなことを問題とするのか?
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