10・文化の継承とおせち

10・文化の継承とおせち
2012.11.30. 青山・文化人類学II/B
10・文化の継承とおせち
2012/11/30 - [2]
[前期6/1]文化・人間・社会

社会のなかで既に共有されている「文化」を、生まれた
ての赤ん坊=人間は「学習」していく
社会

文化
人間
一方で、「文化」を身につけた人間は、自分の中で新た
なものを創りだし、それを社会に還元し「新たな文化が
共有」されていく
社会
文化
人間
10・文化の継承とおせち
2012/11/30 - [3]
[前期5/25]文化と学習(1)
社会
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さまざまな
文化要素
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個人
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[前期5/25]文化と学習(2)
社会
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学習
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個人
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[前期5/25]文化と創造
社会
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創造 ♥?
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個人
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[前期5/25]文化と共有
社会
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10・文化の継承とおせち
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[前期5/25]文化・社会・個人
社会
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10・文化の継承とおせち
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おせちを文化の継承の観点からみる(1)
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昔の人(江戸時代?)は、少しずつ「おせち料理」を工
夫しながら創造していった
社会には、一定の「おせち料理」の文化が広まり、共有
された
家庭内でも、親から子へ、姑から嫁へと、「おせち料
理」文化は継承された
この状態が単純に続いていくならば、少しずつおせち料
理のバリエーションが広がることこそあれ、おせち文化
がなくなったり、がらっと変わったりすることはないは
ず
しかし現実には「伝統的な」おせち文化は次第に消滅し
つつあるのはなぜか?
10・文化の継承とおせち
2012/11/30 - [9]
おせちを文化の継承の観点からみる(2)

ひとつの原因は1950-60年代の「自給自足から大量消費
へ」という社会変化

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1960年代末以降、まず「材料」から、そして次第にひと
つひとつの「メニュー」が、さらには「おせち全体」が
〈購入するもの〉になった


おせちを作るには「材料」が要る
「材料」を【自給自足=主/購入=従】で調達するかぎり、おせ
ちに大きな変化は起こりにくい(cf. 水窪の「おひら」)
例)昔は「黒豆」は材料の豆から自分で作っていたはずだが、次
第に「豆」を買うようになり、次に「出来合いのパックに入った
黒豆」を買うようになり、しまいには「黒豆も入ったおせちセッ
ト」を買うようになった
文化を「自家内でコントロールする」状態から「外部に
コントロールされる」状態へ

自分の家の「伝統的なおせち」は破壊されることになる
10・文化の継承とおせち
2012/11/30 - [10]
食をめぐるハードウェア:おせち
1.
調理器具

2.
加熱器具

3.
庖丁、まな板、お玉、杓子、しゃもじ、フライ返しなど。広くとらえ
れば、冷蔵庫や水道の蛇口といったものまで含まれる
食器

5.
いろり、かまど、七輪、ガスコンロ、オーブン、電子レンジ、炊飯器、
電磁調理器など
調理補助具

4.
釜、鍋、フライパン、やかんなど、料理・加工(特に加熱)をする際
に容物となるようなもの。現代では2と重なるものも多い。
椀、皿、はし、スプーン、フォーク、ナイフなど
食材

自給自足・自家製のもの、購入してきたもの(原料/半完成品/完成
品)
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2012/11/30 - [11]
食をめぐるソフトウェア:おせち
6.
調理技術

7.
調味技術

8.
6と重なる点が多く、また5との連関も見逃せないが、ともかく人の舌
をどのように使うか、が基本
メニュー

9.
どのように食品をさばいたり、切り刻んだり、あるいは煮たり焼いた
り揚げたりするか。広くとらえれば、保存技術なども含められる。い
ずれにせよ人の手をどのように使うか、が基本
食材を加工して食卓に出す終着点をどうするか。広くとらえれば盛り
つけやとりわけなども含まれる
慣習・嗜好

○○は食べてよい・食べてはいけない(食べるものではない)といっ
た食にかかわるルールや、食制(何時に何を食べるか)といった、食
にまつわる周辺文化。わかりやすい例でいえば、明治以前牛肉は食べ
るものではなかったが、文明開化で食べるようになった、など
10・文化の継承とおせち
2012/11/30 - [12]
文化の継承とおせち
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大きくくくれば「生活スタイルの変化」によって、おせ
ち文化は激変し、「何も継承されなくなった」

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農業を放棄したことにより、「黒豆は、まめに働けますように
(だじゃれ)」「田作りは、田んぼの豊作を願って(昔は鰯粕は
田の肥料に用いられた)」という願い自体に意味がなくなった
贅沢品であったはずの「購入品」があたりまえのものとなった=
おせちは別に贅沢なごちそうではなくなった
「食べたいと楽しみにする気持ち」「食べないと一年が始まらな
いという気持ち」が薄れることによって、おせちは「別に食べな
くてもよい」ものになった
(1)「昔のように」ちゃんとしたおせちをネットの情報も
活用して継承すべきなのか、それとも(2)変わるに任せて
ローストビーフをおせちに混ぜつつ継承すべきなのか、
それとも(3)継承すること自体やめてしまってよいのか