第3章 参考資料 平成26年度 東京工業大学 大学院基礎物理学専攻 宇宙物理学(前半) 松原英雄(ISAS、JAXA) 太陽系の元素組成 • 太陽光球のスペクトル、太陽風、(始源的な)隕石の化学 分析より Data from: Katharina Lodders (2003). "SOLAR SYSTEM ABUNDANCES AND CONDENSATION TEMPERATURES R2-p2 OF THE ELEMENTS". The Astrophysical Journal 591: 1220–1247. 中性水素(HI)ガス • 銀河系円盤の主要部分を占めるHIガス雲の分 布は、水素原子自身の放つ波長21cmの電波輝 線の観測によって調べられました。 • HI 21cm線の起源: – 陽子と電子のスピンの向きが並行か、 反並行か、でほんのわずかに束縛エネ ルギーに差が出ます(反並行の方がエ ネルギーが低い) – HIガスの柱密度[ 1cm2あたりの水素原子の数] がHI 21cm 線の観測で得られる輝度温度TBから求められます: v2 32n 02 k v2 18 [cm-2] (3.1) N ( HI ) T d v 1 . 823 10 T d v B v1 B 3c3hAul v1 – TB=TStn , TS (スピン温度)はほぼガスの温度と一致、場所に依らず一 定とした。 – l tn n ds 0 :光学的厚み 我々の銀河系のHIガスの分布 • 銀河円盤の回転 則を使って各速度 成分の太陽から の距離を割り出し、 2次元的な分布図 を作ることができ ます。 分子雲 • 低温高密度の星間ガスは分 子状態。 • 水素分子は電気双極子モー メントをもたないので、電磁波 を出しにくい。 • 一方一酸化炭素分子は、大 きな電気双極子モーメントを 持つ直線状分子。 • 回転エネルギー準位: EJ hBJ( J 1) • 従ってJ+1 Jへの遷移に 伴って n (E J 1 J J 1 EJ ) / h B( J 1)(J 2) BJ ( J 1) 2 B( J 1) 小暮智一「星間物理学」(ごとう書房) HII領域 • 若い大質量星(や白 色矮星)の紫外線に よって、水素原子が 電離したような領域。 • ガスの加熱は、電離 した光電子の余剰運 動エネルギー。一方、 冷却は、金属イオン からの禁制線(光学 的に薄いのでガスを 効率的に冷やすこと ができます)。 禁制線の例 Spinoglio and Malkan 1992 代表的な赤外禁制線 line λ rest (μm) Probes of HI Brα 4.05 metallicity (H) / extinction HI Pfα 7.46 metallicity (H) / extinction ArII 7.0 excitation ArIII 9.0, 21.8 excitation NeII 12.8 SFR / excitation / metallicity NeIII 15.6, 36.0 SFR / excitation / metallicity NeV 14.3, 24.3 AGN indicator SIV 10.5 Excitation SIII 18.7, 34 Excitation SiII 34.8 PDR OIV 25.9 AGN indicator OIII 51.8, 88.3 Density / metallicity OI 63.1, 145 PDR NII 122, 205 Metallicity NIII 57.3 Metallicity CI 370 Molecular gas CII 158 PDR HII領域における加熱・冷却率 小暮智一「星間物理 学」(ごとう書房) OrionNebula オリオン分子雲 左: 近赤外線(2MASS),生まれた星の分布、HII領域 右: 野辺山45m電波望遠鏡によって取得された一酸化炭素分子のイメージ。 (国立天文台) 光解離領域 Photodissociation Region 電離源 Orion Bar 赤:CO J=1-0 黄:H2 1-0 S(1) 青: 3.3um PAH 星間塵による減光と放射 (紫外~赤外) 固体の星間物質(質量で1~2%) 星間ガスに比べて光の吸収・放射が非常に強い 減光 = 吸収 + 散乱 星間塵の元素組成 D log(星間ガス中の元素量 / 太陽組成) 酸素・炭素・マグネシウム・シリコン・鉄 などが主成分 結晶質シリケイト すばる/COMICS Honda et al. 2003 R2-p18 原始星周辺の塵に見られる様々な氷 の吸収スペクトル Whittet et al. (1996) A&A R2-p19 星間減光 D F=L / (4 D2) m=M+5log(D/10pc) D F=L exp(-t)/ (4D2) m=M+5log(D/10pc)+A t A=2.5(loge) t =1.086 t A=星間減光(Interstellar Extinction)と呼ばれ、星間空間中の微小な 固体微粒子が原因と考えられている。 「天体輻射論I/恒星物理学特論IV」 東京大学(学部/大学院) 中田好一先生講義資料 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html 星間減光曲線 Log(Av/Aλ) 「天体輻射論I/恒星物理学特論IV」 東京大学(学部/大学院) 中田好一先生講義資料 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html 星間吸収曲線 0 -1 -2 -3 -1 0 1 log(λ) 2 Extinction Curves(減光曲線) LMC MW SMC Dot-dashed: graphite Dotted: silicate Dashed: PAH Solid: total extinction 縦軸:λσH 水素原子一個あたり換算の 星間塵による減光断面積× 波長 Takagi et al.(2003) UV-optical extinction curve Calzetti et al. 1994 減光係数の計算例(Mie散乱・吸 収) 非常に小さい塵からの赤外線放射 宇宙塵が小さくなればなるほど,その熱容量は小さくなる。 (半径0.001mの塵は 熱容量CH=0.01 [eV/K]くらい。) 一方星間空間の光子のエネルギー(E=hn)は1~10eV(=1.2~0.12m)。 このため一個の光子が吸収されると塵の温度は非常に上がる! 半径0.001mの塵の場合hn=10eVに対して T= hn/CH=10/0.01=1000 [K] !! 半径0.03m以下の塵についてはこの効果が顕著に見られる。 一個の光子のエネルギー 温度 大きな塵の熱容量 小さな塵の熱容量 R2-p25 スターバースト銀河の 中間赤外スペクトル フ ラ ッ ク ス の 対 数 ISOの15μmバンド ISOの7μmバンド PAH (?) バンド ホットダスト (~200K) 5 10 15 20 波長〔ミクロン〕 R2-p26 多環芳香族炭化水素 (polycyclic aromatic hydrocarbons, PAH) ベンゼン環 • 中間赤外線スペクトル でしかはっきりと同定で きない星間塵種族 Draine & Li 2006 銀河系の星間塵からの放射スペクトル 中性水素ガスの分布と良 く相関している。 Dot-dashed: graphite Dotted: silicate Dashed: PAH Solid: total (Dwek et al.1997 & Takagi et al.2003) R2-p28
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