DSGEモデルの作成と利用 (基礎編)

DSGEモデルの作成と利用
(基礎編)
二松学舎大学 田端 克至
ポスト・ケインズ派経済学研究会 Summer Seminar
2009年8月1日(於;二松学舎大学)
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DSGEの基本アプローチ
1.モデルの設定
2.対数線形化
3.Blanchard-Kahn法
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モデルの作成(1)

1
t
c
U (ct , Lt )   
 Lt
t 1 
s.t.
t
kt 1  kt  Yt  ct   kt
where
Yt  zt kt L1
kt 1  (1   )kt  I t
C 消費 L労働 k資本 Y 所得 I 投資
Η 危険回避度 σ 償却率 θ資本/労働比率
3
モデルの作成(2)
技術の定式化
ln zt 1   ln zt   t 1
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モデルの作成(3)
H (ct , kt , t , Lt ; Yt ) 
1 1
ct  Lt  t  z t kt L1t   ct   kt 
1 
H
 0 : ct  t  0
ct
H
 0 : 1   (1   )t Lt   0
Lt

H
 t 1  t : t 1  t   z t kt -1 L1t t+t
kt
H
 ( t 1 )t
 kt 1  kt : Yt  ct   kt  kt 1  kt
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モデルの作成(4)
モデルの変数と式の本数を確認
Control variables;C、L
State variables;k
Co State variables;λ
Jump variable; z
その他;Y
6本の式が必要
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対数線形化への変換(1)
 xt 
exp log  
 Xt 
 x
Xt  X 
X

 X 
な ぜな ら 、exp y  x⇔l og x  y を 利用する 。
x
exp log  t
 x

 xt
=z
な
ら
l
og

 x


x
すな わち z= t
x
と こ ろ で、

 =l og( z)

X 
log  t   Xˆ tと 置く 。
 X 
X を Xˆ =0の回り でテ ーラ ー展開する と
t
t
X exp( Xˆ t )  Xe0  Xe0 Xˆ t  X (1  Xˆ t )
X t=X (1  Xˆ t )
と こ ろ で Xˆ tの意味は
X ―X
Xˆ t= t
X
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対数線形化への変換(2)
対数線形化の例
( 1 +Xˆ ) X =( 1 +Yˆ ) Y
X =Y から
Xˆ =Yˆ
Y  Z
(1  Yˆ )Y   (1  Zˆ ) ZZ  1

Y  Z より
1  Yˆ=(
 1 +Zˆ )
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対数線形化への変換(3)
f ( x)の xでのテーラ ー展開
f ( x ) f ( x) +f ( x) ( x-x)
そこ で、 f ( x) =g( x) について対数線形化を 考え る 。
f ( x) +f ( x) ( x- x) =g( x) +g ( x) ( x-x)
f ( x) f ( x)( x- x)
g( x) g ( x)( x- x)

x=

x
f ( x) f ( x) x
g( x) g( x) x
ˆ
xの定義よ
り
ˆ ( x) xxˆ
f ( x) xx=g
実際には、この赤い所だけ覚えていればよい。
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対数線形化への変換(4)
ˆt   cˆt
Y  ˆ ˆ
ˆ
t +1  t   
 Yt  kt
k 
 Lˆ  ˆ

ˆ

t
t
kkˆt 1  (1   )kkˆt  YYˆt  ccˆt
Yˆ  zˆ   kˆ  1    Lˆ
t
t
t
t
ただし z =1 と する
zˆt  zˆt 1   t 1
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均衡解の導出
c     0
     zk -1 +    1   (Y / k )+
Y  c  k  k  k  0
Y  zk 
I  k  (1   )k   k
Dynareは計算してくれますが
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Dynareへのモデルの移植(1)
http://www.cepremap.cnrs.fr/dynare/
からダウンロードできる。無料ソフト。
(1)MATLAB,GAUSS、OCTABEなどで動
く。(Octave上ではVersion4で動くが、まだ
バグが多い。
(2) MATLAB上で動かすのが一番簡単。
その際は、とりあえず、VERSION3をダウ
ンロードする。
(3)簡単に動かすことができる。言語知識
ゼロで大丈夫
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Dynare のHP ダウンロードをクリックして下さい。
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MATLABのインストール手順
①まず、MATLAB用のzipフォルダをデスクトップにダウンロードし、そこで解凍します。
②解凍したフォルダを右クリックしてコピーしておき、MATLABをひらきます。
ここからPATHの通し方
ファイル(f)をクリックして、さらにパスの設定(H)をクリック。先ほどダウンロードしたMTALABのファイルにパスを
通す。
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うまくインストールされたかどうかのチェック
(1)MATLAB上でDynareのEXAPLEの入ってい
るファイルに移行して下さい(上)。私の場合、
c:\dynare_v3\modelsになります。
(2)そうすると、Current Directory(左上)の所の
表示がその中身を示してくれます。
(3)でわ、Alt_Ex1.modを実行してみます。
Dynare Alt_Ex1
と書いて、リターンキーを押して下さい。
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Dynareへのモデルの移植(2)
• 対数線形化への変換(4)で示したモデル
を、Dynareに書き込む。
• NOTE PADやMATLAB上でファイル(F)か
らM ファイルの新規作成を開き、作成。拡
張子modでMATLABのPATHが通っている
ファイルに保存する。この例の場合、
• dynare_v3\modelsに保存。
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モデルのdynareへの移植(3)
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変数の指定(赤色枠)
var y, c, k,
変数の指定
z, rambda,L;
varexo e ;
イノベーション変数の指定
parameters beta, seta, eta, yy, kk, cc,
sigma,ganma ;
パラメータの指定
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パラメータの指定(青色枠)
beta = 0.9;
seta = 0.4;
eta = 0.5;
sigma = 0.1;
yy = 1;
cc = 0.5;
kk =(yy-cc)/sigma;
ganma = 0.9;
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モデルを書く(緑の枠)
model;
rambda = -eta*c;
rambda(1)-rambda = seta*(yy/kk)*(y-k);
seta*L=rambda;
kk*k = (1-sigma)*kk*k(-1) +yy*ycc*c;
y = z+seta*k+(1-seta)*L;
z = ganma*z(-1) +e;
end;
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モデルのdynareへの移植(3)
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モデルを書く(初期値の設定)
initval;
y = 0;
c = 0;
L = 0;
k = 0;
z = 0;
rambda = 0;
e = 0;
end;
自動計算でdynareに計算させることもできる。
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イノベーションの設定
shocks;
var e; stderr 0.009;
end;
ここでは標準偏差を0.009としている。
イノベーションが二つ以上ある場合、
共分散を指定することもできる。
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モデルのシュミレーション
stoch_simul(periods=2100);
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モデルを動かしてみると(1)
26
モデルを動かしてみると
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どのようなインプリケーションを引き出せるか(1)
技術進歩が所得に与えるインパルス
0.012
0.01
0.008
資本/労働比率(θ)=0.5
0.006
0.004
系列1
系列2
資本/労働比率(θ)=0.2
0.002
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
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どのようなインプリケーションを引き出せるか
技術進歩が雇用に与えるインパルス
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
-0.001
-0.002
系列1
θ=0.2
系列2
-0.003
-0.004
θ=0.5
-0.005
-0.006
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Blanchard-Kahn法
エッセンス1
経済変数はForwardとBackwardに分けられる。
エッセンス2
状態変数、制御変数があるが、状態変数によって、制御変
数が規定される。したがって、制御変数で、経済システムを
表現することができる。
この様な発想で、モデルの最適化を計算。
(注意)BK法以外の方法でもカリブレーションの計算はでき
る。
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カリブレーションの課題
• Deep パラメータの設定
コンセンサスとなっているパラメータを利用
する。
⇒ アジアなどの場合、そもそもDeepパラメー
タのコンセンサスがない。
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カリブレーションの課題
(1)モデルの結果が、実際とどの程度合致す
るのか。これをチェックするのが難しい。⇔
モーメントのチェック
具体的でイメージしやすいと統計量が開発さ
れていない。
(2)実際とどの程度合致するかという場合の
ベンチマークとなる実際のデータに何を使うの
か。HPデータ、BPデータ、レベルなど、考え方
次第でいくつも考えられる。
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ベイズ的手法を用いたカリブレーション
Priors from General Equilibrium
Models for VARS
Narco Del Negro and Frank
Schorfheide
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ADVANCEなトピック
Prior パラメータの平均値、分布などを事
前に設定
⇒
実際のデータを新しい情報として利用し、ベ
イズの手法を用いて事後分布とposterior事
後のパラメータを計算
⇒
政策の変化などによっても、分布は変化す
る。政策評価を行う上で、有効な手法とな
る。
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ベイズの手法を用いたカリブレーション
かなりレベルが高く、専門的にこの
分野を研究する人でないとあまり必
要ない。皆さんに希望があれば、次
のチャンスにお話します。
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本日の内容は、以下の田端の
HPからダウンロードできます。
http://homepage3.nifty.com/ykteconpr/
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