マクロ経済と国際収支2 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月13日 3インフレーション 先生が小学校の時の遠足のおやつは100 円でした.皆さんの予算は幾ら? インフレーション Inflation 複数の財の全般的な上昇 デフレーション-反対に諸価格の全般的な 下落,deflation 国際経済の基礎11 2 3.1インフレーションの測定 価格の全般的な上昇をインフレーションという 全ての財の価格が5%上昇すれば無問題 今川焼き価格が5%,カラムーチョが10%上 昇した場合にインフレ率はいくら? 複数の財の価格の上昇率の平均を取るのが 物価指数 鉛筆価格の上昇より住宅価格の上昇がより重 要,財によってウエートを付ける 国際経済の基礎11 3 物価指数 標準的な財の組合せを考える それをバスケットと呼ぶ 例:今川焼き10個,カラムーチョ2袋,「ミクロ 経済学」1冊, 1995年にバスケットの中身の財を買うのに2 万円したとする,しかし1996年には2万2千円 したとする 国際経済の基礎11 4 物価指数/2 その時 (22000-20000)/20000=0.1 つまり物価は10%上昇したことになる これが物価指数の考え方 普通は基準となる年を固定する 基準年の物価指数を100とおく 国際経済の基礎11 5 物価指数/3 1996年の物価指数 =1996年の支出額/基準年の支出額×100 =22000/20000×100 =1.1×100=110 1996年の物価指数は110という 国際経済の基礎11 6 消費者物価指数 消費者物価指数~家計にとって重要な物価 の動向を見るために平均的な家計が購入す る財の組合せ スタグフレーション~不況下のインフレーショ ン 国際経済の基礎11 7 実質GDP GDPデフレータ~GDPの物価指数 物価が上がって見せかけのGDPが上昇してし まう場合.これは困る! 今川焼きやカラムーチョが同じだけ生産されて も物価が2倍ならばGDPも2倍 物価調整のないGDPを名目GDPという 一方,実質GDPとはインフレを調整した実質 的な生産量を測るGDPである 国際経済の基礎11 8 実質GDP/2 名目GDPが2%上昇しても,物価が2%上昇 していれば実質GDPは同じ アイディアは物価で割る. 支出=価格×数量 数量を求めたい 実質GDP=名目GDP/物価水準 ここで物価水準はGDPデフレータ 以前見せた次のグラフは実質GDP 国際経済の基礎11 9 GDP暦年デフレータ 106 104 102 100 98 96 94 92 90 88 86 . . . . . . . . . . . . . 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 -1 1-1 1-1 1-1 1-1 1-1 1-1 1-1 1-1 1-1 1-1 1-1 1-1 1 / 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 0/ 1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 4 9 99 99 99 99 99 00 00 00 00 00 00 00 9 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 国際経済の基礎11 10 19 94 19 / 195 3 19 / 1- . 96 3 19 / 1- . 97 3 19 / 1- . 98 3 . 19 / 199 3 . 20 / 100 3 20 / 1- . 01 3 20 / 1- . 02 3 . 20 / 103 3 . 20 / 104 3 20 / 1- . 05 3 20 / 1- . 06 3 20 / 1- . 07 3 / . 13. 日本の名目GDP(10億円) 520,000.00 510,000.00 500,000.00 490,000.00 480,000.00 470,000.00 460,000.00 国際経済の基礎11 11 19 94 19 / 1 95 - 3 19 / 1 . 96 - 3 19 / 1 . 97 - 3 19 / 1- . 98 3 19 / 1 . 99 - 3 20 / 1 . 00 - 3 20 / 1 . 01 - 3 20 / 1 . 02 - 3 20 / 1 . 03 - 3 20 / 1- . 04 3 20 / 1 . 05 - 3 20 / 1 . 06 - 3 20 / 1 . 07 - 3 / . 13. 日本の実質GDP(10億円) 580,000.00 560,000.00 540,000.00 520,000.00 500,000.00 480,000.00 460,000.00 440,000.00 420,000.00 国際経済の基礎11 12 1人当たりの実質GDP 2000年を100として2006年は92.6になってい る. 今はデフレになっている 国の豊かさ(生産力)は1人当たりの実質GDP で測る 1人当たりの実質GDP=実質GDP/人口 国際経済の基礎11 13 国内総生産(名目GDP,米ドル表示,1人当たり) ノル ウ ェ ー ツ ドイ ー ク デ ン マ ス ス イ ラ ン ダ オ ス ギ リ イ ア メリ カ 合 日 本 衆 国 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 国際経済の基礎11 14 1人当たりの実質GDP 小国ほど高い値 日本は農業やサービス業に大きな非効率部 門を抱える 国際経済の基礎11 15 日米英の1人当たりGDP 45000 40000 cgdp(JPN) 35000 cgdp(USA) cgdp(GBR) 30000 25000 20000 15000 10000 5000 19 50 19 53 19 56 19 59 19 62 19 65 19 68 19 71 19 74 19 77 19 80 19 83 19 86 19 89 19 92 19 95 19 98 20 01 20 04 0 国際経済の基礎11 16 日韓中の1人当たりGDP 30000 25000 cgdp(JPN) cgdp(korea) cgdp(china) 20000 15000 10000 5000 1971 1974 1977 1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 1956 1959 1962 1965 1968 1953 0 国際経済の基礎11 17 1人当たりGDPの国際比較 アメリカは以前豊か 日本はイギリスに近年抜かされた 日本,韓国,中国は1950年代は同様に低い しかし,日本が大幅な上昇 近年韓国が追い上げるがまだまだ日本が上 国際経済の基礎11 18 民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 三面等価 生産=支出=所得 貯蓄~所得の中で消費しないで残った額 貯蓄はお金が余っていることを意味 赤字は収入よりも支出が多い. つまりお金が不足 国際経済の基礎11 19 民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 1. 2. 3. 3部門:以下の三者の関係を考える. 民間部門(消費者・企業) 政府 外国 日本で販売される生産物= 日本の生産 +外国の生産(輸入) 国際経済の基礎11 20 国内支出 アブソープション(absorption,吸収)とは民間 部門(個人と企業)と政府の支出の合計 アブソープション=消費+投資+政府支出 Aで略す A=C+I+G 国際経済の基礎11 21 支出=生産 支出=A+X 生産=Y+M 支出=生産より A+X=Y+M Y-A=X-M 国内支出を超過した国内生産が貿易黒字に 等しい 貿易赤字ならば国内生産以上に消費や投資 をしている 国際経済の基礎11 22 所得=支出 個々の経済主体では所得を全て使い切ると は限らない けれども経済全体では一致している 民間部門の所得は消費に貯蓄(saving)を加 えたものに等しい. 貯蓄をSで略す 民間部門の所得:C+S 民間部門の支出:C+I 国際経済の基礎11 23 所得=支出 政府部門の所得:T 政府部門の支出:G 外国部門の所得:M (輸入代金) 外国部門の支出:X (輸出代金) 全ての主体で所得イコール支出で式にすると C+S+T+M=C+I+G+X 国際経済の基礎11 24 民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 両辺でCが消える Iを左辺へ,T,Mを右辺へ S-I=(G-T)+(X-M) 民間純貯蓄=政府赤字+貿易黒字 政府と外国の資金不足を日本の企業と消費 者が解消している この関係式は重要です 国際経済の基礎11 25 三面等価 三面等価によって次が成り立ちます 収入=支出 前のページ2式をイコールで結び移行すること によって,次の式が成り立ちます 日本人の収入-日本人の支出 =政府の支出-政府の収入+ 外国人の支出(輸出)-外国人の生産(輸入) 国際経済の基礎11 26 民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 民間純貯蓄= 日本人の収入-日本人の支出 政府赤字= 政府の支出-政府の収入 貿易黒字= 外国人の支出(輸出)-外国人の生産(輸入) 国際経済の基礎11 27 民間純貯蓄,政府赤字,経常収支のあらまし 60 50 40 30 20 10 0 -10 民間純貯蓄 政府黒字 経常収支 -20 -30 -40 国際経済の基礎11 28 民間の純貯蓄 日本の民間の純貯蓄が経常収支黒字を補っ ている 加えて政府赤字を支えている 国際経済の基礎11 29 海外投資 民間貯蓄は民間部門,政府赤字,海外部門 の投資に用いられます. 海外部門の投資はトヨタがアメリカに工場を 建設すること 海外投資(foreign investment) これを If で略します. S=I+(GーT)+ If 国際経済の基礎11 30 海外投資 S=I+(G-T)+ If をS-I=(G-T)+(X-M)に代入 If =X-M つまり海外投資は貿易黒字に等しい 財を輸出していることは外国へ資金を貸し出 しているあるいは投資をしていることなのです 国際経済の基礎11 31 復習 マクロ経済学は経済全体の動きを分析する その目的:高い経済成長,低い失業率,低い インフレ率 国内総生産 GDP Gross domestic product 国際経済の基礎11 32 復習 価格の全般的な上昇をインフレーションという 複数の財の価格の上昇率の平均を取るのが 物価指数 物価調整のないGDPを名目GDPという 一方,実質GDPとはインフレを調整した実質 的な生産量を測るGDPである 1人当たりの実質GDP=実質GDP/人口 国際経済の基礎11 33
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