2 日米経済摩擦の展開

2 日米経済摩擦の展開
2-1.1970年代までの貿易摩擦
2-2.市場開放問題と政策協調問題
2-3.アメリカの対日知的所有権攻勢
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2-1.1970年代までの貿易摩擦
2-1-1軽工業分野での摩擦の始動
• 1955「1ドル・ブラウス事件」→1956輸出自主規制→1957
日米綿製品協定
• 金属洋食器,洋傘骨,木ねじ
• 基本パターンの形成:米業界の輸入制限要求→米政府,日
本側の善処を期待して政治圧力→日本政府の公然・隠然の
指導→日本業界の輸出自主規制 voluntary export
restraints
• 60年代後半:鉄鋼摩擦,繊維摩擦part2:低品質商品のダン
ピングではない
• 経済的競争の政治問題化
• 「糸を売って縄を買った」69年佐藤・ニクソン共同声明「両3
年以内核抜き本土並み返還」
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2-1.1970年代までの貿易摩擦
2-1-2 重化学工業品への摩擦の波及
• 日本経済の産業構造の重化学工業化→主力輸出
品が順番に摩擦の洗礼
• 鉄鋼:集中豪雨的輸出.1968輸入は消費の17%.
うち半分が日本から.1969輸出自主規制協定.
1978トリガー価格制度.やがて韓国,ブラジルが主
要輸出国に.“設備更新に時間を貸してほしい”.
輸入制限→アメリカ国内鉄鋼価格上昇→自動車産
業不利化(輸出自主規制の「負の連鎖反応」)
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2-1.1970年代までの貿易摩擦
2-1-3 組立加工品への重点移行
・ 組立加工品への重点移行:
重厚長大から高付加価値組立産業へ
• カラーテレビ:日本は自動化・省力化.
米はレイオフと工場の海外移転.
175万台市場秩序維持協定OMA(現地生産促進).
輸出急減→貿易摩擦解消へ.
• 自動車:部品数2-3万点の大裾野.オイルショック
70年代末燃費.81*5輸出自主規制168→230.
ローカルコンテント(現地部品調達比率).
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2-2.市場開放問題と政策協調問題
2-2-1日米摩擦の多様化・複合化
• ハイテク摩擦:半導体,VTR,工作機械,
• 日米半導体協定1986/9日本市場の閉鎖性
批判.91/6日本市場における外国系シェア2
0%期待.
• 日本市場開放をめぐる日米抗争:
建設,金融サービス
• 経済構造摩擦:Structural Impediments
Initiative
• 防衛摩擦:FSX
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2-2.市場開放問題と政策協調問題
2-2-2 貿易不均衡と日本の市場開放
• 米国貿易収支:70年代後半赤字基調に変化.
80年代レーガン時代に爆発的赤字拡大.87年1600億ドル.
対日赤字40%台.→日米不均衡解消に努力
• 1国の貿易収支の基調は,マクロ要因で決まり,市場の開放
度には左右されない.
Y=C+I+X-M
S=Y-C
S-I=X-M 貯蓄超過=海外経常余剰(貿易差額)
• 1970年代末市場開放要求:
牛肉・オレンジ,電電公社の資材調達問題
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2-2.市場開放問題と政策協調問題
2-2-3 マクロ政策協調の発進とその内実
• 1985プラザ合意:「双子の赤字」に対処しての①円
高・マルク高・ドル安,②協調利下げ
• レーガノミクス看板:①小さな政府,②減税→投資,
③規制緩和,④通貨供給量
• 現実:①大量の国債発行→クレジットクランチ→金
利高騰→ドル高→輸出減・輸入増
• 現実:②減税と国防支出拡大による有効需要刺激
→アメリカ景気急拡大→輸入増大
• G7の新設:日本と西ドイツに内需拡大を迫る→西ド
イツ拒否・日本一方的協力→バブル
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2-2.市場開放問題と政策協調問題
2-2-4 包括的政策協調へ
• 1985MOSS市場重視型個別協議:
電気通信,エレクトロニクス,木材製品,医薬品・医療機器
• 1989日米構造問題協議:
日本:貯蓄・投資バランス,系列,談合,大店法,流通制度.
アメリカ:財政赤字,短期業績主義に起因する設備投資や
技術開発の不十分さ,反トラスト法の濫用,投機的M&A,
労働者の訓練・教育の弱さ)
• 1993日米包括経済協議:内需拡大や構造障壁の改善
に関する「数値目標」「客観基準」の導入を主張.政府調達,
保険,板ガラス/ 自動車・同部品は難航
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2-3 アメリカの対日知的所有権攻勢
2-3-1 アメリカ・ハイテク産業の危機と再構築
• 80年代アメリカ貿易赤字の拡大:ハイテク赤字:自
国経済の生命線を危うくする重大事態と受け止め.
• 1982/3「ハイテク産業でのアメリカ競争力の評価」.
1985/1「ヤング報告」→政府研究開発予算の増強と
重点配分,独占禁止法の緩和,研究開発奨励税制
優遇,理科系教育の改善.日本の研究頭脳のアメ
リカへの取り込み.研究成果の流出抑制.
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2-3 アメリカの対日知的所有権攻勢
2-3-2 アメリカ政府の知的所有権戦略
• 技術貿易では抜群の強さ:日本は94年時点
でも赤字.
• アメリカは基本特許やソフト著作権など,知的
所有権の利用料を高めれば,稼げる.
→法整備作業:特許保護の強化,ソフトウェア
の著作権による保護,半導体回路設置法,
88年日米知的所有権協議.
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2-3 アメリカの対日知的所有権攻勢
2-3-3 日米企業間の知的所有権紛争
• 1982「IBM産業スパイ事件」(日立):
推定100億円の賠償金とOS使用料.FBIと
の連携プレー.
• 1985「ミノルタ-ハネウェル自動焦点一眼レフ
紛争」和解金166億円+販売総額1割
→92/3無配転落.
• 争点:遺伝子技術,抗HIV/AIDS医薬品
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2.4 考えてみよう
• 輸出自主規制が日米貿易摩擦の解消策として期待
された効果を発揮できなかったのはなぜか,その理
由を探ってみよう.
• 日本の市場開放は日米貿易不均衡の解消にあまり
役立たない,というのが経済学の一般的見解である.
その論理の妥当性について考えてみよう.
• 知的所有権の保護強化は新技術の開発と普及に
とって不可欠だが,その理由ならびに行き過ぎた発
明者保護のマイナス効果について,考えてみよう.
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