「危険」とどうつき合うか? 内分泌攪乱化学物質とリスク評価 松田裕之(東京大学海洋研究所) http://www.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/ 1976 麻布高校卒業 1980 京都大学理学部(生物学)卒業 1985 京都大学理学博士 数理生物学、水産資源学、保全生態学 (1998年河合塾松戸校講演) リスク評価 1 今日の話題 • 人間の健康リスク – 「杞憂」から喫煙、オートバイまで • 生物の絶滅リスク – レッドデータブックからエゾシカまで • 内分泌攪乱化学物質 – 母乳からインポセックスまで – アザラシからバイ貝まで リスク評価 2 科学者の「良識」:今と昔 • 昔:肯定も否定もされないことは 信じない。 – 血液型占い • 今:実証されなくても、手遅れに なりそうなことは見過ごせない。 – 地球温暖化対策、 – 内分泌攪乱物質(環境ホルモン) リスク評価 3 あるジャーナリストの発言 • 「政治的に注目された問題ほど、 科学的には怪しい。」 –生物多様性保全条約 –地球温暖化 –(内分泌攪乱物質) リスク評価 4 人間の健康リスク • 環境化学物質の規制基準 – 環境中の濃度、食品中の濃度の予測 – 動物実験の致死量からの外挿 – 日常的に食べて、10万人に1人がその ために死ぬ=平均余命にして約1時間 (10年÷10万=0.9時間)の損失 リスク評価 5 生物の絶滅リスク • 大量絶滅の時代(生物は1日3-10種 の割で絶滅しているらしい) • 人口増加、一人当たり消費の拡大 – 生息地破壊、乱獲(乱伐)、環境劣化 • 環境影響評価(assessment) • 生物多様性条約 リスク評価 6 内分泌攪乱化学物質 Endocrine Disruptive Chemicals • • • • • • ホルモン作用を攪乱する ごく微量(ppt)で害をもたらす 天然に存在しない多数の化学物質 海・大気に遍在する 食物連鎖で濃縮される 母乳で母子感染する リスク評価 7 健康・繁殖・生態リスク • レイチェル・カーソン『沈黙の 春』 – ケネディ大統領の諮問委員会で認知 • シーア・コルボーンら『奪われし 未来』 – 海獣の大量死、精子の減少、『メス 化する自然』 リスク評価 8 海の汚染=2000年の負債 • 海洋大循環、南氷洋での検出 リスク評価 9 食物連鎖と生物濃縮 • 海水、浮遊生物、魚、海獣 リスク評価 10 母乳で母子感染する • 母親と父親の濃度 リスク評価 11 脂肪に蓄積する • 分解酵素を欠く海獣 • 長寿、皮下脂肪、魚食 リスク評価 12 バイ貝と有機スズ • 減少と復活 リスク評価 13 危険性riskの考え方 • リスクは確率である – 絶対安全なものはない=「杞憂」 • リスク評価の前提は未実証 – シナリオ、悔いのない政策、予防原 理、説明責任accountability リスク評価 14 危険性の評価、管理、周知 • Risk assessment=異論の少ない前 提で未来を予測する。単純な仮定、 予防原理 • Risk management=不確実性と説 明責任を考慮する • Risk communication=相対的な安 全を市民自身に選んで貰う リスク評価 15
© Copyright 2025 ExpyDoc