スライド 1 - 静岡大学 桑原義彦 研究室

3.電磁波の基礎
3.1 電磁波の基本法則
3.1.1 電磁波を表す量
電磁波は電荷と電流を源(ソース)として発生する。
電荷密度ρ[C/m3]と電流密度J[A/m2]が源となる。
電磁波を記述する物理量:電界E[V/m],電束密度D[C/m2],
磁界H[A/m](AT/m),磁束密度B[T](Wb/m2)
これらは場所r=[x,y,z]と時間tの関数でρ(r,t), E(r,t)のように表す。
3.1.2構成方程式
構成方程式:電界E,電束密度D,磁界H,磁束密度Bの間の関係
ε[F/m]:誘電率,μ[H/m]:透磁率,σ[S/m]:導電率
J0:外部から加えられた電流密度
媒質定数:ε,μ,σ
本講義で扱う媒質
線形:媒質定数がE, Hの大きさに依存しない
等方性:媒質定数がE, Hの方向に依存しない
非分散性:媒質定数が電磁波の周波数に依存しない
[1] 真空:ε0=8.854✕10-12[F/m],μ0=4π✕10-7 [H/m],σ=0[S/m]:空気
[2] 無損失の誘電体:ε>ε0,μは真空にほぼ等しく,σ=0:絶縁体
[3] 完全導体:σ=∞:金属
[4] 損失を持つ媒質:0<σ<∞:実際の材料
自由空間:均質,線形,等方性媒質で満たされた無限空間
(大気中,真空中)
3.1.3 マクスウェルの方程式
[1] アンペアの周回積分の法則
閉曲線Cに沿う磁界Hの接線成分を線積分
したものはCと鎖交する全電流に等しい
C:任意の閉曲線 dl:閉曲線上の線素
A:Cで囲まれる曲面 dS:曲面上の面素
n:A上の単位法線ベクトル
電流密度Jと磁界Hの方向は右ねじの関係
例題3.1 半径a[m]の無限長円柱内を電流が密度J[A/m2]で一様に流
れている。円柱の中心軸から半径r(>a)の円周上における磁界は
より
[2] 変位電流
マクスウェルはDの時間変化も磁気作用を持つと考え,変位電流密度
を導入し,誘電体中も電流が流れると
考えた。
コンデンサに交流電圧を加えると電流
が流れる。銅線の周りには磁界が発生
する。コンデンサの誘電体の周りにも磁
界が発生する。極板間に電界Eは発生
するが,誘電体の導電率は0で電流は
流れない。
誘電体中には変位電流が流れている
と考える
電流には誘電体中を流れる変位電流と,導電性媒質を流れる電流
(導電電流)がある。
例題3.2 図3.2の並行平板コンデンサ(極板の面積A[m2],極板間距離
d[m],極板間の誘電率ε[F/m])に
を加えたときの
変位電流を求める。
極板間電界:
誘電体の電束密度:
変位電流密度:
変位電流:
とおくと
静電容量Cのコンデンサに
を加えたときの電流 i(t )  C dv (t )  C 2V cos t
dt
に等しい。
[3] 拡張されたアンペアの法則
変位電流を考慮すると
[4] ファラデーの電磁誘導の法則
微小横断面Sを持つ銅線回路C
と鎖交する磁束Φが時間変化
する。Φの時間変化により
-dΦ/dtの起電力が発生し電流I
が流れる。銅線の抵抗をRとす
ると
銅線は細いので電流密度は一定と仮定する。
銅線の導電率をσとすると
Φの時間変化により,銅線内部に電界を生じ電流が流れる。
電界Eと回路Cの線素ベクトルdlのスカラ積を取って,Cに沿って周回
積分する。
ここで,lは回路の全長である。
マクスウェルは閉回路が導体でなくても,Cと鎖交する磁束が時間的に
変化すると,Cに沿う各点には電磁誘導による電界が発生すると考えた。
S0を,閉回路Cを縁とする任意の閉局面とすれば、ストークスの定理から
dlはCの線素でnはdaの外向きの法線ベクトル
磁束密度の時間変化
はその周りに電界Eを誘導する。
[5] ガウスの法則
ある閉曲面Aから出て行く電束の総数は,その閉曲面Vにある電荷の
総数に等しい。磁束については閉曲面Aから出て行く総数は0
(磁力線は連続しておりAに入った分だけAから出て行く)
補助方程式(電荷と導電電流の関係):連続の式
[6] マクスウェルの方程式(微分形)
式(3.4)-(3.7)を,ナブラベクトル演算子 を用いあらわす
3.4
3.6
微分形に変形するためストークスの定理
ガウスの定理
3.5
3.7
  は回転(rotation, curl)
  は発散(divergence)
直交座標系で
ix, iy, izは単位ベクトル
任意のベクトル
に対する回転と発散は
3.2 平面電磁波
真空,誘電体,損失媒質中の平面波を導いて伝播の様子を調べる
3.2.1 正弦波的に変化する電磁波
定常界:電界や磁界が単一周波数fで時間的に正弦波状に変化
[1] 複素表示

E
(
r
,
t
)
角周波数ωで時間的に変化する電界
について,複素表示 E(r )
を使って次のように定義する

E(r ) は空間のベクトルで,その成分も複素表示する。:
は観測点
における E(r, t ) の実効値
複素表示では時間微分  / t をjωで置き換えられる。

jωt
e を省略し,場所に依存する項 E(r ) だけ考えればよい。
他の電磁量についても同じようにあらわす。





H(r), D(r), B(r),  (r), J (r)
[2] マクスウェルの方程式

印加電流と電荷が存在しない領域を考える。( J 0  0,   0 )
線形,等方性,非分散性の媒質:媒質定数(ε,μ,σ)は定数。
構成方程式
が成立するときマクスウェルの方程式は
[3] 波動方程式
式3.14の両辺について回転を取り3.13式を適用する。
ベクトル公式






2
2
   E    E   E   j   j  E


と式3.15を適用すると






2
2
   E    E   E   j   j  E


波動方程式
ラプラシアン
波数
[4] ポインチング電力
電磁波が単位時間に単位面積当たり運ぶ電力

伝送方向は E から

H
に右ねじに回転したときの進行方向