ド・プロニーの計算プロジェクト 林晋 2012.05.30 ド・プロニーの計算プロジェクト • フランス革命直後1790年,フランスの数学者 ド・プロニー (de Prony 1755-1839)が大数表 作成のプロジェクトを始めた • 計算機がない時代の新国家建設のための大 事業 – 印刷経費の問題などで出版に到らず。 2015/9/30 2 計算機部品=ヘアドレッサー • アンシャン・レジームの象徴だった貴族のヘアドレッサーたち が革命で失業。参考リンク。その失業対策を兼ねヘアドレッ サーを「コンピュータ」として雇用。 • もちろん、本来の目的は「正しい数表」を作ること。当時は対 数表が航海のための計算にも使われ重要だった。今のコン ピュータの地位! • これについては比較的易しい論文がある: Work for the Hairdressers: The Production of de Prony’s Logarithmic and Trigonometric Tables, 1990, vol. 12, I, Grattan-Guinness, IEEE Annals of the History of Computing 参考 2015/9/30 3 計算の分業体制 • ヘアドレッサーは掛算,割り算が正確にできないの で,足し算,引き算に,すべての計算を分割・分業 化した。 • 実はほとんどすべての連続関数(演算)は、引き算・ 足し算の繰り返しだけで近似的に計算できる。これ を階差計算の原理という。 – つまり、大量の計算をすることを厭わなければ、 この世の計算の多くは、足し算・引き算の繰り返 しだけでできるということ。 – バベッジのPowerPoint資料で説明したもの! 2015/9/30 4 計算の分業体制 • 計算プロジェクトのチームは,次の三つの階層から できていた。 – 理論家 – それをもとに計算計画を立てる人 – そして,失業中のヘアドレッサーである「コンピュータ」 • このプロジェクトの詳しい仕組みは? • 階差計算の原理とは何か? • それが先に見たバベッジの本で詳細に説明されて いる。(というより、それがあるので、このプロジェクト のことがわかる。) 2015/9/30 5 フランスの大対数表 (§241-243) • 知的労働の分業が機械的操作(労働)の場 合と同様に可能であり,それはどちらも時間 の節約,時間の経済,に結びつく. (241) • 歴史上最大規模に行われたフランスのド・プ ロニーの計算プロジェクトが,この考え方の現 実性を説明している (242) • その考え方の元はアダム・スミスの国富論に あることをド・プロニー自身が語っている。 (243) フランスの大対数表続き (§244-245) • ド・プロニーが考えた組織構造は三層構造に よる「知の分業」だった(244) – 上級層 First section: 数学者。数式を考える。 – 中級層 Second section: 数学者が考えた式を具 体的計算に書き換える(コンパイル)。7,8名の 人からなる。また、計算の検証(検算)もする。 – 下級層 Third section:実際に計算をする人たち (60-80名)。足し算、引き算しかできないヘアドレ ッサー(の棟梁の下働きだったらしい)。 • Amazon堺FCの話か? フランスの大対数表 (§244-245) 続き • 最下層の労働の量は大きいが、労働の価格 は安くてすむ (at an easy rate, Amazon FCピ ッカーの労賃は低い。「部品だから…」)。 • 最上層の仕事は大変だが(extertions)、一度 やれば済む。(Amazon FCの仕組みは一度 考えて作れば、後は機械のように動く。) • しかし、計算機(a calculating-engine) が作ら れて最下層を置き換える時には、数学的見 直しが必要かもしれない。(245)
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