知識管理 知識管理から知識経営に… 基本的な前提(その1) 知識のタイプには「形式知」と「暗黙知」がある。 形式知 明確な言語・数字・図表で表現さ れた知識 暗黙知 はっきりと明示化されていないメン タル・モデルや体化された技能 基本的な前提(その2) 「形式知」と「暗黙知」は、人間の創造活動にお いて、互いに作用し合い、互いに成り変る。 形式知 創造 活動 暗黙知 基本的な前提(その3) 組織の知は、異なったタイプの知(形式知と暗 黙知)、異なった内容の知識を持った個人の相 互作用によって創造される。 知識A 相互 作用 知識B (下図は、Nonaka,I. And Konnno, N.:”The Concept of ‘ba’ : Building a Foundation for Knowledge Creation”, California Management Review,40-3,pp.40-54,1998の図中の単語を日本語化して、一部改変したものである) 4つの知識創造の様式(知識変換) SECIモデル 一橋大学国際企業戦略研究科 野中郁次郎「組織的知識創造理論」 暗黙知 共同化(Socialization) 暗 黙 知 暗黙知 表出化(Externalization) 個人 個人 個人 知識スパイラル 個人 グループ 個人 組織 暗 黙 知 グループ 個人 個人 個人 グループ グループ 組織化 グループ 個人 内面化(Internalization) 形式知 形 式 知 連結化(Combination) 形式知 形 式 知 SECIモデルは自己超越プロセスである 一橋大学国際企業戦略研究科 野中郁次郎「組織的知識創造理論」 暗黙知 共同化(Socialization) 暗 黙 知 暗黙知 表出化(Externalization) 徒弟制度やOJT等を通して、同一時 間・空間の中で直接的な実体験を共有 することによってスキルを共有。 互いに共感されたメンタル・モデル(暗 黙知)は、対話によってグループのメン タルモデルに統合。 他人の立場に身を置くことによって、同 じ状況を他人がどう見ているかを共感。 明示的なコンセプトとして表現される (商品コンセプト)。 形 式 知 ダイナミックかつ終わりのないプ ロセスである 暗 黙 知 個人が、体系化されたルールの実行 や、新製品の製造・保守・使用を通じ て、暗黙知としての新たなノウハウを 蓄積。 内面化(Internalization) 形式知 グループによって表現されたコンセプト が、組織全体のレベルの既存の形式 知と組み合わされ、体系化される。 新しいルールの制定や、新製品の製 造・発売。 連結化(Combination) 形式知 形 式 知 (下図は、「野村郁次郎、紺野登著『知識経営のすすめ』ちくま新書」に示された図を改変したものである) 富士ゼロックス社のSECIモデルの実践 知の創造と活用を進める環境の構築 暗黙知 暗黙知 暗黙知の獲得(Capturing) 暗 黙 知 暗黙知を整理(Organizing) 共同化(Socialization) 表出化(Externalization) 全員設計ルームでの相互作用 (interacting) Z-EIS 現場の状況に適応 (Adapting) ---ドキュメントを知のひとつの分野と捉える--- 体験知や現場知を言葉 として表現(Formalizing) 各工程の上司が優れたもの だけを特定(Identifying) 暗 内面化(Internalization) 連結化(Combination) 黙 最も有用なものを選別 知 登録及び共有(Sharing) (Selecting) 形式知 形 式 知 形式知 形 式 知 知識管理における「場」の概念 • 物理的な場(事務所、作業場所など) • 仮想的な場(テレビ会議、メールグループ など) • メンタルな場(共有体験、思想、理想) 知識創造とは デカルト的には、知識は 絶対的であり、コンテキ ストからは自由である。 知識の創造プロセスは、 特定のコンテキストに 依存せざるをえない。 場 情報 解釈 知識 知識 場は、個人が知識変換 の各モードに参加し、知 識スパイラルを回すとき の基盤を提供する。 場のタイプ • 創発場 → 共同化へのコンテキスト提供 直接対面の相互作用(個人が他者との境界を越え、他者に共感する世界) • 対話場 → 表出化へのコンテキスト提供 参加者の対話によって共通の言語に翻訳(特定の知識と能力を持った人た ちを選ぶことが鍵) • システム場 → 連結化のためのコンテキスト提供 必要な情報や知識を交換したり、互いの質問に答えあったり、効果的・効率 的に情報・知識を集めたり広めたりするための協働環境を作ることが必要。 • 実践場 → 内面化のためのコンテキスト提供 形式知を実際に実践することによる暗黙的な操作知に体化。 NTT東日本法人営業本部における場の構築 NTT東日本法人営業本部 潮田邦夫副本部長「クリエイション・バイ・クロス・カルチャー(Creation by Cross Culture)」 • 思いがけない「出会い」を引き起こすための対話がいつ でも可能なオフィス・レイアウト (1)ベースゾーン(自分の席を固定しな い) (2)クリエイティブ・ゾーン(開放的な雰囲 気) ①プロジェクトプランニングに使用 ①開放的にするため窓際に置く。 ②プロジェクトの素早い編成 ②移動可能な観葉植物でしきる。 ③プロジェクト・メンバー間のスキルの共用 ③対話に参加する人数に応じて広さを変える。 ④隣の席に偶然座ることによる思いがけない 出会い ④イントラネットからパソコンで引き出した資料を4 2インチディスプレイで見ることができる。 ⑤創発場とシステム場として機能 ⑤対話場として機能 NTT東日本法人営業本部における場の構築 NTT東日本法人営業本部 潮田邦夫副本部長「クリエイション・バイ・クロス・カルチャー(Creation by Cross Culture)」 • 思いがけない「出会い」を引き起こすための対話がいつ でも可能なオフィス・レイアウト (3)コンセントレーション・ゾーン(得られた 知識を自分の仕事に活かす場) (4)リフレッシュ・ゾーン(インフォーマルな交 流の場) ①クリエイティブゾーンで得られた知識を自分 の仕事に使ってみる場。 ①喫茶室、ドリンク・コーナ、雑誌コーナで構成。 ②静かな環境で自分の仕事に集中したい個人 のためにパーティションで仕切る。 ③プログラミング、システム設計、提案書作成 に使用。 ④システム場と実践場として機能 ②一人でリラックスした気分に浸ったり、異なった 背景を持った人たちが、インフォーマルに交流 したり、対話したりするのに使われる。 ③創発場として機能する。 NTT東日本法人営業本部における場の構築 NTT東日本法人営業本部 潮田邦夫副本部長「クリエイション・バイ・クロス・カルチャー(Creation by Cross Culture)」 • バーチャルな場としてのホームページ (1)マイホーム ①本人の個人略歴、写真、内線番号、電子メー ルアドレス、血液型など自己紹介ページ (2)私の書斎 ①営業日報、提案書、プロジェクト記録などの 日常業務ファイル等を格納。 ②営業本部社員なら誰でもアクセス可能、本人 に問い合わせることもできる。 (3)セカンド・ハウス ①個人の業務履歴、得意な業務分野、資格、こ れまで手がけてきたプロジェクト事例など。 (4)リゾートハウス ①自分の趣味や家族のことなどを紹介。 (5)部課毎のホームページ (例)第3営業部「智の森」知識ベース ①部下は、毎日、折衝記録と提案書を営業マ ネージャに送り、これをマネージャは毎日読 む。 ②営業マネージャは優れた提案書にコメントを 付け、ボタンをクリックするだけで「智の森」に 登録できる。 ③登録された提案書は、アクセス回数だけでな く、それによって成果を得た人からの「感謝ボ タン」のクリック数もカウントされ、ランキング 評価される。 ④最も上位二つは半年に一回「ベストナレッジ 賞」として表彰。 知的資産の4類型 ①経験的(Experiential)知識資産 社員間、供給者や顧客との直接的な共有体験で創られる暗黙知(蓄積されるスキルや ノウハウ、ラブや信頼などの情感知、顔の表情やジェスチャなどの動作知など)。模倣が 難しいので、持続可能な競争優位を企業に与える。 ②概念的(Conceptual)知識資産 企業の社員が保有している経営戦略、製品コンセプト、製品デザイン、顧客のブランド 品に対する知覚。経験的知識資産より目で捉えやすいが、社員や顧客の知覚は測定が 難しい。 ③体系的(Systemic)知識資産 パッケージ化された形式知。明示的に表現された技術、製品仕様、マニュアル、顧客や サプライヤについてまとめられた文書。特許やライセンスのように法的に保護された知的 財産権もこの範疇。現在、多くの知識管理で焦点を当てられている知識資産。 ④恒常的(Routine)知識資産 企業の日常活動に埋め込まれている暗黙知。企業の職能別ノウハウ、職員が共有して いる思考や行動パターンとしての組織的な習慣や文化等。毎日の活動で再生産されてい るが、恒常性が惰性に変わり、新しい知識の創造を邪魔する恐れもある。 (下図は、Nonaka, I., R. Toyama, and N. Konno: “SECI, Ba and Leadership: a Unified Model of Dynamic Knowledge Creation”, Long Range Planning, 33, pp. 5-34, 2000. の引用である) ナレッジリーダシップ 場 SECI ・物理的(例:オフィス) ・バーチャル(例:イントラネット) ・メンタル(例:理想) コンテキスト 意味 材料 成果 知識資産 創造し、 エネルギーを与え、 繋ぐ リードし、 定義または再定義 知識ビジョン ナレッジリーダシップ 促進し、 正当化する
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