経営戦略のパラダイム 雨森 彩 大嶋 健夫 高根 崇文 目次 能力ベース経営 ① • • • • • 分析型戦略の反省 エクセレント・カンパニーの インパクト コア・コンピタンス SBUとコア・コンピタンス 能力ベース経営の実践手 法 知識創造理論 ② • • • • 知識創造理論とは ダイナミック・ケイパビリティ 暗黙知と形式知 知識変換と4つのモード リエンジニアリング ③ • • • リエンジニアリングとは リエンジニアリングの特徴 リエンジニアリングの限界 シャープの組織改革 ④ • • • • • • • • 会社概要 アセンブリー・メーカー時代 キーディバイスの内製化 ニューライフ商品戦略 緊急プロジェクト(1) 緊急プロジェクト(2) 大規模ローテーション 近年の動向 ①能力ベース経営 分析型戦略の反省 分析型戦略論:自社のポジションや市場成長率などを分析する事に 重きを置き、いわば合理的な経営を目指したもの ①戦略策定担当の本社スタッフへの集権化 ②戦略実行のための組織の複雑化や官僚化 ③組織成員はひたすら制度化された手続きに追われ、 現場の環境適応能力の低下 「分析麻痺症候群」と揶揄される ①能力ベース経営 エクセレント・カンパニーのインパクト ①行動の重視 ⑤価値観にもとづく実践 ②顧客への密着 ⑥基軸から離れない多角化 ③企業家精神の尊重 ⑦単純な組織と小さな組織 ④“ひと”を通じての生産性向上 ⑧緩急自在の同時コントロール 優良な企業は人々の行動を重視し、分権的な組織と自由度の高い 価値観の共有(企業文化)にもとづくマネジメントの実践を行っていると 結論づけた ①能力ベース経営 コア・コンピタンス コア・コンピタンスとは 企業の「持続的な」競争優位の源泉であり、他の企業によって 「模倣・複製・代替されにくい」企業特有の資源や能力を意味する コア・コンピタンスの3つの条件 ・多様な市場へのアクセスを可能にすること ・最終製品が消費者利益に貢献すること ・競争相手が模倣しにくいこと ①能力ベース経営 SBUとコア・コンピタンス PPMの問題点 ①「負け犬」事業だからといって無差別に撤退 してしまうことにより、将来の戦略において 重要な役割を果たすことになる基幹技術が失 われる恐れがある ②マトリクスを見ているだけでは、新たな成長 機会となるべき事業を見出すことはできない →PPMは短期的収益の最大化のためのフレーズで あり、長期的な成長とその具体的な事業展開の構 想が見えてこないのである 能力ベース経営 最終製品で競争するのではなく、コア・コンピタンスで 競争する ①能力ベース経営 能力ベース経営の実践手法 戦略設計図:どのようなコア・コンピタンスを構築すべきか、またそれを 構築する技術はどのようなものであるかを明らかにする、い わば将来のためのロードマップであるといえる コア・コンピタンスを構築する ①既存のスキル(技術、技能、マネジメント・ノウハウ、情報的経営資源など) や能力の中から事業展開の基盤となる能力を特定する ②戦略設計図から、将来の事業展開の方向性を明らかにし、そのために必要な コンピタンスを明確にする ③確立されたコア・コンピタンスを事業展開の推進力として機能させ続ける事 が必要 ②知識創造理論 知識創造理論とは 経営資源としての知識の重要性 トフラー パワーを生み出す3つの源泉を暴力、富、知識 ドラッカー 「知識は最も中心的な資本あるいは経済資源となった」 知識創造理論とは? 「組織がいかにして新たな知識をつくり出すのか」 「知識を生むための組織能力をいかにして 構築するのか」 ②知識創造理論 ダイナミック・ケイパビリティ プロダクト・レベル 1. 企業の製品やサービス体系の中枢となる製品や サービスの価値内容 知識変換レベル 2. 企業が実際に知を生み出す「エンジン」 組織資源レベル 3. 蓄積された知識や行動様式、企業文化や共有化 された価値観、組織独自の認知能力 等 ②知識創造理論 暗黙知と形式知 暗黙知 形式知 経験知 (身体的知) 言語知 (理性的知) 共時的な知 (今、生きている) 時系列的な知 (過去、静止している) アナログ的知 デジタル的知 主観的知 (個人知) 客観的知 (組織知への発展) ②知識創造理論 知識変換と4つのモード 暗 黙 知 形 式 知 1. 共同化 暗黙知+暗黙知 4. 内面化 形式知→暗黙知 2. 表出化 暗黙知→形式知 3. 連結化 形式知+形式知 組織内の知識は以上の4プロセスを繰り返すことに よって増幅され、個人の知識から組織の知識への昇 華されてゆく。 このプロセスの事を、知識創造スパイラルという。 ③リエンジニアリング リエンジニアリングとは 「コスト・品質・サービス・スピードのような重 大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改 善するために、ビジネス・プロセスを根本的に 考え直し、抜本的にそれを改善し直すこと」 既存の仕事とやり方を徹底的に見直して、 仕事のやり方を一から考え直すこと ③リエンジニアリング リエンジニアリングの特徴 ・目標が明確に定義される 効率性に優 れている!! ・トップダウン型 ・問題解決型 ・分析的手法を重視 ・少数精 のエリート主義 ・最短のプロセスを志向し、変化はドラスティック ・情報システムを活用 ③リエンジニアリング リエンジニアリングの限界 ①リストラクチャリング、リエンジニアリングによる 雇用削減と社会不安の創出 ②リエンジニアリングによる解雇の恐怖のために 社員の職場におけるバイタリティの喪失 ③効率性追求のための抜本的改革によって蓄積され てきた、組織の知識創造能力が失われる 再びビジネス・プロセスの奥にある文化や 理念を見つめ直す必要がある ④シャープの組織改革 ④シャープの組織改革 会社概要 商号 シャープ株式会社 創業 1912(大正元)年 設立 1935(昭和10)年 代表取締役 町田 勝彦 資本金 204,675百万円 (2004年9月30日現在) 売上高 2,257,273 百万円 (連結) 1,804,907 百万円 (単独) (平成15年度) 社員数 単体社員数:23,100名 連結対象会社社員数:47,100名 グループ総人員:55,000名 (2004年10月末現在) ④シャープの組織改革 アセンブリー・メーカー時代 ○ブランド・ロイヤルティーが低い ○ソニーほど画期的な技術を持っていない ○キー・ディバイスの調達先がライバル・メーカー であるために計画が漏れてしまい、すぐに模索さ れてキャッチ・アップを許してしまう 弱小の“安売りメーカー”=シャープ ④シャープの組織改革 キーディバイスの内製化 弱小企業からの脱却 電卓戦争 課題:従来は半導体を外注していたが… 1.入手までに時間がかかる 2.希望通り発注出来ない 内製化へ 電卓戦争の勝者に 世界初、液晶の量産化に成功 ④シャープの組織改革 ニューライフ商品戦略 ①家電業界の弱者が強者と同じ戦略をとっても勝負にならない 差別化商品に特化し、資源を集中する必要がある ②個人の“アイディア”だけに依存したやり方ではヒット商品を生 み出すことは困難である 体系的に商品開発を行う必要がある 「ニューライフ商品戦略」の導入 成果:業界平均を上回る成長 ④シャープの組織改革 緊急プロジェクト制度(1) 液晶電卓の開発におけるプロジェクト方式の 成功 狙い ①制度化により商品化をスピードアップし,“独自の商品 を次々とぶつけていくことによって効果を高める” ②“差別化した創造的商品でも他企業にすぐにキャッチ アップされてしまう状況を乗り越える” ④シャープの組織改革 緊急プロジェクト制度(2) 特徴 ・プロジェクト・リーダーに非常に大きな権限を与える ・事業部内はもとより、事業部外からも人材を調達できる ・事業部間で競争が生じ、活性化が生じる 今日のシャープを支えている商品のほとんどが、この制度によって 生み出された (例) 製品 据置型VTR、電子(システム)手帳、液晶ビジョン、日本初の家庭用ハイビジョン etc… ディバイス カラー液晶パネル etc… ④シャープの組織改革 大規模ローテーション シャープでは1979年から組織の活性化のた め、年に1度テーマを設けテーマに対応して 大規模な人事異動を行った。 大規模ローテーション 例)1983年のテーマ:「開発体制の強化」 電子機器事業本部:社員の6割が移動 同事業本部:技術担当3人の副部長が誕生 ④シャープの組織改革 近年の動向 近年、開発コンカレントや社内公募制度等の 導入によって緊プロの強化や補強が図られ てきた シャープに求められているもの 新製品の開発段階でのより高い創発性 参考文献 「戦略的組織改革」 1996年 有斐閣 河合忠彦 「知力経営」 1995年 日本経済新聞社 紺野登、野中郁次郎 「日本型リエンジニアリング」 1994年 PHP研究所 生方幸夫 「新コア・コンピタンス戦略」 1997年 プレジデント社 市橋和彦
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