スライド 1 - Shiketai of Legend

臨床講義 2月6日 第2限
症例2
症例
K.I. 70歳 女性
主訴:
現病歴:2日前に歩行時に強い胸痛を感じ、帰宅。その後自
宅にて安静をとり、若干の胸痛の改善をみとめたが、胸部
症状は持続し、夜も眠れず、倦怠感も増強してきた。そこで、
2008年12月16日、脳動脈瘤にて通院していた当院脳外科
を受診し、心電図異常を指摘され、循環器内科に紹介と
なった。
既往歴:未破裂右MCA脳動脈瘤 脳外科にてクリッピング
(2008年8月20日)
家族歴:特記すべきことなし。
生活歴:喫煙なし。飲酒なし。
病気の発症はいつ?
病気の発症は2008年12月14日
なんと
2日間も我慢してから受診した。
歩行時に強い胸痛を感じた際に、即救急車を呼
んで病院に行くべきだった!!今回の症例の場合
絶対安静が必要!!
でないと、心破裂で突然死する可能性も・・・
入院時現症
意識:清明
身長:150cm 体重:45.5kg
脈拍:98/min 血圧:117/77mmHg
頚部:経静脈怒張なし、リンパ節腫脹なし
呼吸音:良好 ラ音聴取せず
心音:S1→S2→S3(-)S4(-)
Ⅲ音:拡張早期に心室壁が震える
心筋梗塞など、心筋が痛んでいる場合に聴取
Ⅳ音:拡張後期に心房が収縮し、流入する血液で心室壁
が震える
陳旧性心筋梗塞など、心室が弱って駆出できない
場合に聴取
腹部:平坦、軟 圧痛なし
浮腫:認めず
入院時検査所見
異常所見は?
血算
WBC
Hb
Plt
9500 /mm3
13.2 g/dL
24.8 X10^4/mm3
生化学
TP
Alb
GOT
GPT
LDH
CK
CK-MB
6.7 g/dL
4.0 g/dL
202 IU/L
31 IU/L
691 IU/L
1584 IU/L
163 IU/L
生化学(つづき)
AMY
115 IU/L
T-Cho 139 mg/dL
TG
65 mg/dL
BUN
10 mg/dL
CRE
0.4 mg/dL
Na
132 mEq/L
K
4.0 mEq/L
Cl
96 mEq/L
CRP
0.7 mg/dL
BS
132 mg/dL
HbA1c 5.8 %
BNP
547.9 pg/mL
心筋トロポニンT: Positive
H-FABP: Positive
入院時検査所見
血算
WBC
Hb
Plt
9500 /mm3
13.2 g/dL
24.8 X10^4/mm3
生化学
TP
Alb
GOT
GPT
LDH
CK
CK-MB
6.7 g/dL
4.0 g/dL
202 IU/L
31 IU/L
691 IU/L
1584 IU/L
163 IU/L
生化学(つづき)
AMY
115 IU/L
T-Cho 139 mg/dL
TG
65 mg/dL
BUN
10 mg/dL
CRE
0.4 mg/dL
Na
132 mEq/L
K
4.0 mEq/L
Cl
96 mEq/L
CRP
0.7 mg/dL
BS
132 mg/dL
HbA1c 5.8 %
BNP
547.9 pg/mL
心筋トロポニンT: Positive
H-FABP: Positive
心筋壊死所見の確認
上昇(時間)
正常化(日)
白血球
(WBC)
2~3
7
グルタミンオキサロ酢酸トランスアミナーゼ
(GOT)
6~12
3~7
乳酸脱水素酵素
(LDH)
12~24
8~14
3~4
3~7
クレアチニンキナーゼ
(CK、CK-MB)
C反応性蛋白
(CRP)
1日~3日
5週~6週
心筋トロポニンT(二峰性の動態)
(TnT)
3~4
14~21
その後再び増加に転
じ、4~5日目に二回
目のピークを迎え、3
週間くらいは血中から
検出される
心臓型脂肪酸結合蛋白
(H-FABP)
1~2
1~2
血清ミオグロビン
2~3
7~10
心筋ミオシン軽鎖 I
4~6
7~14
2日~3日
5週~6週
心筋のミオシンのみ検出できるならば特異度が高いと
いえるが、現在のIRMA法では、骨格筋のミオシンも反応してしまう。
赤血球沈降速度
(ESR)
BNPとは?
・BNPとはB型ナトリウム利尿ペプチドのこと
・心不全で左室拡張末期圧が上昇した際に、
刺激を受けて心筋細胞が分泌(A型は
主に心房から、B型は主に心室から)
・強力なナトリウム利尿作用と血管拡張作用
を持ち、心臓の前負荷と後負荷を軽減
・心筋細胞の肥大や繊維芽細胞の増殖(心臓
のリモデリング)を抑制し、直接の心保護作
用を持つ
心電図(ECG)
• 心電図を読む5のステップ
• ①リズムは?心拍数(安静時正常50~100)、
整か不整か?
• ②P波は?
• ③QRS波は?
• ④P波とQRS波は1:1対応か?
• ⑤ST-Tは?
心電図
ST-T上昇
異常Q波
PQの軽度の延長(AVブロックⅠ度)
NSR HR 96 V1~V4 Q波 aVL,V1-V3 ST ↑
ACS(acute coronary syndrome急
性冠症候群)=STEMIとそれ以外に
・ST上昇型急性心筋梗塞(STEMIステミ)
=今回のケース
・非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)
・不安定狭心症(最近3週間以内に狭心症が
増悪or新たに発症した狭心症)
・血性心疾患による突然死
異常Q波
Q波の幅が1mm以上、深さがR波の1/4を超える。
V1~3のQ波は、異常Q波(initial Rの消失)
正
常
部
位
正
常
部
位
梗
塞
部
位
梗
塞
部
位
静止膜電位が浅
い →Na チャ ネル
開口に不十分な
の で 脱 分 極 を Ca
チャンネルに依
存→脱分極に時
間がかかる→既
に脱分極してい
る正常部位が優
位になる。虚血
部位からの誘導
はマイナス方向
脱分極後期には、
梗塞部位の方が
優位になり虚血
部位からの誘導
はプラス方向へ
1mm=0.0
4s
経時的変化
•
http://www.udatsu.vs1.jp/infarct.htm
• 異常Q波が出現するのは半日くらいたってから。
• すぐ出るわけではない。
胸部X線写真
CPA
a
肋骨横隔
膜角
b
c
CTR=a+b/c
心胸郭比
CTR 49% (正常) CPA shape Lung clear
胸部X線写真
• CTR(cardiothoracic ratio心胸郭比)=49%(
正常は50%なので正常)心拡大なし
• 肺野はclear=肺うっ血なし
特に異常はみつけられない
CAG
LCA
PCI
AHA(American Heart Association)による
冠動脈の分類
・冠動脈の部位は通常AHA分類に従って表現される
右冠動脈・AHA分類 :
♯1~4
左冠動脈主幹部
♯5
左冠動脈前下行枝
♯6~10
左冠動脈回旋枝
♯11~15
左冠動脈前下行枝について
•♯6→近位部で第1中隔枝分岐部まで
•♯7→第1中隔枝分岐部~第2対角枝分岐部(
はっきりしない場合は第1中隔枝分岐部から心
尖部までの2等分点まで)
•♯8→♯7以降の前下行枝終末部
心臓カテーテル検査
【冠動脈造影】
病変
治療
• ♯6 狭窄100%
• cypher (薬剤溶出ステント,3.0×18mm)を挿入
→狭窄0%
• ♯7 狭窄75%
• POBA (Plain Old Balloon Angioplasty; 冠
動脈バルーン形成術)
→狭窄0%
• ♯8 血栓あり
LVG
AHA(American Heart Association)による
左室の分類
〈右前斜位像〉
〈左前斜位像〉
心臓カテーテル検査
【左室造影】
病変
•
原因
♯2 akinesis (無収縮)
• ♯3 dyskinesis (逆運動)
• 心尖部に巨大な血栓あり
左冠動脈前下行枝の狭窄により血液供給
が途絶え、心筋細胞が死んでしまったため。
死んでしまった細胞に多くの負荷
が加わったために心室瘤が形成さ
れ、血流が停滞したため。
※もっと早く受診し、安静にしておくべきだった!
冠動脈疾患の治療
・PCI(Percutaneous Coronary Intervention)
*POBA (plain old balloon angioplasty)
・CABG(Coronary artery Bypass
grafting)
*ステント治療
Bare metal stent
Drug eluting stent
・至適内科的治療の適応
About CYPHER(1)
*Point ステントにシロリムス塗布→細胞増殖を抑制
*Formed with 3parts
stent …acts as a scaffold that helps hold the artery open, which allows
blood flow to the heart and relieves symptoms caused by the blockage
The anti-rejection-type medication (sirolimus†)
… limits the overgrowth of tissue as the healing process occurs following
coronary stent implantation.
The inactive ingredient
…polymer (soft plastic) coating on the stent that contains the sirolimus,
and slowly elutes it into the artery wall around the stent
About CYPHER(2)
*Expected possible side effect
=Risks associated with all coronary stent placement,
Stent thrombosis (blood clot in the stent),
Allergic reaction, Irregular heart rhythm,
Reactions to antiplatelet or anticoagulant medications
Dyes during placement
*After receive Cypher stent
Aspirin + Antiplatelet or Anticoagulant Medications (blood-thinners).
日本ではチクロピジン(チエノピリジン系抗血小板薬)が利用され
ている。
副作用が問題…白血病、重篤な肝障害、顆粒球減少
Copy rights @
心臓超音波所見の見方
傍胸骨長軸断面図
心尖部四腔断面
傍胸骨短軸断面図
心臓超音波検査
心臓超音波所見
@ 左心前壁中隔
……severe hypokinesis
@ 心尖部
……dyskinesis (↓の血栓によるものと推定)
@ 左室内心尖部付近
……12.1x10.7mmのthrombus
* 参考1=壁運動異常の評価
収縮期壁厚増加率
40%以上…Normal
30%以下…Hypokinesis
10%以下…Akinesis
収縮期外法運動
……Dyskinesis
* 参考2=Dyskinesis の発生機序
心尖に血栓→心尖部周辺の心筋に無動区域発生
→無動域周辺の心筋は収縮期において収縮
→相対的に周辺から引っ張られる→外方運動
心筋梗塞の合併症にはどのようなものがあるか?
*早期合併症(発症~2w以内)
・不整脈 〈1〉虚血性(2~3dayで90%以上)
…心室性期外収縮→心室頻拍、心室細動へ移行
…上室性不整脈(頻脈、心房粗動、心房細動)
…徐脈性不整脈 RCA狭窄 → 洞性徐脈+房室ブロック
LAD,LCX狭窄 → 脚ブロック
〈2〉再灌流性←血流再開による再灌流障害
…心室性期外収縮、促進型心室固有調律
・ポンプ失調…心不全+心原ショック(入院早期の最大の死因)
killip classificationを参照、殆どは左心不全で呼吸困難を来たす
・急性心内膜炎…数日以内
心筋の壊死→(?)→急性心内膜炎→軽快
急性心不全の合併症(2)
・心破裂(自由壁破裂+心室中隔穿孔+乳頭筋断裂)
〈1〉自由壁破裂…主に左心室で発症(右心系は内圧が低いため殆どない)
理論的には1w以内(殆どは24h以内)
Risk factor →高齢女性、初回発症、発症後の高血圧、活動
経過…心タンポナーデ→ショック→pulseless electrical activity→突然死
〈2〉心室中隔穿孔…発症後1w以内に発症
経過…急性心不全→肺うっ血から呼吸困難、ショック→手術(予後不良)
VSDとの違いは、急性の変化のため代償機構が働かないこと
・乳頭筋不全症候群
乳頭筋が虚血暴露の結果、乳頭筋断裂(壊死+千切れる)や機能不全
→僧帽弁の弁尖運動を制御できなくなる→突然MR(僧帽弁閉鎖不全症)発症
→急性左心不全発症→肺うっ血から呼吸困難 (機能不全の場合は程度軽い)
急性心不全の合併症(3)
*後期合併症(発症後2w以降)
・心室瘤…心室が限局性に膨隆したもので形成には2w以上必要
心室壁は菲薄化
血栓形成傾向
心エコーでのdyskinesis、心電図ST上昇の持続が特徴的
補足
・ 心筋梗塞後症候群(Dressler症候群)…治療法改善から最近は減少
機序不明で発熱、胸痛、胸膜摩擦音聴診
心筋壊死成分に対する抗原抗体反応
→心膜炎、胸膜炎
出血性心膜炎の後遺症
→心膜腔、胸膜腔に貯留液
副腎皮質ホルモン有効 →予後は良好
合併症のまとめ
・左冠状動脈
急性期
心不全によるショック、不整脈(VF・VT)、心破裂、心室
中隔穿孔、乳頭筋断裂→急性虚血性MR→ショック
慢性期
心室瘤、虚血性心筋症・乳頭筋不全→虚血性MR
・左回旋枝
乳頭筋断裂→虚血性MR
・右冠状動脈
AVブロック・洞不全症候群→徐脈
促進性心室固有調律、心室性期外収縮→VT/VF
・その他
感染症、脳梗塞、腎不全
治療経過
#RMI 発症後2日のAMI post PCI
術後、自覚症状改善。
女性、発症2日後、前壁梗塞、初回梗塞
→心破裂のリスクも高く慎重に経過観察。
術後、大きなイベントなく経過。
心不全(1/5:EF 31%)に対しβ blocker開始。
2009年1月10日退院となった。
#左室内血栓症
ヘパリン持続投与、ワーファリン内服開始。
血栓が飛ぶリスクあり、症状安静にて経過観察。
1/5 エコーで左室内血栓消失。
退院後もワーファリンは継続。