Fig 1. Conceptual framework on care evaluation as

OPTIM
緩和ケアセミナー
ステップ緩和ケア(4)
息苦しさの治療と看護のコツ
45分
聖隷三方原病院 緩和支持治療科 森田 達也
緩和ケア認定看護師 藤本 亘史
Ⅲ 症状マネジメント
2.呼吸器症状
印象的な事例
80歳 男性 骨髄腫 肺炎による呼吸困難
サリドマイドで治療中、肺炎を合併
急性呼吸不全
呼吸困難のため、緩和治療も希望
骨転移による痛みのために
・デュロテップパッチ 7.5mg
・疼痛時 オプソ15mg
患者・家族と相談
-「できる治療はしてもらいたい」
-「苦しいのも最大限とってほしい。
もし治らなかったら苦しいまま死ぬのはいやなので」
モルヒネ持続静脈注射 オピオイド総投与量の20%
(20mg/日)
目的:呼吸困難の緩和
投与量上限:意識が維持される範囲内
呼吸数>12回
1日後
呼吸困難は緩和
7日後 肺野が改善傾向
28日後 退院
事例からのメッセージ
呼吸困難に対してモルヒネを使うこと
・「モルヒネを使うから、死んでしまう」のではない
・「呼吸不全を改善する方法がないから、死は避けられない。
苦しいところを、モルヒネで緩和する」
・「病態を改善する方法があれば、モルヒネと一緒に、
原因の治療を行えばよい。
治療が有効なら、モルヒネを中止できる」
<P.45>
呼吸器症状
背景知識
定義
呼吸困難 「呼吸時の不快な感覚」
・酸素飽和度と相関しない
・呼吸数と弱い相関
呼吸不全 低酸素血症
呼吸困難
酸素はOK
でも苦しい
モルヒネのいい適応
呼吸不全
酸素がない
苦しい
酸素がない
でも苦しくない
予後不良=治療目標の設定が重要
モルヒネは「鎮静」に近くなることが多い
事例(1)
65歳 男性 肺がん 肺内転移・リンパ管症
痛みはない
HOTで外来通院中
定期受診時に
「動いたとき、夜、咳が出て苦しい」
呼吸困難 Overview
<P.44>
まず評価
・低酸素血症状はないか?
・新しい治療できる原因はないか?
↓
・STEPにしたがった治療
・ケア
↓
・治療目標
-達成されたかを確認
-達成されなければFAQなど
<P.45>
呼吸困難
評価
・低酸素血症がないか?
→ HOT
・新しい治療できる病態がないか? → 原因の治療
表Ⅲ-2-1 呼吸困難の病態と、ステロイド・オピオイド・抗不安薬以外の治療
病態
治療
頻度が高いもの
がん性リンパ管症
肺内転移
腫瘍による無気肺
感染症
胸水
腹水
心不全
疼痛
貧血
抗生物質、ドレナージ(腫瘍)
胸水ドレナージ
腹水ドレナージ
利尿薬、輸液減量
鎮痛
輸血
頻度が低いもの
気胸
気道狭窄
COPD・気管支喘息
心囊水
上大静脈症候群
不安(パニック障害)
胸腔ドレナージ
ステント、放射線治療
β刺激薬、気管支拡張薬
心囊ドレナージ、利尿薬
放射線治療、ステント
ベンゾジアゼピン、SSRI
事例にもどって・・・
・低酸素血症は?
・新しい病態は?
事例
65歳 男性 肺がん 肺内転移・リンパ管症
痛みはない
HOTで外来通院中
定期受診時に
「動いたとき、夜、咳が出て苦しい」
低酸素血症
酸素飽和度 90~94%(2L)
新しい病態は?
1ヶ月レントゲンとってなかったので確認
→肺内転移・リンパ管症の悪化
レントゲンでなさそうなこと
肺炎
しんのう水
理学所見で否定できること
胸水・気胸(呼吸音に左右差がない)
腹水
気道狭窄・喘息(気道狭窄音)
上大静脈症候群(上肢の浮腫)
血液検査でなさそうなこと
貧血
低酸素血症
新しい病態
↓
なし
緩和治療を検討
呼吸困難 治療
呼吸困難の治療ステップ
●抗不安薬の追加
●治療目標を相談
●モルヒネの定期投与
治
療
●ステロイド
●モルヒネ・
抗不安薬の頓用
・呼吸数≧10回/分で眠気を
許容できる範囲で
20%/1 ~3日ずつ増量
●酸素
●輸液の調節(500~1000mL/日以下)
●咳・痰の対処
STEP1
STEP2
STEP3
「息切れ、息苦しさに困ったとき」(呼吸1)のパンフを用いて説明・ケアを行う
STEP1~3
酸素
酸素 vs. 空気
低酸素血症がある場合 酸素
低酸素血症がない場合 空気で酸素と同等の効果?
ポイント
1 がんではCOPDのような酸素量の微妙な調節はいらない
・COPD、以前の血液ガスでCO2の上昇がなければ大丈夫
・酸素飽和度と症状は一致しないので、「楽になる」なら投与
・医師の指示を得ておく
「**さん、CO2の蓄積もないみたいですし、酸素吸うとすごく
楽になるとおっしゃるので、~*Lで調節していいですか?」
2 カニューラの生活に合わせた使い方のコツ
輸液量の調節
STEP1~3
・死亡前1ヶ月の患者では、輸液を1000mL/日以下に減量
ポイント
1 1000mL/日以上の輸液
-胸水・気道分泌の悪化 → 呼吸困難
-「水がたまっている症状」がなにかあれば減量
0.4
0.35
0.3
0.25
0.2
3 weeks before 1 seek befor 24 hours before
death
death
death
2 患者・家族の意向に沿うことが重要
-「最小の量を継続」のほうが受け入れやすい家族も多い
STEP1~3
咳・たんの対応 コデインを上手に使う
コデインって、モルヒネと同じなの知ってましたか?
・コデインは肝臓で代謝されて6分の1がモルヒネになります
ポイント
1 「いつ咳がでますか」ときく、咳の出る時間に投与
「夜、咳で寝れない」 → 寝る前に投与
倍量投与
→ 夜間に1回追加できるよう指示・指導
2 コデイン散がのみにくければコデイン錠
3 コデインで増量してモルヒネに変更
コデイン20mg4T → 6T → 8T → モルヒネ20mg → 40mg
STEP1 ステロイド
機序
炎症に伴う腫瘍の周囲の浮腫を軽減する
高血糖、胃潰瘍、結核
なし
原則使用しない
あり
患者の意向
・「楽になりそうなら、何でもやってください」
・「う~んでもなあ・・副作用もあるらしいしな~」
まず短期間(3~5日間)の試験投与
OK
減量して維持投与
効果
副作用
中止
だめ
STEP1 ステロイド
漸減法
<P.134>
リンデロン4~6mg/日(食欲低下の場合)、4~8mg/日(それ以外の場合)を
3~5日間投与
・ 効果なし →中止
↓ 効果あり
①生命予後が3ヶ月未満
長期投与による合併症を観察しながら、効果の維持できる最少量に漸減
(0.5~4mg/日)
②生命予後が不明確、または3ヶ月以上
長期投与による合併症を避けるため 1~5日間の短期投与を反復
漸増法
0.5mg/日から開始し、0.5mgずつ4mg/日まで増量
投与開始後モニタリングすること
-精神症状(「元気になりすぎ」「ねむれない」) → 翌日から減量
-口腔内 カンジダ
-血糖、胃潰瘍、結核
ここまでのまとめ
・評価 呼吸不全のない呼吸困難
=モルヒネ有効
呼吸不全か?
=治療目標の設定
・酸素 微妙な調節はいらないことが多い 生活に合わせた使用
・輸液 患者・家族の意向を確認し、死亡前は1000mL/日以下へ
・咳止め コデインはモルヒネと一緒
咳の出る時間をカバーする、錠剤
・ステロイド 高血糖、胃潰瘍、結核
効果が予測できないときは試験投与
投与後効果と、精神症状をモニタリングして微調整
長期投与:口腔カンジダの定期的なチェックを
・モルヒネ
モルヒネのせいで助からないのではない
呼吸不全(-)、たんがない、呼吸数>20回で有効
たんが多い、呼吸数<20回・・・あまり有効でない=目標設定
・抗不安薬
STEP1
モルヒネ・抗不安薬の屯用
低酸素血症
生命危機
たんが多い
ドレナージ
悪くなりやすい
<20回
呼吸数
治療目標の設定
難しい
>20回
不安が強い
モルヒネのいい適応
オプソ5mg 0.5~1袋
コデイン20mg 1T
抗不安薬
ソラナックス1T
デパス1T
緩和治療
事例にもどって・・・
・低酸素血症は?
・新しい病態は?
事例
65歳 男性 肺がん 肺内転移・リンパ管症
痛みはない
HOTで外来通院中
定期受診時に
「動いたとき、夜、咳が出て苦しい」
事例にもどって・・・
STEPの選択肢
STEP1
この患者さんの選択肢
STEP1~3
酸素
輸液の調節
咳・たんの対処
・酸素 HOT中
・輸液は行っていない
・咳の対処 ◎
コデインをはじめよう
STEP1
・ステロイド
・モルヒネの屯用
・抗不安薬の屯用
・ステロイド ○
きくかみてみてもよさそう
・屯用はコデインをはじめるから
コデインにしよう
処方例
コデイン20mg 4T だいたい6時間ごと
便秘気味になったら カマグ1.5g
嘔気があれば
ノバミン3T分3を1週間飲んでください
咳時・呼吸困難時
コデイン20mg 1T 1日4回まで追加
咳がかるくなったけど、もう一息・・
コデイン20mg 8T だいたい6時間ごと
カディアン20mg 1C
咳時・呼吸困難時 オプソ5mg 1袋 1日4回まで追加
処方例
咳は止まりました
息苦しいのがもう一息、何か方法はありますか
リンデロン4~8mg 朝 ×5日
タケプロン 1C
・開始後数日の精神症状・睡眠を確認
・口腔内確認 カンジダ
・安全にいくなら、開始後1,3日後に血糖
■すっごく効果があった。続けたい
2~4mg以下で維持
■あんまり変わらない
中止
■「なんか元気になりすぎておかしなこというんです」
いったん中止、次、半量で試験投与
STEP1までで対応できないときは・・・
事例(2)
65歳 女性 肺がん 肺内転移・リンパ管症
ステロイド、オプソの屯用投与をしていたが、
「じっとしていても苦しい」ため入院
低酸素血症
使用しているオピオイド:
1)痛みなし
2)カディアン60mg
3)デュロテップ5mg
呼吸困難 治療
呼吸困難の治療ステップ
●抗不安薬の追加
●治療目標を相談
●モルヒネの定期投与
治
療
●ステロイド
●モルヒネ・
抗不安薬の頓用
・呼吸数≧10回/分で眠気を
許容できる範囲で
20%/1 ~3日ずつ増量
●酸素
●輸液の調節(500~1000mL/日以下)
●咳・痰の対処
STEP1
STEP2
STEP3
「息切れ、息苦しさに困ったとき」(呼吸1)のパンフを用いて説明・ケアを行う
STEP1
モルヒネ・抗不安薬の屯用
低酸素血症
生命危機
たんが多い
ドレナージ
悪くなりやすい
<20回
呼吸数
治療目標の設定
難しい
>20回
不安が強い
モルヒネのいい適応
オプソ5mg 0.5~1袋
コデイン20mg 1T
抗不安薬
ソラナックス1T
デパス1T
緩和治療
呼吸不全で患者さんが亡くなってしまいそうなときに
苦痛緩和のためにモルヒネを始めるコミュニケーション例
<コミュニケーション例>
「息苦しい感じをなるべく和らげる方法を探していこうと思います。お薬としてはモ
ルヒネを用います。モルヒネというと中毒になるとか、寿命が短くなると皆さん思
われていますが、つらさをとる目的で使う限りはそのような副作用はありません。
息苦しさを和らげるときも、患者さんが歩けるくらいの状態であれば大きな副作用
はないのですが、○○さんの場合、酸素の量が少なくなっていてそれだけで生命
を維持することが難しい状態です。ですから、お薬は息苦しさを和らげるために使
いますが、息苦しさがとれてもうとうとされていたり、お話が難しくなることもあると
思います。患者さんとご家族のご希望をうかがって、少しうとうとしても息苦しさが
とれる方法をとっていくか、眠気のない方法で様子を見ていくか、相談させてくだ
さい」
定期的なオピオイドの持続注射での開始
■オピオイドが投与されていない患者
モルヒネ5~10mg/日で開始
■オピオイドが投与されている患者
*ややこしい時は専門家に相談を
モルヒネ・オキシコンチン
静脈モルヒネに計算して同じ量で開始
デュロテップ
はったまま、1日のモルヒネ静脈相当量の20%を上乗せする
■呼吸困難時の指示を出しておく
① 早送り1時間分 15~30分で反復してよい
ベースアップ 30~50%/6~12時間ごと
<P.160>
ワンポイント
1日のオピオイドから呼吸困難のモルヒネを計算する
オキシコンチン40mg
↓
同じ量の
モルヒネ30mg/日に変更
デュロテップ5mg
↓
モルヒネ静脈60mgだから
20%の12mgくらいを追加
事例にもどって・・・
・治療目標設定する
・モルヒネの持続投与を始める
事例(2)
65歳 女性 肺がん 肺内転移・リンパ管症
ステロイド、オプソの屯用投与をしていたが、
「じっとしていても苦しい」ため入院
低酸素血症
使用しているオピオイド:
1)痛みなし
2)カディアン60mg
3)デュロテップ5mg
事例にもどって・・・
STEP2
STEPの選択肢
この患者さんの選択肢
STEP2
・治療目標設定
ロールプレイテーブルで
・モルヒネ持続投与
使っているオピオイド
1)なし
2)カディアン60mg
3)デュロ5mg
1)5~10mg
2)モルヒネ静脈と同じ量=30mg
3)モルヒネ静脈の20%上乗せ
デュロ5mg =モルヒネ静脈60mg の20%
モルヒネ12mg
今日のまとめ
・評価 呼吸不全のない呼吸困難か =モルヒネ有効
呼吸不全か?
=治療目標の設定
・酸素 微妙な調節はいらないことが多い 生活に合わせた使用
・輸液 患者・家族の意向を確認し、死亡前は1000mL/日以下へ
・咳止め コデインはモルヒネと一緒
咳の出る時間をカバーする、錠剤
・ステロイド 高血糖、胃潰瘍、結核
効果が予測できないときは試験投与
投与後効果と、精神症状をモニタリングして微調整
長期投与:口腔カンジダの定期的なチェックを
・モルヒネ
「モルヒネのせいで死んでしまう」のではない
呼吸不全(-)、たんがない、呼吸数>20回で有効
たんが多い、呼吸数<20回・・・あまり有効でない=目標設定
・抗不安薬
ワンポイント
息苦しさの看護のコツ
1)特徴を把握する
2)日常生活への影響を確認する
3)患者の認識・体験を確認する
(患者自身の対処方法の確認する)
4)上記を踏まえて対処する
(患者・家族と目標の設定を共有し対処する)
息苦しさへの看護のコツ
1)特徴を把握する
・がん患者の約7割が亡くなるまでに体験する
・原発性・転移性肺腫瘍がなくとも生じる
・呼吸困難と呼吸不全の鑑別が必要である
・呼吸困難は酸素飽和度と比例しない
・呼吸困難に伴い不安が増強し
不安により呼吸困難が悪化することがある
・呼吸困難にオピオイドは有効であるが
患者の状態に応じた治療目標が重要である
息苦しさへの看護のコツ
2)日常生活への影響を確認する
*睡眠
*排泄
*摂食・栄養
*清潔
すべてを喪失することが多い
*活動(移動)
*コミュニケーション
*楽しみ
息苦しさへの看護のコツ
3)患者の認識・体験を確認する
「このまま死んでしまうのか」
「苦しくて何もできない」
「またいつ同じ苦しさがくるか怖い」
「苦しくても酸素はしたくない」
「自分のことは自分でしたい」
「苦しいのは嫌だから薬で眠ったほうが楽」
呼吸困難は主観であり体験した患者にしかわからない
患者の認識・体験を知ることがケアの近道になる
息苦しさへの看護のコツ
4)対処する
①口渇への対処
・氷、口腔ケア、感染予防、適度な湿度
②酸素投与の工夫
・患者の嗜好に合わせる ・時々、はずす、緩める
・行為によって変える (食事時: ナザール、 症状強い時: マスク )
③体位の工夫
・いいほうの肺を上にする
④環境整備
・低めの室温、風が吹きぬける工夫、顔に風を当てる
・移動ができるようなベット配置 トイレの場所
⑤理学療法
・肺理学療法、マッサージ
⑥精神的ケア
・理解・保証(死なない、すぐに対処する方法の存在)
・存在(寝るまでそばにいる)
・セルフコントロールの強化(くすりを置いておく)
息苦しさへの看護のコツ
酸素の使用
環境調整
・低温、気流(外気
、 うちわ、扇風機
)
・酸素をしながら
動けるように
・ナースコールの
位置と固定
姿勢の工夫
・起座位
・機能している
肺を上にする
・酸素療法の使
用法を指導し
不快感に対処
・酸素吸入中は
乾燥するので、
いつでも水分
を取れるよう
にする
・口渇対策
・薬は手元に
自分ですぐに
使えるように!
息苦しさのある患者へのケア 具体的に
1.酸素マスクやカニューレを嫌がる
2.患者が吸引を苦痛とする
3.「このまま死んでしまうのではないか」とパニックになる
4.眠気を嫌がる
5.呼吸数が低下したが 呼吸困難がある
6.患者の家族が「苦しそうでみていられない」と訴える
息苦しさのある患者へのケア
1.酸素マスクやカニューレを嫌がる
 酸素吸入前後で飽和度はどうか?
- 明らかな改善がないなら酸素投与中止も検討する
 嫌がる原因を検索し、その改善を試みる
- 経鼻・マスクの臭い →ハッカ油
- 圧迫感 →フェイスマスクの吹き流し
- 束縛感 →ずっとフェイスマスクでなく
安静時経鼻ナザールに変える
- 口渇感 →口腔ケア(ウエットケア オーラルバランス)
(濡れガーゼ ごま油 氷など)
- せん妄の可能性 →せん妄治療
息苦しさのある患者へのケア
2.患者が吸引を苦痛とする
・患者の全身状態を評価する
・予後や苦痛の程度を把握する
・本人・家族の希望の確認し上記を踏まえ
排痰を援助する・しない方向を確認してケアをおこなう
苦しくても、最期まで痰をとって欲しい人もいる
これ以上、吸引など苦しい方法を続けたくない人もいる
患者が吸引を苦痛とする
メリットとデメリットのバランスを考えよう!
デメリット
メリット
主気管支レベルの分泌液を
除去して気道を確保する
本人の苦痛
吸引中の低酸素状態
不整脈を誘発
吸引のこつ
吸引圧:150 ~200mmHg
吸引時間:10〜15秒以内
吸引しやすい角度・体位をチームで共有
タイミング:ルーチンで行なう必要はない
患者が吸引を苦痛とする
~吸引と体位交換の工夫~
 吸引
- 頻回な吸引は痰を湧きあがらせ苦痛を増強させることに
繋がる場合がある。
- (例)無理に気管吸引を行わず綿棒(ツースエッテ)や口
腔内吸引に留めることが有効な場合がある
 体位の工夫
- 全てを排痰目的とするのではなく 痰を無理に動かさない
ことも重要である
- (例)ルーチンな体位変換は痰を動かし咳嗽や喘鳴、
痰による気道閉塞 を助長する場合がある
 ケアの方向性にあわせた十分な説明が重要である
患者が吸引を苦痛とする
~家族への説明~
・家族の今までの体験を知り価値観を尊重した対応をする
今までは苦しい時に「吸引で楽になってきた」と言う経験から
病状悪化があっても吸引によって「また楽になるのではないか」と
いう不安や希望を持っている場合がある
(例)
「吸引を減らすことで何かご心配なことがありますか」
「命が短くなったり、苦しさが強くなると思われていませんか」
「頻回な吸引や体位交換をすることで余計苦しくなる場合があります」
「ゼロゼロしていても 必ずしも本人が苦しさを感じている訳では
ないと思います」
※ 家族も迷い苦悩していることを理解する
息苦しさのある患者へのケア
3.「このまま死んでしまうのではないか」とパニックになる
■呼吸不全なのか窒息なのか、呼吸不全を伴わない
パニックなのか酸素飽和度や理学的所見から判断する
・酸素量を調整する
・指示されている呼吸困難時の薬剤を投与する
・空気の流れが顔にあたるように窓を開ける、うちわで扇ぐ
・室温をさげる、患者の安楽な体位をとる
・患者を一人にせず、そばにいて背中をさする
・空気の流れや胸に患者自身の手を置き、手の温かさと
呼吸運動のあることを意識させる
・注意を転換する
(苦しさに意識が向いていると不安につながり悪循環に
つながる可能性)
息苦しさのある患者へのケア
3.「このまま死んでしまうのではないか」とパニックになる
■パニックが治まった後に考えること
・なにか1つ「これを使えば大丈夫」というものをみつける
(例)
くすりを手元においてすぐ飲む、吸入する、
風を浴びる、マッサージする、だれかと話す、
眠るまで手を持ってもらう
対処方法があることを保証する
患者自身で「苦しくなった時にこうすれば対処できる」という
セルフケア・自己コントロール感をもてるように支援する
息苦しさのある患者へのケア
4.眠気を嫌がる
・眠気を嫌がる患者の体験・認識を聴く
・日常生活への影響を確認する
・生活リズムの変化を確認する (夜間不眠で昼夜逆転など)
・眠気の原因が他にあるのか検索する
病態(ナルコーシス 脳転移 高カルシウム 電解質異常 など)を確認する
・原因がオピオイドの可能性が考えられるなら減量を考慮する
・オピオイド定期投与からレスキューのみの投与に変更する
・定期的に抗不安薬を使用しているのであれば眠前だけにする
・患者がモルヒネ・抗不安薬以外の方法を望む場合
「眠くならない」対策を検討する
ステロイド、吸入、理学療法、鍼、体位の工夫など
息苦しさへある患者へのケア
5.呼吸数が低下したが 呼吸困難がある
■呼吸数が低下しても呼吸困難が緩和されない場合は
モルヒネの効果のない呼吸困難である
医学的な判断・評価が必要である
・さらにモルヒネの使用量が増えると傾眠・鎮静となる
・患者・家族の意向が苦痛緩和中心でよいのかを相談する
・状況に応じてモルヒネ以外の方法を検討する
息苦しさのある患者へのケア
6.家族が「苦しそうでみていられない」と訴える
・家族の体験・思いを傾聴する
・上記を踏まえ以下の点を説明する
・ 多呼吸、頻呼吸、喘鳴など、息苦しそうに見えても、
必ずしも本人が息苦しさを感じているわけではないこと
・ 多くの場合、低O2 高CO2血症により意識レベルが低下し
苦痛症状を感じていないであろうこと
・ 呻吟は、緊張した声帯に呼気が通過することで
生じる音であり、苦しくて発するうめき声ではないこと
・ 家族がそばにいることの意味・できることを伝える
(例)「私達より家族の方が 手を握ったりそばにいるこが、
何より本人の安心感につながっていると思いますよ」