アンチドーピング

島根県薬剤師会
学生実習対策委員会
世界ドーピング防止規定とは?
 世界ドーピング防止規程(World Anti-Doping Code. 以下
WADA規程)は世界を統一するアンチ・ドーピング規則とし
て多くの国際競技連盟、各国の国内オリンピック委員会、及
びドーピング防止機関により採択されています。
WADA規程に批准した組織は、WADA規程の下に定められた
5件の国際基準を遵守することが義務づけられています。ま
た、国際基準に基づいたドーピング防止活動をWADA規程に
批准した組織が実施していく上で、推奨モデルとしてベスト
プラクティスモデル並びにガイドラインが設けられています
。
 以上のWADA規程の事項に準拠した独自の規則を、国際及び
国内競技団体、各国ドーピング防止機関、各国オリンピック
委員会等の組織全てが有することにより、国際競技大会など
の場面において、統一し、調和(harmonize)が図られたドー
ピング防止のための環境が実現されています。
 世界ドーピング防止規定(WADA code)は英文版が原本とな
ります。本規定の英文と和文に差異がある場合には、英文が
優先されます。
WADA規程の下に定められた5件の国際基準
 禁止表国際基準
禁止される物質と方法の一覧。 毎年更新されます。
 検査に関する国際基準
ドーピング検査に関わる各事項、ドーピング検査に対応する検査員側、及び検査対象となった
競技者側の権利・義務事項などが規定されています。
 治療目的使用に係る除外措置に関する国際基準
禁止表に掲載された物質・方法を治療目的で使用せざるを得ない場合、申請するTUEが合法的
に許可される手続きを定めています。
 分析機関に関する国際基準
WADAが公認する分析機関の運営及び認定更新に関する事項が規定されています。
 個人情報保護に関する国際基準
個人情報扱いに関する事項が規定されています。
禁止表国際基準
WADA禁止表の項目(2010年)
Ⅰ.常に禁止される物 Ⅱ.競技会(時)に禁止 Ⅲ.特定競技において
される物質と方法
禁止される物質
質と方法(競技会(時)
及び競技会外)
○禁止物質
S1.蛋白同化薬
S2.ペプチドホルモン、成長因子およ
び関連物質
S3.ベータ2作用薬
S4.ホルモン拮抗薬と調節薬
S5.利尿薬と他の隠蔽薬
○禁止方法
M1.酸素運搬能の強化
M2.化学的・物理的操作
M3.遺伝子ドーピング
○禁止物質
S6.興奮薬
S7.麻薬
S8.カンナビノイド
S9.糖質コルチコイド
P1.アルコール
P2.ベータ遮断薬
TUE(Therapeutic Use Exemption)
(治療目的使用に係る除外措置)
 TUEとは、禁止物質・禁止方法を治療目的で使用
したい競技者が申請して、認められればその禁止物
質・禁止方法が使用できる手続き。
 分析結果として禁止物質が検出されても、TUEを
取得していればドーピング違反にならず、TUEを
取得していなければドーピング禁止違反として制裁
の対象となる。
 TUEは原則として事前に申請して許可を得る手続
きであり、検査で禁止物質が検出された後で治療目
的のための使用であることを主張しても制裁を免れ
ることはできない。
TUEの申請
 1.TUE申請の承認の条件
 以下の4条件をすべて満たすこ




とが必要です。
(1) 治療上使わざるを得な
い(使用しないと健康上重大な
障害を及ぼすことが予想される
)
(2) 他に代替治療法がない
(3) 治療上使用した結果、
競技力を向上させない
(4) 当該禁止物質又は禁止
方法を使用する必要性が、以前
に禁止されていた物質又は方法
を使用したことの結果として生
じた物ではないこと
JADA TUE申請書
規定の変更について
 禁止表国際基準、治療目的使用に係る除外措置に関
する国際基準は毎年変更されます。
 毎年変更された冊子が発行されますので常時最新の
情報を把握することが必要
JADAの活動内容
 JADAは我が国におけるドー
ピング防止活動を推進し、
展開しています。現在、
JADAに加盟する団体は60団
体となっています(2008年3
月)。今後もJADAは、競技
会ならびに競技会外検査の
実施、及びドーピング防止
に関する教育・啓発活動や
ドーピング防止活動に関わ
る情報の管理・収集・提供
などについても積極的な活
動を実施していきます。
JADA加盟団体
(
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(財)日本陸上競技連盟
(財)日本水泳連盟
(財)日本サッカー協会
(財)全日本スキー連盟
(財)日本テニス協会
(社)日本ボート協会
(社)日本ホッケー協会
(社)日本アマチュアボクシング連盟
(財)日本バレーボール協会
(財)日本体操協会
(財)バスケットボール協会
(財)日本スケート連盟
(財)日本アイスホッケー連盟
(財)日本レスリング協会
(財)日本セーリング連盟
(社)日本ウエイトリフティング協会
(財)日本ハンドボール協会
(財)日本自転車競技連盟
(財)日本ソフトテニス連盟
(財)日本卓球協会
(財)日本相撲連盟
(社)日本馬術連盟
(社)日本フェンシング協会
(財)全日本柔道連盟
(財)日本ソフトボール協会
(財)日本バトミントン協会
(社)日本ライフル射撃協会
(財)全日本剣道連盟
(社)日本近代五種・バイアスロン連合
(財)日本ラグビーフットボール協会
社)日本山岳協会
(社)日本カヌー連盟
(社)全日本アーチェリー連盟
(財)全日本空手道連盟
(社)日本クレー射撃協会
(財)全日本ボウリング協会
日本ボブスレー・リュージュ連盟
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全日本アマチュア野球連盟
(社)日本武術太極拳連盟
(社)日本カーリング協会
(社)日本トライアスロン連合
(社)全日本テコンドー協会
(財)日本ゴルフ協会
(社)日本ビリヤード協会
(社)日本スカッシュ協会
(社)日本ボディビル連盟
日本セパタクロー協会
(社)日本ダンススポーツ連盟
NPO法人全世界空手道連盟 新極真会
日本ドラゴンボート協会
(社)日本自動車連盟
(社)日本パワーリフティング協会
(財)日本モーターサイクルスポーツ協会
(財)日本障害者スポーツ協会
国際空手道連盟極真会館
(社)日本綱引連盟
(社)日本アメリカンフットボール協会
(社)日本オリエンテーリング協会
(財)日本ボールルームダンス連盟
NPO法人日本水中スポーツ連盟
日本フロアボール協会
(社)国際空手道連盟極真会館
全日本極真連合会
日本ローラースポーツ連盟
(財)全日本軟式野球連盟
(財)日本ゲートボール連合
(財)全日本なぎなた連盟
日本チェス協会
NPO法人日本ペタンク協会
JADA認定商品
 このマークは、JADAが
認定商品として認めた商品
に対し、ラベル上での貼付
用に用いるマークです。 J
ADAの設ける基準をクリ
アしていることを表し、J
ADAとしての保証を示し
ています。 青空の下で走る
人の絵柄と、ドーピング検
査クリアの「OK」を意味す
る円を組み合わせたマーク
です。クリーンで、健全な
スポーツマン精神を表現し
ています。
WADA禁止表の各論
S1.蛋白同化薬
いわゆる筋肉増強剤として、筋力の強化と筋肉量の増
加によって運動能力を向上させ、同時に闘争心を高める
目的で使用され、様々な投与方式で大量に使用されるた
め禁止。
 クレンブテロール(スピロペント:喘息治療薬)→筋肉増
強、
ゼラノール(動物肥育ホルモン)→体重増加や成長促進
作用、選択的アンドロゲン受容体調節薬(筋萎縮治療薬
、アンドロゲン代替治療薬)→作用機序からドーピング
物質
など様々な理由で禁止。

禁止表に掲載されている蛋白同化薬
(『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2009年版』p4より)
成分名
商品名
ダナゾール
ポンゾール
メスタノロン
メサノロン
メステロロン
プリモボラン
メチルテストステロン
エナルモン
ナンダロロン
デカ・デュラミン
プラステロン
マイリス
テストステロン
エナルモン
クレンブテロール
スピロペント
蛋白同化薬を含む一般用医薬品

滋養強壮薬には、蛋白同化剤(テストステロン)及び関連物質を含む漢方薬(海
狗腎;カイクジン、麝香;ジャコウ、鹿茸;ロジン、鹿鞭;ロクベン)や医薬品以外のい
わゆる健康食品として、滋養強壮目的の錠剤やドリンク剤が多数市販されてお
り、これらの中にテストステロン等の関連物質が含まれている可能性も否定できま
せん。国体期間中に限らず普段から使用しないようにしましょう。
使ってはいけない滋養強壮薬:蛋白同化剤(テストステロン)及び関連物質(商
品名)
延寿回生
活力-M
トノス
プリズマホルモン ヘヤーグロン
錠
外用ホルモン塗 強力ラール
布剤オットピン
オノック
グローミン
強力バロネス
金蛇精
オットローヤル
オットピン-S
マヤ金蛇精
プリズマホルモン
精
蛋白同化薬を含む一般用医薬品2

内服の毛髪用薬として用いられている成分(フィナステリド等のα-還元酵素阻害
剤)2005年から禁止になりました。日本では2005年12月よりプロペシア(万有)と
いう販売名で販売が開始されています。また、サプリメントの中にはその成分に似た
物質が入っていることもあります。毛髪・体毛用塗り薬では、男性ホルモンが配合さ
れているものがあり、これらも禁止されています。
使ってはいけない体毛用薬:蛋白同化剤(テストステロン)及び関連物質を含む(商
品名)
ハツモール・軟膏
ペレウス
ミクロゲン・パスタ
S2.ペプチドホルモン、成長因子及び関連物質
 エリスロポエチン等は、赤血球生成促進因子であるため酸素運搬
能が上昇し、持久力が必要な種目では運動能力の強化につながる
ため禁止。
 成長ホルモンは脂肪組織におけるトリグリセリドの加水分解、肝臓でのグル
コース排泄促進作用などを有するが、筋肉増強を期待する乱用はアレル
ギー症状や糖尿病を誘発し、大量投与で末端肥大症などの有害作
用が発現するため禁止
 インスリン様成長因子は成長促進作用とインスリン様作用を有し
、細胞の増殖と分化を促進するため禁止。
 絨毛性ゴナドトロピン(CG)及び黄体形成ホルモン(LH)は、男子不
妊症や男性の下垂体性性腺機能不全の治療に投与され、男性ホルモン
の産生量を増加されるため、男性においてのみ禁止
 インスリンは筋肉におけるグルコースの利用とアミノ酸の貯蔵を
促進し、蛋白の合成を刺激し、分解を抑制するために禁止。
 コルチコトロピン類(ACTH)は副腎皮質を刺激し、血中の糖質コルチコイ
ド、鉱質コルチコイドを上昇させ弱い男性ホルモンの分泌促進作用を有す
るため禁止
禁止表に掲載されているホルモン
(『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2009年版』p6より)
成分名
商品名
エリスロポエチン
エスポー
ダルベポエチン
ネスプ
成長ホルモン
ジェノトロピン
インスリン様成長因子
ソマゾン
ゴナトロピン
ゴナトロピン
インスリン
インスリン
コルチコトロピン類
コートロシン
S3.ベータ2作用薬
 すべてのβ2作用薬は光学異性体を含めて禁止
 吸入サルブタモール(最大1日用量1600マイクロg)と吸入サルメテ
ロールは禁止されずTUEは不要だが使用の申告は必要。
 尿中サルブタモールが1000ng/mlを上回るときは、競技者
が吸入治療(最大1日用量1600マイクロg以内)の結果で
あることを証明しないかぎり違反が疑われる分析報
告とされる。
β2作動薬を含む一般用医薬品
 β2-作用薬は常時禁止です。市販の鎮咳去痰薬に含まれるトリメトキノール
、メトキシフェナミンにはβ2作用があり禁止物質とみなられます。
使ってはいけない鎮咳去痰薬: β2-作用薬を含む(商品名)
アスクロン
エスエスブロン
錠Z-液Z
新セキコデチン スパークせき
カプセル
どめ顆粒
アストーマゴー
ルド
エフストリン糖
衣錠
強力アスメトン コルゲンコーワ
咳止め透明
カプセル
セキオール
大心せきど
め錠
ヘルビックA糖
衣錠
コデポンサット
新カネドリン
錠
エスタックこど カイゲンきせ
も用鼻炎シロ 止めカリュー
ップ
新トニン咳止 セキエース
め液
セキカット
フストールシロッ
プA
S4.ホルモン拮抗薬と調節薬
 アロマターゼ阻害薬、選択的エストロゲン受容体調
節薬は、乳癌治療薬、骨粗鬆症治療薬、排卵誘発薬
として使われるが、抗エストロゲン作用を有するた
めに禁止。
 ミオスタチン阻害薬は、筋肉増強を抑制するミオス
タチンを阻害することにより、筋力向上が期待でき
るために禁止。
禁止表に掲載されているホルモン拮抗薬
(『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2009年版』p7より)
成分名
商品名
アセブトロール
アリミデックス
レトロゾール
フェマーラ
エキセメスタン
アロマシン
ラロキシフェン
エビスタ
タモキシフェン
ノルバデックス
トレミフェン
フェアストン
コロミフェン
クロミッド
シクロフェニル
セキソビット
S5.利尿薬と他の隠蔽薬
 以下の2つの理由から利尿薬は禁止されている。
①排尿量を増加させ、尿中に排泄する禁止薬物
・代謝物の尿中濃度を下げて、禁止物質の検出を逃
れること
②体重別種目で有利に導くために水分の排泄を
促して体重を急速に減量すること、
 α-還元酵素阻害薬は2009年より禁止薬物から除
外された。
禁止表に掲載されている利尿薬・隠蔽薬
(『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2009年版』p7より)
成分名
商品名
アセタゾラミド
ダイアモックス
ブメタニド
ルネトロン
クロルタリドン
ハイグロトン
フロセミド
ラシックス
インダパミド
ナトリックス
スピロノラクトン
アルダクトンA
チアジド類
ダイクロトライド
トリアムテレン
トリテレン
プロベネシド
ベネシッド
アルブミン
アルブミン
デキスタラン
デキストロン
ヒドロキシエチル澱粉
サリンヘス
M1.酸素運搬能の強化
 自己血、同種血、異種血、すべての赤血球製剤を投
与することをいう。(血液ドーピング)
 酸素摂取、酸素運搬、酸素吸入を人為的に促進する
こと、修飾ヘモグロビン製剤が含まれるが、これら
に限定するものではない。
M2.化学的・物理的操作
 ドーピングコントロールで採取された検体の完全性
及び有効性を変化させるために改竄しようとするこ
とは禁止されている。
 カテーテルの使用、尿のすり替え、尿の改変などが
含まれるが、これらに限定されるものではない。
 静脈内注入は禁止される。ただし、外科的処置の管
理、救急医療・臨床的検査における使用は除く。
M3.遺伝子ドーピング
 競技能力を高める可能性のある内因性遺伝子の発現
を修飾する、細胞・遺伝因子の移入、細胞・遺伝因
子・薬物の使用は禁止される。
 ペルオキソーム増殖因子活性化受容体デルタ(
PPARδ)作動薬、PPARδ-AMP活性化プロテインキナ
ーゼ(AMPK)系作動薬は禁止される。
S6.興奮薬
 中枢神経系を刺激して敏捷性を高め、疲労感を低減
して競争心を高める効果を有するが、疲労の限界に
対する正常な判断力を失わせ、時には競技相手に危
害を与えかねないため、禁止。
 多くの一般用医薬品の感冒・鼻炎用薬には、エフェ
ドリンやメチルエフェドリンなどが配合されている
。
禁止表に掲載されている主な興奮薬
(『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2009年版』p9より)
成分名
商品名
コカイン
塩酸コカイン
メタンフェタミン
ヒロポン
モダフィニル
モディオダール
アドレナリン
ボスミン
エフェドリン
エフェドリン
エチレフリン
エホチール
メチルエフェドリン
メチエフ
メチルフェニデート
リタリン他
ペモリン
ベタナミン
セレギリン
エフピー
ストリキニーネ
ホミカエキス
漢方薬に注意

漢方薬を構成する生薬には、それぞれたくさんの
成分が含まれており1つ1つの成分を禁止物質にあ
たるかどうか特定するのはとても困難です。漢方薬
にも明らかに禁止物質を含むものがあり、麻黄はそ
の代表です。さらに名前が同じでも製造会社、原料
の産地、収穫の時期などで成分が違うことがありま
す。また、カタカナ表記で西洋薬と間違えてしまうよう
な漢方薬もあります。例として、麻黄にはエフェドリン(
指定物質)やメチルエフェドリン(指定物質)、茶葉にはカフェ
イン(監視プログラム)、ホミカにはストリキニーネ(指定物質)、
陳皮にはシネフロン(監視プログラム)、そして前述の滋養
強壮薬には蛋白同化作用を示す成分が含まれていま
す。
WADA禁止表(麻黄を含む漢方方剤)
方剤名
番号
組成
方剤名
番号
組成
越婢加朮湯
28
<ツムラ>石膏、麻黄(6.0g)、
蒼朮、大棗、甘草、生姜
小青竜湯
19
1
<ツムラ>葛根、大棗、麻黄
(3.0g)、甘草、桂皮、芍薬、
生姜
<ツムラ>半夏、甘草、桂皮、五
味子、細辛、芍薬、麻黄
(3.0g)、乾姜
神秘湯
85
<ツムラ>麻黄(5.0g)、杏仁、
厚朴、陳皮、甘草、柴胡、蘇葉
防風通聖散
62
<ツムラ>葛根、大棗、麻黄
(3.0g)、甘草、桂皮、芍薬、
辛夷、川芎、生姜
<ツムラ>滑石、白朮、桔梗、黄
芩、石膏、甘草、当帰、芍薬、
川芎、山梔子、連翹、薄荷、荊
芥、防風、麻黄(1.2)、生姜、
大黄、芒硝
麻黄湯
27
<ツムラ>杏仁、麻黄(5.0g)、
桂皮、甘草
葛根湯
<三和>葛根、麻黄(3.0g)、
大棗、蒼朮、桂皮、芍薬、甘草、
生姜、加工附子
葛根加朮附
湯
S-07
葛根湯加川
芎辛夷
2
桂芍知母湯
S-10
<三和>白朮、桂皮、芍薬、知
母、浜防風、麻黄(3.0g)、甘
草、生姜、附子
麻黄附子細辛
湯
12
7
<ツムラ>麻黄(4.0g)、細辛、
修治附子末
桂麻各半湯
TY-0
37
<東洋>桂枝、杏仁、麻黄
(2.0g)、芍薬、甘草、大棗、
生姜
麻杏甘石湯
55
<ツムラ>石膏、杏仁、麻黄
(4.0g)、甘草
麻杏薏甘湯
78
<ツムラ>薏苡仁、麻黄(4.0g)、
杏仁、甘草
薏苡仁湯
52
<ツムラ>薏苡仁、麻黄(4.0g)、
当帰、蒼朮、桂皮、芍薬、甘草
五虎湯
95
<ツムラ>石膏、杏仁、麻黄
(4.0g)、桑白皮、甘草
五積散
63
<ツムラ>蒼朮、陳皮、茯苓、半
夏、当帰、厚朴、芍薬、川芎、
白芷、枳実、桔梗、生姜、桂皮、
麻黄(1.0g)、甘草、大棗
エフェドリン類を含む一般用医薬品
 多くの総合感冒薬(いわゆる風邪薬)には禁止物質
のエフェドリンやメチルエフェドリン、プソイドエフェドリン等が含まれ
ています。エフェドリンが含まれる場合はt1/2から考えて
競技会3日前までに服用を止めましょう。
ストリキニーネ(ホミカ)を含む一般用
医薬品
 胃腸薬にはストリキニーネ(禁止物質)を含有する生薬ホミカが成分として含まれてい
るものがあります。ストリキニーネ(ホミカ)は興奮剤として禁止され、検出されれば
直ちに違反です。胃腸薬を使う場合はホミカ(ストリキニーネ)が含まれていないこと
を確認しましょう。
使ってはいけない胃腸薬
どくじんA
錠
バンジアス
顆粒
ホミカロート
救胆
済仁
大昭快晴
散
ガロニン錠
ワクナガ胃
腸薬G
金魚胃腸
薬
赤玉はら
薬
S7.麻薬
 鎮痛、鎮静による精神・心理機能の向上とリラクゼ
ーション、また陶酔感、多幸感を期待して使用され
るため、禁止。
 副作用として、呼吸抑制、呼吸麻痺、依存性、血圧
下降、ショック、めまい、眠気、嘔吐、虚脱、便秘、筋
萎縮、視力調節障害がみられる。
 モルヒネ/コデイン比は監視プログラムにて競技会
時のみ監視される。
 麻薬及び向精神薬取締法にて規制されている。
禁止表に掲載されている主な麻薬
(『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2009年版』p10より)
成分名
商品名
ブプレノルフィン
レペタン、ザルバン他
フェンタニル
デュロテップ、タラモナール、フェンタニル他
モルヒネ
塩酸モルヒネ、オプソ、アンペック、プレペノン、MS
コンチン、カディアン、ピーガード他
オキシコドン
オキシコンチン、パビナール他
ペンタゾシン
ソセゴン、ペンタジン、トスパニール、ヘキサット他
ペチジン
塩酸ペチジン、オピスタン他
S8.カンナビノイド
 思考、知覚、気分を異常に変化させ、多幸感、高揚
感を期待して使用されるため、禁止。
 憂鬱感、被暗示性の増強、錯乱、幻覚を伴うことが
あり、選手が不安や焦りから逃避する目的で嗜癖に
陥る危険性がある。
 大麻草の葉を乾燥させたものがマリファナで、樹脂
がハシシュである。
 尿中代謝物のテトラヒドロカンナビノール(THC)
が15mg/mlを超えた場合、陽性として報告さ
れる。
 大麻取締法によって規制されている。
S9.糖質コルチコイド
 エネルギー代謝を活性化させ、競技力向上をねらっ
て使用されるため、禁止。
 経口、静脈内、筋肉内、経腸内使用はすべて禁止。
治療目的の使用の場合、TUE申請が必要。
 関節内、関節周囲、腱周囲、硬膜外、皮内、吸入使
用については、治療使用に係る除外措置に関する国
際基準に従って、使用の申告が必要。
 耳、口腔内、皮膚、歯肉、鼻、目、肛門周囲の疾患
に対する局所的使用は禁止されず、TUE申請及び使
用の申告は不要。
P1.アルコール
 下記の競技において、競技会に限って禁止される。
航空スポーツ、アーチェリー、自動車、空手、近代五種、モーター
サイクル、ナインピンおよびテンピンボウリング、パワーボード
 血中濃度が35mg/mlを超えると、精神運動障害が
発現、精緻で複雑な運動調節機能の障害やバランス
の維持が不安定になり、反応時間や運動野力が低下
する。
 検出方法は、呼気分析または血液分析である。ドー
ピングが成立する閾値(血液の値は)0.10g/lである
。
P2.ベータ遮断薬
 下記の競技において、競技会に限って禁止される。
航空スポーツ、アーチェリー、自動車、ビリヤードおよびスヌーカ
ー、ボブスレー、ブール、ブリッジ、ゴルフ、体操、近代五種、モ
ーターサイクル、ナインピンおよびテンピンボウリング、パワーボ
ード、セーリング、射撃、スキー/スノーボード、レスリング
 静穏作用のため、選手の不安解消や「あがり」の防
止、また心拍数と血圧の低下作用での心身の動揺を
少なくするため禁止。
禁止表に掲載されている主なベータ遮断薬
(『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2009年版』p13より)
成分名
商品名
アセブトロール
セクトラール
アテノロール
テノーミン
ベキタソロール
ケルロング
ビソプロロール
メインテート
カルテオロール
ミケラン
カルベジロール
アーチスト
セリプロロール
セレクトール
ナドロール
ナディック
プロプラノロール
インデラル
ソタロール
ソタコール
チモロール
チモプトール点眼液
監視プログラム
 禁止表に掲載されていないが、濫用のパターンを把
握するために監視することを望む物質について、
WADAは監視プログラムを策定しなければならない
。
分類
物質
備考
ブプロピオン
カフェイン
茶葉に含有
フェニレフリン
興奮薬(競技会時のみ)
フェニルプロパノールアミ
ン
ピプラドロール
麻薬(競技会時のみ)
プソイドエフェドリン
総合感冒薬に含有
シネフリン
陳皮、橘皮に含有
モルヒネ/コデイン比
ドーピング検査手順
ドーピング検査手順
(『公認スポーツファーマシスト認定プログラム』より)
1)検査対象の通
知
2)通知を受けた
ことの確認のサイ
ン
3)ドーピングコ
ントロール・パス
の受領
4)ドーピングコ
ントロール・ス
テーションへの出
頭
8)尿検体の分割
と封印
7)サンプルキッ
トの選択
6)尿検体の採取
5)採尿カップの
選択
9)pH及び比重
の確認
10)使用薬物の
申告
11)公式記録書
コピーの受け取り
ドーピング事例
オリンピックにおけるドーピングの歴史
2004 アテネ五輪
1988 ソウル五輪
ベン・ジョンソン、1
00mの金メダルの剥
奪、IOCの第2種ブラッ
クリスト登録
1972 ミュンヘン五
輪
リック・デモント、喘息
治療のためのエフェドリ
ンにより競泳400m自
由形の金メダル剥奪
アドリアン・アヌシュ、
尿検査や再検査拒否に
より金メダルの剥奪
リック・ガトームソン(ソフトバンク)の事例
(2007年8月10日)
 2007年8月10日、ガトームソンが7月13日の対ロッテ13回
戦で行われたドーピング検査で禁止薬物(フィナステリド)に陽性
反応を示した事、それに伴い本人に対して同日より20日間の出場
停止処分、所属球団のソフトバンクに対して制裁金750万円を科
した事を発表した。
 2007年より本格的に開始された日本プロ野球でのドーピング検
査で違反者が出た初めての事例。
 これを受けて球団は、ガトームソンは2007年2月に行われたキ
ャンプでのドーピング説明会で球団側にフィナステリドを含む育毛
剤の服用を申請したが球団がNPB側への照会を怠ったため服用を続
けたと説明した。その後の球団による聞き取り調査で、ガトームソ
ンがヤクルト所属当時にフィナステリドが禁止薬物に該当するとの
警告を受けていた事が確認されたことが発表された。
 なお、フィナステリドは2009年よりWADAの禁止リストから除
外されている。
ミッチェル報告書
(2007年12月13日発表)
 アメリカの元上院議員ジョージ・J・ミッチェルによ
る、メジャーリーグでの筋肉増強剤使用の実態調査
報告書。息子が筋肉増強剤に手を出し、副作用によ
る鬱が原因で自殺したことがドーピング問題へ取り
組むきっかけになった。
 21ヶ月間におよぶ調査は総計409頁にわたる報告書に
まとめられ、ステロイドをはじめとする薬物の使用
経験があるとされる選手として、89名の実名を挙げ
ている。
 報告書中で名指しされた選手には、バリー・ボンズ
、ロジャー・クレメンス、アンディ・ペティット、
ミゲル・テハダ、エリック・ガニエなどがいる。
ルイス・ゴンザレス(巨人)の事例
(2008年5月26日、読売巨人軍公式HPより)
4月30日、対広島戦が開催された東京ドームで、NPBによるドーピング検査が行われ
ました。検査は特定の選手に絞ったものではなく、ジャイアンツでは、くじ引きによ
りゴンザレス選手を含む2人の選手が検査対象となりました。2選手は所定の手続き
に従って尿検査を受け、「A検体」「B検体」の二つのサンプルが取られました。
5月21日午後7時半ころ、NPBから「ゴンザレス選手のA検体に陽性反応があった」と
球団代表に連絡が入りました。検出された禁止物質は「クロベンゾレックス」「アン
フェタミン」「パラヒドロキシアンフェタミン」の3種類。分析機関の所見では、「
クロベンゾレックスを投与した状況と一致している」ということです。クロベンゾレ
ックスを体内に摂取すると、しだいに体内で代謝されてアンフェタミン、パラヒドロ
キシアンフェタミンが生成されます。いずれも興奮薬として競技会検査の禁止対象と
なる物質に指定されています。またこれら検出された物質は、通称「グリーニー」と
いわれる薬物に特徴的なものであるとのことです。
この日行われたロッテ戦終了後、球団代表が千葉市内のホテルにゴンザレス選手を呼び
、検査結果が陽性であることを通告し、事情を聴きました。ゴンザレス選手は「まっ
たく身に覚えがない」と述べ、分析機関に保管されている「B検体」の再分析を希望
しました。球団としても判断に慎重を期すため、翌日の22日、球団代表がNPBに対
してB検体の再分析を申請しました。この日は一軍の試合はありませんでした。
翌23日、球団はゴンザレス選手の一軍登録を抹消しました。
25日にはB検体の検査が行われ、こちらも陽性であることが判明しました。その結果を
受けて、26日に開かれたアンチ・ドーピング特別委員会が今回の処分を決定したも
のです。
制裁事例
事例1
事例2
 競技者が高血圧治療のた
 競技会直前に総合感冒薬
め薬物治療を受けていた
 治療薬には、WADA禁
止表で利尿薬として禁止
されているヒドロクロロチアジド
が含まれていた
を服用した
 総合感冒薬には、WAD
A禁止表で興奮薬として
禁止されているメチルエフェドリ
ンが含まれていた
 TUE申請がされていな
 競技力向上を目的として
かったため、制裁措置は
2年間の資格停止
いないことを競技者が証
明したため、制裁措置が
軽減され、3ヵ月の資格
停止
薬剤師会におけるドーピング防止活動
2003
静岡県
NEW!わかふじ
国体
2004
埼玉県
彩の国まごころ国
体
2005
岡山県
晴れの国おかやま
国体
2008 大分
県
2009 新潟県
チャレンジ!おおい
た国体
トキめき新潟国体
2007
2010 千葉県
秋田県
秋田わか杉国体
2006
兵庫県
のじぎく兵庫国体
ゆめ半島千葉国体
2011 山口県
おいでませ!山口
国体
公認スポーツファーマシストとは・・
(http://www.anti-doping.or.jp/sportspharmacist/index.html)
薬剤師会のドーピング防止活動は、2
003年の静岡国体において、静岡県薬
剤師会が「薬局におけるアンチ・ドーピングカ
゙イドブック」の作成等、積極的に活動した
のが始まりです。そして(財)日本アンチ・
ドーピング機構(JADA)が2009年に創
設した「公認スポーツファーマシスト認定制度」に
対し、日本薬剤師会が全面的に協力する
ことになりました。競技能力向上を目的
として、意図的に禁止物質を摂取するこ
とは問題外ですが、意図的ではなく不注
意に禁止物質を摂取してしまう「うっか
りドーピング」という事例があります。こ
のような「うっかりドーピング」の悲劇か
らスポーツ選手を守っていくことが主な
役割です。
公認スポーツファーマシスト
 養成目的
ドーピン゙グ防止と薬物・薬剤に関する専門的な知識を有し、スポーツ現場におい
て競技者や指導者からの薬に関する問い合わせに応じるほか、教育現場にお
いて積極的なドーピング防止教育を行う存在である。また、ドーピング防止に関
する適切な情報を提供するだけでなく、ドーピング防止活動を通じて競技者を
含めたスポーツ愛好家に薬の正しい使い方の指導、薬に関する健康教育を行う
薬剤師を養成する。
 役割
スポーツドクターとの緊密な連携のもと、ドーピング禁止薬の問い合わせへの応対や
、競技者の使用薬管理を行うと共に、薬物・薬剤の適正使用に関する知識の
普及を積極的に行う。また、学校・地域保健活動における薬物乱用防止活動
を行う。
 活動の場
ドーピング防止対策の強化:各種アンチドーピング委員会、プロスポーツ、社会人チームほ
か
一般へのドーピング防止啓発:学校保健活動(学校薬剤師として)、都道府県
体育協会、スポーツクラブほか
 資格
公認スポーツファーマシスト認定の流れ
募
発 集
表 概
要
講
習
会
申
込
基
礎
受講
講習
会
実
受務
講講
習
会
確知
識
認到
試達
験度
登
録
の
申
請
認
定
書
発
行
使用可否の問い合わせ
(『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2009年版』より)
使用可否の問い
合わせ
毎年禁止薬物の規定
は変更となります。
最新版をご利用くだ
さい
使用可能薬一覧
にない
p.4参照
WADA禁止物質
に該当する
WADA禁止物質
に該当しないor
分からない
使用不可の旨を
回答
県薬ホットライ
ンにFAXにて問
い合わせ
使用可能薬
一覧にある
使用可能の旨を
回答
p.83参照
競技者、指導者からの問い合わせの対応
 確認する事項
質問者の氏名、連絡先、競技種目、現在服用している医薬品、サ
プリメント、問い合わせ内容など。アドバイスにあたっては「薬
剤師のためのアンチドーピングガイドブック」などを活用
 注意をしなければならない事項
1.医薬品名を確認する場合は必ずフルネームを確認(現物、包装や
薬剤情報提供書など)
2.直接相対してアドバイスすることが望ましいが、それ以外で
あればできる限り聞き違いを防ぐためFAX、メールなどの媒体を利
用する。
3.競技者が医療機関で治療を受けている場合、TUE(治療目的
使用に係る除外)についての情報提供を行い、必要であれば体育
協会、所属競技団体への報告を促す。
4.不明な点については自己判断を避け、所属する各薬剤師会情
報センターのホットラインに確認する。
血液パスポート制度
 2009年8月14日、国際オリンピック委員会(
IOC)のロゲ会長は記者会見で、選手個人の長期に
わたる血液検査データを保存し、薬物使用や血液ド
ーピングを行った際の異常値を検出する「血液パス
ポート」制度の実施を話し合ったことを明らかにし
た。
 ロゲ会長は、「現在の薬物検査では、エリスロポエ
チンは使用後ごく限られた日数しか検出できない。
また自分の血液を使った血液ドーピングも、現時点
では検査方法が確立されていない。血液パスポート
制度は、こうした状況に効果を上げる」と指摘した
。
作成:島根県薬剤師会学生実習対策員会
(担当責任者:斎藤大善)
<参考・引用文献>
『公認スポーツファーマシスト認定プログラム』
『薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック200
9年版』
日本アンチドーピング機構HP
ご協力ありがとうございました