医療的ケアに関する研修会 ー重症児の呼吸管理・吸引/吸入・感染予防ー 平成22年8月23日 京都市立総合支援学校 医療的ケアと重症児教育研究会 於:西総合支援学校 まつい内科呼吸器科医院 松井輝夫 呼吸管理のポイント バイタルチェックを中心に 呼吸障害(1) (1)呼吸困難時の観察ポイント 成人:16~20回/分 学童:20~25回/分 幼児:20~35回/分(胸式呼吸) 乳児:30~40回/分(腹式呼吸) 新生児:40~50回/分 ●呼吸数・深さ・リズム、 呼吸音の大きさ・左右差、 喘鳴 チアノーゼ(酸素飽和度70%以下で出現)の有無(唇・爪)と 程度 意識レベル 機嫌・活気 ●パルスオキシメーター (動脈の酸素飽和度=サチュレーションを測る機械 正常値95~100、90↓=呼吸不全、スキントラブルに注意) 呼吸障害(2) (2)喀痰 ●粘液腺より分泌される気道粘液。1日100ml分泌され、気管支内壁を覆 う。線毛運動により1分間に2㎝の速さで異物や細菌を喉頭に向かって運 び上げ、無意識に嚥下され胃酸により殺菌。 ●痰の排出を低下させる疾患 気道の閉塞(喘息・肺炎・脊柱側わん症・アデノイド) ゲル層 湿潤層 繊毛上皮細胞 粘液線毛エスカレーターの障害 (気管支拡張症・慢性の喫煙) 咳嗽反射の障害 (胸部外傷・筋ジス・脊髄損傷・気管切開) ●根本的解決法 水分補給(痰の粘張度を下げる、線毛運動を活発にする) 部屋の加湿 40%~60%の湿度に(60%以上であればカビ発生 のリスク、部屋の温度や加温方法に注意) ●対処的解決法 ネブライザー、吸引、去痰薬、排痰法。 呼吸障害の症状 喘鳴 (呼気時優位か吸気時優位か) (覚醒時優位か睡眠時優位か) (狭窄性か貯留性か) ヒューヒュー、ゼーゼー、ゼロゼロ 呼吸が速く浅くなる 努力呼吸 鼻翼呼吸、胸骨上部や肋骨下が陥没 下顎呼吸、呼吸補助筋の動員 口唇・爪チアノーゼ 意識混濁 脳性麻痺児・重度障害児の気道狭窄 狭窄部位 原因・病態 症状(喘鳴・陥没呼吸など) 覚醒時 睡眠時 吸気時 呼気時 経鼻エアウェイ 有効性 上咽頭 (鼻咽頭) アデノイド肥大 -~+ < +~++ +~++ >-~+ ++ その他 -~+ < +~++ +~++ >-~+ ++ 中咽頭 扁桃肥大 -~+ < +~++ +~++ >-~+ +~++ 舌根沈下 -~+ < +~++ +~++ >-~+ +~++ 下顎舌根後退 (筋緊張亢進時) +~++ >-~+ -~+ 頸部 過伸展 (筋緊張亢進時) +~++ >-~+ - 頸部 過伸展 (筋緊張亢進時) +~++ >-~+ - 披裂部前下垂 +~++ >-~+ +~++ >-~+ - 喉頭軟化 +~++ >-~+ +~++ >-~+ - 喉頭浮腫 ++ ++ - 気管軟化症 筋緊張亢進時に↑ 気管狭窄 ++ 喉頭部 気管 + < +~++ ++ - - (心身障害児総合医療療育センター 北住) 低酸素血症が組織に与える影響 (酸素解離曲線での説明) 100 低酸素血症 - 80 - 酸素治療の絶対的適応 - チアノーゼ 60 - 組織の死 40 - 注:酸素解離曲線の 位置は主として pHに依存する 個体の死 20 - 20 40 60 80 酸素分圧(mmHg) エキスパートナースMook33 - - - - - - - - 0 - - - ( ) 酸 素 飽 和 度 % 正常 100 カラー版「呼吸のしくみと管理」(1999)より RES-12 重症児の呼吸障害 重症心身障害児の呼吸不全 一般的には、動脈血酸素分圧が60mmHg以下(血中酸素飽和度 SpO2は90% に相当;健康者では95%以上)(低酸素血症)、または動脈血CO2分圧が45 mmHg以上(高炭酸ガス血症)が呼吸不全で、治療が必要となる。 重症心身障害児には呼吸不全の治療基準が適合できないことが多い。 明らかな呼吸障害があっても SpO2、CO2分圧は正常範囲のことがある。 症状はなくても、 SpO2が低めのことがあり(一般的には90%以下では処置が 必要)、CO2分圧が高値のこともある(慢性化していれば45以上でも代償機能に よりpHは保たれ許容範囲)。 チアノーゼがなくても低酸素状態でありうる。 SpO2が70~85%でチアノーゼを 時に認め、70%以下では確実に認める。 酸素を使用した場合にはSpO2が90%台でも、高炭酸ガス血症で傾眠や意識 障害を来すこともある(CO2ナルコーシス) 。 パルスオキシメーター(動いても安定して測定 できる機種が望ましい)で酸素飽和度(SpO2) を測定する ※日常状態との比較が重要 ネルコア社製 吸引操作や慎重な呼吸管理 が必要と思われる基礎疾患 (1)脳性疾患 脳性麻痺 脳外傷後遺症 脳炎・髄膜炎後遺症 ダウン症 水頭症 染色体異常 先天奇形 (2)神経筋疾患 進行性筋ジストロフィー 脊髄性進行性筋萎縮(SPMA, SMA) (3)脊椎・脊髄疾患 側弯症(Cobb 角60°以上で) 二分脊椎 (4)骨疾患 先天性骨形成不全 (5)感染症 (6)上中咽頭部狭窄(舌根沈下や扁桃・アデノイド肥大)その他 呼吸障害の対策 (呼吸が楽にできるために、日常生活で可能な対策) のどを広げる (上気道狭窄への対応) 胸を広げる・動かす (胸郭呼吸運動障害 への対応) 痰が出やすくする たまりにくくする 痰があっても苦しく ないようにする 引いてあげる (分泌物貯留への対応) 姿勢を整える、姿勢をつくる ー あご、くび、全身 胸郭の周辺の緊張を和らげる、呼吸の運動の援助 加湿、吸入(ネブライザー) 充分な水分摂取 吸引 舌根沈下→上気道閉塞 症状は 覚醒時 < 睡眠時 下顎後退→上気道閉塞 対策:下顎を前 に出して気道を 広げる 道具を使わない気道の確保の方法 1 下顎前方引出し法による気道確保 意識の無い患者では、舌根が沈下して気 道がふさがっている。 こうした患者を発見した場合、まず最初に 行う方法として、下顎前方引出し法による 気道確保(図下) が勧められている。頸椎 に与える負担が小さく、マスク換気がすぐ にできるからである。 道具を使わない気道の確保の方法 2 頸椎損傷の恐れが無ければ、 頭部後屈、下顎挙上による気 道の確保を行ってもかまわな い。 この操作により舌根を引き上 げ、気道を開通させることが出 来る。 頸椎カラーやテクラフレクス、 ヘッドマスターカラーなどで この状態を維持管理する 患児も多い 誤 嚥 ●食物や唾液が気管に入り込むこと。嚥下反射の障害で喉頭蓋が十分閉鎖し なくて起こる。右主気管支に入りやすい。口腔内吸引の意味=唾液の誤嚥予防 ●誤嚥が許容範囲を超えているか→ ビデオ透視嚥下検査 ●誤嚥性肺炎の疑い:気管支炎・肺炎を繰り返す。発熱がありCRP陽性が続く サイレントアスピレーション:誤嚥してもむせない。 ●対応策:姿勢(座位又は上体高位、首・体幹の安定、頭を後ろに反らさず顎を 引く)食物形態(増粘剤でトロミをつける、ゼラチンアレルギーに注意) ●誤嚥しやすい食べ物:さらさらした水分、細かく刻んだ野菜・挽肉などパラパラ したもの、ふかしいも・ゆで卵などパサパサしたもの、酸味の強いもの。 吸引・吸入操作・酸素療法等 エアロゾール吸入療法 (A)ネブライザーの種類 ●ジェット式:ジェット流によってできた霧を一度球形の障害物にあてることによっ て大きい粒子を落下させて2~5μの粒子を作る。 ●超音波式:超音波振動によって2~5μの均一の粒子を作成する。長時間の使 用では水分負荷に気をつける必要がある。 (B)吸入に使用される薬剤 一般名 気管支拡張薬 硫酸オルシプレナリン 硫酸サルブタモール プロカテロール 去痰薬 塩酸ブロムヘキシン チロキサボール ステロイド剤 プロピオン酸ベグロメタゾン フルチカゾン ブデソニド シクレソニド フルチカゾン+サルメテロール合剤 抗生剤 アミノ配糖体 ペニシリン系 その他 ラシックス 製品名 用法(参考) アロテック 2% ベネトリン 0.5% メプチン 0.01% 0.1~0.3ml/回 0.1~0.3ml/回 0.1~0.3ml/回 ビソルボン 0.5~1.0ml/回 ・漿液性分泌増加作用、酸性糖タンパク溶解・低分子化作用 アレベール 0.5~1.0ml/回 ・界面活性作用があり、種々の呼吸器作動薬の溶解剤として用いられる。均一な粒子 のエアゾルを形成し、ネブライザー効果を有効にする。 1日2回が基本 オルベスコは1回 副腎皮質ホルモン。全身作用が少ない。喘息のステップにより使用量が異なる 1日2回 フルチカゾン量は100、250、500μg アドエア(フルタイド+セレベント50) キュバール、フルタイド、 パルミコート、 オルベスコ GM,AMK,TOB,SISO ABPC,PCG 10~20mg/5~10ml 3~4回/日 0.3~0.5 g/5~10ml 2~3回/日 フロセミド ・気管支拡張作用がある。 1mg/kg/回 粒子の大きさ:粒子が大きいと鼻咽頭に沈着する。また2μ以下では気道に沈着せずに再び呼気と一緒に 呼出されてしまう。したがって2~5μの粒子を多く作れるネブライザーが有効。 気管内吸引 ●気管内挿管や気管切開患者:挿管チューブや気管切開チューブを介 しての気道内吸引、いわゆる盲目気管吸引が必要。 ●体位変換等の工夫とともに行うことで十分な気道浄化をはかれる。 ●有用性は広く認められているが、吸引の頻度、手技、吸引チューブの 交換頻度などについてEBMに基づいたはっきりとした基準がない。 ●定時的に吸引を行うよりも聴診所見等から必要と判断される場合に のみできるだけ非侵襲的に気管内吸引を行うべきとする意見が多い。 ●清潔操作を維持するため、また人工呼吸中の条件を変化させないと 言う目的で閉鎖式吸引回路を使用する施設もあるが、コスト等の理由で 広く使用されるには至っていない。 盲目的気管内吸引に起因する合併症 低酸素血症→ガイドライン上は1回10秒程度までの吸引時間、全操作でも1回20秒まで レスピレータ装着患者を想定) 気道内損傷、潰瘍形成、出血→暴力的な吸引操作の繰り返しによって起こりうる カテーテル挿入時に、クランプして圧をかけない状態にして進める 不整脈→低酸素血症に伴い発症しうる 無気肺→気道内のガスの吸引によりその末梢の無気肺を生ずる可能性あり 感染症→清潔操作を遵守しないと起こりうる。声門部以下の気道は清潔状態を保持 頭蓋内圧の亢進→低酸素、高炭酸ガス血症によって頭蓋内圧変化 血圧変動→迷走神経反射による徐脈や、咳嗽による気道内圧上昇→心拍出量の減少、 心筋の低酸素症等 気道痙攣(喘息)→気道への物理的刺激、過敏性亢進状態だとしつこく吸引しない 咳反射による体動→過度に誘発すると体動・疲労を来す。 口腔・鼻腔からの吸引法ー1 必要物品 (1)吸引器 (2)吸引管 (3)吸引ビン (4)吸引カテーテル: (口腔12~14Fr、鼻腔10~12Fr) (5)セッシ (6)プラスチックグローブ (7)アルコール綿花 エタプラス(手指消毒液) K.S氏の気切吸引物品棚 口腔・鼻腔からの吸引法ー2 留意点 ●患者に吸引の必要性を説明し、患者の協力を得る。意識のない 患者でも話しかけながら実施するよう心がける。 ●口腔・鼻腔粘膜を損傷しないように、無理な吸引を避け、正しい 圧、時間で行う。(圧400mmHg 以下、ガイドライン上はできるなら 100-150mmHg以下で、10~15 秒以内) ●口腔・鼻腔カテーテルと気管内吸引カテーテルは区別する。 ●カテーテル消毒液、カテーテルは1日1 回交換する。 注:400 mmHg(水銀柱ミリメートル) = 532 hPa = 53.2 kPa 口腔・鼻腔からの吸引法ー3 実施方法 1)手を洗い、プラスチックグローブ、サージカルマスクを装着する。 2)カテーテルの接続部を持ち、吸引管と接続する。 3)吸引圧をかけないで、カテーテルを口腔及び鼻腔内へ入れる。 4)十分な深さに挿入後、カテーテルに吸引圧をかけ粘膜を傷つけないように吸 引する。 5)吸引後は、アルコール綿花でカテーテル外側を拭き取り分泌物を除去する。 6)カテーテルをポピドンヨード入り滅菌精製水に通し、カテーテル内に付着した 分泌物を十分に除去する。その後カテーテルをポピドンヨード入り滅菌精製水に 浸けておく。 7)終了後、プラスチックグローブをはずし、手洗い・手指消毒を行う。 酸素吸入療法 鼻腔カニューレ フェイスマスク ・長所 異物感が少ない 着脱が容易 会話や食事が可能 吸気が鼻腔で加湿 ・長所 鼻呼吸、口呼吸どちら でも有効 着脱が容易 ・短所 鼻閉、口呼吸で無効 鼻腔粘膜の乾燥 高濃度酸素を供給できない 吸入酸素濃度が呼吸パターンに依存し て変動 ・短所 鼻腔、口腔の乾燥 死腔の増加 低流量の酸素 → 呼気の再呼吸 → CO2貯留 吸入酸素濃度が呼吸パターンに依存 して変動 ・酸素流量: 6 L/分 以下で使用 流量を 6L/分以上に増やしても、 FIO2の上昇はわずか ・酸素流量:4~10 L/分 で用いる 4 L/分 以下 → 呼気の再呼吸 10L/分 以上 → FIO2 の上昇がわずか。 酸素療法 高濃度酸素吸入による酸素中毒をさけるため吸入酸素濃度は60%以下が望ま しい。未熟児に酸素を投与するときは未熟児網膜症予防の注意が必要。 1)方法 (1)鼻カニューラ、酸素マスク 特に乳幼児においてはその呼吸状態で相当吸入酸素濃度が変化し、それ 以上の濃度となっていることもあり得るので注意を要する。 (2)ベンチュリーマスク ベンチュリー効果を利用したマスクでは小児においてもある程度吸入気酸 100%酸素流量(l/分) 酸素濃度(%) 素濃度を調節できる。 1 24 ベンチュリーマスク F IO 2 24 % コネクターの種類をかえて酸素濃度 を調節する。 28 % 31 % 35 % 40 % 50 % 標準流量 4 litter/ 分 4~6 6~8 鼻カニューラ 酸素マスク 8 ~10 8 ~12 12 リザーバーバッグ付き酸素 マスク 2 3 4 5 6 5~6 6~7 7~8 6 7 8 9 10 28 32 36 40 44 40 50 60 60 70 80 90 99 気管切開管理・レティナ等 長さを変更 できるタイプ 気管切開カニューレ 市販の一般カニューレ カフ付きカニューレ 上部吸引管付 カフ 特注の長い カニューレ 重症心身障害児(者)の気管切開 気管切開の目的 ①上気道狭窄・閉塞に対する気道確保 ②下気道分泌物・貯留物の排除、誤嚥防止 ③呼吸不全の呼吸管理 実態 7,812人中378人 (4.8%)が気管切開 (全国公法人立重症児施設入所者) (徳光亜矢ら、日重障誌 2003;28:129-35) 気管切開や気管カニューレに 伴う事故や合併症 1)気管カニューレの固定不良、 ずれ カニューレによる気管粘膜損傷 カニューレの事故抜去 2)気管カニューレの閉塞 痰や分泌物による 気管粘膜や肉芽に接触 3)気管切開孔狭窄 4)感染 5)声帯・喉頭の機能不全 6)気管切開孔周囲や気管 内の肉芽 7)気管内出血 8)気管狭窄 9)気管軟化症 など 気管切開の合併症 (1)肉芽 気管切開孔周囲肉芽 気管内肉芽 気管切開孔周囲 カニューレ先端 粘膜断端 ※肉芽の発生部位 気管切開の合併症 (2)気管内出血 ・気管粘膜病変自体から、吸引刺激による外傷 炎症性病変 気管肉芽 ・気管腕頭動脈瘻から 気管潰瘍 生命の危険、予防が第一 気管切開を受けている児への対応の注意点 気管カニューレの自己抜去を防ぐ ①固定の確認 ②必要時には手の抑制、手袋 ③抜けた時の緊急対応の確認 (個々の緊急性に応じて主治医と相談して決めておく) カニューレが塞がらないように →姿勢や衣服に注意 カニューレに無理な力を加えない ①首を過度に後にそらせない ②前に曲げない ③左右に強く回さない カニューレから異物が侵入を防ぐ →人工鼻、ガーゼで入口をカバーする 気管内の乾燥を防ぐ →室内の加湿 気管切開孔を清潔にする ①分泌物は微温湯できれいに拭き取る。 ②ガーゼ使用時は汚れたら交換する。 人工鼻 経鼻エアウェイ ※注意:テープがはがれると チューブが鼻腔内に落ち込む可能性あり。 コーケン経鼻エアウェイ (高研 TEL 03-3950-6600) レティナについて レティナの管理 スピーチバルブ (ボタン部) 呼吸不全 体位ドレナージ・人工呼吸器等 側臥位(横向き) 座位(座った姿勢) 舌根沈下を防ぐことができる 前傾座位では、腹臥位と同じ 利点がある 緊張がゆるんだ状態になりや すい 痰や唾液がのどにたまるの を防げる 胸郭の前後の動きがしやす い 胸郭の横の動きは制限され る 右側臥位は胃食道逆流を続 発することがある 呼気時の横隔膜の動きが良く なる 後へのリクライニングは下顎 後退・舌根沈下・喉頭部狭窄を 悪くすることがある 重度の嚥下障害がある場合、 唾液が気管に誤嚥され、呼吸 が悪くなることがある 胃食道逆流が起きにくい ★年少の頃からいろいろな姿勢がとれるようになっておくことが重要。 仰臥位(仰向け姿勢) 腹臥位(うつぶせ) 下顎・舌根が後退・沈下しやす い 下顎後退・舌根沈下を避けら れる 顎や肩を後退させるような緊張 が出やすい 条件をよく設定すれば緊張が ゆるんだ状態になりやすい 痰・唾液がのどにたまりやすい 痰・唾液がのどにたまらない 呼気(息を吐くこと)が、充分しに くい 呼気がしやすくなる 背中側の方の胸郭の動きが制 限される 胃食道逆流が起きやすい 背中の胸郭・肺が広がりやす い 胃食道逆流が起きにくい 誤嚥物が肺下葉にたまりやすい 誤嚥物が肺下葉にたまるのを 防ぐことができる 胸郭の扁平化をきたす 窒息の危険がある 姿勢の工夫 腹臥位 腹臥位保持装置 プローンキーパー (バードチェア) 半側臥位 前傾座位 BiPAPによる人工呼吸 ●非侵襲的陽圧呼吸(NIPPV)の代表 ●最近は、BiPAPをはじめとするマスクを用 いた呼吸器の利用が、特定の病気で考慮さ れるようになった。 ●吸気が自力で行い得ないような、COPD 患者や重度心身障害児において有用性が 明らか。 ●顔面に密着するマスクを用いることで使 い方によっては大きな武器となる可能性が あるが、鼻閉のある患者・気道分泌物が多く 絶えず吸引の必要な患者では施行が困難。 知能低下、非協力的な患者も使用しにくい。 ( ALS:× 筋ジス:○ ) 在宅用人工呼吸器 (ポータブル型人工呼吸器) NIV NPPV Tbird (IMI) NIPPV レジェンドエア (IMI) HT50 (Tokibo ) Knight-Star330 (タイコヘルスケア) BiPAP Harmony (フジ・レスピロニクス) Achieva (タイコヘルスケア) LTV950 (フジ・レスピロニクス) 感 染 予 防 感染成立のための3要素 (言い換えれば感染予防の3要素) 1.感染源 (病原体が生存しているヒト・物) 2.感染経路 標準及び感染経路別予防策 ●発熱者の隔離 ●洗浄・消毒・滅菌、環境整備(加湿や 換気) (病原体から感染源から 感受性宿主に移るためのメカニズム) ●手指衛生 ●防護具の使用(手袋・マスク・エプロンなど) 3.宿主 ●宿主の免疫力を高める (予防接種・栄養状態の改善など) (感染を起こすリスクがある人) 全ての感染症は この3要素がないと 成立しない 「感染経路の遮断」が最も簡便で有効 MRSA感染症 一般的には、成人において、抗癌剤やステロイド治療中など医原 性に免疫力低下した状態であったり、術後、高齢、糖尿病や重症 感染症で免疫力低下した状態で発症する。多剤耐性ブドウ球菌 (定義はメシチリン耐性)により発症する。市中肺炎としては定義さ れず、通常院内感染が問題になる。 障害児においては感染症患者としては余り遭遇する機会はないが、 無症状の保菌者は相当数存在するものと考えるべき。 1:免疫力低下 2:抗生物質使用中 3:血管カテーテルを使用中 等の条件が揃えば発症しうる。また、保菌者から吸引操作等で 他の障害児に拡大しないよう配慮する。 (MRSA保菌者を隔離する必要はないとされる) 小児における市中感染肺炎 年齢 微生物 治療 出生〜生後 3週間 B群レンサ球菌,リステリア菌,グ ラム陰性桿菌,サイトメガロウイ ルス アンピシリン(またはナフシリン) 生後3週間 〜3カ月 および およびゲンタマイシン(またはセフォタキシム)* 肺炎球菌,ウイルス感染(RSV, 外来患者: パラインフルエンザ,メタニューモ ウイルス),百日咳菌,黄色ブドウ 球菌, クラミジア-トラコマチス(産 道感染) および エリスロマイシン10mg/kg,静注で6時間毎に10−14日間 ICU以外の入院患者: セフロキシム50mg/kg,静注で8−12時間毎 ICU入院患者: セフォタキシム66mg/kg,静注で1日3回 クロキサシリン50mg/kg,静注で6時間毎 4カ月〜4歳 5〜15歳 肺炎球菌,ウイルス感染(RSV, 外来患者: パラインフルエンザ,イインフルエンザ,ア デアウイルス,ライノウイルス,メタニューモウイ ルス),マイコプラズマニューモニエ児童), A群レンサ球菌 エリスロマイシン10mg/kg,経口で1日4回 肺炎球菌, マイコプラズマ-ニュー モニエ, クラミジア-ニューモニエ 外来患者: 入院患者: エリスロマイシン10mg/kg,経口で1日4回 および セフロキシム50mg/kg,静注で8時間毎 クラリスロマイシン500mg,経口で1日2回 入院患者: セフトリアキソン50mg/kg,静注1日1回(最高用量2g) および アジスロマイシン10mg/kg,1日1回(最高用量500mg) 小児市中肺炎(身体所見・検査所見による重症度判定)では、CRP値が3 mg/dL以下は軽症、CRP値が15mg/dL以上は重症と判定される。 参考:日本呼吸器学会の呼吸既感染症に関するガイドライン(成人市中肺炎診 療の基本的考え方)によると、以前のガイドラインでは肺炎の重症度判定に CRPの項があったが(<10で軽症、20>で重症)、のちの考察でCRP値と肺 炎の予後には相関がないとされ、削除された。 インフルエンザ感染症 ●障害児に対して、まずは重症化予防のためのワクチン接種を ●部屋の換気を定期的に(空気清浄器より換気が大事!) 加湿は40-60%の範囲で行うこと。 ●宿主免疫力を維持する努力を(食事、睡眠、低ストレス等) ●呼吸器合併症を持っている患者に対してはマクロライド少量 持続療法も効果的(感染予防、およびサイトカインストームの防止) ●発病したらむやみに解熱剤を使用しない。 スライド資料の一部は「医療的ケ ア研修テキスト」から杉本健郎先 生のご好意により拝借致しました ここに深謝いたします 2010年7月 京都市天竜寺 御静聴 ありがとうございました 2010年6月19日 東京お台場
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