Fig 1. Conceptual framework on care evaluation as

OPTIM
緩和ケアセミナー
ステップ緩和ケア(6)
精神症状の対応
45分
聖隷三方原病院 緩和支持治療科 森田 達也
緩和ケア認定看護師 井村 千鶴
医師は評価と薬物療法の話だけをします
精神的ケアは別のセミナー・事例
コミュニケーションなどで行ないます
Ⅲ 症状マネジメント
5.せん妄
6.不眠
7.気持ちのつらさ
Ⅲ 症状マネジメント
5.せん妄
6.不眠
7.気持ちのつらさ
不眠 OVERVIEW
<P.96>
まず評価
・原因の除去
ステロイドの夕方の投与
頻尿
疼痛
・せん妄っぽい?
・寝付けないのか?おきちゃうのか?
↓
・STEPにしたがった治療
・ケア
↓
・治療目標
-達成されたかを確認
-達成されなければFAQなど
不眠
評価のポイント
<P.97>
・原因の除去
ステロイドの夕方の投与 ・・・ 朝1回にする
夜の頻尿
・・・ 頻尿改善薬
夜の点滴を減量
夜の疼痛
薬の切れ際の痛み? ・・・ 等間隔にする
寝る前のオピオイドを倍量
夜間痛くてもすぐ飲めるように枕元におく
・せん妄っぽい?
幻覚、つじつまの合わないことを言う
・・・睡眠薬だと悪化すること多いので抗精神病薬
・寝付けないのか?おきちゃうのか? →薬の組み合わせ
不眠
睡眠薬の調整のポイント
・ポイントは、「きいている時間」
超短時間作用型
マイスリー・アモバン
寝つきをよくする
短時間作用型
レンドルミン デパス
リスミー
中間型
ロヒプノール
ユーロジン
夜中にきく
不眠
睡眠薬の調整のポイント
「ねむれません」
「マイスリーもらって寝付けるようになったけど、夜中にめがさめちゃう」
入眠はいいが、維持できない
+
短時間作用型~中間型を追加:
マイスリー+レンドルミン0.5~1T
「ロヒプノールもらって、ねれるんだけど、朝ぼ~っとしちゃって・・」
夜間はいいが、朝残っている
もうすこし短い睡眠薬に変更
レンドルミン1T
ここまでのまとめ
不眠
・「眠れない原因」があるかきいて取り除く
E.g., ステロイド、頻尿、夜間の疼痛
・寝付けないのか?目が覚めちゃうのかをきく
→作用時間にあわせて睡眠薬を調節する
気持ちのつらさ
・共感しながら、原因をきいて対処する(疼痛、ノバミン)
・専門的な治療の必要性を評価する 問診、つらさの寒暖計
・くすりは、STEP1 ベンゾジアゼピン STEP2 SSRI・SNRI
・専門家に紹介するルート、紹介の仕方を知っておく
せん妄
・原因をしっかり評価する
・治せるとき
→原因の治療 抗精神病薬をちょびちょび
治せないとき → 不穏・不眠の緩和 患者・家族のケア
Ⅲ 症状マネジメント
5.せん妄
6.不眠
7.気持ちのつらさ
気持ちのつらさ OVERVIEW
<P.102>
まず評価
1 共感する
2 原因を見逃さない
-何がつらいのか聞く
疼痛、心配
ー薬(ノバミン)
3 専門的な治療の必要性
↓
・STEPにしたがった治療
・ケア
↓
・治療目標
-達成されたかを確認
-達成されなければ専門家に紹介
気持ちのつらさ 評価
<P.102>
・共感する
・原因を見逃さない:患者に聞く(疼痛、心配)、薬(ノバミン)
・専門的な治療の必要性を評価する
1 共感する
2 何がつらいのかを探索
①心配の内容を患者や家族に聞く
②痛みなどの身体症状
③不眠
④薬剤
・セレネース、ノバミン、プリンペラン
評
(アカシジアの原因になる)
価
・ステロイド(抑うつの原因になる)
3 専門的な診断が必要かを評価
①うつ症状を確認
・医療者が抑うつのスクリーニングを行う
・患者が「生活のしやすさに関する質問票」
に記入する
②希死念慮を確認
原因の治療
専門的な治療が必要
コンサルテーション
うつ病の診断基準(米国精神医学会)
抑うつ気分 *
気分が落ち込む
睡眠障害
眠れない
食欲低下
食欲がない
興味・喜びの低下*
物事に興味がなく
なった
自責感
自分は価値がない
思考・集中力低下
* いずれか必須
5 項目以上
2 週間以上持続
家族の重荷だ
焦燥感・制止
いらいらする
動作が鈍くなる
新聞を読んでも内容
が頭に入らない
希死念慮
死んだ方が
ましだ
倦怠感
だるい
気力がない
「専門的な治療の必要性を評価する」方法
<P.103>
準備
何のために質問しているのかを患者にわかるように説明する
「気持ちをほぐす(夜よく眠れるようにする)ために、違う種類のお
薬を使ったほうがいいことも多いので、いくつか教えてください」
1 口頭で聞く
「調子が悪くなる前、テレビとか新聞は毎日ごらんになっていま
したか?そういう、みて少したのしかったというようなものをいまは
どうですか。ぜんぜん見る気もしない感じですか」(興味の喪失)
「なんだか、ここ2週間くらい、もう一日中、ず~~っと気分が落ち
込んでしまって、一時も気分が晴れない感じですか」(気分)
→いずれかにYesの場合、うつ状態の可能性が高い
1)抗うつ薬を投与して3週間効果なければ紹介
2)専門家に紹介する
「専門的な治療の必要性を評価する」方法
2 質問紙で聞く
寒暖計
つらさ
支障
5点以上
4点以上
対応
重い抑うつが疑われる
専門家にコンサルテーション
<P.103>
気持ちのつらさ 薬物療法
STEP1 ベンゾジアゼピン
STEP2 SSRI・SNRI
(嘔気のある患者が多いので、ガスモチン併用)
気持ちのつらさの治療のステップ
●その他の抗うつ薬
●SSRI
or SNRI
or ドグマチール
治
療
●ベンゾジアゼピン系抗不安薬
●原因への対応
●精神的支援をチームで行う
事例(1)
65歳 男性 すい臓がん
Gem外来治療中
家族 「なんか元気がなくて・・病気だから仕方ないですか」
患者 「眠れない」「おかしい・・・」
ロキソニン3T
オメプラール1T
ノバミン3T
マイスリー1T
事例(1) 「共感する・原因を見逃さない」まで
「おつらそうですね」
「う~、よくないね・・・」
「何かできることがあるかもしれないので、いくつか教えていただ
いていいですか」
「ええ、しんどいので、楽にしてください」
「今、一番困っていらっしゃることは何ですか」
「眠れない、睡眠薬もらっているんだけど、2時になると目が覚
めちゃって、ねれない・・・」
「夜ずっと寝れないんですね、ほかの痛みとか症状はありますか」
「あ~だるいね、だるくてしんどい。痛みは今はないよ」
(「仮面様顔貌」でノバミンによるパーキソニズムも疑わしい)
「最近、手が震えたり、よだれが出たりということありますか」
(家族)「あります。ここ1ヶ月くらい特にひどいです」
→不眠(中途覚醒)、倦怠感、(ノバミンによる)パーキソニズム?
事例(1) 「専門的な治療の必要性を評価する」まで
「今調子が悪いのはこのずっと飲んでいらっしゃるお薬のせいも
あるみたいなので、調整すれば少し楽になっていくと思います。夜
も眠れるように、日中のだるさが取れるようにお薬をおだしします
ね」
「あ~そうなんだ、それはよかった」
「ところで、もう少しだけ教えてもらってもいいですか。「うつ」って
聞かれたことありますか。あの別に気持ちが弱いとかそういう意
味じゃなくて、女性で2人に1人、男性でも3人に1人なるんです。
こういうからだの病気があると特になりやすいんで・・・」
「なんか自分でもこれはうつなのかと思っていて・・・」
「テレビとか、そういう、前ならもう少し楽しめていたことが楽しめな
いとか、そういうのはどうですか」
「もうだめだね、テレビは何みても・・・」
(家人)「話しているといらいらもするみたいで・・・」
→おそらくうつ状態
対応例
1)自分で少し対応する
「今の状態はお薬だけでもすこし気持ちがほぐれると思います。
2週間ほど調節させてください。いまひとつのときは、また専門の
先生に相談しますね」
・原因の対処
ノバミンの中止、倦怠感、不眠
ノバミンを中止
・STEP1 ベンゾジアゼピン
倦怠感が強いとき
ベタナミン0.5T 1日1Tまで ・STEP2 抗うつ薬
マイスリー1Tに加えて
レンドルミン0.5T追加 不十分なら1Tまで追加
パキシル10mg(+ガスモチン1T)
2)精神科医に紹介する
「精神科医を紹介する」方法
<P.107>
ポイント
・知っている先生を紹介
・「精神病」じゃなくて、「からだの病気に伴う症状」
・患者の困っていることに対処する目的で紹介(不眠・不安)
「**先生っていって、一緒によく見てもらう先生がいます。
精神科の先生って言うとびっくりされる人もいますけど、こういう
病気だと、眠れない、不安になるという症状が好くあります。眠
れないのはつらいと思うので、あなたに一番あうお薬を選んで
治療をする専門の先生です。これまでも見てもらって楽になっ
たという方がいらっしゃいますので、かかってみましょう」
「**の精神科にいってください」
■窓口がないところは、プロジェクトを機会になんとかしましょう
-近くの緩和ケア担当経由で、精神科とコネクションつける?
-だれ~もいなければ三方原精神科の緩和担当医
ここまでのまとめ
不眠
・「眠れない原因」があるかきいて取り除く
E.g., ステロイド、頻尿、夜間の疼痛
・寝付けないのか?目が覚めちゃうのかをきく
→作用時間にあわせて睡眠薬を調節する
気持ちのつらさ
・共感しながら、原因をきいて対処する(疼痛、ノバミン)
・専門的な治療の必要性を評価する 問診、つらさの寒暖計
・くすりは、STEP1 ベンゾジアゼピン STEP2 SSRI・SNRI
・専門家に紹介するルート、紹介の仕方を知って・つくっておく
せん妄
・原因をしっかり評価する
・治せるとき
→ 原因の治療 抗精神病薬をちょびちょび
治せないとき → 不穏・不眠の緩和 患者・家族のケア
Ⅲ 症状マネジメント
5.せん妄
6.不眠
7.気持ちのつらさ
せん妄 背景知識
<P.91>
・「不穏」、「ぼうっとしてなにかおかしい」のはたいてい「せん妄」です
診断基準
1
周囲や自分の状況をよく分かっていない(意識障害)
2
時間や場所を間違える、人や虫が見える、ありもしないこと
をはなす(認知機能の障害、見当識障害や幻視)
3
1日のうちで症状にむらがある、夜に悪化する
4
原因となる身体的要因がある
過活動型
低活動型
いわゆる「不穏」
ぼうっとしているように見えるが、よくきくと幻視があったりする
せん妄 OVERVIEW
<P.90>
まず評価
1 診断
2 なおせる原因を見逃さない
-薬(安定剤、ステロイド、オピオイド)
-症状(尿閉、宿便)
-採血(カルシウム)
-感染
-脳転移
↓
・STEPにしたがった治療
薬物療法
・ケア
↓
・治療目標
-達成されたかを確認
-達成されなければ専門家に紹介
せん妄 評価
<P.90>
・治せる原因を見逃さない
薬歴、症状、採血、脳画像を見直す
・原因が治るかどうかによって治療の方針を立てる
1 せん妄の診断
2 原因の探索
①薬剤(症状の発現前後に開始・増量したオ
ピオイド、ステロイド、睡眠薬、抗うつ薬)
②疼痛、尿閉、宿便、発熱、口渇など不快な
評
症状
価
③血液検査(高カルシウム血症、脱水、高ア
ンモニア血症、腎障害、貧血、低ナトリウ
ム血症)
④感染症
⑤画像所見を見直す(脳転移)
原因の治療
①薬剤→変更・中止
②不快な症状への対応
・鎮痛
・尿閉、宿便の対応
・解熱
・口渇のケア
③高カルシウム血症
せん妄 原因の治療可能性による目標 <P.91>
・治せるとき
→ 原因の治療
抗精神病薬をちょびちょび
治せないとき → 不穏・不眠の緩和
患者・家族のケア
表Ⅲ-5-1 原因によるせん妄の治療目標
原因の治療
が可能か
治療目標
例
薬物療法
ケア
可能
不可能(困難)
せん妄からの回復
せん妄症状による苦痛の緩和
・臓器障害のないオピオイド
・初発の高カルシウム血症
・肝不全
・肺転移による低酸素
抗精神薬。ベンゾジアゼピン悪化
させるため、睡眠が確保できない
ときに限る
睡眠確保のため、鎮静作用のある
抗精神病薬や、抗精神病薬とベン
ゾジアゼピンの併用を行う
・見当識の回復の支援
・生活リズムの補正
・不穏の緩和
・睡眠の確保
・家族のケア
せん妄 治療
せん妄の治療のステップ
●他の抗精神病薬
or 抗精神病薬と
ベンゾジアゼピンの
併用
治
療
●抗精神病薬の定期投与
●原因の治療
●抗精神病薬の頓用
STEP1
STEP2
STEP3
「意識が混乱したとき」(せん妄1)のパンフを用いて説明・ケアを行う
STEP1~3 せん妄の薬物療法<治すとき>
リスパダール0.5mg 眠前
不眠時追加
毎日の評価が必要
・少なめに出しておいて毎日追加を使う
朝とろーんとのこるなら・・
↓
・前日使った分を上乗せ
セロクエル25mg寝る前
ある程度おさまった量で維持する
不眠時追加
↓
・原因がおさまってくると
眠気が出るから減らす
・専門家に紹介
・上記に、半減期の短くないベンゾジゼピンを追加(レンドルミンなど)
STEP1~3 せん妄の薬物療法<治せないとき>
リスパダール0.5mg 眠前
不眠時追加
弱
い
セレネース0.5~1A+アタラックス0.5~1A 皮下注・100mL点滴
不眠時追加
在宅など座薬なら
し
っ
か
り
セロクエル25mg寝る前
不眠時追加
セニラン座薬 3~9mg
セレネース1A+ロヒプノール
不眠時追加
家族の「コミュニケーションとりたい」
「休んでいてほしい」
気持ちと相談しながら
不穏・睡眠の確保
ダイアップ座薬6~8mg
ワコビタール座薬50~100mg
事例(1) 治せるせん妄
8*歳 女性 肺がん
自宅療養中、発熱して背中の痛みを訴えるようになった
オプソを2回ほど内服したら行動がおかしいと連絡
夜眠れないのでデパス0.5mgを数回内服
Rp:
ロキソニン3T
疼痛時 ①オプソ5mg
不眠時 ①デパス0.5mg
血液検査
カルシウム正常
CRP7.2 WBC14500
他正常
評価:原因を見逃さない
-薬(安定剤、ステロイド、オピオイド)
-症状(尿閉、宿便)
-採血(カルシウム)
-感染
-脳転移
感染症で筋肉痛?→モルヒネでせん妄・不眠→デパスで悪化
治療
・デパス中止
・モルヒネ中止
疼痛時 ①アセトアミノフェン0.5g 1日4回まで
・クラビット3T
・不眠時
リスパダール0.3mg 1日3回まで(積極的に使わない)
事例(2) 治せないせん妄
64歳 女性 大腸がん 肝転移
肝転移による肝不全が徐々に悪化。黄疸。傾眠状態から不穏
Rp:
デュロテップパッチ2.5mg
ボルタレン座薬25mg×3回
疼痛時 ①アンペック座薬10mg 1こ 1日1回使うかどうか
不眠時 ①レンドルミン1T
血液検査
ビリルビン16mg/dL、腎機能悪化
評価:原因を見逃さない
-薬(安定剤、ステロイド、オピオイド)
-症状(尿閉、宿便)
-採血(カルシウム) 肝不全
-感染
-脳転移
肝不全末期のせん妄→ケアが大切
何を使うかよりは、家族の意向に合わせて
使い慣れているもので調節する
治療
・不眠時
ダイアップ座薬6mg
セレネース1A+ロヒプノールなど
ケア
ここまでのまとめ
不眠
・「眠れない原因」があるかきいて取り除く
E.g., ステロイド、頻尿、夜間の疼痛
・寝付けないのか?目が覚めちゃうのかをきく
→作用時間にあわせて睡眠薬を調節する
気持ちのつらさ
・共感しながら、原因をきいて対処する(疼痛、ノバミン)
・専門的な治療の必要性を評価する 問診、つらさの寒暖計
・くすりは、STEP1 ベンゾジアゼピン STEP2 SSRI・SNRI
・専門家に紹介するルート、紹介の仕方を知っておく
せん妄
・原因をしっかり評価する
・治せるとき
→ 原因の治療 抗精神病薬をちょびちょび
治せないとき → 不穏・不眠の緩和 患者・家族のケア
今日のまとめ
不眠
・「眠れない原因」があるかきいて取り除く
E.g., ステロイド、頻尿、夜間の疼痛
・寝付けないのか?目が覚めちゃうのかをきく
→作用時間にあわせて睡眠薬を調節する
気持ちのつらさ
・共感しながら、原因をきいて対処する(疼痛、ノバミン)
・専門的な治療の必要性を評価する 問診、つらさの寒暖計
・くすりは、STEP1 ベンゾジアゼピン STEP2 SSRI・SNRI
・専門家に紹介するルート、紹介の仕方を知っておく
せん妄
・原因をしっかり評価する
・治せるとき
→ 原因の治療 抗精神病薬をちょびちょび
治せないとき → 不穏・不眠の緩和 患者・家族のケア
気持ちのつらさに対するケアは
「こころのケア」でお話しさせて
いただきます!
<P.94, P.116 >
せん妄のある患者とその家族のケア
せん妄についての説明とゴールの共有
安全と安楽への配慮、環境調整
コミュニケーションの工夫
さまざまな苦痛の緩和
尊厳の維持
家族ケア
安心できる環境づくり
灯り
・患者が慣れた
看護師
・会話に名前・月日
時間・季節を入れる
カレンダー
家族の付き添い
昼夜区別の
ある環境
時計
なじみの
もの
安全への配慮
ベッドは
一番低い位置
マット
•ルート類はできる
だけ少なく
•ルートは見えない
位置に
•点滴は日中だけに
するなどの工夫
終末期せん妄 - 家族の体験 -
Morita T et al , Pain and Symptom Manage 2007
終末期せん妄 - 家族の意味づけ -
Morita T et al , Pain and Symptom Manage 2007
終末期せん妄 – 家族の感情 -
Morita T et al , Pain and Symptom Manage 2007
終末期せん妄の家族の体験と
家族からみた望ましいケア
 興奮・不穏を緩和する
家族のアンビバレントな気持ちに気づく
 せん妄の原因を説明する
(麻薬、頭がおかしくなった、痛み、心の弱さのせいではない)
 そばにいる、日々の心配事に耳を傾ける
 せん妄による言動を否定しない
 患者が何を伝えたいのかを理解しようとする
 おかしなことを言っていることを患者が気づかないようにする
 意識が混濁するまでに別離の準備をすすめる
 家族の健康に配慮する
いつもと違う患者さんに気づく
Aさん、70歳代、男性、肺がん
2-3日前から昼はうとうとで、夜は眠れない
会話中にうとうと眠ってしまう
時間や場所がわからない
いない人の名前を呼ぶ
空をつかむ動作がある
家族の体験・気持ち・せん妄の意味づけ
「そばで看ていて、困っていることやご心配され
ていることはありませんか」
と問いかけることがコミュニケーションの第一歩
せん妄の原因についての説明
 適切な情報提供を行う
「 今の状態が○○のためではないかと、ご心配されて
いるのですね。みなさん、そのように思われます。お
話しのつじつまがあわなくなっているのは、からだの
状態が変化していることが原因です。○○のせいで
はなく、(からだに必要な酸素をとり入れるちからが
弱くなってきている)ためと考えられます」
家族の感情の理解とサポート
“これからどうなっていくのでしょうか”
 気持ちを理解しようとしていることを伝える
 ともにあること、最善をつくすことを保証する
「これからどうなっていくのかと先々のことをとても
心配されているのですね。これから治療を行ってい
きますが、ご本人とご家族にとって一番よい方向を
一緒に考えていきたいと思います」
今後についての説明
 家族の準備にあわせて、先々の見通しを伝える
「このような状態が起こってくると、からだの状況が少
しずつ悪くなってきていることが考えられます。個人
差がありますが、だんだん眠る時間が増えていって、
お話ができる時間が限られてきます。また、興奮気
味になられて、その後うとうとする時間が増えていく
方もいらっしゃいます。とてもつらいことですが、これ
は多くの人がたどる自然な経過の一部です」
ゴールの共有
 患者と家族の希望・価値観をゴールに反映させる
 患者・家族にとっての特別なゴールはないかを知る
「原因を治すことができればもとに戻るのですが現在の
病状からは残念ですが難しいと考えています。つらい
症状をやわらげるための方法をご家族と一緒に考え
ていきたいと思います」
「ご本人であれば、今の状況で、どのようなことを一番
に希望されるでしょうか。以前にこんなことをおっしゃ
っていたということがあればお教えください。また、ご
家族のご希望があればお聞かせ下さい」
家族の準備へのサポート
 家族のこころの準備をサポートする
「予測することはとても難しいのですが、しっかりとお話
ができる時間は何日間かもしれません。頑張っても週
の単位と考えられます。ご本人とご家族にとって、 1日
1日がとても大切な時間になってくると考えられます。
もしも、お話しができる時間が限られてきているとする
と、どなたか会っておきたい方がいらっしゃいますか」
場面1 何か話しているがわからない
 患者のせん妄による言動を否定しない
 患者が伝えたいことを理解しようとする
・苦痛や不快をチェックする
排泄、口渇、衣類やかけもの、痛みなど
・家族の言動の意味づけをサポートする
「何かやりたいことや気がかりなことがあって、私たち
に伝えようとされているのでしょうか」
場面2 何をしていいのかわからない
 コミュニケーションのとりかたを工夫する
 家族にできるケアをともに考える
「1日のうちで波があります。調子のいい時をみは
からってお話してみて下さい。ご家族の声にうまく
反応できなくても、そばにいることはちゃんとわか
っていらっしゃいます」
「ご家族がそばにいて、○○さんの言葉に合わせ
ながらお話しされたり、マッサージされたりすること
で、とても安心されるようです。ご家族だからこそ、
だと思います」
場面3 不穏になって落ち着かない
 適切な薬物療法を検討する
パーターンを把握し予防的な投与も考慮する
 家族のアンビバレントな感情にも配慮する
ケアのみで看ていくという選択肢もある
 落ち着くまで、家族と一緒に看守る
「こうして看守っていくこともできますし、少し休めるよう
にお薬を使うこともできます。どうしていくのがいいで
しょうか」
「まず、少しうとうとできて、目が開いた時にはお話しが
できるくらいを目標にしてお薬を使ってみましょうか」
場面4 家族の心身の負担がある
 医療者から声をかける
 家族が支えあうことをサポートする
「今日は落ち着かれているようですので、お家で休ま
れても大丈夫だと思います」
「本当によく看ていただいていますね。疲れていらっし
ゃるように感じますが、いかがですか。どなたか付き
添いの交替を相談できる方はいらっしゃいますか」
本日のまとめ
せん妄を体験する患者さん、ご家族へのケア
 アセスメントの重要性
せん妄の原因、治療可能性、患者・家族にとっての苦痛
 個別のニーズに応じた治療・ケア
 患者・家族の体験に寄り添う姿勢