2007年度 経済統計講義内容 担当者: 河田 正樹 e-mail: [email protected] このスライドの内容 Ⅰ 経済統計とはどのようなものか a) 統計(statistics)の2つの意味 b) 統計学とはどのようなものか c) 経済統計(economic statistics)の守備範囲 Ⅱ 講義でとりあつかう内容 a) 経済に関するデータ b) 経済データを用いた分析 c) 経済データの入手 Ⅰ 経済統計とはどのようなものか a) 統計(statistics)の2つの意味 統計とは、英語でstatisticsと表される。 反対に、英語のstatisticsを辞書で調べると、 ①統計 ②統計学 という2つの訳語が出てくる。 では、統計と統計学はどのような違いがあるのであ ろうか。そもそも統計学とはどのようなものであろう か。 b) 統計学とはどのようなものか 日常生活において、われわれは不確実なことがらに さまざまな情報を用いて、予測し、意思決定をおこ なっている。 (例) 駅までバスでいくときには、 〇 通常の所要時間の情報 に加え 〇 曜日、季節、時間帯、天候などによる混雑度の情報 を用いて、所要時間を予測し、行動する。 通常の所要時間の情報、混雑度の情報をどのように 入手し、どのように利用しているのであろうか? • 普段からよく乗るバスであれば、大体の所要時間を記録 (多くの人は脳の中で)している。 • 平均所要時間と最大所要時間を大まかに計算している。 • さらに、曜日・時間帯・天候などで場合分けし、それぞれの 場合の平均所要時間と最大所要時間を大まかに計算して いる。 ⇒ 実は無意識のうちに「統計学的なものの考え方」 を用いている。 統計学とは、分析目的に対応してデータを収集し、分 析することによって、予測や意思決定のための材料 を提供する学問である。 統計学 分析目的 データの収集 分析 予測・ 意思決定 統計 一方、統計とは分析目的に対応して収集されたデー タのことを指す。統計学で用いられるデータは、数字 で表わされたものである。 c) 経済統計(economic statistics)の守備範囲 statisticsの2つの意味に対応して、経済統計 (economic statistics)にも2つの内容があり、こ の科目では、その両方について学ぶ。 経済に関するデータについて、それらがどのように して作成され、どのような特徴をもつのかを学ぶ (経済統計論) 経済データを用いてどのような分析がおこなえるか を学ぶ(経済統計学) Ⅱ 講義でとりあつかう内容 日本の統計制度 全数調査と標本調査 人口に関する統計 労働に関する統計 家計に関する統計 物価指数 時系列データの分解 景気指標 国民経済計算 <前半> 主に個別のデータがどのようにして作成され、どのような特徴を持つか を学ぶ。基礎知識として、日本の統計制度と、全数調査と標本調査について学ぶ。 <後半> 個別の組み合わせた指標がどのように作成されるか、どのような意味を 持つかを学ぶ。時系列データの分解は景気指標の基礎知識となる。最後に、日本 経済の全体像をみる国民経済計算について学ぶ。 データを用いた分析については各章の中でいくつか紹介する。 a) 経済に関するデータ 経済学を学ぶとき、経済ニュースを目にする とき、さまざまな数字を目にする。これが経済 データ(経済統計)である。 (例) GDP、消費者物価指数、完全失業率 など これらの数字は • 政府の経済政策(失業率が高くなれば雇用拡大政策 をおこなう。など) • 民間企業の戦略(家計消費が増えれば生産を増やす。 など) などに用いられる。 新聞の経済面には、次のような経済データが出てく ることがある。これらをきちんと説明できますか? 合計特殊出生率 完全失業率 有効求人倍率 季節調整値 消費者物価指数 実質可処分所得 ジニ係数 GDP たとえば、合計特殊出生率(Total Fertility Rate) について考えてみる。 これは、母親の年齢別出生率をすべて加えたもので、 1人の女性が一生のうちに平均して生む子供の数と みることができる。 合計特殊出生率が2を下回る→将来における人口 減少を意味する。 将来における人口減少 → 労働力の不足 → 経済の衰退 → 年金の財源不足 どのような政策をとるか ・ 少子化対策 ・ 年金制度改革 b) 経済データをもちいた分析 経済データをもちいた統計的分析をおこなうことによって、過 去や現在の経済の状況を把握したり、将来の予測をおこな うことができる。また、経済学のさまざまな理論は、この経 済データをもちいた分析によって検証することができる (例)エンゲルの法則 所得が低ければ低いほど、消費支出に占める食料費の割 合が高くなる。 この法則を検証するためには → 年間収入階級別の消費支出と食料費のデータによる分 析をおこなえばよい。 表 年間収入5分位階級別消費支出・食費・エンゲル係数 (H18年 年平均, 全国勤労者世帯) 階級 消費支出(円) 食料費(円) エンゲル係数(%) Ⅰ 210,364 52,429 24.92 Ⅱ 258,764 59,461 22.98 Ⅲ 296,651 67,794 22.85 エンゲル係数 Ⅳ 365,785 77,010 21.05 Ⅴ 469,589 90,322 19.23 食料費 消費支出 年間収入5分位階級別データとは、すべての世帯を、年間 収入の大きさの順に並べて、世帯数が等しくなるように5つ に分けたものである。 Ⅰ 低収入 Ⅱ 353万円 Ⅲ 477万円 Ⅳ 635万円 Ⅴ 870万円 ※ このデータの場合の境界値はこのようになる。 高収入 年間収入5分位階級別エンゲル係数 (家計調査 H 18年 年平均より作成) エンゲル係数(%) 30 25 20 15 10 5 0 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 収入階級 Ⅳ Ⅴ この分析により日本の家計について、エンゲル の法則が成立していることがわかる ※ なお、この講義であつかう統計分析は、初歩的なものに限定している。よ り高度な統計的分析は計量経済学の講義でとりあつかう。 c) 経済データの入手 経済データによって、経済の現状を把握したり、そ れをもちいた分析をおこなったりする場合、最初に データを入手する必要がある。 入手先としては、次のような資料が考えられる。 1次資料 - 統計を作成する機関による報告書 2次資料 - さまざまな統計のうち、主要なものを まとめた統計集 データの公表媒体としては、①紙媒体(報告書、資料 集など)と②電子媒体(CD-ROM、webなど)がある が、現在では1次資料、2次資料ともに多くのもの が電子媒体で公表されている。 経済データに関する代表的な2次資料 日本統計年鑑(総務省統計局) 経済統計年鑑(東洋経済新報社) →2005年版をもって休刊 民力(朝日新聞社) 総務省統計局のホームページでは、日本 統計年鑑収録のデータをExcel形式で入 手できる 各国統計局のホームページは以下のとおり 日本国総務省統計局 www.stat.go.jp 大韓民国統計庁 www.nso.go.kr 中華人民共和国国家統計局 www.stats.gov.cn これらは河田の講義用HPからリンクあり
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