2.推論プロセスでの落とし穴 (1)帰納的推論

Ⅳ 継続的な意思決定での
エントラップメント
1.継続的な意思決定
2.規範的意思決定論からの乖離
3.エントラップメントの原因
4.エントラップメントの回避
1.継続的な意思決定
(1)意思決定間の関係
• 多くの(経営)意思決定は単独でなされるのでは
なく、過去や将来の意思決定との関連性が考慮
される
(a)現在の意思決定が、将来の意思決定を拘束
することも多い
(b)現在の意思決定には、過去の意思決定の肯
定や否定が含まれることも少なくない
(2)コミットメント/エスカレーション
=
関与; こだわり; かかわりあい; 肩入れ; 献身; 拘束・・・・
• 意思決定におけるコミットメント:過去の
意思決定によって生じた状態を継続する
(という意思決定を行う)こと
• 意思決定におけるエスカレーション:過
去に行った意思決定によって生じた状態を
継続・補強するために、更なる資源投入
(という意思決定)を行うこと
2.規範的意思決定論からの乖離
• 規範理論としてのサンクコスト理論
=過去に投資した時間、エネルギーやお金は
回復不能なコスト(サンクコスト)であり、現在
や将来の意思決定には考慮すべきではない
↓↑
• 意思決定の際には、選択肢を採用した結果得ら
れる将来のベネフィット(便益)とコスト(費用)と
の比較をもとに判断すべき
2.規範的意思決定論からの乖離
(continued)
• 現実には、サンクコストが考慮され(サンク
コスト効果)、合理的でないコミットメントや
エスカレーション(エントラップメント)ことが
決して少なくない
cf. 完成効果
=プロジェクトが完成に近づくほど、非合理的
なエスカレーションが生じやすくなるという効果
3.エントラップメントの原因
(1)確証バイアスの影響
• 過去の意思決定についてネガティブな
フィードバックを受け取った意思決定者は、
過去の意思決定を支持するような情報を
懸命に捜し求める傾向がある
• 認知的不協和*の解消を行うために、最初
の意思決定へのコミットメントからエスカ
レーションに向かうことも多い
(2)フレーミングの影響
• ネガティブ・フレーミング(損失に関する選
択)では、リスク選好的になる傾向がある
(cf. プロスペクト理論)
↓
• 過去に行った意思決定についてネガティブ
なフィードバックを受け取った意思決定者
は、ネガティブ・フレーミングで意思決定を
行いがちになる
(3)一貫性への高評価
• 過去の意思決定を撤回することが、自分
の過ちを認めることになることも多い
→コミットメントの非合理性に気がついて
も、自分の面子(メンツ)を守るために
コミットメントを続けることも起こる
(3)一貫性への高評価
• 首尾一貫した行動を取っている者が、周り
から高く評価される傾向がある(特に、リー
ダーや管理者の場合)
↓
• 一貫した行動を取っているという印象を周
りに与えるために、コミットメントを維持する
(印象操作)
○参考:認知的不協和
.
=
一人の人が同時に二つの相いれない認知
(信念、態度、意見)を抱いたときに生じる
緊張状態
• 相いれない認知の一方変化させることによって
緊張の低減が図られる
ex. 「すっぱいブドウの合理化」
「甘いレモンの合理化」