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2016年8月号
Vol.36
(2016年8月5日発行)
シールぼうや
結核についてのおはなし
結核予防研究会
マスコットキャラ
結核(Mycobacterium tuberculosis)は世界三大感染症と言われ
ており、現在も感染症ではHIV/AIDSに次ぐ死因の2番目にあたる疾
患です。結核は肺結核と肺外結核に分類され、肺結核は37℃前後
の微熱、咳嗽が長期持続し、その他倦怠感、食欲不振、盗汗などの
症状がみられる細菌感染です。
大阪府では結核感染が全国平均に比較し高率であり、なかでも大
阪市が更に高率となっています。平成11年では罹患率(人口10万
対)は全国:34.6人、大阪府:69.5、大阪市:107.7と大阪市は全国罹
患率の3倍でした。しかし、結核に対する治療、知識の普及、接触者
健診等の影響もあり、平成26年には罹患率(人口10万対)は全国:
15.4、大阪府:24.5、大阪市:36.8と著名に低下してきていますが、全
国罹患率に比較し、大阪市の罹患率はいまだ高値を示しています。
結核は適切な診断、治療を行うことで治療可能な疾患ですが、現
在新たな問題点として多剤耐性結核菌の出現があります。標準療
法に使用される抗結核薬のうちリファンピシンとイソニアジドがもっと
も強い抗結核作用を持っていますが、これら二剤に耐性を持つ結核
菌を多剤耐性結核菌と言います。多剤耐性結核に罹患すると化学
療法による治癒が非常に困難になります。日本の結核全体の治癒
率は80%以上ありますが、多剤耐性結核では治癒率50%程度になっ
てしまいます。また、多剤耐性結核菌のうち、その治療に用いられる
ニューキノロン系抗生剤の1種類以上に耐性、かつ注射可能な抗結
核薬 (カナマイシン、アミカシン、カプレオマイシン)の1種類以上に
耐性のある菌を超多剤耐性結核菌と呼びます。超多剤耐性結核は
化学療法が事実上不可能となり、治癒率は30%程度です。
血液培養検査のすすめ!
<血液培養検査の意義>
血液培養検査の目的は菌血症を診断することに
あります。起因菌を同定し、感受性結果を得ること
で適切な抗菌薬療法を可能にします。また、抗菌薬
の適正化(ディ・エスカレーション)により問題となっ
ている薬剤耐性菌の増加を抑制することが期待で
きます。
<いつ血液培養を行うか>
血流感染/敗血症が疑われる場合!!
★原因不明熱(>38℃)、または低体温(<36℃)
★ショック、悪寒、硬直
★重症局所感染
(髄膜炎、心内膜炎、肺炎、腎盂腎炎、腹腔内膿瘍等)
★異常な心拍数の上昇
★低血圧、または血圧上昇
★呼吸促迫
<血液量が検出率に影響を与える>
血液培養の検出率に影響を与える最大の要因は培養
に用いる血液量です。十分量の血液を採取することで、
少量しか存在しない起因菌の検出が可能になります。
図.大阪市の結核罹患率の推移(平成11年~26年)
今後私たちは結核感染患者に対する早期の
診断、感染の予防、正しい治療が必要と考えま
す。特に細菌性肺炎と考えられる患者に対して
ニューキノロン系抗生剤を投与し、耐性化を招くリ
スクは実臨床の場では大いに有り得るため、画
像所見に注意し、肺結核の否定ができない患者
に対しては抗酸菌の検査も考慮が必要と考えま
す。特に大阪市のど真ん中で診療する当院では
注意が必要です。 (呼吸器内科 寺西敬)
感染症の診療に欠かせない「血液培養検査」について、
細菌検査室がスバッ!とお応えします。
<血液培養は2セット採取が基本>
血液培養は、1回の実施タイミングに
おいて2セット以上実施し、さらに各
セットは別々の部位から採取すること
が重要です。2セット実施することで、1
セットよりも約20%の検出率向上が期
待できます(図1)。
複数セット採取の臨床的意義
採取部位の皮膚の常在菌による汚染の鑑別
血液採取量が増えることによる起因菌検出感度の向上
図1
<血液培養Q&A>
Q1.採血量がボトル採取可能量下限を下回る
場合は?
A1.好気ボトルに全量を接種してください。
Q2.ボトルに血液を接種する順番は?
A2.空気を入れないために嫌気ボトル→好気
ボトルの順番で接種してください。
Q3.血培ボトルの使用期限は?
A3.血培ボトルに使用期限が書いてあります。
(細菌検査室 児島涼子)