GISによる岩手県胆沢扇状地に おける屋敷林の 面積変化に関する解析 岩手大学 人文社会科学部 情報科学研究室 趙 迪、 遠藤 教昭 岩手県胆沢扇状地のロケーション <岩手県胆沢町扇状地> 岩手県西南部胆沢町 16-18km(岩手県最大の扇状地) 三方を胆沢川、衣川、北上川に 囲まれている 多数の段丘面からなり、隣接する 段丘面の高低差は1~10mと小さい 段丘は北が低く、南が高いという 性質がある 2 胆沢町扇状地と屋敷林の特徴 ・他に例の少ない散村の屋敷林形態である ・自然性が高く、比較的規模が大きい「イグネタイプ」に属す る屋敷林が主体 <屋敷林とは> 屋敷を取り囲むように形成された 森林 多くのものは人為的に植栽された 樹木からなる 屋敷林は、冬季の寒風や夏季の 熱風、砂塵、洪水などから屋敷や その付属空間を保護する 研究方法 研究目的 研究対象 胆沢扇状地の景観を左右する屋敷林面積の 長期的な変化(1968-1995)を調べる 岩手県胆沢扇状地の中央部を貫く帯状の地域 (次のスライド参照) 研究資料 現地調査データ 501軒の屋敷位置データ(竹原と阿部が2000年に調査) 1/25,000デジタル地図(国土地理院のCD-ROM) 空中写真(1968年および1995年の航空写真) 4 研究対象の屋敷 胆沢扇状地の段丘面は、北の低い方から南の高い方に向かって、水沢面、 堀切面、上野原面、一首坂面と呼ばれています。屋敷林が存在するのは、 主に一首坂面を除いた3つの段丘面です。 GISによる解析 GIS(Geographic Information Systems)は、 邦訳すれば「地理情報システム」であり、 位置情報を持ったデータ(空間データ)の管 理・加工、視覚的な表示を行うことができる システムです。 これによって、高度な分析や迅速な判断が可 能となります。 以下に本研究における解析の手順を示します。 6 1.国土地理院発行のデジタルマップ 1/25000の 読み込みと修正 7 2.屋敷林のポイントの書き込み 8 3.空中写真(1968/1995年・1/25000) の読み込みと補正 9 4.屋敷林の抽出 10 5.解析 GISの解析機 能により、 1968年と1995年 の屋敷林面積を 計測 11 結果 各段丘面の平均屋敷林面積(m2) 水沢段丘面 堀切段丘面 上野原段丘面 1968年 1995年 803.5 435.3 (190) (221) 2148.4 1820.2 (194) (191) 1700.2 1575.3 (76) (75) t検定 6.13(**) 1.44 0.53 (**) P<0.01 12 屋敷林面積の減少は顕著 1968年と1995年を比較すると、胆沢扇 状地における屋敷林の面積は減少傾向 にあることが分かりました。 特に水沢面においては、統計学的な有 意差(平均値の差の検定による)がみら れました。 13 屋敷林面積減少の原因 具体的に屋敷林面積が減少するのは,どのよ うな場合でしょうか..? (0) 都市化 (1) 生活様式の変化 薪や落ち葉を燃料にしなくなった (2) 住民の都合 住宅・商店・工場などの建築、道路などの建設 家屋の増改築・耕地の拡大 (4) 公共工事 道路の拡幅など改良工事・水田区画の改良工事 14 屋敷林の消失のほとんどは,宅地や工場用地 の開発の顕著な都市周辺で起こっています. (三浦 2001)胆沢扇状地においても,水沢面 には一部都市化の見られる地域があり,(1)や (2)の要因とあいまって屋敷林面積の減少が起 きたものと思われます. また、胆沢地区では大規模な土地改良工事が 行われているため、(4)の要因も考えられます. 工事の際に屋敷林の保全が図られていたとし ても,影響が全くないということはあり得な いでしょう. 15 1968年 1995年 水沢面では図のように道路建設により屋敷が増えた場所も ありますが、水沢面全体でみると、1戸あたりの屋敷林面積 は半分程度に減少してしまいました。 おわりに 胆沢地区の屋敷林は,町をあげて保存の努力 が行われていると思われますが,それにもか かわらず,水沢面における屋敷林総面積の減 少は顕著なものでした. 屋敷林の維持管理には多大な労力と経済的な 負担がかかるために,その面積が減少してい るということも考えられます. しかしながら,屋敷林の保全は,該当地区お よび周辺地区の環境保全のため,胆沢扇状地 では特に観光の振興のためにも重要なので, 今後も積極的な保全策が望まれます. 17 Thank you very much from Ran ! Please visit www.hss.iwate-u.ac.jp/endo/
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