日本の介護福祉の在り方について

1999年度秋学期 香川敏幸研究会 個別研究 兼 卒業制作
日本の介護福祉の在り方について
総合政策学部4年 宮田 龍(79608848)
http://www.sfc.keio.ac.jp/~s96885rm/g-pro/
contents
1、介護環境の変化
2、試行錯誤する介護保険制度
3、ドイツ・介護保険法
4、これからの介護福祉
介護環境の変化

少子高齢化の進展
• 65歳以上人口の増加
• 4.94%(1950)→15.11%(1996)→30.22%(2050)
• 出生数の低下
• 234万人(1950)→119万人(1997)
• 合計特殊出生率 3.65人(1950)→1.39人(1997)
• 世界的な傾向
• 顕著なアジア地域諸国
日本の年齢別割合の変動と将来推計
8 0%
7 0%
70%
60%
6 0%
5 0%
4 0%
65歳以上
35%
3 0%
30%
16%
2 0%
1 0%
1950年
16%
14%
5%
0%
0~14歳
15~64歳
54%
1995年
2050年
日本の出生数・合計特殊出生率の推移
2 ,50 0,0 00
3.65
2 ,00 0,0 00
1 ,50 0,0 00
2.00
2.13
1.75
1 ,00 0,0 00
1.54
1.39
5 00 ,00 0
0
1950年
1960年
1970年
1980年
1990年
1997年
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
出生数
(人)
合計特殊出
生率(人)
韓国
中国
8 0%
7 0%
8 0%
7 0%
6 0%
7 0%
6 0%
5 0%
6 0%
5 0%
4 0%
3 0%
2 0%
1 0%
0%
5 0%
4 0%
4 0%
3 0%
3 0%
2 0%
2 0%
1 0%
1 0%
0%
0%
1950年 1995年 2050年
7 0%
シンガポー ル
8 0%
1950年 1995年 2050年
アメリカ
1950年
1995年
2050年
スウェーデン
ドイツ
8 0%
7 0%
6 0%
7 0%
6 0%
5 0%
6 0%
4 0%
5 0%
5 0%
4 0%
4 0%
3 0%
3 0%
3 0%
2 0%
1 0%
0%
2 0%
2 0%
1 0%
1 0%
0%
1950年
1995年
2050年
0%
1950年
1995年
2050年
1950年 1995年 2050年
介護環境の変化

家族介護の限界
• 介護の質の変化
• 「最期を看取る介護」から「重障害の高齢者を
長期間看る」介護へ
• 家族形態の変化
• 平均世帯人員 4.8人(1975)→2.8人(1995)
• 女性の社会進出、晩婚化
家族の介護能力は低下
介護環境の変化

「老人病院」の登場
• 介護目当ての入院「社会的入院」の問題化
• 「老人福祉」と「老人医療」の隙間
• 「介護の駆け込み寺」
• 本来の病院の医療機能に影響
医療と福祉の総合的な整理が求められる
介護環境の変化

国の役割の変化
• グローバル化の進展
• 「大きな政府」から「小さな政府」へ
• 救貧的・措置制度的な社会福祉政策からの
転換
新たな介護システムの創設へ
介護環境の変化

高齢者福祉政策の改革
• 介護環境の変化を受け「介護を社会的に支
える」システムの創設へ
• 1990年 「ゴールドプラン」
(高齢者保健福祉推進10カ年戦略)
• 1995年
「新・ゴールドプラン」
• 1995年
「介護保険制度」
試行錯誤する介護保険制度

創設までの経緯
1994.9
社会保障制度審議会
→「介護保険制度」を初提案
.12
高齢者介護・自立システム研究会
→社会保険制度の導入を提唱
→1995年7月「老人保健福祉審議会」でも同様の報告
1995.12
高齢者介護・自立システム研究会
→「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」
1997.12.7 衆議院本会議で可決
2000.4.1 制度スタート
試行錯誤する介護保険制度

制度の概要
要介護者
在宅介護サービス
介護保健施設
要介護申請
介護サービス計画
訪問調査 かかり付け医の
意見書
認定
介護認定審査委員会
意義
申し立て
試行錯誤する介護保険制度

制度の概要
• 要介護度の目安と在宅介護サービスの利用限度額
要介護度
目安
訪問・ 通所
要支援
61,500 円
要介護度1
要介護度2
日常生活は 可能。 入浴な ど
に一部介護が必要
立ち上がり が不安定
自力で歩行ができ ない
ショ ート ス テイ
( 半年)
7日
165,800 円
194,800 円
14 日
14 日
要介護度3
自力で座っ ていら れない
267,500 円
21 日
要介護度4
日常生活全てに介護が必要
306,000 円
21 日
要介護度5
意志の 伝達が 出来ず全面介
護が必要
358,300 円
42 日
試行錯誤する介護保険制度

議論の再燃
• 家族介護への給付
• 保険料削減策

山積する課題
• 要介護判定の基準
• 介護サービスの供給体制

政府特別対策の発表(1999.11.07)
→制度の根幹を揺るがす影響
ドイツ・介護保険法

導入の背景
• 高齢化の進展
• 65歳以上人口、2050年には30%に
• 要介護者の増加
• 総人口の2.1%、165万人(1991)
• 家庭の介護能力の低下
• 主たる介護者であった女性の社会進出が進む
• 高額な施設入所費
• 4,000〜4,500DM/月
• 地方自治体の財政を圧迫
ドイツ・介護保険法

成立までの経緯
• 1994年5月 法案成立(20年に渡る末)
• 1995年1月 保険料徴収、要介護認定スタート
•
4月 在宅の要介護者への現金給付、
訪問介護サービスの開始
• 1996年7月 施設入所サービスの開始

制度の概要
• 保険料 1.7%
• 保険者 疾病金庫
• 対象者 全国民に加入義務付け
ドイツ・介護保険法

制度の概要
要介護者
要介護申請
給付審査
在宅介護給付
部分的施設介護給付
入所施設介護給付
認定
介護金庫
メディカ
ルサービス(通称MDK)
ドイツ・介護保険法

給付内容
• 在宅介護給付
• 最大で毎月3,750DMまでの在宅介護サービス、最
大で毎月1,300DMまでの介護手当
• 部分的施設介護給付
• デイケア、ナイトケア
• ショートステイ
• 入所施設介護給付
• 月額2,800DM、年額30,000DMまで介護金庫が負
担
• 在宅介護者への給付
• 年金保険料を介護金庫が負担
ドイツ・介護保険法

実施状況
• 要介護度認定
• スタート時は給付申請者の審査が滞留
• 1995年内には解決
• 審査状況
• 推定要介護者数の2.6倍の申請件数
• 30%前後の却下率
• 異義申し立ても多数
• 保険給付状況
• 在宅介護給付73%、施設介護給付27%
• 在宅介護給付中、介護手当76.9%、介護サービス9.5%
• 要介護度の高い家庭では、コンビネーション給付を選択
する傾向
給付種類
在宅介護給付
要介護度1
579,191
介護サービス
介護手当
コンビネーショ ン
デイケア、ナイトケア
代替介護給付
ショート ステイ
施設介護給付
160,623
526,372
<48.9>
(9.8)
(81.4)
(8.0)
(0.3)
(0.1)
(0.3)
要介護度3
156,767
<41.7>
(9.1)
(75.6)
(14.0)
(0.5)
(0.4)
(0.5)
184,677
<34.6>
(76.1)
(23.9)
計
要介護度2
過酷なケース
994
<12.4>
(8.8)
(65.6)
(23.8)
(0.6)
(0.6)
(0.7)
117,306
<0.1>
(69.1)
( --- )
(30.9)
( --- )
( --- )
( --- )
1,484
<39.8>
<25.3>
介護施設
(100.0)
(100.0)
障害者施設
( --- )
( --- )
739,814
711,049
274,073
2,478
<42.8>
<41.2>
<15.9>
<0.3>
(91.7)
(8.3)
計
1,263,324
<100.0>
(9.5)
(76.9)
(12.5)
(0.4)
(0.3)
(0.5)
464,090
<100.0>
(100.0)
1,727,414
<0.1>
<100.0>
ドイツ・介護保険法

財政状況
• 収入 232.7億DM(1996)、304.8億DM(1997)
• 支出 ①施設介護給付 ②介護手当 ③介護サービス
• 収支 23億DM(1996)、15.7億マルクの黒字
• 国際競争力維持のため、保険料抑制を求める動きが強まる

国民の意識
• 介護保険受給者に行ったアンケート
• 64%の人が「介護保険法は介護者の励ましになっている」
• 要介護認定の審査についても「適切である」が76.8%
これからの介護福祉

今までの介護福祉
• 家族単位では負担、解決ともに困難
• 旧来の家族観で強制
• 「措置制度」の福祉行政

介護保険制度が目指すもの
• 介護を社会全体で支えること
• 「施しの福祉」から「権利としての福祉」へ
• アジア諸国への「モデルケース」に