共有結合 3回 復習と発展 結合形成 ●水素原子軌道から水素分子軌道の生成を下図のように近似する 反結合性軌道(s*) 不安定化 H(原子軌道) 安定化 H(原子軌道) 結合性軌道(s) H2(分子軌道) ●He2分子は安定か? 反結合性軌道 不安定化 安定化 結合性軌道 結合形成による安定化エネルギーは無い 1 ●1s,2s,2p軌道を持つN, O, F原子からN2, O2, F2分子の生成 s* p* 2p p s s* 2s s s* 1s s 原子軌道 分子軌道 ●1s,2s軌道は結合形成に寄与しない 原子軌道 2 窒素 s* p* 2p 原子軌道 p s 分子軌道 酸素 原子軌道 NN(s1本 p2本:三重) s* p* 2p 原子軌道 p s O=O(s1本 p1本:二重) ラジカル電子アリ 原子軌道 分子軌道 3 混成(hybridization) ●炭素の結合は多様 メタン(CH4)を始めとする飽和炭化水素(アルカン)CnH2n+2 エチレン(CH2=CH2)など2重結合をもつ不飽和炭化水素(アルケン) アセチレン(CHCH)など3重結合を持つ不飽和炭化水素(アルキン) ●混成軌道による説明(ポーリング, スレーター) 混成軌道 混成前の軌道 1s22s22p2 sp3混成1s22s2px2py2pz s電子 s 2p p x py pz p電子 2s 1s 1s sp2混成1s22s2px2py2pz sp混成:1s22s2px2py2pz 4 ●sp3混成:1個の2s軌道電子が2pに励起され、あたかも 同一のエネルギー軌道(混成軌道)に4個の電子 (2s12px12py12pz1)があり、飽和炭化水素やダイヤモンド に見られる4本の結合を持つ化合物(sp3混成という、結合 角は10928‘) 正四面体混成:tetrahedral hybrid sp3混成 s px py pz 例:メタン、ダイヤモンド、 BF4、NH3, H2O 混成軌道 非共有 電子対 1s CH4(sp3) NH3(sp3) H2O(sp3) 5 ダイヤモンド: SF小説「アンドロメダ病原体」、「ジュラシック パーク」で 著名な作家マイケル クライトンの作品に「コンゴ」がある。コンゴの鉱 山で青色のⅡ型Bダイヤモンドが発見される。ボロンを含む青色ダイ ヤモンドは102 cmの桁の半導体で、光を通し、融点が極めて高いこ とから、超高密度にトランジスターを搭載しても、発生する熱で融解す ることがない超LSIの基板として、シリコンに置き換わるものと判断した 米国の半導体開発会社が、探索隊を派遣する所が序となる。小説の 中では、それまでに行われたダイヤモンドへのホウ素のドーピングは (p型ダイヤモンド)全て不成功であったと記してあるが、最近ドーピング が成功し、得られたダイヤモンドが超伝導を示すと報告された。次は、 n型ダイヤモンドの開発が必要である。 ジョン・マイケル・クライトン(John Michael Crichton、1942年10月23日 - 2008年11月4日) 宝石ダイヤモンド ●大部分のダイヤモンドは有色、特に黄色(窒素による)が多 い。色がごく薄いもの(約10 %)が宝石となる。ただし、有色ダ イヤモンドのうち青色や桃色の石は珍しく高価である。スミソ ニアン博物館にあるホープのダイヤモンドはブルーダイヤモ ンド(結晶としてⅡ型B: 天然のダイヤモンドでは百万個に1個 の割合)で、半導体の性質がある。青色は炭素にホウ素が入 ることによる。 ●モアッサンはフッ素の単離、電気炉の開発で1906年ノーベ ル化学賞を得た。他に、黄色のダイヤモンドの脱色やダイヤ モンドの合成研究を行った。それは、熔融鉄に多量の炭素を 溶かし込み急冷する方法で、ダイヤモンドの合成に成功した とされたが、その成功は助手の偽造による。ゼネラル電気の 合成ダイヤモンドは、熔融したニッケルを溶媒に用いており、 発想は類似である。 宝石ダイヤモンド ● 産地はロシア、ボツワナ、コンゴ、オーストラリア、南ア、カ ナダで全産出量15600万カラットの90%である(2004 年)。人 工ダイヤは1億カラット以上生産されている。ブリリアンカット は58面カットをいう(屈折率2.4のダイヤモンドをもっとも美しく 見せるための設計なので他の石には通用しない:合成ルチ ル、チタン酸ストロンチウム、ジルコニアなど屈折率がダイヤ モンドに近いものは、ブリリアンカットで美しい輝きを示す)。 ジルコニア ●sp2混成:4個の電子(2s12px12py12pz1)のうち、 3個の 電子が他の3種の元素と結合するとエチレンのような3本 の結合を持つ化合物(sp2混成という)、残りの混成軌道電 子はΠ電子・・・結合角 120 三方混成:trigonal hybrid 例:ベンゼン、ポリアセチレン、黒鉛(面内)、BF3, SO2, SO3 H H s軌道 H H 混成軌道 s px py pz ベンゼン H H p軌道 1s sp2混成 BF3 (sp2) 9 ●sp混成: 4個の電子(2s12px12py12pz1)のうち、 2個の 電子が他の2種の元素と結合すると2本の結合を持つアセ チレンのような化合物(sp混成という)、残りの混成軌道電 子はΠ電子 結合角 180 二方混成:diagonal hybrid 例 BeCl2 [Be:1s22s21s22s2p], CH CH、CO2 BeF2(sp) CO2 sp3、 sp2、sp混成軌道の形 A) sp3混成 ●s軌道とp軌道の寄与が1:3である分子軌道の形 ●軌道の混成を各軌道の線形結合で表し、4つの独立な(互いに直交 している)規格化された分子軌道を作る(規格直交) ●分子軌道への各p軌道の寄与が同等 = a1 (s) + a2(px) + a3 (py) + a4(pz) │a1│2 =│a2│2 = │a3│2 = │a4│2 │a1│2 +│a2│2 + │a3│2 + │a4│2 = 1 従って │a1│ =│a2│ = │a3│ = │a4│= 1/2 ●1つの軌道の向くベクトルをxyz面内の第一象限にする 分子軌道は7.14式~7.17式である。 1 = (1/2)(s + px + py + pz) (7.14) 2 = (1/2)(s – px – py + pz) (7.15) 3 = (1/2)(s + px – py – pz) (7.16) 4 = (1/2)(s – px + py – pz) (7.17) 図7.6 sp3 混成軌道 12 B) sp2混成 ●s軌道とp軌道の寄与が1:2の分子軌道 ●寄与するp軌道をpx, pyとする ●3つの同等で独立な混成軌道1 ,2 ,3は、エチレンやベンゼンの ように平面状で、各々が互いに120の角を成すものを考える。 ●4はpz軌道そのもの 1をx軸方向の7.18式と定め、2および3軌道の中のpx, pyの係数を 規格化と直交の条件より得る。 1 = s/3 + 2px/6 (7.18) x軸方向 2 = s/3 – px/6 + py/2 (7.19) x軸から+120° 3 = s/3 – px/6 – py/2 (7.20) x軸から-120° ●4 = pz は、1~3が作る平面(xy面)に垂直に延びている 2 図7.7 sp2混成軌道(7.18~7.20式) z 1 1 2 3 3 4 C) sp混成 ●p軌道としてpx軌道を選ぶ ●7.21~7.24の4つ分子軌道が得られ、1と2はxの正、および負の 方向に延び、2方混成(diagonal hybrid)をなす。 ●残りの2つの軌道はy、z軸方向に延びる 1 = (1/2) (s + px) (7.21) x軸方向 2 = (1/2) (s – px) (7.22) -x軸方向 3 = py (7.23) y軸方向 4 = pz (7.24) z軸方向 図7.8 sp混成軌道(7.22~7.24式) y z 1 2 3 4 7.2.2) p電子分子軌道 ●ベンゼンの1つの炭素原子はsp2混成 軌道を用い、それを中心としてxy面内で 互いに120の方向にある2個の炭素原 子(sp2混成軌道)と1個の水素原子(1s 軌道)と共有結合を形成して、ベンゼンの 6角形の骨格を形成する。 H H s軌道 H H H H p軌道 ●これらの軌道は結合方向に関して∞の回転対称性を持ち、s結合と いわれる(結合軸に関して自由回転が可能)。 ●各炭素原子は、この段階では+1価に帯電している。ベンゼンの6角 形s骨格は+1価炭素が作る六角リングである。 ●そのリングに、残りのpz軌道の6個の電子が入り、それらの軌道は ベンゼンs骨格平面に垂直で、p軌道といわれる。これらのpz軌道電 子をp電子という。 ●p電子は6角リング内を動き回り、光によって励起され易く、イオン 化により最初に飛び出てくる電子である。 ●p電子分子軌道関数の決定: C+間の距離をaとし、p電子の分子軌道関数をとする、 仮定と近似 1) 注目している電子と残りの電子の間のクーロン反発の相関を無視、 2) を2pz炭素原子軌道関数としLCAO近似を用いると、は7.25式。 (0~5) 1 6 (c0 0 c11 c2 2 c33 c4 4 c55 ) 1 (7.25) 5 c 6 n 0 n n 3)係数は、ベンゼンの対称性(6回対称)を用いて決定 16 ●ベンゼン環に沿った座標をx、炭素原子0の位置を原点とする、原 子0~5はx = 0, 1a, 2a・・5aで、6aは原子0の位置である。 ●従って、7.25式のをx = naを原点として広がる2pz原子軌道関数 (x–na)で記すと、以降に述べる周期的条件を式化できる。 ( x) 1 5 c ( x na) 6 n 0 n (7.26) 周期条件 ●この波動関数は等しい間隔aごとに同じポテンシャルを見る電子 の波動関数であり、(x), (x+a), ・・(x+5a)も同様であり (x+a) = c( x)、(x+2a) = c( x+a)・・と置けるから、 (x+6a) =c(x+5a) = c2(x+4a) = c3(x+3a) = • • = c6(x) ●一周すると元に戻る条件(周期的境界条件, cyclic boundary condition)より(x+6a) = (x)であるから、 c6 = 1 1 5 ik j na j e n 6 n 0 (7.33) 係数cnの決定: j = 0, 1, 2, 3 (7.27) これより、ベンゼン分子のp電子分子軌道は7.28式となる。 関数7.28式は、jの値により7.29式~7.32式のように様子を変える。導 出には以下の関係を用いた。 1 6 1 ( 0 e 5 e 6 n 0 i 2pna j L i 2p j 6 1 e i 4p j 6 2 e i 6p j 6 3 e i 8p j 6 4 e i 10p j 6 5 ) 5 1 e 6 2pn j 6 n 0 n e ipj 1, e i 2pj 1, e i (7.28) i 8p j 3 e i 2p j 3 , e i 10p j 3 e i 4p j 3 n j=0 j = 1 j = 2 j = 3 j 0 j 1 1 j 2 1 6 6 j 3 1 1 6 6 1 6 ( 0 1 2 3 4 5 ) (0 e (0 e i p i 3 j 1 e 2p j 3 2p i 3 j 1 e ( 0 e ipj1 e i 2pj 2 3 e 4p i 3 j i 4p j 3 2 3 e 2 e i 3pj i 3 e 4 e 2p j 3 i 4pj i 5p j 3 4 e 4 e (7.29) 5 ) i 4p j 3 i 5pj (7.30) 5 ) 5 ) (7.31) (7.32) ( 0 1 2 3 4 5 ) j = 3は同一の式7.32を与える(j=3 = j=-3)。また、ベンゼンの対称性 を反映して、j=1 = j=-5, j=2 = j=-4, j=4 = j=-2, j=5 = j=-1, j=j = j=j+6である(図7.10)。 j =0 = ∞ j =+1 = 6a j =+2 = 3a j =+3 = 2a 図7.10 6回対称性分子における j と-j の関係(左)。ベンゼン分子中のp電 子分子軌道(右) 7.2.3) p電子軌道のエネルギー ベンゼンのp電子軌道のエネルギーはシュレディンガー方程式Hj = ej に7.33式を入れた7.34式を解いて得られる。ここで分母は規格化に より1である。 1 ik ( p q ) a e * ( x pa) H ( x qa)dx 6 1 (k j ) p q e ik ( pq ) a 1 6 p q ik ( p q ) a e * ( x pa ) ( x qa ) dx 6 p q 1 ik ( p q ) a e * ( x ( p q)a) H ( x)dx * ( x pa) H ( x qa)dx 6 p q (7.34) ここで、それ自身と最隣接原子間の相互作用のみを取り入れるという 以下の近似を行う。 ( x) * H ( x)dx 1) p q 2) p=q1 すると7.34式は、 1 (k j ) (6 6(e ika e ika ) ) 2 cos ka 6 (7.35) (7.36) (7.37) 7.2.3) p電子軌道のエネルギー 2 2 図7.11 ベンゼン分子のp電子軌道エネルギーと波数kの関係
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