化学概論

化学概論 第8回
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前回のまとめ
分子軌道法 : 結合している分子の電子状態の近似方法
・孤立原子中の電子 : 原子軌道
・分子全体の電子 : 分子軌道
LCAO-MO法:分子軌道の第1近似として個々の
原子軌道の線形結合を考える
分子軌道のエネルギー準位:結合性軌道は原子軌道よりエネルギー
が低く、反結合性軌道は高くなる
s結合:結合軸方向から見て円形の分子軌道
p結合:結合軸方向から見てp軌道の形の分子軌道
等核2原子分子:各原子の原子軌道から分子軌道を作り、
エネルギー準位の低い軌道から電子を入れていく(構築原理)
結合次数:結合の強さを表わす指数
先週の内容で特に記憶に残ったことは?
共有結合
分子軌道
s軌道(s結合)
p軌道(p結合)
結合次数
あまり記憶にない
33%
28%
17%
10%
9%
憶
に
な
い
記
あ
ま
り
結
合
次
合
p軌
道
(p
結
(s
結
道
s軌
数
)
)
合
道
軌
子
分
有
結
合
3%
共
1.
2.
3.
4.
5.
6.
s軌道とs軌道の間に作る分子軌道は?
s軌道(s結合)
p軌道(p結合)
2重結合
分からない
65%
29%
6%
な
い
分
か
ら
合
2重
結
)
合
結
道
(p
p軌
道
(s
結
合
)
0%
s軌
1.
2.
3.
4.
次の中で正しい表現は
HとHは二重結合
OとOは二重結合
NとNは単結合
FとFは二重結合
いずれも間違い
91%
2%
い
ず
れ
も
重
間
結
違
い
合
合
0%
Fと
Fは
二
単
結
Nと
Nは
結
合
4%
重
Oと
Oは
二
二
重
結
合
4%
Hと
Hは
1.
2.
3.
4.
5.
混成軌道、分子構造
共有結合の方向性
等核2原子分子では、2個の原子間の共有結合のみ
ある原子が複数の原子と共有結合する場合は?
例1 H2O
O : 1s22s22p4 不対電子は2pxと2py軌道に1個ずつ
これらとH原子の1s軌道が共有結合を作ると考えると
- O
+
H
-
+
2px
2p
+ y
90°
105°
+
H
実際の分子
では105°
2p軌道と1s軌道の共有結合
原子価(価電子)同士の共有⇒原子価結合法の考え方
共有結合の方向性
例2
NH3
N : 1s22s22p3 不対電子は2px、2pyと2pz軌道に1個ずつ
これらとH原子の1s軌道が共有結合を作ると考えると
- N
+-
+
+
H
H
+
90°
107°
+
H
実際の分子
では全て107°
原子価結合法の考え方で、H2OとNH3の結合は何とか説明でき
るが、正確な結合角(分子構造)は説明しづらい。
混成軌道
例3
CH4
C : 1s22s22p2 不対電子は2pxと2py軌道に1個ずつ
これらとH原子の1s軌道が共有結合を作ると考えると
4個のH原子との結合は考えられない
↓
メタン分子中の等価なC-H結合を説明するため、
「混成軌道」 の考え方が提案された
C
2s
↑↓
C*
↑
C sp3
h1
↑
2px 2py 2pz
↑
↑
基底状態
↓ (昇位)
↑
↑
↑
励起状態
↓ (混成)
h2 h3 h4
↑
↑
↑ sp3混成軌道
混成軌道を作る
にはエネルギー
が必要であるが、
4つの共有結合を
形成することで、
安定化する
1
 2 s  2 px  2 py  2 pz 
2
1
h2   2 s  2 px - 2 py - 2 pz 
2
1
h3   2 s - 2 px  2 py - 2 pz 
2
1
h4   2 s - 2 px - 2 py  2 pz 
2
h1 
C原子のsp3混成軌道:2s軌道と
3つの2p軌道の線形結合により、
4つの等価な軌道を作り、2個の
2s電子と2個の2p電子からの計
4個の電子が入る
4つの等価な混成軌道は、互
いに109.5°の角度をなす
(立方体の中心から、4つの
頂点に伸びた形状をとる)
図4.12
混成軌道
例3
CH4
Cのsp3混成軌道とH原子の1s軌道との共有結合とすると
+
H
+
H
+
+
H
H
4つのC-H結合は等価で、互いに109.5°の角度
メタン分子の構造を正確に構築することができる
混成軌道として考えると
H2O
Oのsp3混成軌道とH原子の1s軌道との共有結合とする
4つのsp3混成軌道に6個の電子が入っている
非共有電子対
非共有電子対
非共有電子対
反発
非共有電子対
反発
反発
+
+
H
105°
H
4つのsp3混成軌道のうち、2つは非共有電子対が入り、残りの2
つの軌道とH原子2個が共有結合を作る。電子対や、結合が反
発して109.5°よりやや狭い角度105°となる。分子には2つの
非共有電子対(孤立電子対)が残る→化学的性質もよく説明
混成軌道として考えると
NH3
Nのsp3混成軌道とH原子の1s軌道との共有結合とすると
4つのsp3混成軌道に5個の電子が入っている
+
反発
非共有電子対
非共有電子対
H
反発
反発
+
+
H
107°
H
4つのsp3混成軌道のうち、1つは非共有電子対が入り、残りの3
つの軌道とH原子3個が共有結合を作る。電子対と結合が反発
して109.5°よりやや狭い角度107°となる。分子には1つの非
共有電子対(孤立電子対)が残る→化学的性質もよく説明
その他の混成軌道
sp2混成軌道:2s軌道と2px、2pyの混成 2pzはそのまま残る
(紙面に垂直)
H
H
2pz軌道
p結合を形成
C=C
H
H
その他の混成軌道
sp混成軌道:2s軌道と2pxの混成2py、2pzはそのまま残る(紙
面上下方向と紙面に垂直)
H-C  C-H
2pz軌道
p結合を形成
p結合を形成
2py軌道
共鳴
分子やイオンの構造が、ひとつの電子構造式だけでは表せないで、
いくつかの電子構造式の重ね合わせとなる場合がある。
例 ベンゼン
6個のsp2混成のCを環状に結合。周囲に6個のH原子が結合。
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
二つの極限構造の間で「共鳴」
H
全てのC-C結合は等価で、
1.5重結合のように見える
電気陰性度と分子の分極
電気陰性度
等核2原子分子では、電子は2つの原子に等分に存在するが、異
なる原子間の結合では、どちらかに片寄る傾向がある。この結合中
の原子が電子を引きつける力を電気陰性度
ポーリングの電気陰性度:Eを原子同士の結合エネルギーとし、
原子Aと原子Bの結合エネルギーの実測値を、EA-Bとする。純粋
な共有結合と仮定した場合の結合エネルギーとの差、DEA-Bが
定義できる。
DEA-B  EA-B - 1/2{EA-AEB-B}
原子A、Bの電気陰性度cA、cBの差がDEA-Bに比例するとして
値を求めた。
DEA-B  KcA-cB2
マリケンの電気陰性度:原子の第1イオン化エネルギーと電子親
和力の平均値として値を求めた。
cAIp,A  Ees,A/2
同一周期では周期表の右ほど電気陰性度は大きい
異核2原子分子
+
+
例 HF H:1s1、F:1s22s22p7
共有結合をするとして、分子軌道を考える
結合軸方向の2p軌道とHの1s軌道は分子軌道を作れるが、他の
2p軌道は重なりが打ち消され、分子軌道を作らない(非結合性)
s*
1s
非結合軌道
(共有しない)
1s
2p
s
H
HF
F
共有結合の場合
HF
共鳴
2p
H+
Fイオン結合の場合
+
H F
分子の分極
HF分子は共有結合だけではなく、イオン結合の性質も持っていて、
結合に極性がある。「分子が分極している」という。
Hd
Fd-
双極子モーメント
分子の分極を表す尺度。
+q と -q の電荷が距離 l だけ離れて存在する場合の双極子モー
メント m は
m = ql
mはベクトル量として考える。
l
-q
m = ql
q
双極子モーメントの単位として
1 D(デバイ)= 3.336×10-30 Cm
が慣習的に使われる。
HF分子が完全にイオン結合の場合、
+e と-e の電荷(1.602×10-19 C)が H と F原子 にあると考える
ただし、H-F距離を 91.7pm として
mc = 1.602×10-19 C × 91.7 ×10-12 m ÷ 3.336×10-30 Cm/D
= 14.7×10-30 Cm ÷ 3.336×10-30 Cm/D
= 4.41 D
一方、HF分子の双極子モーメントの実測値は
mo = 1.826 D
したがって、H-F結合のイオン性は
実測のm
完全なイオン結合の場合のm
Hd
Fd-
=
1.826
4.41
d= 0.414
= 0.414
ここまでのまとめ(テキスト3章、4章)
原子の構造:ボーアの水素型原子モデル(水素原子スペクトル)
電子の波動性を考慮した、電子の波動関数(軌道)を紹介
した:1s、2s、2p、3s、3p、、、
水素原子では主量子数 n のみで電子のエネルギーが決まる
一般の原子の電子配置:方位量子数lでもエネルギーが変化
エネルギーの低い軌道から電子が2個ずつ入っていく。(構築
原理)→最外殻電子の種類と数によって、原子の性質の周期
性(周期表)
化学結合:イオン結合、共有結合(分子軌道法)
分子軌道:結合性軌道、反結合性軌道
s軌道(s結合)、p軌道(p結合)
等核2原子分子の電子配置
混成軌道(CH4、H2O、NH3の構造)
原子の電気陰性度→分子の分極、共有結合のイオン性
化学熱力学
第6章 熱力学第1法則
熱と仕事
エンタルピー
第7章 熱力学第2法則
可逆変化と不可逆変化
エントロピー
自由エネルギー
化学熱力学とは
• 熱力学:熱を仕事に変えるのを効率的にする
にはどうすればよいかを知るために始まった
学問体系。
• 自然科学として発展し、物理学の一部ともな
ったものが「熱物理学または熱力学」
• 物質へ応用されたものが「化学熱力学」
• 生き物の体内で起こる複合的な化学変化も
取扱えるように応用された。
• 熱力学第1法則、第2法則の経験則が根本
熱力学で取扱う事項
キーワード
熱、平衡、温度、内部エネルギー、比熱、
仕事、圧力、エントロピー、不可逆過程、
熱機関(エンジン)、自由エネルギー
身近な現象
氷、沸騰、水蒸気
ポット、冷蔵庫、エアコン、エンジン
冷たい ⇔ 温かい
温度とは? 温度計?
熱力学的に正しい表現はどれか
熱がある
熱が高い
熱を持つ
熱を加える
41%
27%
23%
え
る
つ
熱
を
加
持
を
熱
高
い
が
熱
が
あ
る
9%
熱
1.
2.
3.
4.
漠然とした理解
• 熱とは何か?
熱が高い、熱がある、熱を持つ
熱が出た、熱を加える
熱力学では、「熱する」
「熱してエネルギーを与える」
• 温度計とは?
• エントロピーとは
熱力学の根幹、熱力学第二法則
講義の流れ
•
•
•
•
•
温度、熱平衡
熱力学第一法則
熱力学第二法則
エントロピー
状態変化、相平衡
(このあたりまでは熱物理学、熱力学、化学熱力学で殆ど同じ取扱)
熱と仕事
熱、温度、熱平衡
温度:物体がどれくらい熱いか、または冷たいかを定量的に表す
概念。物体のもつ「熱エネルギー」に関係する。
物体1
(系)
物体1 物体2
物体1 物体2
熱
断熱材
物体1を断熱して置いておくと、全体が一様な温度の定常状態とな
る。=系は熱平衡状態である
より温度の高い物体2を接触させる。
物体2は多くの熱エネルギーを持っていて、熱が物体2から1へ移
動する。(熱は温度差により移動するエネルギーの1形態)
物体1と2の温度が一様となり、熱の移動が止まる。=熱平衡状態
温度を測る
物体に温度計を接触させて、温度計の目盛が変化しなくなったと
ころで、示度を読む。
熱
物体
別々の温度
⇒別々の熱平衡状態
物体
熱の移動により温
度計の目盛が変化
物体
変化がなくなった
=温度計と物体が
熱平衡になった
温度計と物体を熱平衡にする→温度計と物体が等しい温度
⇒温度は熱平衡状態を指定する物理量
熱力学第0法則
「物体AとBが熱平衡にあり、かつ、物体BとCが
熱平衡にあるならば、物体AとCも熱平衡にある」
AとBが熱平衡 = AとBの温度が一様で等しい
BとCが熱平衡 = BとCの温度が一様で等しい
⇒ 温度はAとBとCとで、全て一様で等しい
⇒ AとCが熱平衡
⇒ 温度の等しい物体は、熱平衡状態にある