為替レートと貿易 輸入需要の価格弾力性 為替レートとマクロ経済 為替レートと貿易財の価格 【輸出】 日本の輸出財のアメリカでの価格($) =日本での価格(¥) ÷邦貨建て為替レート(¥/$) 【輸入】 アメリカからの輸入財の日本での価格(¥) =アメリカでの価格($) ×邦貨建て為替レート(¥/$) 数値例 カローラ 120万円 マスタング 10,000ドル $1=¥150 8,000ドル 150万円 $1=¥100 12,000ドル 100万円 交易条件 カローラ1台でマスタングが何台買えるか $1=¥150の場合 1 8,000× =0.8台 10,000 $1=¥100の場合 1 12,000× =1.2台 10,000 輸出量と輸出額 (設定) $1=¥100で @¥30,000のテープレコーダーは$300 500台売れているとして 輸出量 ドルで測った輸出額 円で測った輸出額 500台 15万ドル 1,500万円 $1=¥120に変化した場合 @¥30,000=$250 輸出量 600台 700台 800台 輸出額(ドル) 15万ドル 17万5千ドル 20万ドル 輸出額(円) 1,800万円 2,100万円 2,400万円 輸入量と輸入額 (設定) $1=¥100で @$150の万年筆は 1万5千円 1000本売れているとして 輸入量 ドルで測った輸入額 円で測った輸入額 1000本 15万ドル 1,500万円 $1=¥120に変化した場合 @$150=1万8千円 輸入量 900本 800本 700本 輸入額(ドル)13万5千ドル 12万ドル 10万5千ドル 輸入額(円) 1,620万円 1,440万円 1,260万円 輸出入量と輸出入額 【円安の場合】 ドルで測った輸出額(?) =輸出量(↑)×輸出財のドル建て価格(↓) 円で測った輸入額(?) =輸入量(↓)×輸入財の円建て価格(↑) 輸出量と需要曲線 p/e 外貨で測った輸出額 aだけ減少 p/e0 ↓ bだけ増加 a p/e1 b X0 → x=x(p/e) X1 X 需要の価格弾力性 需要曲線の傾きを表す指標 需要の価格弾力性 = ε=- - 需要の変化率 価格の変化率 dD/D dp/p =- dD p ・ dp D 財の性質と需要の価格弾力性 • 価格を引き下げた場合の売り上げ – 需要の価格弾力性に依存 • ε>1ならば売り上げ増加 • ε=1ならば売り上げ不変 • ε<1ならば売り上げ減少 • 奢侈品か必需品か – 必需品 需要は価格にあまり影響されない • ε<1のとき必需品 貿易財と需要の価格弾力性 • 必需品の場合 – 競合する供給国のある場合 • 需要の価格弾力性は大きい – 競合する供給国のない場合 • 需要の価格弾力性は小さい • 奢侈財の場合 – 競合する国のあるなしにかかわらず • 需要の価格弾力性は大きい 為替レート変化の効果 【数値例の設定】 $1=¥100 日本 → アメリカ 自動車 200万円(2万ドル)で、1,000台 20億円(=2,000万ドル)の輸出 アメリカ → 日本 小麦 1000ドル(10万円)で、18,000袋 18億円(=1,800万ドル)の輸入 日本 2億円(=200万ドル)の黒字 為替レートの変化の効果 為替レートが$1=¥90になった場合 自動車 200万円÷90円/ドル≒2万2千ドル アメリカでは2万2千ドルで10%値上がり 小麦 1000ドル×90円/ドル=9万円 日本では9万円で10%値下がり ケース1 輸入需要の価格弾力性 日本 0.3、アメリカ 0.5の場合 日本の輸入 日本の需要量の変化 10×0.3=3 3%需要増 18,000袋 → 18,540袋 18540×9=166860 16.7億円(1.3億円減) 18540×1000=18540000 1,854万ドル(54万ドル増) ケース1(続き) 日本の輸出(=アメリカの輸入) アメリカの需要の変化 5%需要減 10×0.5=5 1000台 → 950台 200×950=190000 19億円(1億円減) 22000×950=20900000 2,090万ドル(90万ドル増) ケース1のまとめ 輸入需要の価格弾力性 日本 0.3、アメリカ 0.5の場合 日本の貿易黒字 ドルで測った場合 2090万ドル-1854万ドル=236万ドル 円で測った場合 19億円-16.7億円=2.3億円 約2.3億円の黒字(黒字増3,000万円) 約236万ドルの黒字(黒字増36万ドル) ケース2 輸入需要の価格弾力性 日本 0.6、アメリカ 0.9の場合 日本の輸入 日本の需要量の変化 10×0.6=6 3%需要増 18,000袋 → 19,080袋 19080×9=171720 17.2億円(0.8億円減) 19080×1000=19080000 1,908万ドル(108万ドル増) ケース2(続き) 日本の輸出(=アメリカの輸入) アメリカの需要の変化 9%需要減 10×0.9=9 1000台 → 910台 200×910=182000 18.2億円(1.8億円減) 22000×910=20020000 2,002万ドル(2万ドル増) ケース2のまとめ 輸入需要の価格弾力性 日本 0.6、アメリカ 0.9の場合 日本の貿易黒字 ドルで測った場合 2002万ドル-1908万ドル=94万ドル 円で測った場合 18.2億円-17.2億円=1億円 約1億円の黒字(黒字減1億円) 約94万ドルの黒字(黒字減106万ドル) ケース3 輸入需要の価格弾力性 日本 1.7、アメリカ 1.3の場合 日本の輸入 日本の需要量の変化 10×1.7=17 3%需要増 18,000袋 → 21,060袋 21060×9=189540 19億円(1億円増) 21060×1000=21060000 2,106万ドル(306万ドル増) ケース3(続き) 日本の輸出(=アメリカの輸入) アメリカの需要の変化 13%需要減 10×1.3=13 1000台 → 870台 200×870=174000 17.4億円(2.6億円減) 22000×870=19140000 1,914万ドル(86万ドル減) ケース3のまとめ 輸入需要の価格弾力性 日本 1.7、アメリカ 1.3の場合 日本の貿易黒字 ドルで測った場合 1914万ドル-2106万ドル=-192万ドル 円で測った場合 17.4億円-19億円=-1.6億円 約1.6億円の赤字(黒字減3.6億円) 約192万ドルの赤字(黒字減392万ドル) 価格弾力性と貿易収支 円高と日本の貿易収支 εa+εb<1 円建ての場合 輸出額 小幅の減少 輸入額 大幅の減少 貿易収支 黒字の増加 ドル建ての場合 輸出額 大幅の増加 輸入額 小幅の増加 貿易収支 黒字の増加 εa,εb<1 εa+εb>1 εa,εb>1 大幅の減少 小幅の減少 黒字の減少 減少 増加 黒字の減少 小幅の増加 大幅の増加 黒字の減少 減少 増加 黒字の減少 弾力性アプローチ • 円の上昇が日本の貿易収支を悪化するか – 為替市場の安定条件(資本移動のない場合) – マーシャル・ラーナーの条件 • 両国の輸入需要の価格弾力性の和が1より大きい • 需要増によって財価格が上昇する場合 – 供給の価格弾力性を考慮に入れる – ロビンソン・メッツラーの条件 弾力性アプローチの問題点 • マクロ的視点 – 弾力性は一定か • 所得の変化が伴う場合、需要の変化は複雑となる • 完全雇用か否かで供給の弾力性は変化する • 外国為替市場の変化 – 実需以外の取引の増加 • 時間的要素 – Jカーブ効果 Jカーブ効果 t 練習問題 次の場合の貿易収支の変化をドルと円の両方で計算しなさい。 $1=¥100 日本 @100ドル(1万円)の小麦を1,000袋輸入 10万ドル(=1,000万円)の輸入 アメリカ @25,000円(=250ドル)のラジカセを 400台輸入 1,000万円(=10万ドル)の輸入 初期状態において日米の貿易収支は均衡 (ケース1)$1=¥110 (ケース2)$1=90 練習問題の解答用紙 アメリカの輸入需要の価格弾力性 0.0 日本 の価 格弾 力性 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 輸 出 0.5 1.0 1.5 2.0 輸 入 国際収支の変化の特殊例 $1=¥150 日本 輸出 輸入 黒字 150億円 120億円 30億円 1億ドル 0.80億ドル 0.20億ドル $1=¥100 日本 輸出 輸入 黒字 120億円 95億円 25億円 1.20億ドル 0.95億ドル 0.25億ドル 5億円の黒字減、500万ドルの黒字増 為替レートの変化と対外債務 • アジア通貨危機の教訓 – 日米為替レートの変動の影響 – バランス・シートの悪化 • 外国通貨建ての債務の累積 • 自国通貨の暴落から対外債務の巨大化 • 対ドル・ペッグかバスケット制か • 外貨建て対外債務のリスク – 為替変動リスクへのヘッジの必要性
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