新貿易立国への視界(槍田松榮/(社)日本貿易会会長 PDF:1827KB)

「外交」
への提言
(社)
日本貿易会会長
れていた。
数年、世界不況で前年
・2兆円、
割以上も落ち込んだとされた昨
あれから
うつだ しょうえい
年の輸出だが、それでも
比
40
外交は経済、文化、学術などさまざまな分野にかかわる。
斯界の第一人者である方々に、今後の外交への期待、あるべき姿などについて伺った。
槍田松 経済の制約として経済白書でも使わ
いという状況)という言葉が、日本
るものがないから買うものも買えな
入超過を抱え、「国際収支の天井」(売
経済と外交の相関 —
—
新貿易立国への視界
私が三井物産の新入社員として社
会参加した1967年、日本の輸出
は 3・8 兆 円、 輸 入 は 4・1 兆 円 で
あ っ た。 当 時 の 日 本 は ま だ 大 き な 輸
1967年東京大学工学部を卒業
し三井物産に入社。ロンドン支店、
電気機械部長、情報産業本部
長、業務部長などを経て、2002
年に社長就任。2009 年より会
長を務める。2010年5月第10 代
(社)日本貿易会会長に就任。
54
3
|76
外交 Vol. 1
円 前 後 と な り、 日 本 円 の 価 値 も
ドル360円だった為替レート
1971年のニクソン・ショックま
力の拡大には隔世の感がある。また、
世紀の
強く自由で安定した世界秩序を形成
題を抱える国際社会であるが、粘り
うことである。さまざまな困難な問
とも、長期的には日本の利益にかな
国間のEPAやFTAを促進するこ
とは妥当なことであり、多国間・2
通商秩序に招き入れる努力をしたこ
点からの議論がなされる媒体を育て
が、日本の国際関係を巡る多様な視
たな雑誌としてスタートすると聞く
長い実績のあった『外交フォーラ
ム』が形を変えて、『外交』という新
ている。
日本外交にも創造的な戦略が問われ
れ ば な ら な い 新 た な 時 代 に 向 け て、
輸入は ・4兆円となり、日本の産業
後日本経済を支えた先人たちの努力
することを志向すべきで、
も
で
と蓄積に感慨を覚えざるを得ない。
じめさによって付加価値を付け、世
効率的に資源・原材料を輸入し、そ
れ に 技 術 と「 も の づ く り 」 へ の き ま
の時代が終焉して約
年、世界が新
デオロギーの対立」といわれた冷戦
が問われていると痛感している。「イ
環境下での新しい貿易立国への決意
ているのか、輪郭のある筋道の通っ
本人が国際社会との関係をどう考え
本からの情報発信も大切であり、日
ることは極めて重要である。また、
日
日本の国益である。
易」の環境を整えていくことこそが
で 開 か れ た 世 界 を 構 築 し、
「自由貿
業の基本性格を考えるならば、平和
し て き た と い え る。 こ う し た 日 本 産
探 求 し、 日 本 は 今 日 の 豊 か さ を 構 築
得 す る と い う「 通 商 国 家 モ デ ル 」 を
らない。多極化し、全員参加型とも
しなやかにリンクしていなければな
踏まえた進路の構想と外交の戦略は
いうまでもなく、経済と外交は深
く相関しており、日本の経済構造を
ことは間違いない。
たな秩序形成に向けた正念場にある
い。新しいメディアが「知の揺籃器」
日本の新しい時代を拓かねばならな
かも地に足のついたバランスの中で、
「外は広く、内は深い」といわれる
が、われわれも世界に視界を広げ、し
う。
20
となることを大いに期待している。
中国のWTO加盟を支援し、国際
た日本の主張も求められていると思
界市場に多角的に輸出して外貨を獲
倍になったということである。戦
51
いうべき国際秩序を視界に入れなけ
77|「外交」への提言
21
90 1
4