地震予知の科学

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発行所…東京大学出版会(2007年初版)
編者 …日本地震学会地震予知検討委員会
30816020
畑
哲也
この本の構成は以下の5つのパートに分けられてい
る。
1.
2.
3.
4.
5.
地震の発生をあらかじめ知るとは
これまで何が行われてきたか
この10年で何が明らかになってきたのか
地震を予知することの今
地震予知のこれから
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地震雲
地震雲で地震を予知するには以下のような検証が必要である。
①地震前の異常現象の事例の収集
②その規則性を見出す
③事例を説明する仮説を立てる
④仮説を検証
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地震予知
名称
時間スケール
予測方法
長期予知
数百年~数十年
過去の履歴を用いて予測
中期予知
数十年~数か月
観測データ等によるシュミレーション
直前予知
数か月~数時間
前兆現象
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日本の地震予知研究
・旧地震予知計画(1965年)…地震の発生だけを予測することが目的
・新地震予知計画(1999年)…地震に至る過程そのものまで予測
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海外の例
地震予測成功
…中国・海城地震(1975年)
動物の異常行動の発生→地電流変化などの計測機械による異常も観測
→臨震警報・防災警報発令→数時間後にM7クラスの地震発生
地震予測失敗
…中国・唐山地震(1976年)
動物の異常行動や物理的な異常現象も観測されていた
しかし海城地震に比べ異常現象発生が遅く異常出現地点が広範囲に分布
→予測失敗→約24万人の死者
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アスペリティ
震源域の中で大きくずれ大きな揺れを起こす
地震波が出ると考えられる部分
 コンピュータによる地震シミュレーション
地殻の変形を示す方程式に加え摩擦法則を
プレート境界に加えればシュミレーション
が可能
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観測研究網のインフラ整備
①全国に高密度な観測網が整備され、データが公開
②観測やシュミレーションに用いるコンピュータや通信技術の飛躍的向上
地殻変動観測…国土地理院によるGEONETを整備
GEONETはGPS(汎地球測位システム)を用いて精密な解析により
数mm程度の微小な地殻変動も検出可能
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東海地震説
1976年に石橋克彦(当時東大理学部助手)は東海地震の震源域につい
て、従来考えていた遠州灘よりも陸に近い駿河湾周辺も含まれるのでは
ないかという説を提示。
根拠
1854年の安政東海地震では駿河湾も震源域に含まれていたにも
関らず1944年の東南海地震では駿河湾は震源域に入らなかった
駿河湾周辺では断層のズレが残っているのでは??
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東海地震発生の予知
東海地震観測情報 観測された現象が地震発生に結びつくか断定できない場合
東海地震注意情報 観測された現象が前兆現象である可能性が上昇した場合
東海地震予知情報 地震発生のおそれがあると判断した場合
地震予知に伴い以上3つの情報が発表される可能性はあるが、予知情報を
出さないまま発生する可能性も十分にある。
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地震予知への課題
・長期予知の精度向上&中期予知の実現&前兆現象による直前予知
・地震発生のさらなる物理・化学法則の解明、理論進展
ex…前兆現象と主張される電磁気異常現象の地震発生前の震源域において、どの
ようにして電磁気異常現象を発生させ、どのようにして観測点まで伝播する
か定量的に説明する物理・化学モデルの確立
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地震予知以外の防災対策
「耐震工学さえ適用すれば地震予知は不要」「地震予知さえ可能なら耐
震工学は不要」という考え方は適当であるだろうか?→答えは「否!」
何故なら…
日頃から耐震などの防災対策をとりいれた上で、地震予知を行うことで
地震発生による被害の軽減は可能であるがその被害がゼロにはならない
写真①…http://www.aob.geophys.tohoku.ac.jp/zisin/images/s1-1.jpg