ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾①(アメリカの民話) むかしむかし、ウサギがオオカミに言いました。 「これから一緒に、バターをつくってみないか?」 「いいね。よし、一緒にバターをつくろう」 それでさっそく、ウシたちからたくさんのミルクを もらって来ました。 そしてそれをツボに入れ、グルグルかき回して固 めると、バターの出来上がりです。 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾②(アメリカの民話) 「さあ、さっそくこれを食べてみよう」 ウサギがそう言うと、オオカミが首を横に振りまし た。 「いやいや、これは寒い冬が来て食べ物が少なく なる時まで、大事にしまっておこう」 そこでバターをいっぱい入れたツボを、森の中に 埋めておく事にしました。 「こうしておいて、きみもぼくも冬になるまで、森の 中のこの道は通らないという約束をしておこう」 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾③(アメリカの民話) 「うん、そうしよう」 ウサギとオオカミは、約束しました。 ところが食いしん坊のウサギは、そのバターを食 べてみたくてたまりません。 「ああ、冬まで待ちきれないなあ。 バターが食べたいなー。 ・・・そうだ、オオカミくんにはないしょで、ほんの ちょっぴりなめてみよう」 それで自分だけ、そっと森の中へ入って行ってツ ボを掘り出し、中のバターを少し食べました。 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾④(アメリカの民話) さあ、そのバターのおいしい事。 次の日になると、また食べたくなったので、 「もう、ちょっぴりだけ」と、また森へ入って行きまし た。 そしてウサギが大急ぎで森の中から駆け出して 来るところを、オオカミが見つけたのです。 「ウサギくん。森の道は、通らないという約束だよ」 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾⑤(アメリカの民話) 「ああ、その、それがね。実は、森の向こうにいる 姉さんが、可愛い男の赤ん坊を生んだという知ら せを聞いたので、早く見に行きたくて、ついあの道 を通ったのさ」 「ふーん。それならいいけど」 ところが次の日もまた、オオカミは森の道を駆け て行くウサギを見かけましたので 「ウサギくん。今日も約束を破ったね」 「ああ、ごめんごめん。お姉さんがね、今度は可愛 い女の子を生んだというので、見に行ったのさ」 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾⑥(アメリカの民話) そして二日たってまた、森から出て来たウサギを オオカミは見つけました。 「おいおい、また約束を破ったな!」 「あっ、ごめん、お姉さんがね、可愛い三番目の赤 ん坊を生んだのを見に行ったのさ」 「毎日毎日、赤ん坊が生まれるものか。本当は、あ のバターを食べに行っていたんだろう」 「ウソじゃないよ。本当に赤ん坊が生まれたんだ」 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾⑦(アメリカの民話) 「よしそれなら、これから一緒に森の中へ調べに行 こう」 オオカミはそう言って、ウサギを森へ引っ張って 行きました。 そして埋めてあったバターのツボを掘り出して、 ふたを開けようとしたので、ウサギはあわてて、 「あいたた! お腹がいたくなった!」と、言って、 パタパタ逃げて行きました。 オオカミがふたを取ってみますと、ツボの中は すっかり空っぽになっていました。 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾⑧(アメリカの民話) 「やっぱりだ! あのうそつきウサギめ!」 怒ったオオカミは、ウサギを追いかけました。 その時です。 「ああ、たすけてーぇ!」と、叫ぶ声がします。 オオカミが声のする方へ行きますと、草むらの中 でウサギがバタバタと暴れていました。 あんまりあわてて逃げたので、うっかり人間が 作ったワナにかかってしまったのです。 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾⑨(アメリカの民話) ワナに足をはさまれたウサギは、一生懸命叫び ました。 「助けておくれよ! オオカミくん!」 「いや、きみの様なウソつきは、もうぼくの友だち じゃないよ」 「ああ、どうか許しておくれ。もう二度とあんな事は しないから」 「本当だね」 「本当だとも」 ウサギにまつわる民話 ウサギの尻尾⑩(アメリカの民話) ウサギが泣いて謝ったので、オオカミはウサギを ワナから助けてやりました。 でもこの時、尻尾だけがワナに切られてしまった のです。 その時からウサギの尻尾は、今の様に短くなっ たのです。 福娘童話集許可転載<http://hukumusume.com/douwa/index.html>
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