華桜学園生徒会と草花少女。

華桜学園生徒会と草花少女。
哀歌。
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︻小説タイトル︼
華桜学園生徒会と草花少女。
︻Nコード︼
N7975CM
︻作者名︼
哀歌。
︻あらすじ︼
清水若葉は華桜学園に転校してきた女の子!
若葉は平和で平凡な学校生活を望んていたのだけど
偶然から起こったハプニングで容姿端麗な役員が揃う生徒会に気に
入られてしまった。
個性豊かな役員に戸惑いっぱなしの若葉だったが︱︱
ドキドキあり!バトルあり?切なさあり!
今、ハラハラドキドキな学園物語の幕が切って落とされる⋮。
1
転校初日!
華桜学園は魔法が学べる有名な学園だ。
魔法の授業や生徒数が数え切れないほどの人数で、実力によっての
ランクが存在する。
最高段階、ssランクは学園で最も優れた人しか選ばれない。そし
てまたssランクの中で優秀な5人が選ばれ学園の頂点に立つ、生
徒会が結成される
。特に役員の皆が美形で全国的に人気のあるという事も
華桜学園が有名な一つなのだろうか︱︱。
﹁もう朝⋮⋮?﹂
夏の暖かい光を浴び目覚めた若葉。まだ目覚めたばかりなのか一
つ一つの動作がゆっくりになってしまう。だが目覚まし時計がふと
目に付いたかと思うと短い針が8時すれすれを指していた。
﹁このままだと遅刻しちゃう!!﹂
今日は華桜学園へ転校する日だ、遅刻なんて有るまじきこと。昨日
夜遅くまで本を読み漁っていたのが原因だろう⋮。
そんな事を考えながらせっせと身支度を済まし玄関へと急いだ。
2
海外にいる親から渡されたこの家、周りを見渡すとがらんとしてて
どことなく寂しい雰囲気を醸し出しているように感じた。
しみじみ部屋を眺めていたら自分が遅刻ギリギリな状況に陥ってい
るということに気付いた。
﹁あ、やば!!急がなきゃ本当にヤバい! いってきます﹂
誰も答えてはくれないが、そう家に言い残して若葉は慌てて外へと
向かった。
外に出るといつも通りの日光で心の底が暖かくなった⋮と言いた
いとこだが、今はそんな状況ではない。アスファルトを蹴り上げ若
葉は学園まで走っていった。
学園への道のりは前より短く楽なのだが走っている途中で脳内によ
ぎったのは前の学校の事。やはり人間関係のトラブルが原因なんだ
ろうかと思い脳内でプチ反省会が行われた。
それに若葉はあまり華桜学園は好きではない⋮ルックスで騒いでる
女子たちのことが理解できないのだ。生徒会の実力や噂は知ってい
るがあまり興味がない。若葉にとっては魔法の授業しか頭にない。
いろんな住宅街を通り過ぎやがて大きな道へとたどり着いた。
﹁ここが華桜学園︱︱﹂
3
⋮見上げると、とても大きい建物が嫌でも目に入る。本当に学校な
のだろうか?と疑問に思ったのだが今はそれどころではない。
そして若葉は学園の中へと足を踏み入れた。
職員室を何とか探し当て担任の先生に挨拶をするのだが担任は誰
だろうと探していたら声色が少し高く綺麗な声が耳に届いた。
﹁貴方⋮転校生の清水若葉さん?﹂
﹁は、はいっ!﹂
若葉は自分がいきなり呼ばれた驚きで声が裏返ってしまった。
﹁緊張しなくて大丈夫、あたしは石河理佐よ。Aランク3組︰貴方
の担任です﹂
﹁よろしくおねがいしますっ!﹂
石河先生の性格が少し気さくなせいなのか若葉は何故か安心した気
持ちになった。
先生の案内で教室の前まで着き、好奇心からか若葉は周りをきょろ
きょろ見回していた。
﹁HRが始まったら教室に入ってくれるかしら?﹂
﹁はい!﹂
4
石河先生が教室に入って行くのを見届けると脳内でまたプチ反省
会が行ってしまった。⋮やっぱり第一印象は大事という事を若葉は
自分に言い聞かせる。緊張に耐えられないせいか機械のようにぶつ
ぶつ何かを唱えているのだが、もし周りに人がいたら彼女を不審が
る人はいるだろう。
﹁清水さん! 入ってきて︱﹂
﹁はい﹂
重い足取りで教室に入ると若葉へクラスメイトからの視線が若葉
へ怖いくらいに突き刺さった。
﹁清水若葉です。これからよろしくお願いします﹂
﹁清水さんに質問ある人いますか︱?﹂
一斉に手を挙げた人の中から優等生っぽい人が若葉に問いかける。
﹁使える魔法は何ですか?﹂
﹁草花の魔法が使えます!﹂
若葉は小さいころから無意識に草花の魔法を使えたのだ。理由は不
明だが、﹃若葉﹄は草を連想させる言葉なので使えるのではないの
5
かと親は言っている。世の中には不思議な事が起こるものだ。
一限目は無事終わり休憩になったとこだが、若葉の周りにはクラ
スメイトがわんさか集まっていた。若葉へのいろんな質問が飛び交
う中本人はあまりのすごさに戸惑っていた。
そして学校生活が平凡でいたいという願いが叶わない事をしるまで
あと⋮⋮。
6
登場人物 設定
清水若葉 身長160センチ
草花の魔法が使える・草花を操れる。
髪色はオリーブアッシュでハーフアップで前髪をセンター分けにし
てある。
すごく緊張するとメンタルが弱くなりがちに見えるが、本当は気が
強く姐御肌。
顔は綺麗な方?目はアーモンド・アイでモスグリーンの瞳。
前の学校で性格や人間関係の問題なのかトラブルをおこしてしまっ
たため
ズバズバ言う感情を抑えがちに。
華桜学園は苦手なのだがこの学園の制服で釣られたらしい。
制服は規定通り着用。
月影サクラとは親友?
朝倉悠 身長172センチ
炎系の魔法が使える・炎を操れる。
髪色はブラウンで少し整った髪型。
愛想はいい方で紳士的な態度だが⋮。
少々つり目がちで藍色の瞳。
美麗な顔に紳士的な笑顔がとても人気とのこと。
7
基本制服は着崩していない。
華桜学園生徒会長。
紺野蓮 身長175センチ
氷系の魔法が使える・氷を操れる。
髪色は黒髪でアシンメトリーな髪型。
無愛想で冷静沈着な性格。いつも本を持ち歩いている。
ジト目で紫の瞳。前髪で左目が隠れて見える。
美麗な顔にクールな態度がとても人気とのこと。
制服は着崩してなく、規定通り着用している。
華桜学園副会長。
霧谷佑介 身長169センチ
風系の魔法が使える・風を操れる。
髪色は茶色に近いオレンジでさわやか系な髪型。
軽い性格でノリが良くフレンドリーで勘が冴える。
少し猫目で赤茶色の瞳。
顔は美形。それにフレンドリーで馴染みやすい性格でとても人気と
8
のこと。
制服はカーディガンのボタンを全開けにしている。
華桜学園副会長。
柊木秀也 身長173センチ
土系の魔法が使える・土を操れる。
髪色は濃い灰色で髪型は特に何もしてなく自然な感じ。
自由気ままな性格で寝たりすることが結構多いらしい。
ややたれ目で薄茶色の瞳。
マイペースな雰囲気と美形な顔でとても人気があるとのこと。
制服はシャツのボタンを第二ボタンまで開けてて下に着ている黒の
Tシャツが見える。
華桜学園書記担当。
崎河快人 身長172センチ
雷系の魔法が使える・雷を操れる。
髪色は紫に近いオーキッド色で髪型は少しショートウルフな感じ。
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紺野蓮とは違う大人っぽさを持っていて、結構鋭い方。
目が切れ長で群青色の瞳。
美麗な顔に大人っぽい雰囲気がとても人気とのこと。
制服はシャツを腕捲りし、第一ボタンを開けカーディガンを腰に巻
いている。
華桜学園会計担当。
月影サクラ 身長162センチ
周りの情報では治癒魔法が使えるらしい。
髪色は淡いコーラルピンクで下の方にウェーブがかけてあり、前髪
はぱっつんを斜め分けにして、黒のヘアピンで留めてある。
礼儀はわきまえている性格。若葉とは最初に仲良くなった。1年前
にサクラも華桜学園に転校してきた。前の学校は不明。
顔は綺麗な印象を持つ。二重のぱっちりとした目で暗めなオーキッ
ドピンクの瞳。
制服は規定通り着用。カーディガンの袖が少し袖余りになっている。
清水若葉の親友?
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石河理佐 身長169センチ
石の魔法が使える。
清水若葉と月影サクラの担任。
性格は気さくでサバサバしていて生徒に人気の教師。
華桜学園の制服・夏服
女子⋮半袖の白いシャツをベースにし、裾と袖に黒いラインが入っ
ていて、
水色と白のスクールリボンを結ぶ。腰の所と裾に金のラインが入っ
ている無地の
フレアスカートに男女兼用で生地が薄いカーディガンを着用。
男子⋮半袖の白いシャツで女子同様同じデザイン。
チェック柄の藤色ネクタイを結び、腰の所と足元に金のラインが入
ってる
無地のスラックスに男女兼用のカーディガンを着用。
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華桜学園の制服・冬服
女子⋮長袖シャツでカーディガンの代わりに金と白のラインが入っ
た黒のベストと、黒のラインが入った白のブレザーを着用。
男子⋮女子同様シャツとベストとブレザーを着用。
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01話 ロングヘアの少女
﹁えっと︰あの、私︰﹂
するといきなり誰かが若葉の腕を掴み教室の外へと導いた。
﹁え!?﹂
廊下へ出たのはいいが、突然過ぎて脳内がパニック状態に陥ってい
る若葉に声を掛けたのは︰。
﹁いきなりすみません﹂
苦笑を浮かべるロングヘアの少女が立っていた。
﹁とても困っているような様子に見えましたので︰強引に引っ張っ
てしまって御免なさい︰少々おこがましかったかしら﹂
﹁いえ! 助かりました!﹂
﹁私の名は月影サクラと申します。これから宜しくお願い致します﹂
ニコッと笑みを浮かべお辞儀をしたサクラ。
﹁こ、こちらこそっ!﹂
﹁様子を窺っていたところ、若葉様環境の変化で気疲れしていらっ
しゃるご様子で︰﹂
﹁⋮心配してくれてありがとうございます。サクラさんは優しいで
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すね!﹂
﹁私も若葉様と同じよう、転校してきたんです。ですのでその気持
ちよく分かりますよ!﹂
﹁そうなんですか?﹂
﹁ええ。﹂
すっかり意気投合し、暫く二人で他愛もない話をしていたところ
遠くの方から女子生徒たちの黄色い歓声が耳へと届いた。
﹁あれって何だろう︰?﹂
若葉の視線の先には美形の男子に女子たちが群がっている。
﹁嗚呼、あれですか? 生徒会長の朝倉悠様を中心にファンの方々
が集まっていらっしゃるようですね。﹂
サクラはチラッと歓声の中心となる方を見て苦笑を浮かべた。
﹁若葉様は興味ないのですか?﹂
﹁うん。興味ないな︱﹂
﹁あら、私てっきり生徒会の皆様が目当てなのかと思ってました﹂
﹁でもほとんどの女の子は生徒会目当てだよね︰︰絶対﹂
少し鬱陶しそうな目で朝倉悠の後ろ姿を睨み、不意に出た小さい溜
息を零し殷賑な教室へと消えていった。
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01話 ロングヘアの少女︵後書き︶
サクラちゃん登場です!
個人的にはサクラちゃん好きですねー。
若葉ちゃんも素敵ですけどねっ!!
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02話 体力作り!!
﹁あー!! 若葉ちゃん来たよ!﹂
﹁何処行ってたのよー﹂
引き戸を閉め軋む音が消えるのと同時に、クラスの女子がわんさ
か集まり
始めた。
﹁ちょっと校内を周りに行ってて︰﹂
それに呑気に駄弁っていたとは言えない︰相槌を求めるようにサク
ラを見、それを察したかのように話を合わせてくれた。
﹁ええ。転校生ですから教室の場所などを知っておかないと何かと
不便ですし﹂
﹁そーだけどさ︱︰あ! さっきこの教室の前、悠様が通ったのよ
︱!!﹂
﹁何時もながら超イケメンだった!﹂
﹁会えなかったなんてもったいなーい﹂
﹁あはは⋮私そういうのは︰﹂
﹁若葉様、そのような事は興味無いんですって﹂
﹁え、マジで!?﹂
﹁そんなのサクラちゃん以来だな﹂
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うふふと上品に笑っているサクラにふと一つの疑問が心に湧いてき
た。
﹁あのさ︰︰﹂
声をかけようとしのだが休憩時間終了のチャイムと少し威圧感の
ある石河先生の声が全員の耳に入った。
﹁早く授業の準備しなさ︱い!﹂
﹁はいはい、そんなに怒んないでよ理佐ちゃん﹂
﹁あたしを理佐ちゃんと呼ぶな! 何遍言ったら解る﹂
﹁先生が突っ込んだ!!﹂
そんな先生との茶番でクラス中がどっと笑いに包まれた。
二時限目は魔力増幅のためとなる体育︰即ち、体力作りである!
﹁いくら体力作りとは言え、この暑い中校庭でランニングってアリ
なわけ︰︰?﹂
﹁頑張って下さいまし︰︰﹂
へとへとになりながらも必死に足を動かす。
日差しが照りつける炎天下の中暑さで体力が削られていくのが嫌で
もわかる。
﹁清水さんと月影さん足が遅れてるわよ︱﹂
﹁は、はいっ! 早く終わらないかな﹂
﹁校舎内は少々寒いくらい冷房がすごく効いておりましたものね
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恋しくなるのも無理はありません﹂
﹁あ︱、なんか頭がクラクラする⋮﹂
暫く走っていたのだが少しふらついた足取りになってきた若葉。
﹁ええ!? ︰様子からしますと屹度若葉様の自律神経が乱れてし
まいましたのね。
私が治癒魔法を掛けますので少々お待ち︰︰﹂
魔法の準備をしたサクラを制したのは若葉だった。
﹁大丈夫、サクラランニングで体力削られてると思うから
負担になる事したくないし︰﹂
﹁若葉様︰。では保健室へ行きましょう、私先生を呼んでいきます
わね﹂
﹁ありがとう﹂
先生に事情を話し暫くすると保健室へ行くのを許可できた。
﹁許可下りましたわ。私が案内いたします、若葉様立てますか?﹂
﹁へーきへーき!少し休めば元気になると思うから﹂
校舎内へ入り無事保健室へと行き着いた二人。
ノックをしたが返事は返って来なかった。
﹁あら? 御留守かしら︰しょうがないですね、若葉様入って下さ
いまし﹂
﹁ありがと︰先生居ないんだね。何処行ったんだろ﹂
﹁出張でしょうか? あちらのベットが空いてますね。使わせて頂
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きましょう﹂
一番窓側のベットを案内され力尽きるようにベットに横たわった。
テキパキと保健室中を動き回るサクラを見てふうっと一息。
﹁サクラ︰なんか慣れてるね﹂
﹁此処には何時もお世話になっていましたから︰あ、これですね﹂
うふふと笑いポケットから何かの瓶を取り出した。
﹁これなに?? なにか液体っぽいのが入ってるけど︰﹂
﹁私の魔力を瓶に詰めたものです﹂
﹁そんな!疲れたんじゃない?﹂
﹁以前に取っておいたものなのでご心配なく。
こちらの効き目は強すぎて更に体調が悪くなりましたら危険ですので
今より体調が優れませんでしたらお飲みになって下さいね。
では、失礼致します。何かありましたら何時でもお呼びになって下
さい﹂
﹁サクラありがとう! お昼休みまでには必ず戻るから﹂
薄桃色に光る小瓶を頭上に掲げ今日の事を思い出し、無意識にた
め息がでた。
﹁休めって言われても暇だな︰。
それに転校初日に保健室行きだなんて、結構散々な初日だったな︰﹂
暫く時計を眺めていると規則正しく動く時計の針で
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徐々に眠気が若葉を襲ってきた。
﹁眠い⋮少し寝よ﹂
そして若葉の意識は暗闇へ沈んでいった。
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03話 緋色のカーテン
と思ったのだが︰︰。これが中々眠れない。
眠たいのに眠れない︰恐るべし、睡魔。
︵なんか、隣からごそごそ物音するんだけど︰︰。
ん? このシーン昨日本で読んだことあるぞ?
確か保健室で良からぬ事を︰︰って︶
﹁何、想像してんだ私!!!﹂
隣に誰か居るにも関わらず不覚にも大声を出してしまったのだ。
慌てて口を塞ぐも遅く、勢いよく緋色のカーテンを開けられた。
﹁んだよ︰うるせぇな﹂
怒り混じりの声に吃驚したが目線の先には
紫色の髪の美麗な顔の持ち主だった。
﹁ご、ごめんなさいっ﹂
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﹁︰お前、見ない顔だな。アンタ誰?﹂
知らない美形顔の男にじーっと見つめられ何とも複雑な気分な若
葉。
﹁貴方こそ誰ですか﹂
﹁俺の事知らねぇの? 此処の生徒会に入ってるんだけど﹂
﹁そーいえばそうだったような︰︰。
てかそんなに見ないで下さい。変態ですか?﹂
﹁違ぇよ!
︰あーあ、御陰で眠気も吹っ飛んじまったし、教室に戻るかー﹂
何処と無く﹃御陰で﹄を強調している。
ご丁寧に舌打ちも合わせて
﹁何かムカつく言い方ですね﹂
﹁気のせいだよ。じゃーな﹂
そう言い残し謎の男子生徒は保健室を出て行った。
てか名前くらい名乗りなさいよと思いながらも
ベットへと体を沈める。
﹁︰まあ私も名前名乗ってないから同じか﹂
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04話 昼食
昼休みに入り体調不良から復活した若葉は速やかに教室の元へ戻
り、
昼食の準備をし始めた。
﹁あ! おかえり︱﹂
﹁若葉様! おかえりなさいませ﹂
﹁体大丈夫っすか?﹂
﹁大丈夫です!!﹂
﹁若葉さんお昼一緒に食べよ︱っ!!﹂
﹁は、はい!﹂
﹁な︱んだ︰俺らが誘おうとしたのによ﹂
﹁アンタ達には十年早いわっ! 行きましょ?﹂
﹁ここは屋上開放してるから!﹂
﹁うん﹂
顔に覚えのある女子二人とサクラに連れて来られた場所はさっき
言っていた
屋上だ。ご丁寧に小さいテラスが設置してある。
生徒からはオシャレな屋上! といった意見が大半だ。
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﹁すご︱い! 綺麗なところですね﹂
﹁でしょでしょ!﹂
﹁華桜学園の自慢の場所だよ﹂
﹁風も心地よいですしね﹂
今は殆ど誰も居なく、皆でゆったりとできるスペースを確保できた。
﹁あ、そうだ。ちゃんとした自己紹介まだだったね
私は佐久間美羽。私の魔法は天候が予測できる魔法なの!よろしく
ね﹂
﹁あたしは米倉暁美。自分の性質を変えられる魔法が使えるよ﹂
ほんの一瞬の沈黙が流れ最初に口を開いたのは︱︱
﹁ごめんね﹂
暁美だ。
暁美からの突然の謝罪に戸惑う若葉。
﹁え?﹂
﹁無理に連れて来させちゃって︰﹂
﹁あ︰! 大丈夫ですよ。丁度お昼食べようと思っていたので!﹂
﹁そ︰そう?﹂
﹁うんうん。あ、時間もったいないから早く食べよ?﹂
﹁︰うん!!﹂
四人で食事を楽しんでいるとふと保健室で出会った男の事を思い
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出した。
この三人は知っているだろうかと思い、聞いてみると︱。
﹁嗚呼︰! 会計の崎河先輩ね!﹂
﹁凄くかっこいいよね︱!﹂
質問開始二秒で答えてくれました。
﹁あの方がどうかされました?﹂
﹁あ︰いや︰保健室で会ったから聞いてみただけなんだけど︰﹂
﹁へえ︱﹂
﹁崎河先輩よく保健室行くって言ってたっけ﹂
﹁そうなんだ︰﹂
適当に皆で駄弁っているとお弁当も完食し、皆は教室へ戻る準備
をしている。
﹁わわっ! あと七分でチャイム鳴っちゃう!﹂
﹁うそ!?﹂
﹁七分ですか︰微妙なところですね︰﹂
うーむと唸っている三人へ疑問が残る。
﹁ん? どうしたの?︰うわっ!!﹂
いきなり手が引っ張られ屋上の出口へと急かされる若葉。
﹁細かい話は後々!﹂
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ダッシュで階段を下り、あともう少しで教室って時に美羽がいき
なり
急ブレーキをした。その反動で転倒しそうになったが
サクラと暁美の手助けにより何とか体を壁に凭れ掛けた。
﹁ど、どうしたの!?﹂
﹁あちゃ︱︰。遅かったか︰﹂
﹁美羽︰まさかとは思うけど︰﹂
﹁︰そのまさからしいですわね︰︰﹂
﹁え?﹂
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05話 見回り
困った様に眉を顰めた三人の様子を見て、不思議に思った若葉は
廊下の
曲がり角からゆっくり覗いてみると︱︱
﹁あ︰﹂
丁度若葉たちの教室の前に五人の男子高校生が集まっていた。
更にあの中にいる少年︰保健室で会った少年と似ている。
頭をフル回転させあの人たちが誰なのか解った。
﹁ね、ねぇ︰あの人たちって︰︰﹂
﹁生徒会メンバー﹂
﹁あはは︰﹂
﹁やっぱり︰﹂
何故解ったのかと言うと彼が言っていた言葉を思い出したからだ。
﹃俺の事知らねぇの? 此処の生徒会に入ってるんだけど﹄
此処の生徒会は五人だ。生徒会に無知な若葉でもそれは知っている。
︰という事はあの人たちは生徒会メンバーなのではないかと若葉は
推理したのだ。
﹁てか何で生徒会が此処にいるの!?﹂
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﹁あ︱︰。理事長の考案で毎回生徒会が見回りしてんのよ﹂
﹁それまで皆時間にルーズだったからね︱。それを見兼ねた理事長が
こんな提案出してこうなっちゃったんだよね。まあ規則みたいなモ
ンよ
この時だけは皆怖くて生徒会に近づかないで教室に戻るんだよな!﹂
﹁もし規則に反してしまいましたら陸な事になりかねませんものね
︰﹂
﹁︰何か生徒会が怖くなってきたんだけど﹂
﹁あ︱あ、暇だなぁ︰これ意味あるのかな︱?﹂
﹁理事長の考案だ、文句言うな。﹂
怠そうに欠伸をしている猫目の少年、霧谷佑介を本を読みながら
平静に宥める
少年の名は紺野蓮。どちらも副会長を務めている。
﹁あと五分くらいだ。此処の教室はもうよくね?﹂
﹁︰︰まだ四人不在︰﹂
朝倉悠。
﹁︰もう全部回ったからあとはその四人だけだね﹂
窓の外を横目にそう呟くのは華桜学園生徒会長
屈んで座っているのは会計担当の崎河快人。若葉と保健室で会った
28
男だ。
その隣に眠そうにしているのが書記の柊木秀也だ。
そして数秒の沈黙が続いた︰。
﹁何なの、あの沈黙は!?﹂
﹁もう私たちだけみたいね︰﹂
﹁どうしましょう︰﹂
﹁強行突破とか?﹂
暁美は面白そうにクククっと笑う。
﹁却下﹂
無論、三人は揃って却下した。
﹁冗談だって!﹂
﹁ふざけてないで真剣に考えてよっ!! このままじゃ教室に戻れ
ないじゃない!﹂
﹁あ、あの︰もう少し声をお静めになさった方が︰﹂
﹁あ、そうね﹂
﹁!! さっき黒髪の人がこっち見た気が︰﹂
﹁え﹂
見事に﹃え﹄を斉唱したサクラ・美羽・暁美。
29
06話 対面
少々焦り始めた彼女たちがでた行動は一つ。
その場から﹃逃走﹄する事だ。
﹁な、何で逃げるの!?﹂
﹁分かんない!! 勝手に足が動いちゃったのよ! 例えイケメン
でも
捕まりたくないっ!﹂
美羽がてへぺろといった表情で必死に走る。
﹁黒髪という事は紺野先輩か︰。こりゃちょっとマズイな﹂
﹁真顔で言わないで!﹂
﹁ちょっとどころではありませんよ!﹂
急いで走った若葉たちは冷静に考えられる筈はなく、只管校内を走
り続けている。
その数十メートル後ろには生徒会が彼女たちを追っていた。
﹁わっ! 追ってきたよ︰!﹂
﹁うそ、もう追ってきたの!?﹂
﹁も、もし捕まったりしたらヤバいんじゃ︰﹂
﹁五時限目始まってしまいましたし︰今現在逃げてますものね︰﹂
﹁どうする!﹂
﹁︰︰構わず走る! もう逃げちゃったわけだからね!﹂
30
数分時間を遡ると︱︱。
﹁おい、その四人探さなくていいのか?﹂
﹁そうだね︰探してみようか﹂
﹁秀也は待機な﹂
﹁喜んで﹂
﹁︰此処、無駄に広いからな。見つかるといいけど︱︱﹂
﹁どうした?﹂
﹁見つけた﹂
蓮は先にある曲がり角をじーっと見つめながら呟く。
﹁! 行くぞ!﹂
﹁鬼ごっこ? なら僕の得意な分野だね﹂
ニコニコと佑介は笑い悠達が走っていた方向とは逆の方へ走って行
った。
︰︰︰勿論魔法を使って。
時は今現在に戻り、若葉たちは成り行きで屋上へ来てしまった。
﹁︰なんで屋上なの?﹂
﹁ごめんごめん! 気付いたら足が勝手に︱﹂
﹁袋の鼠にほぼ確定です︰﹂
﹁大丈夫よ! ほら扉ってもう一つあったじゃない﹂
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﹁あそこ行くの?﹂
﹁あそこ?﹂
﹁屋上にはもう一つ扉があるんですよ﹂
﹁へえ︱此処は結構なんでも︰﹂
﹁見つけた﹂
﹃あるんですね﹄と言おうとしたのだが誰かの声によって阻まれた。
瞬時に若葉たちの顔が引き攣る。
ゆっくり振り返ってみると目の前にはその声の主、朝倉悠が笑顔を
見せながら立っていた。悠の後ろには蓮と快人がいる。
﹁げ︰。い、行くよ!﹂
﹁え︰!? う、うん﹂
逃げるように悠達とは反対方向へ走りだした。辿り着く先には第
二扉がある。
急げば逃げられる! と思ったのだろうか。
﹁だ︱め﹂
だがそんな心情は虚しく散り、第二扉からは霧谷佑介が居、逃げ切
る事が
不可能になった。
﹁霧谷先輩って風属性の魔法を使えたんだった︰︰﹂
﹁うん! 御陰で君達を追い詰められたよ﹂
32
﹁はいっ! 皆教室に戻った戻った︱﹂
﹁は︱い︰﹂
﹁疲れがどっときたわ︰﹂
﹁そりゃあんなに走ったんだからな︱。︰ん?お前︰﹂
33
07話 第一声
若葉の横顔を見るなり考え始めた快人。
﹁! あん時いたやつか﹂
﹁どーも﹂
﹁なになに、この子と知り合い︱?﹂
﹁一回会ったんだよ。保健室で﹂
﹁ふ︱ん 僕、霧谷佑介。よろしくね︱!﹂
﹁は、はぁ︰清水若葉です︰。﹂
一応相手が名を名乗ってきたので若葉も名乗る。
﹁若葉ちゃんか︱! いい名前だね﹂
﹁それはどうも﹂
﹁おい霧谷。行くぞ﹂
﹁はいはい。じゃあね若葉ちゃん﹂
﹁どうも︰。﹂
﹁あ! やっぱり此処にいた!﹂
﹁階段下りるとこだったけど若葉が居なかったから心配しちゃった
じゃん!﹂
﹁教室へいきましょう?﹂
﹁あ、ごめんなさい! 今行く!﹂
34
そして教室へ戻るため、屋上を後にした。
教室へ戻り若葉たちが浴びせられた第一声は石河先生の声だ。
﹁貴方達!! 何処行ってたの!﹂
﹁ごめんなさ︱い﹂
﹁ごめんごめん﹂
﹁申し訳御座いませんでした︰﹂
﹁すみません︰﹂
﹁お前ら廊下走ってただろ!﹂
﹁ちらっと見えてたぜ︱!﹂
﹁マ、マジ?﹂
﹁マジ﹂
本日二回目のクラスの皆からの斉唱により、声が全体に響き渡る。
﹁まったく︰皆、席に着いて﹂
石河先生は呆れ顔で言う。
そして静かに授業が行われた。
35
08話 配布
あれから何の騒動もなくゆったりとした授業だった。
そして放課後︱︱。
﹁疲れた︱︰﹂
﹁そうですね︰﹂
﹁あんだけ走ったんだからな﹂
ケラケラと石河先生が笑う。
﹁授業遅れた罰として全員このプリントを置いてこいな︱﹂
指差した方に視線を送ると大量に積まれているプリントなどの
書類物が置いてあった。
﹁多っ!?﹂
﹁これを四人で?﹂
﹁四人で﹂
﹁これは︰骨が折れそうですわね﹂
﹁私たち疲れきってんのにこれは酷いよ︱﹂
﹁︰なら何時も通りグラウンド百周にするか?﹂
﹁喜んでやらせて頂きます﹂
﹁よろしい﹂
グラウンド百周かプリント配布だったら誰もがプリントの方を選ぶ
だろう。
満足気に微笑みながら教室を出て行った。
36
各自分担を決め其々プリント配布しに行った。
︰だが、若葉の担当は図書室と﹃生徒会室﹄なのだ︰。
最初はサクラの担当だったんだが、強く拒絶していたので代わりに
若葉が
担当になった。
﹁︰図書室にはもう置いたから後はあそこか﹂
美羽達に場所を教えてもらったばっかりだがまだ記憶してる。
階段を下り今は胡桃色の扉の前にいるんだが︰。
﹁何か気まずいなぁ︰﹂
﹁何が?﹂
そう呟いた途端耳元からボソッと誰かが囁いた。
ビクッと肩が揺れ恐る恐る振り向くと眠たそうにしている、見知ら
ぬ少年の姿が
瞳に映る。
﹁︰︰何か生徒会に用かな︰?﹂
﹁は、はい! プリントをお届に来ました﹂
﹁︰プリント?﹂
少年は何回か唸った後生徒会室の扉を開けた。
﹁ちょっ︰!!﹂
﹁? 秀也遅かったな﹂
﹁︰プリント﹂
﹁プリント?﹂
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廊下でたじたじしていると生徒会長と目が合う。
﹁君︰﹂
﹁し、清水若葉ですっ!!﹂
名前を聞かれてもいないのに勢い余り、自分から名乗ってしまった。
﹁あ! 四人の遅刻組にいましたね﹂
︵ち︰遅刻組って︰︰まあ当たってるけど︶
﹁どうぞ﹂
若葉はプリントを悠に渡し一歩下がった。
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09話 ハプニング
﹁︰︰ありがとう清水さん﹂
悠は一通り目を通し若葉へお礼を言う。
︰スマイル付きで。
﹁いえいえ﹂
数秒の沈黙が流れる︰。
数秒だが沈黙に耐えられなくなり若葉はペコっとお辞儀する。
﹁では失礼します﹂
一歩下がった途端、何かにぶつかったのが分かった。
だが人じゃなくて、物の感覚︰。
﹁危ない!﹂
﹁︰え?﹂
上を見上げると分厚い二冊の本がぐらつき今にも倒れそうな状態だ。
これから来る痛みを覚悟し目を瞑った時、誰かに手首を引っ張られる
感覚があった。
体制が縺れ若葉は何かに伸し掛かった。
ゆっくり目を開けてみると目の前に悠の姿が見えた。
﹁︰? ︰え!?﹂
理性が元に戻って行き自分が今何しているのかが分かった。
﹁ご、ごめんなさいっ!!﹂
そう言いすぐさま悠の上から離れる。
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﹁大丈夫だよ。御免ね、怪我とかないかな︰?﹂
﹁あ、はい! 大丈夫です!﹂
後ろを振り返ると佑介と蓮が本をキャッチしていた。
﹁にしても危ね︱な﹂
﹁見た事ない本だな﹂
﹁埃かぶってたしずっと放置されてたのかな?﹂
﹁︰︰悠、コレどうする?﹂
﹁適当に始末すればいいんじゃない?﹂
そう言って本の元へ駆け寄る悠。
︵﹃適当﹄って︰︰会長って結構大雑把︰?︶
﹁︰分かった。︰で、君誰?﹂
秀也と目が合う若葉。
いや、こっちが聞きたいんですけど!? てかさっき大声で名乗っ
たよね!?
という感情はぐっと抑えた。
﹁清水若葉です﹂
﹁ふ︱ん︰俺、柊木秀也。でも君だったんだね﹂
﹁何がです?﹂
﹁遅刻組﹂
﹁︰︰は、はい︰﹂
﹃遅刻組﹄に違和感を覚えたが突っ込んだ所でキリが無いと判断し
軽く受け流した。
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10話 帰宅
﹁でも君って見た事ない子だね﹂
端正な顔でじーっと見つめられ、少し困惑してしまう。
﹁今日、転校してきました︰﹂
﹁ははっ! とんだ災難だったね︱。転校初日にこんな目に遭うな
んて﹂
﹁ま、まあ︰﹂
けらけらと佑介が笑う。︰だがまったくその通りだ。
もうそれには苦笑するしかない。
﹁佑介、笑いすぎだ﹂
﹁ごめんごめん﹂
呆れた様子で蓮はポカッと佑介の頭を軽く殴った。
その場の雰囲気に呑まれ皆で軽く雑談をするつもりだったのだが、
意外にも話に熱中してしまいあっという間に時は過ぎ、
今現在最終下校時刻の時間に迫っていた。
﹁おっと︰少し話し過ぎたみたいだね︰﹂
﹁もうこんな時間か︱﹂
﹁急がないと!﹂
慌てるように荷物を持ち帰る準備をする。
﹁あ︰荷物教室だった︰﹂
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﹁そうなの?﹂
﹁じゃあ一緒に行こっか﹂
﹁え!?﹂
突然の発言に驚く若葉。
﹁家まで俺らが送ってやる﹂
﹁少し迷惑かけちゃったし﹂
﹁ダメ︰かな?﹂
﹁別に︰いいですけど︰﹂
断る理由は特に何もなかったので一応オッケーする。
﹁さあ、行こ!﹂
結構ハイテンションな佑介に押され自身の教室へと向かう。
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11話 弱々しい声
無事迷わず教室の所まで着いた時、チラッと大きい人影らしき物
が目に映る。
﹁あれ︰?﹂
﹁どうした?﹂
﹁誰か︰居るみたいです︰﹂
﹁え? もう最終下校時間ぎりぎりだってのに︰誰だろ︱ね﹂
すると途端に人影が此方に振り向いたのが分かった。
﹁こっちに振り向いた!﹂
悠達が若葉を守るように囲むよりも早く、教室の戸が開けられた。
﹁もう! 若葉何処行ってたんだよ︱﹂
声が空の教室に響き渡る。
だが、その声は聞き覚えのある声だった。
慌てて声の元に顔を向けると暁美達が居た。
暁美の隣に位置していた美羽が、若葉の横に居る悠達に気付いた。
﹁︰あ、若葉生徒会の人たちと仲良くなったんだ︱!﹂
﹁︰︰生徒会﹂
﹁あ、良かったら皆も一緒に帰らない?﹂
﹁まだ夏だと言えど、女の子の夜道は危ないからね﹂
悠が紳士的に微笑んだ。
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勿論二人は了承する。︰︰一人を除いては。
﹁喜んで!﹂
﹁はい﹂
﹁サクラも︰!! 一緒に帰らない?﹂
﹁っ︰﹂
サクラの眉が少しピクリと動いたが、無理矢理笑顔を浮かばせ了承
する。
﹁構いませんよ﹂
﹁良かった! 行こっ!﹂
﹁ええ﹂
了承してくれた事に嬉しかったのか、若葉はサクラの手を掴み悠達
の元へ急いだ。
夏の為か十九時を少し過ぎてもまだ外は少し明るさが残っている。
最終下校時刻三分前に出られた若葉達は、のんびり帰り道を辿って
いた。
美羽と暁美が途中で別れ、残りは若葉と生徒会役員とサクラだった。
若葉と悠達はいろいろ談話していたのが、サクラは無言のままだ。
﹁︰? サクラどうしたの? ずっと無言のままだよね︰何処か痛
いの︰?﹂
やはりずっと無言のままのサクラに疑問を感じたのか、若葉は歩く
足を止める。
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﹁! い、いえ何処も痛くありませんわ﹂
はっと我に返ったサクラは若葉に笑顔を見せる。
﹁そ、そう︰?﹂
﹁ええ︰! そんな顔しないで下さいまし! 私はだいじょ︰︰﹂
﹁だいじょ︰?﹂
﹃大丈夫﹄と言うつもりだったのだが、サクラは一方を見つめ動か
ない。
﹁? お︱︱い﹂
怪しく思った秀也が目の前で手を振り、サクラの我を取り戻させる。
﹁!! ︰申し訳御座いませんが、私はこの辺りで失礼させて頂き
ますね︰﹂
﹁え!? サクラ︱!﹂
若葉がサクラの名を呼ぶが彼女は振り向かず別の道へ逃げるように
走っていった。
﹁何でここにいんだよ︰﹂
弱々しい声を口から零しながら︱︱。
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12話 姉
﹁どうしちゃったんだろう︰﹂
﹁事情ってやつじゃね?﹂
去って行ったサクラの事が心配になったが、快人の一言で気持ちが
少し軽くなる気がした。
︵だと良いけど⋮︶
﹁あ、ここです!﹂
いつの間にか自分の家の前に着いていた。
﹁へぇ∼、一軒家なんだ!﹂
﹁何時もは一人で暮らしてるんですけど、姉が時々来るんですよ﹂
﹁お姉ちゃんいるんだ﹂
﹁はい!﹂
﹁じゃあ俺らはそろそろ行くね﹂
﹁また明日﹂
﹁はい! 此処まで送って下さってありがとうございます!!﹂
かっこいいウィンクを残し悠達は帰って行った。
無事家まで送ってもらい、悠達が見えなくなるまで若葉は見送っ
た。
後ろ姿が見えなくなった所で家に戻り鍵をかける。
﹁やっほー、今の集団かっこいい人ばっかね﹂
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﹁え、まあ顔はね︰︰って!? 何故ここにいんの!﹂
﹁いや、何故って言われても︰ここうちたちの家じゃん﹂
﹁あ、そっか︰って違︱う!!﹂
目の前にはカフェオレを飲んでる姉の姿があった。
彼女の名は清水小町、二十歳。
ボブカットオリーブ色の髪色が特徴的だ。
﹁帰ってくるなら言ってよ! 食材足りるかな︱︰﹂
﹁大丈夫大丈夫! 買い足しといたから﹂
﹁お、サンキュー﹂
冷蔵庫を見るとちゃんと大量の食材が詰まっていた。
﹁︰で、あのイケメン集団の中に彼氏はいるのか︱?﹂
﹁いないから﹂
考える暇もなく即答で小町の質問に答える。
﹁即答かよ﹂
若葉に即答された事に面白くなかったのか小町はチッと舌打ちして
残りのカフェオレを飲み始めた。
﹁︰じゃ、飯よろしく﹂
﹁はいはい︰︰︰女子力の欠片もないんだから﹂
﹁なんだって?﹂
ボソッと言ったつもりだっんだが、小町の耳に入ったらしい。
﹁なんでもない! なんでもない!﹂
﹁︰そ﹂
一瞬若葉の顔を見た後、自分の部屋に戻って行った。
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﹁危な︱︰。また蔓で関節技くらったら堪ったもんじゃないわ︰﹂
昔を思い出すように遠くを見つめる。
﹃お姉ちゃ︱ん! 勝負しよ︱よ!﹄
﹃また︱?﹄
﹃今度こそ家壊れちゃうから程々にね︱﹄
母が面白そうに観戦する。
﹃お母さんまで! ︰しょ︱がない、一回だけだよ?﹄
﹃うんうん!﹄
若葉が小町に勝負を吹っかけてから五分後︱︱
﹃いった︱ぁっ!? ギブギブ!!﹄
小町が魔法で出現させた大量の蔓によって関節技をきめられた。
若葉は早くもギブアップ。
﹃ふふん! うちに勝とうなんて百年早いわ!﹄
﹃そんなに!?﹄
﹁今となっては良い思い出︰﹂
そう言い聞かせながら若葉は料理を作り始めた。
﹁あ、何か思い出したら体の節々が痛くなってきたな︰﹂
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13話 夕飯
﹁ご飯出来たよー!﹂
﹁は︱い︰﹂
気だるくやる気のない小町の声に多少呆れながらも、若葉は椅子
に座った。
﹁もっと可愛らしくしたらいいのに﹂
﹁何だって︱?﹂
若葉の独り言を聞かれた様で、耳元にボソッと怒りが少々混じった
声で呟かれる。
﹁!? な︰何でもない、何でもない﹂
﹁︰︰お! 美味そ、今日はスペアリブかー!﹂
軽く睨まれたが、夕飯の方に目をやり食べ始める。
﹁結構頑張ったよ﹂
﹁若葉って余り強くないけど料理の腕は一流ね﹂
﹁よ、弱いって事!? そ、そんな事な︰﹂
﹃ない﹄と言おうとしたが、口に小町がスペアリブを突っ込んだせ
いで喋れない。
﹁うん、柔らかくて美味しい﹂
﹁だろ?﹂
﹁って、そうじゃなくて!! 私が弱いってどういう事よ!!﹂
ふと我に返り、小町に詰め寄る。
﹁だって︱、うちに勝てた事なかったじゃない﹂
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﹁お姉ちゃんが強すぎるからだよー﹂
﹁ちょっと化け物みたいに言わないでくれる﹂
﹁だって化け物みたいに強︰っ!﹂
言い終わらないうちにまたスペアリブを口に突っ込まれた。
﹁ちょっとー!﹂
﹁ははっ、ごめんごめん﹂
小町は爆笑しながら夕飯を平らげる。
﹁食べんの早っ!?﹂
﹁お腹空いててさー﹂
﹃御代り︱﹄と言いながらご飯をよそうのを横目に、気になってい
た事を質問する。
﹁いつまで居るの?﹂
﹁ずっと﹂
当然とでも言うように、平然な様子で返す。
﹁へえ︱、︰︰︰ん? ずっと!?﹂
﹁うん。それがどうかした?﹂
﹁いやいやいやいや︰、学校は!﹂
﹁早めに卒業した﹂
﹁︰それってアリ?﹂
﹁アリ﹂
穏やかな生活が騒がしくなるのが安易に想像出来、若葉は軽く項垂
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れる。
﹁そんなに残念がらなくてもいいじゃないか︱。てか若葉も早く飯
食っちゃいな、冷めるから﹂
﹁︰は︱い﹂
こうなりゃどうにでもなれと思い、若葉は一気に夕飯を平らげる。
﹁そ、そんなに急がなくても︰﹂
﹁御代りっ!!﹂
﹁︰はいはい。もう︰困った妹ね﹂
若葉の様子に小町は微笑みながらご飯をよそってくれた。
﹁お姉ちゃ︱ん! お風呂上がったよ︱!﹂
﹁ほーい﹂
久しぶりに姉妹での夕食を終え、若葉が先に風呂に入り今上がっ
た所だ。
入れ替わりに小町が風呂に入り、若葉は今テレビを見ている。
﹁今日は結構疲れたな︱︰﹂
数十分テレビを見た後、リビングでごろごろ床ローリングをしてい
ると、若葉と色違いのチェック柄パジャマを着ている小町が目に映
った。余談だが若葉が山吹色、小町がキャラメル色だ。
﹁何してんの﹂
﹁床ローリング﹂
﹁︰﹂
﹁ちょ︰、その無言は何!?﹂
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﹁別に︱﹂
意味ありげな声で返され軽くムッとした気がするが、小町の声によ
りその気持ちは消された。
﹁でも良かったよ﹂
﹁︰何が?﹂
いつもよりも小町の目が鋭くなり若葉は固唾を飲む。
﹁転校先を華桜学園にして﹂
﹁は?﹂
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n7975cm/
華桜学園生徒会と草花少女。
2015年4月15日08時30分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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