経済変動論II 2006年度前期 第4回 3. 2 賃労働 関係

経済変動論II
2006年度前期
3. 2
第4回
賃労働関係
清水 耕一
www.e.okayama-u.ac.jp/~kshimizu/
(1) 労使関係の制度化
 労働者階級の体制内化=「労働者階級の制度化」
 労働者の団結権、団体交渉権、争議権の法的承認
 フォード主義的労使間妥協の成立
 労働組合は生産管理・技術導入等に関する経営側のイニシアティブ(経営
権)を認めるのと引き換えに、生産性の上昇を賃金上昇に反映させること
を要求し、経営側がこれを認める。
 労使関係は階級闘争(19世紀型)から交渉関係に変容
 フランスの労働組合
 CGT(1895~)、 CFTC(1919~)、 CGT-FO(1947~)、CGC(1944~)、
CFDT(1964~)
 1950・60年代の団体交渉においては労働時間短縮よりも賃金水準の引き上
げを要求。(賃金のために残業もすすんで行う)
 労働時間:1950年で45時間以上、1972年で43,7時間
 法定:週40時間(1946年2月25日の法)、残業労働時間は週20時間まで(賃
金の割り増しは40~48時間まで25%増し、48時間以上50%増し)。
 有給休暇:1936年2週間、1956年3週間、1969年4週間
(2) フォード主義的賃金決定
 主要企業の労使間における賃金交渉⇒スピル・オーバー
 賃上げ率(額)が産業部門内の他の企業、さらには他の産業、他の地域
に波及
 ⇒企業間、産業間、地域間の賃金格差が縮小し、次いで硬直化
 賃金交渉の国民的差異
 アメリカ:パターン・バーゲニング(1企業で結ばれた協定が他企業に
ひな形として採用されていく方式––自動車産業が典型)
 日本:春闘方式(1956年以降)
 フランス:1968年までは企業内労使間交渉(国有企業の協定が影響力を
持った)、1968年5月のグルネル協定以降全国協定
*フランスの1968年
学生運動および労働運動の高揚⇒ドゴール大統領の辞任
ポンピドゥー大統領のもとでグルネル協定が結ばれ、労働条件の改善が進め
られる。また大学改革が進められることになり、パリ大学も各学部がナ
ンバー付大学として独立化(パリ第1大学〜パリ第13大学)
(2) フォード主義的賃金決定(2)
 賃金決定




wÝ pÝ 
賃金交渉:α(生産性上昇分の労働側への分配分)の大きさを巡る交渉
アメリカ、1969年以後のフランスではαは事前に交渉において決定
日本、1968年までのフランスでは、αは事後的に決定
付加価値の資本・労働間での分配関係も安定

 実質賃金の上昇
  wÝ– pÝ
 最低賃金制度⇒賃金の一般水準の底上げに貢献
 SMIG(業種間共通最低保障賃金)から1969年にSMIC(業種間共通成長最
低賃金)へ
 間接賃金の増加
 社会保障制度による間接賃金の支払い(失業手当、医療保険給付、家族手
当[児童手当]、住宅手当、生活保障給付、等)⇒可処分所得の増加

 労働者階級の可処分所得が、直接賃金及び間接賃金の増加によって増
加⇒大衆消費社会へ
(3) 大衆消費社会の出現
 大衆消費社会=大量消費の時代




労働者階級の購買力の上昇⇒生活必需品・耐久消費財の購入
アメリカ: 第2次世界大戦後
日本:1960年代後半から
フランス:1960年代から
 大衆消費が資本蓄積(成長)の原動力
 ケインズの有効需要論
 レギュラシオン派のフォーディズム論
 ボードリヤールの「消費の生産力」論(『消費社会の神話と構
造』、『生産の鏡』)
 消費の増加が拡大する供給に対して販路を提供⇔大量生産と大量
消費の結合
(4) フォード主義的景気変動の出現
 賃金の上昇は必ずしもインフレーションの原因ではない
 賃金上昇率≦生産性上昇率であるかぎり価格は上昇しない
 付録参照
 ただし低生産部門(農業、サービス業)にいては賃金上昇率>生
産性上昇率となり、これらの部門の価格上昇によってインフレー
ションが発生しうる。
 また高成長の持続は原材料市場で超過需要を生み、そのために原
材料価格が上昇傾向をもち、これもインフレーションの原因とな
る。
 経済全体では、平均的な生産性上昇率が高く、そのためにインフ
レーションは低率であり得た⇒クリーピング・インフレーション
 以上の関係から、生産性が停滞するとインフレ率が上昇すること
も理解できる(1960年代末からの現象)。
フォード主義の時代の景気変動
GDP は「成長率循環」
成長率
GDP
w
P
0