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第86回全国算数・数学教育研究(鹿児島)大会
学習指導法分科会
平成16年 8月 5日(木)於:鹿児島県立鹿児島中央高等学校
子供の思考を生かした算数指導(19)
-算数作文を活用した個に応じた指導のあり方-
奈良教育大学
重 松 敬 一
皇學館大学文学部
勝 美 芳 雄
奈良市立済美小学校
勝 井 ひろみ
生駒市立生駒台小学校
生 駒 有喜子
算数・数学日記(作文)分析の視点
記述内容
A
B
C
キーワード
特定の問題の解決と感想
や方略に関するメタ認知
の記述の段階
事実の表記
わかりました むずかしかった
簡単でした できました
やりました 知りました
今まで知らなかった
特定の問題の解決と結果
についての理由など他者
に関するメタ認知を記述し
た内容
事実とその理由
~からむずかしかった
~から(ので)かんたんでした
~ので間違ってしまいました
~なので便利だ
~だからわかりやすかった
(前後の文章の中に理由が書いてあるもの)
特定の問題に対する自己
に関するメタ認知を記述し
た段階
自分はこうしよう
よくわすれるので~しようと思います
気をつけよう 注意しよう
特定の問題からの疑問や
類推・一般化を図るメタ認
知も記述した段階
他の場合を考える
かけ算もあるのかな?
~もあるのですか?
~もやってみたいです
他にもないかさがして(調べて)みたいです
~は何というのですか?
自分でも問題をつくってみたいです
(実生活の場面について書いているもの)
より一般的な問題に対す
るメタ認知が記述される段
階
自分の学習や算数
全体について考え
る
算数が好きです
いろんな算数の世界へ行こうと思います
算数は新しいものを作り出せるものだ
D
E
単元ごとの算数作文の段階(第3学年)
B
A
A
A
A B
B A A
- A A
A A A A A
か 表 円
け と と
算 グ 球
( ラ
1 フ
)
A
A
A
A
か
け
算
(
2
)
A
ま
と
め
の
練
習
問
題
A
C
D
C
A
- B
D
A A
- C A
- A B
A A - - A A
- A - A A - A - A A
大 時 小 あ 式 長 わ わ あ
き こ 数 ん と さ り り ん
い く
算 計
算 算 算
数 と
算
( ( (
時
2 3 2
間
) ) )
A
B
B
三
角
形
と
角
E
D
D
D
A
D
C A B B
B A B A
暗 分 も ふ
算 数 ん く
だ し
い ゅ
の う
考 ④
え
方
B
A
式
の
あ
ら
わ
し
方
A
A
A
A
A
A
A
B
A
か
け
算
(
3
)
A
D
B
A
A B
重 算
さ 数
の
た
ん
け
ん
(
4
)
B
3
年
の
ま
と
め
広く学ぶ楽しさを感じる
発展コース
前に習ったことと結び付け
て似ているところや関係を
考える
標準コース
基礎コース
自立
「新しいことが
作り出せた」
教師が意図
的に手を離し
ていく段階
日常生活や日常生活に関わ
る擬似場面など興味・関心が
もてる課題、調べる必要性の
ある課題
「調べてみたいな・・」
多様に考えようとする
粘り強く考える
学んだことを生活に生かす
大きな納得
向上心をもち自らチャレンジする
大きなチャレンジ
「自分はこうしたい、こうなりたい」
というより高い目的意識をもつ
学習の自立
特定の問題に対する自信
小さな納得
「いろんな考えがあるんだな」
小さなチャレンジ
「この方法って便利だな」
特定の問題に対
する自信
教
師
の
関
わ
り
に
よ
る
学
習
解決方略に関する支援
「今までの方法は使えな
いかな?」
「他に考えはないかな?」
他の考えとの比較、分析
問題解決におけるよい経験
自分の学びを振り返る
学ぶ楽しさ、自力解決の喜び
↓挫折、意識の変革
新たな解決方法の獲得
試行錯誤による自力解決
問題への興味が広がる
「もっと知りたい」「聞きたい」
「自分はできる」(特定の問題に対する自信)
「なるほど」「わかった」という実感
「同じような問題ならできそうだ」
できたという実感
内なる疑問をもつ
「あれ、おかしいな?」「どう
やればいいんだろう?」
学習への興味が広がる
「自分はできる」(新たな問題解決による自信)
「これならできるかな?」
自信
「既習事項が
活用してできた」
自分の力で解決できたという実感
「これからこうすればできるんだ・・」
支援を受けながらまずやってみる
「これならたぶんできるだろう」
自分の解決方法に自信や見
通しががもてる具体的支援
数学的な発展性に富み、知的
好奇心をくすぐる課題、数学の
歴史的な内容
「不思議だな・・」「一体どうなっ
ているんだろう?」
特定の問題に興味や関心をもつ
算数に対する挫折感・苦手意
識・不安感
算数への興味・関心・意欲の
欠如
算数がわからない、おもしろく
ない、きらい、面倒くさい
安心
「わかった・できた」
具体的で理解しやすい課題
(視覚が思考に機能する課題)
活動の楽しさを感じられる課題(興
味や関心がもてる課題)
「おもしろそうだな・・」「なぜ?」「ど
うして?」「今までみたことがない」
「前にやったことがない」
妥当性の検討
有効性・関連性の検討
解決方法の選択
次自分は何をすればい
いか?
児
童
自
身
の
自
立
に
よ
る
学
習
A子(6年基礎コース)の1年間の変容
「先生、得意な体育で5
をとりたいな!」
「先生、こんなん生まれて初
めてや!奇跡や!」
2月 初めてテストで100点をとる
11月 授業中意識して手を挙げるようにな
る。他の友達よりも速く課題が終わること
もある。
11月 自信がある問いや問題に関しては手を挙げて
答えるようになる。先生が話を始めると作業を止め
て話を聞くようになる。授業中足がほとんど動かない。
10月 「席を変えてもいいか?」と先生にお願い
に来る。(いつも教えてくれる友達に横に来てほ
しいと、自ら友達にお願いし、先生に言いに来る)
9月 自信がある問いや問題に関しては手を挙げて
答えるようになる。先生が話を始めると作業を止め
て話を聞くようになる。授業中足がほとんど動かない。
7~9月 まず、自分で考えるようになる。わから
なければ、友達や先生を呼んで聞くようになる。
6月 何とか時間以内にプリントを仕上げようと
がんばる。(プリントを仕上げようという意識)
「先生、今日もプリ
ントする?」
「先生な、私3年生のときから
ひっかかってんねん。わり算
やねん。」
「私だってあきらめへんし
な・・」
自力解決場面での子ども同士
の教え合いの積極的導入
できる経験、わかる経験
学習の中での安心感
「みんなと同じようにわか
るようになりたいな・・」
4~5月 言われたことはするが、自分から進んで取り組むことはない。友達が始め
てしばらくしてから始める。時間がくればすぐやめる。授業中足がぶらぶらよく動く。
「手を挙げられ
た」、「次回も・・」
学習への意欲・
態度に関わる記
述(意欲)
「プリントができ
た」「難しかった」
自分の取組に関
する記述(理由)
「わかる、わから
ない」自分の理
解に関する記述
「どうせわからへんし・・
もういいわ・・」
認知
情意・メタ認知
不思議・疑問
5
すき
~だからわかった
4
次は~したい
わかった
3
次が楽しみ
かんたん
2
嬉しい・よかった
~をした
1
おもしろい・楽しい
0
むずかしい
ー1
わからない
ー2
ー3
おもしろくない
もうしたくない
★今日は2回くり下がりをするひっさんをしました。むずかしかった
けど少しだけ楽しかったです。
☆3のだんにはいろいろひみつがありました。そしてわたしは
大はっけんをしてほめられたので、はなが高かったです。
★算数でくり上がりが二つになっていました。やりかたが今日から
かわったのでいい勉強になったとおもいました。少しだけむずか
しかったです。
6
5
4
(事例1)Aさん
・・・上位群
3
2
系列1
1
0
-4
-2
-1
0
2
4
6
-2
縦軸:認知、情意・メタ認知スケール
横軸:時系列
-3
縦軸:認知スケール
横軸:情意・メタ認知スケール
6
5
4
3
2
1
系列2
系列1
0
-1 1
-2
-3
-4
-5
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29
6
5
4
3
2
系列1
1
(事例2)Bくん
・・・中位群
0
-1
0
1
2
3
4
5
-2
6
5
4
3
系列2
系列1
2
1
0
-1
-2
1
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29
5
4
3
2
系列1
1
(事例3)Cくん
・・・下位群
0
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
-1
-2
5
4
3
2
系列2
系列1
1
0
1
-1
-2
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29
5.成果と課題
• 今回の成果
– 認知とメタ認知の2軸による算数作文の分析方法を開発
できた。
– 上記の方法によって,子ども個々の算数学習の状態とそ
の変容を明らかにできた。
– 上記の把握から,個に応じた指導を考えることができた。
• 今後の課題
– 分析方法の妥当性の検討
– 小学校高学年の算数作文による分析
– 日常の算数指導での使用を可能にすること