STAS-Jでの情報収集に困難を感じるのはケア の困難さと関連があるのか ~一般病棟でSTAS-Jを5ヶ月間使用して アンケート調査の結果から~ 市立三次中央病院 湯川 弘美・新濱 伸江 病院の概要 350床 総合病院 看護体制 10:1 病床稼働率 96.9% 平均在院日数 17.0日 広島県北部と島根県の一部を医療圏としている 地域がん連携拠点病院 A病棟の概要 一般外科・泌尿器科の混合病棟 54床 看護師 19名 看護助手 4名 平均在院日数 泌尿器科 12.3日 外科 23.7日 手術件数 634件/年 患者層 60~90代 STAS-Jの活用方法 使用前に勉強会を病棟で2回、院内で1回開催した。 参加したのは18人中16名であった。 STAS-Jで力をおいて啓蒙した点:患者・家族の思 いを聞くこと。 時期:月曜日もしくは火曜日。 対象患者:医療用麻薬を使用し疼痛コントロールを 行なっているがん患者。 実施した患者:10名 週一回から月に一回カンファレンスで使用。 使用前の印象と取り組み 使用前の印象 n = 1 8 とても有効 6% 6% 6% 0% 33% 49% どちらかというと有 効 どちらともいえない 患者・家族がどのように説明を受けた のかではなく、説明を聞いてどのように 理解し、感じているのかを情報収集し ましょうと働きかけた。 患者・家族の希望に添ったケアを提供 できるための情報を得る。 どちらかというと有 効ではない 全く有効ではない 無回答 聞きにくい、聞けない。 聞く方法がわからない。 どのようにケアしたらいいのかわからない 反応にどう応じていいのか わからない。 カンファレンス時に沈黙してしまう場面があっ た こころのケアに戸惑いがあるよう にみられた アンケート調査内容 対象:A病棟看護師18名(看護師経験年数1年未 満から30年) 方法:無記名アンケート調査で設問に対して5段階 で数値化しデータを統計ソフトで相関関係を調べた。 アンケート内容:STAS-J使用前の印象、使用して の印象、ケアの困難さを感じるか、情報収集の困難 さを感じるか、使用してケアが変化したと感じるか、 STASーJの使用を継続したほうがよいか。 倫理的配慮:調査結果を発表することを伝え了承を 得た。 アンケート結果 STASを使用しての印象1 STASを使用しての印象 n=18 問題は明確になっても,具体的なプランが立てにくい 患者へのケアについてではなく,点数化に意識が向く傾向がある 身体症状コントロールよりも,症状認識やコミュニケーションが 問題点となることが多い 自分の評価を他のスタッフはどう見ているのか気にかかる 自分がする評価の妥当性への疑問,不安がある とても思う 思う 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100 % どちらともいえない 思わない 全く思わない アンケート結果 STASを使用しての印象2 S T A S を使用しての印象 n=18 STASで評価するのに時間がかかる 数値化することで,自分たちのケアの内容を客観的に捉えることが出来る 見落としていた部分を把握できる 症状などの変化を明確にする助けになる 患者の問題点を把握する助けになる 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% とても思う 思う どちらともいえない 思わない 全く思わない アンケート結果 ケアの困難さを感じるか ケアの困難さを感じるか(n=18) 疼痛コントロール 症状が患者に及ぼす影響 患者の不安 家族の不安 患者の病状認識 家族の病状認識 患者と家族とのコミュニケーション 職種間のコミュニケーション 患者・家族に対する医療スタッフのコミュニケーション 0% とても思う 思う 10% 20% どちらともいえない 30% 40% 思わない 50% 60% 全く思わない 70% 80% 90% 100 % アンケート結果 情報収集の困難さを感じるか 情報収集の困難さを感じるか(n=18) 痛みのコントロール 症状が患者に及ぼす影響 患者の不安 家族の不安 患者の病状認識 家族の病状認識 患者と家族のコミュニケーション 職種間のコミュニケーション 患者・家族に対する医療スタッフのコミュニケーション 0% とても思う 思う 10% 20% 30% どちらともいえない 40% 50% 思わない 60% 70% 全く思わない 80% 90% 100% 仮説 「ケアの困難さ」と「情報収集の困難さ」は関 連があり、ケアの知識や技術が習得できれば 情報収集が行いやすくなりSTASを活用しや すくなるのではないか? 「ケアの困難さ」と「情報収集の困難さ」の相関関 係 正のかなり高い相関にある 痛みのコントロール (情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 症状が患者に及ぼす影響 (情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 6 6 5 4 3 2 1 0 5 4 3 2 1 0 系列1 痛みのコントロール 0 1 2 3 4 5 6 0 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 系列1 2 2 3 患者・家族に対する医療スタッフのコ ミュニケーション 患者・家族に対する医療スタッフのコミュニケーション (情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 1 1 症状が患者に及ぼす影響 0 系列1 3 4 5 4 5 6 「ケアの困難さ」と「情報収集の困難さ」の相関関 係 正の高い相関にある 職種間のコミュニケーション (情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 6 5 4 3 2 1 0 系列1 0 1 2 3 4 5 6 職種間のコミュニケーション 「ケアの困難さ」と「情報収集の困難さ」の相関関 係 中等度の相関にある 患者の病状認識 (情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 系列1 0 1 2 3 4 5 患者の病状認識 「ケアの困難さ」と「情報収集の困難さ」 の相関関係 ほとんどない 患者の家族のコミュニケーション (情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 家族の病状認識 (情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 系列1 0 1 2 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 系列1 患者家族のコミュニケーション 3 4 0 家族の病状認識 患者の不安 患者の不安(情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 5 4 系列1 2 1 0 0 1 2 3 4 5 6 2 3 4 家族の不安(情報収集の困難さとケアの困難さ)の相関関係 家族の不安 3 1 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 系列1 0 1 2 3 4 考察 「痛みのコントロール」「症状が及ぼす影響」「患者・家族に対 する医療スタッフのコミュニケーション」「職種間のコミュニケー ション」についてはケアの知識と技術を得れば情報収集しや すいことがわかった。ケアの知識や技術を得ることで情報収 集が容易となる。 看護師が情報収集に困難さを感じている「患者の不安」「家族 の不安」「家族の病状認識」「患者と家族とのコミュニケーショ ン」についてはケアの知識・技術を得ても情報収集が困難で、 情報収集が行いにくいと患者・家族の希望に沿った看護が提 供できにくい。情報収集に困難さを感じることはケアの困難さ 以外にも要因があると考えられる。この調査では明確になら なかったが、コミュニケーションスキル、看護師の死生観や看 護観などが影響しているのではないかと考える。 おわりに この調査の限界は18名という少数で行なっ ていること、その他の要因についての検討を 行なって無いことにある。今後の課題は調査 人数を増やし検討すること、また、情報収集 が困難と感じる要因について再検討すること にある。 参考文献 岩田奈美:急性期病棟でSTASをアセスメントベースとして 使用した場合の看護の変化、死の臨床. 2007;30(2):259. 佐々木智美:STAS-Jへの取り組み、死の臨床.2007 藤本みどり:看護師の緩和ケアに対する意識の向上、死の 臨床. 2007; 30(2)259. 中島信久, 秦温信, 小嶋裕美, 森田真由美. 急性期病棟にお けるSTAS日本語版の導入と問題点 -アンケート調査の結 果から-. 緩和ケア 2006; 16(6): 561-65. 宮下光令:「STAS-Jの使用経験とこれからの課題」開催報 告 -STAS-J導入の成功と継続使用のために-. 緩和ケア. 2007; 17(2): 166-9.
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