生物多様性保全のための 農林水産業の役割 松田裕之 世界資源フォーラム, 名古屋予備会談, 2009年9月16日 11:20-12:00 JST, 名古屋大学エコトピア科学研究所 1 問題 日本のマサバ 今、日本の食卓に上るサバの大半は大西洋産である。 日本近海のマサバはどちら? ① ② 2 今日の内容 生物多様性条約 エコロジカルフットプリント 生態系サービス 生物多様性保全における農林水産業の役割 3 生物多様性 生態系の多様性(景観)砂漠も大切 種の多様性 危惧種も普通種も大切 – レッドデータブック – 生きている地球指数(living planet index) 遺伝子の多様性 地域変異、個体変異 – 進化の源泉 4 生物多様性条約 1992 “生物の多様性の著しい減少又は喪失 のおそれがある場合には、科学的な確 実性が十分にないことをもって、そのよ うなおそれを回避し又は最小にするため の措置をとることを延期する理由とすべ きではない,(米国は批准せず) 5 種の絶滅速度 – 人間は地球の歴史上 平均的な絶滅速度の 1000倍ほどにも種の絶 滅速度を増加させてき た.(確度は中程度) – 現在では,哺乳類,鳥 類,両生類の種のおよ そ10-30%が絶滅にさ らされている.(確度は 中程度から高い) 6 GBO2 WWF 生きている地球指数 =世界各地の陸域、川や湖などの淡水域、海洋に生息する、 1686種の野生生物について、約5000の地域個体群を調査し、 その個体数の減少率を基に試算したもの 7 http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/news/2008/20081029.htm 生物多様性条約 1992年地球サミットで採択 – 気候変動枠組み条約、森林原則宣言 翌1993年発効(米国は参加せず) CBDの3原則 1. 生物多様性の保全 2. その構成要素の持続可能な利用 3. 遺伝資源を利用する利益の公正な配分 生物多様性国家戦略の策定 8 http://www.biodiv.org/default.shtml 生物多様性条約締約国会議 2002年の採択 2010年目標:2010年までに、 地球規模、地域、国家レベル での生物多様性喪失の速度を 著しく減速させること 戦略計画 – ①生物多様性は持続可能な発展の生活基盤である。 – ②生物多様性の喪失の速度は現在も加速している。 – ③これらの脅威に対して行動を取らなければならない。 9 05/12/16 9 今日の内容 生物多様性条約 エコロジカルフットプリント 生態系サービス 生物多様性保全における農林水産業の役割 10 人口と一人当たり環境負荷の超マルサス増殖 世界人口(0.1 billion) エネルギー消費量(1000kcal/day/person) 1 Year (A.D.) Data: Earl Cook (1971) and Joel E. Cohen (1995) 11 WWF 200 生態学負荷の減少, 生物的収容力の増加 生物的収容力 12 一人当たりのEFのランキング 13 WWF Living Planet Report 2004 世界の生態学的負荷 http://www.ecofoot.jp/ 14 WWF 2004 今日の内容 生物多様性条約 エコロジカルフットプリント 生態系サービス 生物多様性保全における農林水産業の役割 15 地球環境変化Gobal change 人間の福利Human well-being 生態系サービスEcosystem services 供給サービス 生物多様性 Biodiversity 文化的サービス 基盤サービス 生態系機能 Ecosystem functions 調整サービス (MA2005) 2008/3/2 16 なぜ自然を守るのか? 持続可能性 =次世代の人間が生態系 サービスを享受できるよ う、自然を守る (米生態学会委報告 1996) 16 自然の価値を計る (Costanzaら1997) 供給 農林水産物約140兆円/年 調整 物質循環約1700兆円/年 資源価値<<調整サービス 漁場の自然価値>漁業補償 17 17 生物多様性と生態系を改変する 主な直接的要因 (Global Biodiversity Outlook 2: GBO2) 18 サービス供給の現状 19 GBO2 調整サービスと文化的サービスの現状 スギ花粉症 20 GBO2 今日の内容 生物多様性条約 エコロジカルフットプリント 生態系サービス 生物多様性保全における農林水産業の役割 21 人間の福利 ミレニアム生態系評価 (MA) 計画 変化の間接的要因 • • • • • •安全 •基本的物質 •健康 •良好な社会関係 •選択と行動の自由 人口 経済 社会政策 文化および宗教 科学技術 Japan NSBAP* 生態系サービス •生物多様性 •基盤サービス •供給サービス •調整サービス •文化サービス 1. 2. 3. • 過剰利用 変化の直接的要因 利用放棄 A) 生息地の変化 人為撹乱 地球温暖化 B) 気候の変化 C) 侵入生物 D) 乱開発 E) 汚染 22 *NSBAP=Nat’l Strategy for Bioldiversity and Action Plan 二次habitatの利用放棄 (Satoyama) 自給自足 1000ton 100,000 Imports of food supplies (1000ton) left axis 80,000 Self-sufficiency ratio (%) right axis 農地の放棄 (%) 100 80 60,000 60 40,000 40 20,000 20 0 0 23 Expert Committee for the Comprehensive Assessment on Biodiversity in Japan, 2008 森林1 森林生態系の規模・健全性の変化-① 森林蓄積量(天然林・人工林)の推移 5000 4500 4432 人工林 4040 天然林、その他 4000 計 3483 森林蓄積量(百万m3) 3500 3138 2651 2862 3000 2338 2484 2500 2079 2000 1500 1361 1887 558 665 1892 2186 798 1598 1054 1000 500 1960年代から約40 年間で、森林蓄積 量は約1.9億m3から 約4.4億m3と2倍以 上増加している。 特に人工林におけ る増加が著しい。 1329 1414 1388 1430 1502 1966 1971 1976 1981 1986 1540 1591 1702 1780 1990 1995 2002 2007 0 出典:林野庁資料より作成 24 Expert Committee for the Comprehensive Assessment on Biodiversity in Japan, 2008 注:本資料は、議論のたたき台とするため、現時点の作業結果をもとに内容や表現の妥当性にこだわらず作成したもので、今後の検討により大幅な変更がありうる。 地域による森林面積の年 間純変化量(1990-2005) Forest area includes primary forests, modified natural forests, semi-natural forests, productive forest plantations and protective forest plantations. Net change in forest area takes into account afforestation efforts and natural expansion of forests. Source: Food and Agriculture Organization of the United Nations 25 GBO2 森林4 森林の利用と管理-② 針葉・広葉樹別国内素材生産量と用材自給率 100% 90,000 80,000 80% 70,000 広葉樹 60,000 1000m3 50,000 針葉樹 60% 木材輸入量 用 材 自 給 40% 率 用材自給率 40,000 30,000 20,000 20% 10,000 0 0% 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 1950年代には90%だった 用材自給率は急減し,近 年は20%未満となってい る.木材輸入量は1960年 代に急増し,近年は70百 万m3で推移している. これとともに国内の素材 生産量も減少し,ピーク 時の1/3以下の15百万m3 で推移している. 素材生産量のうち広葉樹 材は1970年代には40% をしめていたが,近年は 減少し,20%未満となっ た. 2000 年 26 Expert Committee for the Comprehensive 出典:農林水産省大臣官房統計部生産流通消費統計課「木材需給報告書」 Assessment on Biodiversity in Japan, 2008 注:本資料は、議論のたたき台とするため、現時点の作業結果をもとに内容や表現の妥当性にこだわらず作成したもので、今後の検討により大幅な変更がありうる。 二次habitatの利用放棄 (Satoyama) 狩猟者数 ニホンジカ の分布 27 Newsweek 2003.7.14 2002/6/21 海 は 死 に つ つ あ る か ? 28 28 第5回世界水産学会議 Meryl Williams(CoML運営委員)の招待講演 “Marine ecosystem services and fishing: agreements and disagreements between fisheries scientists and ecologists” 2008年10月21日パシフィコ横浜 Counter-view 1: Spatial Methods Walters Can J Fish Aquat Sc 2003 大西洋 太平洋 インド洋 Data: Japanese longline - Interpolated line - Myers & Worm method - Mean catch rate, fished cells 29 海洋地域の漁業生産を漁獲しろ (FAO, SOFIA2006) 減る北米東岸,増える東南アジア 30 http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2009/090729BM.ppt 漁業崩落 Fishing down (MA 2005) ? 漁獲物平均栄養段階=FAO FISHSTAT + FISHBASE により計算可能 必ずしも乱獲の指標としては適切ではない 日本のMTLが高い=生態的負荷EFが高い 31 海洋栄養指数の変化 32 GBO2 Pauly D., Watson R. Phil. Trans. R. Soc. B;2005;360:415-423 国の間の魚の消費量の違い After Doug Beard Low Value Food Fish as a Share of Total Fish Consumption 140000 90 120000 80 70 100000 60 80000 Percent Metric Tons Consumed Total Fish Consumption (Metric Tons) 60000 Developing World 50 Developed World 40 30 40000 World 20 20000 10 0 1960 1980 2000 2020 2040 0 1970 Year 1980 1990 2000 2010 2020 2030 Year From Delgado et. al. 2002, Fish to 2020, Table E.14 From Delgado et. al. 2002, Fish to 2020, Table 3.3 33 日本の漁獲量と平均栄養段階 34 日本のEEZでは,浮魚を200万トン以上利 用することが出来る. しかし,需要と供給が合わない: 魚の乱獲と利用不足 35 Source: Fisheries Research Agency, Japan ニュージーランドは サンマ(Pacific saury)を輸入している 36 http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2008/07/post_378.html 牧野光琢氏 京都ズワイガニ漁業の海洋保護区(MPA) Phase1 Phase2 Phase3 Phase4 120 100 (Sited from Kyoto Institute of Oceanic and Fishery Science HP) 80 60 40 20 Temporal Fishing Ban(%) MPA Construction (km2) 0 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 37 年度 図2 京都府沖合海域における各施策の経年変化 Fiscal Year 37 生態系アプローチの12原則 CBD2000年CoP5ナイロビ文書 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 管理目標は社会が選択 管理の分権化 他の生態系への波及効果 を考える 経済的な文脈で管理 生態系の構造と機能を保 全 生態系機能の限界内で管 理 望ましい時空間で行う 目標は長期的視点で設定 変化が不可避と認識 10. 保全と利用のバランス 11. 科学知、伝統知、地域知を考 慮 12. 関連する社会・自然科学分 野を含む 5つの運用指針(抄) 指針2 利益の公平配分の推進 指針3 順応的管理の実践の利 用 指針5 セクター相互の共同の確 38 保 9. 環境問題は、伝統知でより統一的に把握できる 非市場的価値 – Mottainai – External-market value 生態系サービス 自然の恵み – Grace of nature – Ecosystem services 勿体無い リスク/ベネフィット – prudent – Risk/benefit (自然の)管理責任 – Stewardship フードマイレージ – Food Mileage 公衆含意 – Public involvement 程ほど 自然への畏敬 – Awed by nature 地産地消 – Closed local economy 話し合い – Mutual consensus 39 アジア視点の生態リスク 米と魚は重金属等が欧州食品基準を 超えているが、アジアで重要な有難い 食材。ゼロリスクでなく、リスクと共 生する新たな理念が必要 水田と零細漁業は環境に優しい その時代の価値判断を絶対視しな い。自分の価値観を他者に強いない。 ウサギ小屋は現代では生態Footprintが 少ない。肉食か菜食主義かでなく、程 ほどがよい。 自然保護=生態系サービスという功 利主義で守るだけなく、いたずらに絶 やすことを勿体無いと感じる。 途上国漁業は共同管理。徹底した話 失われる伝統的棚田 ↑漁協の話合い (年200回に及ぶことも) 40
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