08.建築材料の耐久性(2) 08-1.金属材料の耐久性 腐食=酸化反応 金属→e-の放出→陽イオン →酸素・硫黄・水酸化物イオンと結合 M2O, MO M2O3, MO2 M2O5, MO3, M2O7, MO4 :塩基性(水溶液) :中性(水溶液) :酸性(水溶液) 08-1.金属材料の耐久性 鉄 酸素(O2)と液体の水(H2O)の共存下 2Fe+O2+2H2O→2Fe(OH)2 4Fe(OH)2+O2+2H2O→4Fe(OH)3 4Fe(OH)3-6H2O→2Fe2O3 :赤錆発生 (水酸化第一鉄、白色) (水酸化第二鉄、赤褐色) (酸化第二鉄、赤錆) 酸化鉄 Fe3O4 :加熱により酸素と結合、硬く脆い緻密な黒皮 乾燥状態で安定な保護膜 Fe2O3 :粗な組織、水分を容易に吸収し不安定 08-1.金属材料の耐久性 腐食の電気化学 電極電位 電導性溶液中に金属イオンとして溶解 金属と溶液との間に生じる電位(平衡状態) 基準電極との電位差を測定 標準基準電極:水素電極、銀塩化銀電極、銅硫酸銅電極 標準電極電位 水素ガスを吹き込んだ液中において水素電極を用いて測定した各種 金属の電位 Al3+:-1.663 Zn2+:-0.763 Fe2+:-0.440 Sn2+:-0.136 Fe3+:-0.036 H+:0 Cu2+:+0.337 Au+:+1.68 自然電極電位≠標準電極電位 金属の種類と環境(pH、酸化剤、温度、時間経過)によって異なる 腐食進行 :時間経過に伴い-側へ移行 腐食抑制 :時間経過に伴い+側へ移行 電極電位の測定 08-1.金属材料の耐久性 電池作用による腐食 異種金属間の接触腐食 電極電位の異なる金属の接触 接触部に水の存在 電位の低い側の金属が陽極となり腐食 亜鉛メッキ鋼板 亜鉛Znが陽極、鉄を保護 錫メッキ鋼板 錫Snが陰極、傷がつくと鉄の孔食が進行 異種金属間の電池作用 08-1.金属材料の耐久性 電池作用による腐食 応力腐食 応力が不連続に変化する箇所は錆びやすい 冷間加工した金属(残留応力を保持) 構造材として使用する場合 表面皮膜の破壊 表面凹凸の変化 残留応力によるすべりの発生 塑性変形に伴う結晶の偏折・析出・変態 合金 :応力腐食割れの影響を受けやすい 海水・水蒸気・酸類に特に注意 PC鋼線 :冷間加工による伸線、定着部での応力の急変 鉄筋のフック :湾曲部分が錆びやすい 08-1.金属材料の耐久性 電池作用による腐食 水素脆性 応力の作用下 欠陥(結晶粒界、転位)に侵入した水素の蓄積 高圧力の発生 マイクロクラックの発生 濃淡電池作用 溶存酸素の濃度差(温度差、透気性の差) 酸素濃度が低い方が陽極化 孔食の発生 酸素濃淡電池 08-1.金属材料の耐久性 水素発生型腐食と酸素消費型腐食 水素発生型腐食(H2の発生) Fe, ZnのHCl, H2SO4水溶液での腐食 Alのアルカリ水溶液中での腐食 酸素消費型腐食 Cu, Agの酸素を含むH2SO4, HCl水溶液中での腐食 Feの純水、弱アルカリ水溶液中での腐食 金属の大気中での腐食 08-1.金属材料の耐久性 水素発生型腐食と酸素消費型腐食 Feの酸素消費型腐食 水中・大気中 Fe→Fe2++2e2H++2e-→H2 :無酸素→陰極に水素分子吸着(分極) H2+1/2O2→H2O Fe+2H++1/2O2→Fe2++H2O 大気中: Fe2++2OH-→Fe(OH)2 酸化→γFe2O3・H2O(赤錆) 陽極 陰極 塩分を含むアルカリ中 Fe→Fe2++2eFe2++ 2OH-→Fe(OH)2 :無酸素→停止 Fe(OH)2+1/2H2O+1/4O2→Fe(OH)3 陰極 2e-+H2O+1/2O2→2OHFe+3/2H2O+3/4O2→Fe(OH)3 陽極 塩分含有コンクリート中の鉄筋の腐食 08-1.金属材料の耐久性 不働態(電気化学的挙動が著しく不活性化) 脱酸素した硫酸水溶液中、陰極:白金、陽極:鉄 アノード分極 定電流アノード分極曲線 A→B間 :Fe→Fe2+ B→C間 :Feの溶解停止(不働体化) 不働体皮膜の形成(Feの表面に酸素が吸着・結合) C→D間 :陽極からO2が発生、Fe→Fe2+(過不働体) 定電位アノード分極曲線 B→C間 :明確な不働体の形成 アノード分極曲線 08-1.金属材料の耐久性 金属材料の防食 被覆法 塗装皮膜 油性・合成樹脂系の塗料 金属が直接空気・水に触れるのを防ぐ 非金属皮膜 金属表面を安定な酸化物・無機質塩類に化成 メッキ 電気メッキ 電気分解(陰極:防食する金属、陽極:メッキ金属) クロムメッキ、亜鉛メッキ、錫メッキ 化学メッキ 金属塩水溶液中の金属イオンを防食する金属の表面に析出 溶融メッキ 溶融金属槽中に防食する金属を浸漬 溶融亜鉛メッキ、溶融錫メッキ 亜鉛メッキ、錫メッキ 08-1.金属材料の耐久性 金属材料の防食 被覆法 溶融した物質を暴食する金属表面に圧縮空気で吹き付けて被覆す る方法 金属溶射(Zn, Al)、セラミック溶射(Al2O3、カーボランダム、ほう ろう用粉末) セメンテーション 防食する金属に他の金属元素を浸透させて合金層形成 ほうろう ガラス質粉末を泥状に練り合わせて鉄鋼表面に塗布、加熱、溶融し たガラス質を固着 08-1.金属材料の耐久性 金属材料の防食 環境防食法 水分の付着防止 腐食成分の除去 pHの調整(鉄はpH11以上で腐食速度が遅延) pHと鉄の腐食 08-1.金属材料の耐久性 金属材料の防食 電気化学的防食法 カソード防食法(カソード分極によって、防食する金属を安定化) 外部直流電源から電流を供給 陰極 :防食する金属 陽極 :不溶性の金属 防食金属の低電位(カソード防食範囲)を保持 対象 :港湾構造物、地中埋設構造物 アノード防食法(アノード分極によって、防食する金属を不働体化) 外部直流電源からアノード分極を生じるに必要な電流を供給 陽極 :防食する金属 鉄の電位-pH図 地中埋設管のカソード防食 08-1.金属材料の耐久性 金属材料の防食 腐食抑制剤(防錆剤) アノード反応、カソード反応の速度を遅延 アノード反応抑制剤(不働態化剤 ) 亜硝酸塩(NaNO2, Ca(NO2)2)、クロム酸塩(K2CrO4) クロム酸塩はCr6+による公害のおそれあり 化合物皮膜形成型抑制剤 PO43-, SiO32-, HCO3 金属表面にリン酸塩、珪酸塩、重炭酸塩の皮膜形成 カソード反応抑制剤 PO43-, SiO32-, HCO3 酸素の還元により酸素を除去・固定化 08-2.高分子材料の耐久性 08-2.高分子材料の耐久性 紫外線による劣化 光を吸収→高エネルギー状態→光化学反応 防止・抑制方法 光の吸収係数を小さくする 増感作用のない無機充填剤・顔料の添加 紫外線を表面近くで吸収・遮断 温度を下げる 酸素の供給量が多い 酸化防止剤の添加 熱による劣化 08-2.高分子材料の耐久性 オゾンによる劣化 ひび割れの発生、霜降り現象 高圧電気機器、高圧絶縁線の周囲に発生 水による劣化 軟化 低耐水性:親水基(-OH, -NH2, -OCH3, -SO3H, -COOH)を 持つ高分子 高耐水性:(-CH3, -C6H5, -COOR)を持つ高分子 すり減りによる劣化 高分子材料による床仕上げ 樹脂含有量が多いほどすり減り抵抗性大 08-2.高分子材料の耐久性 分子構造の変化 鎖の切断 軟化してべたつく 新しい結合(再結合、枝分かれ、架橋、環化) 硬化して溶媒に不溶 08-3.木質系材料の耐久性 腐朽 木材腐朽菌 褐色腐朽菌 腐朽材が褐変 白色腐朽菌 腐朽材が白変 軟腐朽菌 多湿環境下で木材表層部を軟化 腐朽菌の発育条件 栄養 セルロース、ヘミセルロース、リグニン 防腐剤処理:木材の成分を腐朽菌の栄養分として不適に変質 08-3.木質系材料の耐久性 腐朽 腐朽菌の発育条件 水分 含水率20%以下 含水率30%以上 含水率が異常に多い 大気中の相対湿度85%以上 :腐朽は生じにくい :腐朽しやすい :腐朽は遅延・停止(酸素不足) :腐朽しやすい 温度 25~30℃ :最適成長温度 45~55℃ :成長停止、死滅 5℃以下 :成長停止 酸素 真正呼吸 分子間呼吸 :酸素消費、炭化水素生成、炭酸ガス放出 セルロース→水+CO2 :酸素を消費しない、アルコールの生成 08-3.木質系材料の耐久性 腐朽 防腐剤 クレオソート 古くから枕木、電柱に使用 防腐性能は高い、臭いが強い、有害物質混入 CCA(銅クロム砒素混合防腐剤) 高圧注入用防腐剤、安価 防腐性能は著しく高い 砒素を多量に含む、廃材処理が困難(焼却不能、土中でも腐食しに くい、土壌汚染) 08-3.木質系材料の耐久性 腐朽 防腐剤 ACQ(アンモニア塩基銅4価アンモニウム複合体) 銅とアンモニウム類の複合体 防腐性能は高い AAC(アルキルアンモニウム複合体) 重金属を含まない 防腐性能はやや低い CuAz(銅アゾール混合物) 銅と有機化合物の複合体 防腐性能はやや低い 08-3.木質系材料の耐久性 虫害 乾燥材の食害虫 ナガシンクイムシ科、ヒラタキクイムシ科、シバンムシ科、カミキリム シ科 澱粉の多い木材ほど被害大 木材の含水率12~18%で成長、7%以下で死滅 導管内に産卵する虫 針葉樹の被害はない 表面塗装による産卵防止 湿潤材の食害虫 ヤマトシロアリ :寒冷に強い、全国に分布、営巣しない イエシロアリ :温暖地域、乾燥材でも水分を運んで営巣(半球状) 松・杉などの針葉樹林の春材部を食害、秋材部・外表面を残す(内 部空洞化)
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