●サンヨー ・ プロダクト ・ トピックス● 軽くて切削加工性に優れ、 精密なデザインモデルが得られる エポキシ系デザインモデル製作用盛り付け樹脂 『サンモジュール FE2』 ❶コアモデル ■『サンモジュール FE2』によるモデル製作 ❷コアモデルの上に専用の吐出機を使って『サンモジュール FE2』を盛り付ける 製品の売れ行きを左右する自動車や家電製 品のデザインなどは、多くのプロセスを経て 決定されます。例えば自動車のデザインが決 定されるまでには、企画→スケッチ→CAD 作図→1/4サイズなどのスケールモデル製 作→フルスケールモデル製作、といったプロ セスで進められます。作られるモデルも、外 観デザインを確認するためのエクステリアモ デル、内装デザインを検討するためのインテ リアモデルなどがあり、これらを総称してデ ザインモデルといいます。 自動車のデザインモデル デザインモデル製作用の材料には、クレイ (粘土) 、合成木材、盛り付け樹脂などがあり、 モデル製作の各プロセスや大きさ、精度など 目的に応じて選ばれます。自動車のエクステ リアモデル材料としては、造形と修正のしや すさから、これまではクレイが多く使用され てきました。しかし近年、外観デザイン重視 の流れから、デザインコンペや展示会へプレ ゼンテーションモデルを搬送する機会が増え たこともあり、クレイの強度不足や重いといっ た短所が敬遠される傾向にあります。 自動車のデザインモデル用材料に要求され る性能としては、①大型モデルとなる場合が 多いため軽量であること、②切削加工や搬送、 展示などの取り扱い中に破損しない程度の強 21 2011 初夏 No.466 度を有すること、③工作機械による高速切削 でも滑らかでち密な切削面が得られること、 ④切削性が良好で細やかな手加工が可能なこ と、⑤寸法安定性が良好なこと、などがあげ られます。こうした要求性能を満足させる材 料として採用されているのが合成木材や盛り 付け樹脂です。三洋化成では、従来から高品 質の合成木材や各種盛り付け樹脂を上市して いますが、こうした樹脂の設計技術を応用し て開発したのが、今回紹介するエポキシ系デ ザインモデル製作用盛り付け樹脂『サンモ ジュールFE2』です。 盛り付け樹脂の特長 盛り付け樹脂を用いたモデルの製作方法は、 クレイの場合と同じように発泡スチロールな どで作ったコアモデルの上に、専用の吐出機 を用いて樹脂を盛り付けて反応・硬化させた 後、工作機械や人手で切削加工します。硬化 後の樹脂は合成木材とほぼ同等の強度、寸法 安定性および加工後の精度、といった特性を 有するので、クレイの造形性と合成木材の軽 さ、優れた加工精度を併せもつ材料として、 自動車メーカーのデザイン部門をはじめ多く のユーザーに使用され好評を得ています。 『サンモジュールFE2』は、主剤『サンモ ジュールFE2 A - 』と硬化剤『サンモジュー ルFE2 B - 』の二成分からなるシステムで、 三洋化成ニュース 22 ❸盛り付けが完了したモデル ❺完成モデル ❹硬化した樹脂を切削加工する ■サンモジュール FE2 の代表的性状値*1 サンモジュール FE2 サンモジュール FE(従来品) 〜 85 〜 60 *2 可使時間(分) 最高発熱温度(℃) *3 105 120 硬化収縮率(%) *4 0.47 0.63 外観 赤褐色ペースト状 赤褐色ペースト状 比重 0.65 0.71 *5 硬度 *6 曲げ強度(MPa) 切削抵抗 (N) *7 71 89 熱変形温度 (℃) * 6 50 同左 4 〜 5 同左 硬化物物性 55 60 16.0 17.5 表面粗度 (μm) *8 *9 切り粉の帯電量(kV) 切削直後 0.7 同左 1 分後 0.45 同左 10 分後 0.05 同左 1MPa ≒10.2kgf/cm2 、1N ≒ 0.102kgf *1:硬化物物性は以下の条件で硬化させた後、室温まで冷却後に測定した 硬化条件:室温(約25℃)で12時間硬化し、さらに50℃で10時間硬化 *2:吐出機でポリウレタンフォーム上に、50mmに盛り付けた樹脂の表面の形を整えることができる時間 *3:吐出機でポリウレタンフォーム上に、50mmに盛り付けた樹脂のポリウレタンフォーム近傍の最高発熱温度 *4:吐出機で発泡ポリエチレンシート上に、縦1,000×横100×高さ35mmに盛り付けた樹脂の硬化後に収縮した縦方向の長さから 算出した *5:ASTMショアD硬度計にて測定した *6:J IS K6911に準じて測定した *7:工作機械を用いて試験片を切削したとき、切削の刃が受ける力を動力計にて測定した *8:工作機械を用いて試験片を切削した後、切削面の粗度をレーザー変位計にて測定した *9:測定条件:温度22℃、湿度30% ①安定して吐出できる流動性を有すると同時 に垂直面に四〇〜五〇㍉の厚みで盛り付けて も垂れを生じない、②ピンホールのない滑ら かでち密な硬化樹脂となる、③帯電防止性能 を付与しているため切削粉が工作機械などに 付着しにくい、④盛り付け樹脂どうしの層間 のなじみがよく、発泡スチロールとの密着性 も良好、などの特長があります。さらに、樹 脂組成を見直すなどして従来品を改良したこ とで、⑤硬化物特性をほとんど変えることな く、盛り付け後の形状を調整できる時間がよ り長く取れる、⑥硬化時の発熱量を少なくし て熱に弱い発泡スチロールなどへの厚い盛り 付けが可能、⑦硬化収縮率を低減し、より高 い精度のモデル製作が可能、などの特長を付 加したほか、さらなる軽量化や切削抵抗の低 減を実現したことにより、モデル製作の効率 化などのコストダウンも図られています。 今後は、自動車産業の成長が著しく多くの 需要が見込める中国やインドなどでも市場展 開を図っていく予定です。 『サンモジュール』シリーズには、盛り付け 樹脂や合成木材のほかに成形品の型用樹脂も ラインアップしています。三洋化成は、これ からもこれら分野でのさまざまなニーズに応 え、独自な樹脂の設計技術を生かした製品開 発に注力していきます。 2011 初夏 No.466 23
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