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ビオトープ論(H26.12.11授業)
9.ビオトープ保全の考え方(5)
「問題土壌」(3)
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酸性硫酸塩土壌
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土壌断面の例
Ⅰ
泥炭土壌
Ⅱ
塩類土壌
(林地の例)
Ⅲ
塩類土壌
(不毛地の例)
Ⅳ
酸性硫酸塩土壌
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酸性硫酸塩土壌
■キーワード
強酸性、干拓地、第三紀丘陵
地、マングローブ土壌、パイライ
ト、微生物(鉄酸化細菌や硫黄酸
化細菌)、土地利用、開発・保護・
保全 など
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「 A. S. S. 」 とは?
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酸性硫酸塩土壌
Acid Sulfate Soil
■特徴
(1) 強い酸性(pH3前後)を示す
(2)ある特定の湖や海の下にたまっ
た泥(湖成、海成堆積物)が陸
化すると生成する
(3)酸性の原因物質が硫酸である
ことから、「酸性硫酸塩土壌」
と呼ばれている
(4)日本におけるASSの分布域は、
主に干拓地と第三紀丘陵地の
一部に限られている。世界では
問題土壌として広く分布。
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*第三紀: 約6400万年前~170万年前
世界的分布
A.S.S.は、
アフリカ
東南アジア
南アジア
43.6%
38.2%
16.6%
の割合で世界の低湿地や
沿岸浅海域に多くが分布す
る問題土壌。
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マングローブ地域
■世界のA.S.S.の分布は、約1,200
万ヘクタールに及ぶ。
■その大部分が、アフリカ、東南アジ
アの熱帯マングローブmangrove
(熱帯~亜熱帯の海岸、入り江、
河口に生育する常緑の低木~高
木の群落やそれを構成する植物の
総称)地域に存在する。
■東南アジアに分布するASS地帯は、
潜在的農地とされるが、強酸性で
あるために放置されていることが
多い。
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日本におけるA.S.S.問題
■日本では、かつては海面干
拓地においてのみで問題視
されていた。
■近年、農地造成や宅地造成
に際し、造成機械が大型化
するにつれ、火山成由来の
丘陵地土壌が酸性硫酸塩土
壌となる例がみられる。
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A.S.S.形成メカニズム
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なぜA.S.S.ができる?
■土壌硫酸の生成には、2つ
のプロセスがある
(1) 酸性化の原因となる硫
化物が蓄積する過程
(2) 硫化物が酸化され硫酸
が生成する過程(物理的
酸化→微生物的酸化)
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(1)酸性化の原因となる
硫化物が蓄積する過程
■ASSには、その生成過程により、
「海成」と「火山成」に分けることが
できる。
■沿岸域や湖沼域で問題化するAS
Sは「海成由来」。
■この土壌が強酸性化する原因物質
は、沿岸浅海域等に堆積した土壌
が強い還元的環境下で、有機物と
海水中の硫酸イオンが大量に存在
することにより生成した硫黄化合
物、主としてパイライトpyrite
(FeS2)である。
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(2) 硫化物が酸化され硫酸
が生成する過程(物理的
酸化→微生物的酸化)
■土壌中の硫黄化合物が干陸等によ
り酸素が供給される環境下に置か
れることで酸化し、硫酸が生成さ
れ、結果的にpH3以下にまで土壌
が強酸性化する。
■パイライトpyrite(FeS2)が酸化さ
れ硫酸が生成する過程、とくに初
期的酸化過程では化学的酸化と微
生物的酸化がともに関与し、微生
物(鉄酸化細菌や硫黄酸化細菌)
の働きが触媒として極めて大きな
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役割を果たしている。
化学的酸化
FeS2
O2
Pyrite
FeS2+7/2O2+H2→Fe2++2SO42-+2H+
FeSO4・7H2O
Melanterite
SO42-
H+
風化
蒸発
Fe2+
FeSO4・4H2O
Rozenite
微生物的酸化 (T. ferrooxidans)
化学的酸化
Fe3+
O2
酸化初期では
重要な酸化剤
Fe2+1/4O2+H+→Fe3++1/2H2O
FeSO4・H2O
Szomolnokite
FeS2+2Fe3+→3Fe2++2SO0
Fe3+
パイライト酸化の終了・土壌酸性化の停滞後,
土壌の中和過程へ移行
溶解・酸化
加水分解
Fe3+3H2O→Fe(OH)3+3H+
Fe2+
S0
溶解
pH4
加水分解・有機配位子の酸化
?
3Fe(OH)2++2SO42-→K+KFe(SO4)2(OH)6
H+
Fe2+Fe3+4(SO4)6(OH)2・20H2O
Copiapite
Ferrihydrite
酸化初期では
重要な酸化剤
2S0+12Fe3++8H2O→12Fe2++2SO42++16H+
SO42-
酸化
Fe(OH)3
化学的酸化
Fe3+
脱水
Fe2+
KFe3(SO4)2(OH)6
Jarosite
脱水・再配列
α-FeOOH
Goethite
pH≧4
加水分解
加水分解?
脱水・再配列
α-Fe2O3
Hematite
微生物的酸化 (T. thiooxidans and T. ferrooxidans )
O2
SO42-
2S0+3O2+2H2O→2SO42++4H+
H+
図1 パイライトの酸化と関連鉱物の生成過程概要
(参考:Nordstrom,1982および日本化学学会,1999)
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A.S.S.の現場(例)
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沿岸域沼地/湿地の起源
は約6千年前
1.地形と土壌の特徴
(1) 熱帯~亜熱帯の沿岸地帯の「潟湖」(Lagoon)
(2) マングローブを伴う汽水環境下で土砂堆積
(3) 沼沢植生(木本)が母材となった泥炭地が形成
2.気象と水理の特徴
(1)
(2)
(3)
(4)
乾期と雨期の一年を大きく分ける季節を伴う
乾期は、高い気温下で、蒸発量≫降雨量
雨期は、集中降雨が豊富な地下水流を生む
潮汐の影響を強く受けている
3.熱帯泥炭土壌の存在
(1) パイライト(Pyrite;FeS2)を含む汽水圏の堆積
(2) 土壌微生物の働きで酸性硫酸塩土壌が生成
↓
地域の野生動植物や農業生産に重大な影響
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を与えている
東南アジアの泥炭/A.S.S.
1.泥炭土壌がある
(1) しばしば洪水を受け、地下水位が高い
(2) 木本(樹木)が倒伏・枯死・腐植した状態
(3) 粘土・シルト・砂を混在させた「サンドイッチ様土層
構造」が存在する
2.繊細な自然環境がある
(1) 地下水環境
(2) 土壌環境
(3) 野生生物環境
3.その地域の経済・社会情勢がある
(1) 無計画な破壊
(2) マングローブ林の抜開・造成
(3) エビ養殖池の造成、その他沿岸域の開発
4.(農地)開発の留意点
(1) 適正な土地利用
(2) 排水と地下水位制御
(3) 適正な肥培管理、土層改良、客土
など
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熱帯~亜熱帯の湿地・泥炭/A.S.S.の問題点発掘
1.土壌の物理・化学性の視点
(1) 高い地下水位と洪水の影響を受けている
(2) 急速な表土の沈下が懸念されている
(3) 作物生産に有毒な有機物が存在している
(4) 下層のパイライトを酸化させると表土が酸性化する
(5) 無機的な肥料分(化学肥料)の不足と肥効の不均衡がある
(6) 地下水の動態が変化し、土壌環境が改変される
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熱帯~亜熱帯の湿地・泥炭/A.S.S.の問題点発掘
2.問題地帯の環境保全と管理
(a) 地下水位の制御や客土などによる泥炭土壌沈下対策が必要
(b) 排水と灌漑などによる用水管理が必要
(c) 適正作物選択や輪作/混作による栽培システムが必要
(d) 有害昆虫の排除や微生物の制御が必要
(e) 酸性化と肥培管理の相対する肥培管理の検討が必要
(f) 土壌・地理調査による環境影響因子の評価が必要
(g) 社会的要求の評価が必要
(h) 適切な土地分類の検討が必要
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Acid Sulfate Soil in rice production for
Negara Brunei Darussalam
in 2011
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ブルネイ国での研修項目
(現地調査について)
1) 「安全第一」
2) 酸性硫酸塩土壌(A.S.S.)の存在を「視る、聞く、嗅ぐ、触
る、考える」
3) A.S.S.発生のメカニズムを考える
4) 水田圃場の構造を考える
5) 灌漑・排水の役割と重要性を考える
6) 現地調査法を学ぶ
7) 水田の土層構造を調べる
8) A.S.S.問題の改善点を考える
9) 調査グループのチームワークと相互信頼を堅くする
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A.S.S. team
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A.S.S. field
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A.S.S. field
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Setting of groundwater observation system
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Setting of groundwater observation system
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Setting of groundwater observation system
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Pond which was affected excessively of A.S.S.
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Jarosite and crack on the surface at rice field
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Jarosite and crack on the surface of rice field
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※ 本講義ノートは「流域保全研HP」
http://www.bio.mie-u.ac.jp/kankyo/chiiki/ryuiki/
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