平成18年度 構造有機化学 講義スライド テーマ:炭素陰イオン&二価炭素 奥野 恒久 前回の内容 ・混成軌道 sp, sp2, sp3, d2sp3混成 ・軌道のs性とこれを使った解釈 NMRのJ値, pKa, バナナボンド 本日の内容 ・ pKa ・炭素陰イオン(3配位)の構造 ・有機リチウム試薬の構造 ・ 高配位炭素陰イオンの構造 軌道のs性とpKaとの相関 ・軌道のs性(sa pb ) 2 a2= 2 cosq cosq-1 化合物 Ethane Ethylene Acetylene pKa値 49 44 25 カルボアニオンの安定性はどう解釈すべきか? 第3級>第2級>第1級 共役塩基の熱力学的安定性とpKa 値 ベンゼン環の効果 CH3 CH4 49 41 CH2 34 CH 31.5 炭素陰イオンの非共有電子対とベンゼン環の π電子とが共役することによって安定化される Ph3C-イオン(Cs塩)の結晶構造 ・アニオン中心である炭素原子は平面構造をとる ・フェニル基はねじれている 種々の水素の酸性度 H CH4 CH2=CH2 49 44 43 ベンゼン環の水素の酸性度は低い (炭素陰イオンは生成しにくい) 配座の固定 CH2 34 H H 22.9 配座が固定されることで π系の平面性が高まる 非共有電子対が共役しやすくなる 共役とpKa 値 CH4 H2C 49 H CN H3C CH3 25 35 H H C H H H H 36 15 18.5 ベンゼン環でなくても不飽和結合と 共役することで安定化する 芳香族性 H H H H H H 36 15 8π 6π 4nπ 18.5 10π (4n+2)π 共役塩基が芳香族性を示し安定化 共役塩基の熱力学的安定性とpKa 値 pKa CH4 49 H2C C H CH3 35 H2C CH3 41 CN H3C 25 22.9 H H 15 H H CH 40 36 34 31.5 CH3 H H H CH2 C H H 43 H 18.5 これらの結果をどう解釈すべきか? 気相におけるカルボアニオンの安定性 プロトン親和力 - R + H + - proton affinity RA(R )を考える - ΔH°= -PA(R ) → RH - PA(R )が小さいほど熱力学的に安定 -1 各種カルボアニオンのプロトン親和力(kJmol ) ← カルボアニオン - - プロトン親和力( PA(R ) ) 1406 (NC)2CH - (CH3CO)2CH 1438 フルオレニドイオン 1478 シクロペンタジエニドイオン O2NCH2 - シクロヘプタトリエニドイオン - NCCH2 CH3(NC)CH 1501 HC≡C - - 1534 1549 CH3 - 1564 1564 1571 C6H5(CH3)2C C6H5CH2 1543 1557 - 1490 1525 CH3SO2CH2 C6H5C≡C - CH3COCH2 - (C6H5)2CH - イオンサイクトロン共鳴法 1579 1586 1743 有機リチウム試薬の構造 6量体:ヘキサン溶液中 リチウム原子の8面体構造 有機リチウム試薬の構造 4量体:THF溶液中(低温) 有機リチウム試薬の構造 2量体:THF-TMEDA中(低温) 有機リチウム試薬の構造 ・種々のクラスター間の平衡状態にある n-BuLiに関して常温付近では ヘキサン エーテル THF TMEDA : : : : 6量体 4量体 2量体 単量体 高配位炭素化合物(5配位) C Au PPh3 BF4- CH2Cl2 5 F. Scherbaum et al., Angew. Chem. Int Ed. Eng., 28, 463 (1989) 高配位炭素化合物(6配位) Au PPh 3 2BF4- C Au PPh 3 C6 H6 3 O. Steigelmann et al., Angew. Chem. Int Ed. Eng., 29, 1399 (1990) メチレンの発生方法 クロロホルムなどを強塩基で処理 CHCl3 t-BuOK -CCl 3 -Cl- CCl2 一重項状態 ・空のp軌道と非共有電子対を持つ ・イオン的な反応性を示す フント則とは? 縮重した軌道に電子が収容される際に は、スピンが最大になるように配列する。 余りにも定性的、何故なのか? 縮重が僅かに解けたらどうなるのか 遷移金属の場合 Mn2+の場合; 25Mn:1s22s22p63s23p63d54s2 高スピン状態 低スピン状態 二重縮重の場合 一重項状態 一重項状態 三重項状態 どの電子配置が安定なのか?? 電子間反発を考えることが重要! > 一重項状態 > 一重項状態 同じ一重項状態であ れば電子が異なる軌 道に充填されたほう が安定 三重項状態 軌道が異なるのであ れば一重項よりも三 重項のほうが安定 三重項が安定な理由 パウリ原理により↑は近付きに くい。それに対し↓は近づける 分、静電反発も大きくなる。 スピン分極 静電反発の小さい三重項が 安定となる。 :CH2の構造(AH2型) x H C + z H y yz平面内のz軸方向から相互作用させる 考慮する軌道 C:1s, 2s, 2px, 2py, 2pz H2:σ, σ* :CH2の構造(AH2型) C2v対称 (2B2)f7 1su (4A1)f6 (1B1)f5 2px 2py 2pz (3A1)f4 (1B2)f3 2s (2A1)f2 C 1sg H2 1s (1A1)f1 分子軌道の角度依存性 f5 f4 f3 f2 90 180 一重項:102.4º 三重項:136.0º メチレンのオレフィンへの付加反応 H H H + H :CH2 H D2h H H H H C2v H D3h この反応の取りうる最も 高い対称性はC2v C2v対称を保ち反応 C2 z y x C2v E C2 sv(xz) sv(yz) A1 1 1 A2 1 1 B1 1 -1 B2 1 -1 -1 1 1 -1 -1 1 -1 1 軌道相関図 B2 s1*-s2* B2 s1*+s2* A1 B2 A1 B2 s1-s2 A1 s1+s2 A1 C2v対称のまま反応は進行できない 協奏的な反応ではない?? 対称性を落とす→ Cs対称、 C2対称 C2対称:禁制 Cs対称:許容 Cs E sv A’ 1 1 A’’ 1 -1 軌道相関図 A’ s1*-s2* A’ s1*+s2* A’ A’ A’ A’ s1-s2 A’ s1+s2 A’
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