ごめん。1(3)の解答、しくじっているので訂正する。 有機化学Ⅱ平常テスト⑫ (2014.12.18)標準解答 1 次の有機分子の IUPAC 英名を示せ。ただし(1),(2)において、A=1-位にメチル基を有するシクロヘキセン であり、該当する化合物は1種類ではないかもしれない。 (1) Aにオキシ水銀化-脱水銀化反応 (3) K+−O-C(CH3)2-CH=CH2 (2) Aにヒドロホウ素化-酸化反応 を施した主生成物 を施した主生成物 potassium 2種できる 1-methylcyclohexan-1-ol (1R,2R)- & (1S,2S)-2-methylcyclohexan-1-ol 2-methylbut-3-en-2-olate (3)は、例によって butenol のアルコラートだから butenolate が母体名。−O−に接続している炭素が上位だから 2-dimethyl であり、en は 3-位、olate はもちろん 2-位。したがってアニオンは 2-methylbut-3-en-2-olate。 2 次の反応に相当する反応式を示せ。ただし、必要な触媒や試薬類は明記せよ。いずれも多段階の反応が必要 になる。なお、生成物の絶対配置は問わない。 下記はあくまで「解答例」であり、他に多数の経路があり得る。学習が進むにつれて、「ある分子を合成する」 経路の組み合わせは増えていく。実際の研究では、それら複数の経路のどれを選べばもっとも効率が良いのか考 えることになる。 (1) 1-位にメチル基を有するシクロヘキサンから、1-メチルシクロヘキサン-1-オールを合成する。中間状態を正 確に示せ。 Radical bromination は三級炭素上でもっとも頻度高く起きるので、メチル基根元炭素をほぼ選択的に Br 化で きる。生成した 1-bromo-1-methylcyclohexane は三級の Br 化合物だから、常温程度で容易に OH2 の攻撃を受 けて SN1 反応により水酸基に変換できる。なお 1mM KOH は生成する HBr を中和するためであり、反応試薬で はない。 CH3 hν + Br2 + Br2 H * CH3 1 mM KOH aq.(SN1 反応) CH3 + HBr + Br*(連鎖反応へ) Br + Br*(連鎖反応へ) CH3 OH + KBr 以上のほかに、1-bromo-1-methylcyclohexane を濃塩基(KOH とか KOMe など)と E2 反応させて 1-methylcyclohex-1-ene とし、教科書 p.493 に準じて H+(硫酸,リン酸)触媒下に水和(HOH 付加)すればよい。なお、こ の方法を選択した場合、余剰の効果がある。最初の臭素化が三級炭素上でなく他の二級炭素上に起きて、続く E2 反応で、例えば 3-methylcyclohex-1-ene ができたとしよう。加熱しながら同様に H+(硫酸,リン酸)触媒下に水 和(HOH 付加)するとき、教科書 p.492 のように H−移動による異性化が起き、1-methylcyclohexan-1-ol が得 られる。 (2) シクロヘキサン-1-オールから、シクロヘキサン-1,2-ジオールを合成する。(アルケンを経る多段階の反応が 必要になる。 )中間状態を正確に示せ。 1,2-diol を合成するには、 ①cyclohexan-1-ol ⇒ (脱水反応) ⇒ cyclohexene ⇒(NBS,含水 DMSO) ⇒ 2-bromocyclohexan-1-ol ⇒ (KOH, 分子内 SN2) ⇒ オキサシクロプロパン環化合物 ⇒ (−OHaq.による開環反応) ⇒ 目的物 ②cyclohexan-1-ol ⇒ (脱水反応) ⇒ cyclohexene ⇒ (MCBPA 酸化) ⇒ オキサシクロプロパン環化合物 ⇒ (−OHaq.による開環反応) ⇒ 目的物 ③cyclohexan-1-ol ⇒ (脱水反応) ⇒ cyclohexene ⇒ (OsO4, H2S) ⇒ 目的物 cyclohexan-1-ol ⇒ (脱水反応) ⇒ cyclohexene は、cyclohexan-1-ol + conc.H2SO4,Δ(90℃程度)で脱水するか、 あるいは cyclohexan-1-ol を PBr3 でブロム化し、conc.-KOH(in MeOH)などで E2 反応させればよい。 Cyclohexene ⇒ (NBS,含水 DMSO) ⇒ 2-bromocyclohexan-1-ol は、HP の『ブロモヒドリン化反応』ファイル 参照 Cyclohexene ⇒ (MCBP 酸化) ⇒ オキサシクロプロパン環化合物は、教科書 p.509 参照。 Cyclohexene ⇒ (OsO4,NaHSO3) ⇒ 目的物は、教科書 p.511 参照。 上記により、自分で組み立ててみよ。①,②は中間体のオキサシクロプロパン環化合物の合成法が異なるだけ。 ③は最も簡単である。どちらの方法でも「本問についてはかまわない」が、実は、最終目的物の構造が異なる。 オキサシクロプロパン環化合物を経ると、二つの OH は anti-の配置になる。 − OH もちろん、三員環が上向きの光学異性体も同量存在するので、生成物は OH 左記の(1R,2R)-cyclohexane-1,2-diol と、その enantiomer の(1S,2S)-体 H2O になる。それに対し、③の経路では二つの OH が syn-の配置になり(教 O 科書を見よ)、生成物は meso-cyclohexane-1,2-diol である。 HO オキサシクロプロパン環化合物 両方の経路をマスターすること。 (三員環が上向きの光学異性体もある) (3) ブタン-1-オールから、ブタン-2-オールを合成する。中間状態を正確に示せ。 HO(CH2)3CH3 を PBr3 で Br(CH2)3CH3 とし、KOMe などの強力な塩基で E2 反応させて CH2=CHCH2CH3 とす る。あるいは、HO(CH2)3CH3 を 70%程度の硫酸中で高温に加熱して脱水させて、CH2=CHCH2CH3 とする。こ こから先は二通りあり得る。 ①HBr を付加して CH3CH(Br)CH2CH3 を得て、薄い中和剤(1mM KOH など)存在下に加熱しながら水和(SN1 [このとき、最後の反応を SN2 条件で行ってはならない(E2 反応ばか 反応)して CH3CH(OH)CH2CH3 を得る。 り起きる)。 ] ②オキシ水銀化-脱水銀化反応させる。[H3PO4 や H2SO4 などの Bronsted 酸を触媒として水和しても良い] ①,②ともに自分で組み立ててみよ。 また、上記下線部の反応を続けていると、脱水⇔水和の繰り返しで次式のように-OH 基が 2-位に移動する。(原 理的には可能なはずだが、実際には難しい。高温にすれば、一番沸点が低い CH2=CHCH2CH3 が気体になって 反応系外に去るので、ほんの一部しか CH3CH(OH)CH2CH3 へ移行しない。したがって、気体を逃がさないよう に、圧力に耐える密閉容器中で行うことになる。) H+, Δ HO(CH2)3CH3 H+,H2O,Δ CH2=CHCH2CH3 + H2O CH3-CH(OH)-CH2CH3
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