希土類を含む自己集合型分子 による多重偏光発光膜

希土類を含む自己集合型分子
による多重偏光発光膜
青山学院大学
理工学部 化学・生命科学科
教授 長谷川 美貴
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新技術の特徴
◇ ランタニドイオンと有機分子との融合で得ら
れる発光性錯体を用いている。
◇ この錯体は極めて温和な環境「常温・常圧・
気/水界面」で高精度な分子が集合する。
◇ 極めて希薄な金属イオン濃度で分子の薄
膜化ができる。
◇ 発光に偏光性が発現する。
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錯体とは
・金属イオンと有機化合物(配位子)により成る
分子を一般に錯体とよぶ。
例:コバルト錯体
水中(6個の水分子)
アルコール中(4個)
Co
Co
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錯体とは
・金属イオンと有機化合物(配位子)により成る
分子を一般に錯体とよぶ。
例:コバルト錯体
(シリカゲルの吸湿による呈色)
Co
Co
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錯体とは
その他の例:
生体内の酸素運搬
(ヘモグロビン・ヘモシアニン)
赤
青
光合成
(クロロフィル)
緑
COOH
H2C
鉄
CH3
H3C
H2C
CH=CH2
N
N
Fe
CH2
マンガン
CH3
H2C
HOOC
銅
N
N
H3C
CH3=CH2
N
(His)
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錯体とは
その他の例:
新幹線ブルー
初代東海道新幹線 0系 初代東北新幹線 200系
Cl
N
Cu
N
N
Cl
Cu
N
N
N
N
N
Cl
Cl
N
N
N
N
N
Cl
Cl
N
N
Cl
Cl
Cl
Cl
N
Cl
Cl
Cl
Cl
Cl
Cl
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ランタニド錯体とは
・ランタニドは原子の性質を特徴づける電子が
f軌道にある一連の14種の元素群を指す。
58Ce
140.1
71Lu
59Pr
140.9
70Yb
175.0
173.0
60Nd
61Pm
144.2
69Tm
(145)
68Er
168.9
167.3
62Sm
150.4
67Ho
164.9
64Gd
63Eu
157.3
152.0
65Tb
66Dy
158.9
162.5
H
He
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
K
Ca
Sc
Ti
V
Cr
Mn
Fe
Co
Ni
Cu
Zn
Ga
Ge
As
Se
Br
Kr
Ru
Sr
Y
Zr
Nb
Mo
Tc
Ru
Rh
Pd
Ag
Cd
In
Sn
Sb
Te
I
Xe
Cs
Ba
La
Hf
Ta
W
Re
Os
Ir
Pt
Au
Hg
Tl
Pb
Bi
Po
At
Rn
Fr
Ra
Ac
Rf
Db
Sg
Bh
Hs
Mt
Ds
Rg
Cn
113
Fl
115
Lv
117
118
7
ランタニド錯体とは
・ランタニドを用いた実用例
永久磁石
強い電子スピン特性
シンチレーター
高い色純度
蓄光材料
熱耐性・光耐性
セキュリティインク
ランタニド錯体の発光は、主に金属イオン内の
エネルギー緩和により生じる。
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ランタニド錯体とは
Q. なぜ有機化合物とランタニドイオンと結合さ
せるのか?
A1. 発光を増強するため。
例: ランタニドのUVの吸収率は、有機化合
物の1/10000程度。
A2. 発光体の多様性を獲得するため。
例:溶液中でも発光できる。界面活性剤とし
て機能する。
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ランタニド錯体とは
A1.を詳しく<発光の仕組み:アンテナ効果>
エネルギー移動
有機化合物
ランタニド
イオン
励起状態
ランタニド
イオン
基底状態
ランタニドイオンのみの場合よりも、配位子により発光が増感される。
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ランタニド錯体とは
A2.を詳しく <発光体の多様化>
固体
溶液
・発光性呈色
・塗料
・湿式製膜
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発光性ランタニド錯体製膜時の課題
(1) 溶液中に溶解させたときの物質の分解。
(2) アンテナ効果によるエネルギー移動効率。
(3) 溶媒効果(熱失活)による発光の消光。
(4) 高価なランタニドイオンの高濃度での使用。
新技術は、これらの問題を凌駕した分子設計を
提案・実現し、膜化に至っている。
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本系の分子設計・合成
比較: LnL
本系: LnLC18
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本系の物質の発光
テルビウム錯体 TbLC18
緑色発光
発光の量子収率
固体 66%
(TbL: <0.1%)
クロロホルム中 51%
実物展示あり
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本系の物質の発光
ユウロピウム錯体 EuLC18
赤色発光
発光の量子収率
固体 44% (EuL: 約. 50%)
クロロホルム中 41%
(EuL: 12% in アセトニトリル)
実物展示あり
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術の問題点であった、溶液中での安定
性を改良することに成功した。
• 薄膜内の構造を操作することで偏光性の発光
を得ることに成功した。
• 本技術の適用により、高価なランタニドイオン
の濃度を極低濃度にすることができため、原
料のコストが削減されることが期待される。
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企業への期待
• 発光体を開発中の企業、分子性色素や発光
体分野への展開を考えている企業には、本技
術の導入が有効と思われる。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :ランタニド錯体を用いた環
境調和型分子膜
• 出願番号 :特願2014-233353
• 公開番号 :特開2016-98171
• 出願人
: 長谷川美貴
• 発明者
: 長谷川美貴
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お問い合わせ先
青山学院大学
教授 長谷川
理工学部
美貴
化学・生命科学科
TEL 042−759 − 6221
FAX 042−759 − 6221
e-mail hasemiki@chem.aoyama.ac.jp
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